
「ここはLoM?」と誰かがつぶやいた。
そういえば、彼らはともに地元、神奈川在住のプレイヤーで、先月に行われた関東のフラグシップ的なイベント"Load of Magic 2004"にも参加している。
そして石川は、強豪集うそのイベントで準優勝の戦績を勝ち取った。そしてこのグランプリでもTop8に残る活躍を見せている。勢いという点ではメンバー随一だろう。
対して浅原は、もはや説明不要のトッププレイヤーだ。デッキビルダーとして知られ、「マナバーン」誌でも構築系の記事を担当する彼だが、思えば2003年のGP京都で初戴冠したときもリミテッドが舞台であった。
新鋭vsベテラン。GP覇者への挑戦権を賭けて、神奈川代表を決める戦いが始まる。浅原が飛行でまとめた白青、石川が真っ直ぐな白緑のビートダウンである。
Game 1
ダイスロールで浅原先攻。初動は石川の《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》から。浅原も《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》で応える。
石川が《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》でマナベースの拡張を図ると、浅原は《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》を追加して石川の手の届かないビートダウン態勢を作る。
これに対し石川は少々考える。土地を置いて、ここは《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》をプレイして《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》は攻撃せず。浅原は飛行2体で攻撃し、ダメージで先行すると、さらに《川の海神/River Kaijin》を配備。《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》には効かないが、後への備えを。
残した《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》のマナで《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を回した石川は、《野太刀/No-Dachi》を《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》に装備させて攻撃することを選択した。真っ直ぐなビートダウンにしか道はない、と。
これに対して浅原は、《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》を残して2体で攻撃し、そのまま5マナオープンでターンを返す。
これには訝しむ表情の石川だが、さりとて手札に対抗策はなく、愚直な攻撃を続行する。待ちうける浅原は《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》で4/1先制攻撃をブロックし、その先制攻撃ダメージをスタックに乗せた後に《祝福の息吹/Blessed Breath》。これは石川も覚悟していたものだったが、さらに《消耗の渦/Consuming Vortex》が連繋され《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》までもが戻されると、石川は「きちー」とうめき声を漏らす。
石川は《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》と《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》を再配備して逆転の機をうかがう。浅原は飛行2体でのビートダウンを続行し、そのままエンド宣言。石川は《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》起動の後の《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》で逆転策を求める。
そこで見つけたか、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をドローに換えた後に《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》と《蛾乗りの侍/Mothrider Samurai》を加える。
だが浅原は非情とも思える冷静さで《蛾乗りの侍/Mothrider Samurai》に《秘教の抑制/Mystic Restraints》をエンチャント。攻撃の後《伝承の語り部/Teller of Tales》を追加し、石川に隙を与えない。
石川は《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》で攻撃をしてはみるが、浅原は動じるはずもなく《川の海神/River Kaijin》でブロック。何事もなく、ただそれが横になるだけ。
粘ろうとする石川は《百爪の神/Hundred-Talon Kami》をプレイしブロッカーとするが、浅原の「クチ」こと《伝承の語り部/Teller of Tales》が吼える。アンタップ後に先ほど見せた《消耗の渦/Consuming Vortex》でこれを戻すとともに《大蛇の支援者/Orochi Sustainer》をタップさせ、さらに《川の海神/River Kaijin》を《祝福の息吹/Blessed Breath》で起こすと、ライフ7点の石川を一瞬で介錯した。
「へたくそー」と、石川が自らに向けて、ため息混じりにつぶやいた。
石川 0-1 浅原
Game 2
「先で」と毅然とした声の石川。しかし、初手を見るなりマリガン宣言、覗いたライブラリの上には《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》。首をかしげる。
さらに見た6枚にも大きくうめき、苦渋のマリガンを宣言せざるを得ない石川。祈るようにライブラリをシャッフルする。5枚に何とか納得し、一方浅原は冷静に7枚をキープ。
いきなり大きなビハインドを背負ってしまった格好だが、諦めない石川は《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》で先行する
すると、《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》を2連打した浅原が土地3枚、しかも《島/Island》ばかりで止まってしまう。ギャラリーが、おそらく本人もが感じていたであろう圧勝の予感に、暗雲が漂い始める。
《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》こそ相討ちに取るが、石川は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を引き当て、さらに《薄青幕の侍/Samurai of the Pale Curtain》を追加する。浅原は《川の海神/River Kaijin》で防御の体制を。
決意した石川の猛攻にさらされ、浅原は苦しそうな、だが冷静な表情。なんとか4枚目の《島/Island》を引くと《空民の鏡守り/Soratami Mirror-Guard》。これは《薄青幕の侍/Samurai of the Pale Curtain》と相討ちに。
石川は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》で未来を手繰り寄せると、《蛾乗りの侍/Mothrider Samurai》を2連打してたたみかける。
《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》はサイズ上《川の海神/River Kaijin》で止まるはずなのだが、その能力のおかげで1ターンごとに休ませられ、思うように対処ができない。何より、白いカードが手札でうなっている。
5枚目の土地も非情の《島/Island》。《伝承の語り部/Teller of Tales》も《蛾乗りの侍/Mothrider Samurai》の一方と相討ちとせざるを得ないようでは、苦しい。
石川は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の加護で噛み合ったドローを続け、消えかけた夢を追いかける。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の能力を使い《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》を手繰り寄せ、もうこのゲームの勝利は離さないと。
もうライフも残りわずかの浅原のドローは、《狐の易者/Kitsune Diviner》。もちろん《平地/Plains》はない、さらに相手にスピリットはいない。
何も噛み合っていないドローが象徴する、浅原の痛恨のゲームだった。
石川 1-1 浅原
Game 3
先ほどの印象か、いつもより更に慎重に手札を見定める浅原。静かな逡巡の後、無言でライブラリに手をかけ、マリガン宣言とした。6枚はキープ。
一方の石川は上げ潮ムード。表情にも生き生きとしてものが感じ取れる。「やります」と一言。
《灯籠の神/Lantern Kami》で先行する石川に、浅原は《金之尾師範/Sensei Golden-Tail》で応える。石川は《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》を加え、ここまでは互角の形勢だ。
しかし、シールドで吼えたあの伝説が、今蘇る。《義理に縛られし者、長雄/Nagao, Bound by Honor》がプレイグラウンドに現われる。石川も《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》で対抗するのだが、両者のクロックは急激に差がついてしまった。
お互い攻撃を1度仕掛けあった後、土地5枚をオープンにしたままターンを返す浅原。今度は《平地/Plains》4枚に、《島/Island》1枚がある。大丈夫だ。
さてこれを挽回したい石川のターン。少し苦しそうな表情で、石川はわずかの考慮時間を取ると、《灯籠の神/Lantern Kami》《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》で攻撃し、《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》の2体目を追加して、残した《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》と守りを固めた。土地は《平地/Plains》《森/Forest》がアンタップである。
少し「くさい」ものが感じられるが、浅原はここで止まる理由もなく伝説2体で攻撃。これに対し石川は、もろもろの修正込みで4/3となる《金之尾師範/Sensei Golden-Tail》を《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》でブロックし、これに《木霊の力/Kodama's Might》を使う。
わずかの沈黙が、盤上に訪れる。浅原はここでたっぷりと時間を使い、《祝福の息吹/Blessed Breath》で《金之尾師範/Sensei Golden-Tail》を救うことを選択した。
戦闘終了後、《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》をプレイして即能力を起動すると、そこには《狐の易者/Kitsune Diviner》がいた。現状、石川のコントロールにスピリットはいない上に、《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》がいる。他方、手札には出番を待ちわびる《伝承の語り部/Teller of Tales》と《嵐の種父/Sire of the Storm》がいる。戻した《平地/Plains》を加え、選択肢は4枚だ。
ここで浅原は、《嵐の種父/Sire of the Storm》をあきらめ、《狐の易者/Kitsune Diviner》をプレイすることを選んだ。
ターンが返ってきた石川だが、時間はもう残されてはいない。それでも、手は止められないと《松族のおとり/Matsu-Tribe Decoy》で《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》を「挑発」して退け、同時に《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》《灯籠の神/Lantern Kami》で攻撃をしていく石川だが、いかんせんクロックが細い。加えて、その手には土地しか残されていない。

次なる侍の太刀を《狐の裂け目歩き/Kitsune Riftwalker》1体を捨て駒にして耐え忍ぶ石川だったが、続くターンもドローは土地で、残したブロッカーを《消耗の渦/Consuming Vortex》で排除されたのを見届けると、敗北を認めたのだった。
石川 1-2 浅原
「ランド引きすぎたー」と悔しがる石川。しかし、その粘り、経験はきっと後に活かされることになろう。勢いのあるプレイヤーにこれが加われば、ブレイクも遠くないはずだ。
そして浅原は、「頑張ってください」と言い残した石川の想いを乗せて、準決勝へと駒を進める。
Result: GP Kyoto 2003 Champ is Winner! Advance to Semifinals.