準々決勝 : 鈴木 貴大(東京) vs. Willy Edel(ブラジル)

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 22日

By Daisuke Kawasaki

鈴木 貴大

経験が人を成長させる。

マジックに限らず、一般的にそうだ。

まだ、日本のPTQの数が片手で足りるか足りなかったかの頃、「プロツアーに行く」ということ自体が勲章であった頃、プロツアーから帰ってきたプレイヤー達は口を揃えて言っていた。

「プロツアーに参加した事はいい経験だった」

まだ、黎明期だった日本のマジック界。その頃に日本のマジックをリードしていたのは、世界を相手にした経験を持ったプレイヤーたちだった。

そして、10年の時が流れた。

いまや、プロツアーを経験した日本人の数は、簡単には把握できないぐらいに増えた。プロツアーにいったという経験が、当たり前に溢れるようになった。

しかし、やはり、今でも変わらない。

経験は人を成長させる。

Game 1

鈴木 貴大(東京)、通称「ムネオ」の名前が、全国的に知られるようになったきっかけは、昨年度の世界選手権であった。

その年、森 勝洋を世界王者へと導いた「ガジーの輝き」。このデックのメインデザイナーとして、その名前は段々と知られていくようになった。

だが、しかし、その頃の鈴木に対する一般的な認識は、「なんか苗木の一杯出てくるデックを作った草の根のちょっとしたデックビルダー」であった。

先攻は鈴木。

鈴木が《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》、Edel Willy(ブラジル)が《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》とお互いがクリーチャーを待機させる。

しかし、Edelが2ターン目に何もできなかったのに対して、鈴木は、《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》をキャストし、エコーを払いつつ3ターン目には《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》を待機という順当な立ち上がりで差をつける。

Edelが2体の《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers》を場に送り出し、飛行をつけながらアタックしてくるが、鈴木も《熟慮/Think Twice》でライブラリーを掘り進めつつ、待機の終了した《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》にマナをつぎ込みながらアタックと、ダメージレースに差をつけさせない。

しかし、その均衡したダメージレースが1枚のカードによって破壊される。

Verdant Embrace

《新緑の抱擁/Verdant Embrace

攻防に活躍する「苗木トークン」が、主を忘れたかのように鈴木を蹂躙する。

そして、Edelはすべての土地をタップする。

ここは、神戸。この土地で、すべての土地をタップしてやる事といえばただひとつ。

あなたに《分解/Disintegrate》。

Edel 1-0 鈴木

Game 2

「草の根のちょっとしたデックビルダー」であった鈴木の名前が「プレイヤー」として初めて登場する出来事が初プロツアーであるPTチャールストンであった。

栗原・野中と共に結成したチーム「GGJiro」が、トップ8に入賞する。

2チームの日本勢をトップ4に送り出し、Kajiharu 80が優勝というドラマティックなニュースの影で、「草の根のプレイヤーの活躍」として、ひとつのトピックとなった。

だが、個人戦ではなく、チーム戦。しかも、トップ4のみが日曜日に進出するチーム戦。

世界的にはもちろんの事、国内でも、それこそ細かいトピックに興味のあるプレイヤーにしか知られる事のない出来事でしかなかった。

それでも、鈴木には、プロツアーに参加したという経験が残った。

とにかく、《新緑の抱擁/Verdant Embrace》に対抗できるカードをと、鈴木は《取り消し/Cancel》と《地盤の悪鬼/Tectonic Fiend》《時間の渦/Temporal Eddy》をサイドインする。

続いて先攻の鈴木は、2ターン目にトップデックした《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》を待機という順当な立ち上がりだが、Edelも1ターン目に待機した《明日への探索/Search for Tomorrow》でマナを加速させて、3ターン目には《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を待機という劣らぬスタート。

鈴木も、《フォライアスのトーテム像/Foriysian Totem》でマナを加速させ、4ターン目に《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を待機なしでキャストする。この《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》は、Edelが返しにキャストした《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》にブロックされる。鈴木はマナを払って、これを相打ちに持ち込み、マナを残してターンエンド。

ここで、EdelがGame 1を決めた《新緑の抱擁/Verdant Embrace》を《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》にエンチャント。

だが、鈴木だって、そうそう何度も同じ手にやられるわけにはいかない。

狙い済ましたかのような《突然のショック/Sudden Shock》。

そして、サイズだけなら《新緑の魔力/Verdant Force》な《地盤の悪鬼/Tectonic Fiend》を場に追加する。

《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon》をキャストするEdelではあったが、すでに守勢に回ってしまっている以上は、《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》と相打つのがせいぜい。

鈴木は、震える手で、《地盤の悪鬼/Tectonic Fiend》と《フォライアスのトーテム像/Foriysian Totem》をレッドゾーンに送り込んだ。

Edel 1-1 鈴木

白熱の準々決勝

Game 3

「草の根のデックビルダー」から、「ちょっと活躍してる草の根プレイヤー」となった鈴木。

しかし、プロツアーという舞台を踏んだ経験が鈴木を成長させたのか、その後の国内のプレミアイベントで確実に成績を残すようになる。

そのさきがけとなったのが、GP広島だった。

ここで、鈴木は、チームメイトだった野中と共にトップ8に入賞。

さらに、ここで元世界王者であるJulienを打ち倒すという快挙を成し遂げる。

しかし、勢いにのった鈴木の前に準決勝で立ちはだかったのは、中村 修平。

日本の枠を超え、世界中を飛び回っている中村との経験の差か、ここで鈴木は無念の敗北を喫する。

だが、ここでの鈴木の活躍は、更なる未来の活躍を予感させるものだった。

先攻のEdelが1ターン目から《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》を待機させたのに対して、鈴木は《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を2ターン目に引いて待機させると。ちょっとかみ合わない。

Edelは、そのまま《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》とキノコ軍団を場に送り込むのに対して、鈴木はなんのパーマネントも場に追加できない。

このままでは、圧倒的なスピードで増える苗木トークンに蹂躙されるのが未来が予感されるので、鈴木は《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》へと《突然のショック/Sudden Shock》。

だが、しかし、続くターンに、鈴木が見たのは、さらに圧倒的に増える苗木トークンに蹂躙される未来だった。

3ゲーム続けてキャストされる《新緑の抱擁/Verdant Embrace

Edel 2-1 鈴木

Game 4

「草の根の躍進」として、「ちょっと勝ってたらしいGGJiroの一員」として、それでも確実に経験を積み重ねていく鈴木。

続いて、1週とあけずに行われた日本選手権で、今度も、チームメイトである栗原と共にトップ8に入賞する。

貪欲にゲームに向き合い、貪欲に勝利を欲する。

浴びるようにマジックをしていた鈴木と、そのチームメイト達には、きっちりとした自力があり、そしてプロツアーでの経験が、鈴木に勝負強さを与えた。

栗原:嬉しい反面、悔しくはありますよね。僕らは結局、鈴木さんの後を追ってる事になるわけですから。

鈴木のトップ8進出が決まると、栗原はこう語った。

国内イベントで連続してトップ8に入賞したという経験は、明らかに鈴木をさらに成長させていた。

3ターンにわたる、連続1ターン目待機、そして《新緑の抱擁/Verdant Embrace》のキャストに対して、鈴木はジャッジにデックのチェックをアピールする。

勝利には貪欲に。負けない為に、できることはすべてやる。

結果はあとからついてくる。

《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》《明日への探索/Search for Tomorrow》の待機、そして《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》キャストと、連続して動くEdelに対して、鈴木のファーストアクションは4ターン目の《巣穴からの総出/Empty the Warrens》。

ここで生み出された2体のトークンは、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》をブロックするが、そのうち1体へと《絞殺の煤/Strangling Soot》が飛んでくる。

この《絞殺の煤/Strangling Soot》はさらにフラッシュバックで、鈴木の《嵐雲のジン/Stormcloud Djinn》を除去し、鈴木は一方的に押される展開となる。

待機を終了してキャストされた《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》はなんとか《取り消し/Cancel》でしのぐものの、場には《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》が追加される。

鈴木は、《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》をキャスト。対象に《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》を選ぶが、ここは予定調和的にその能力で+1/+1をして凌がれる。

次のターンのアップキープ。鈴木の場には7枚の土地。さらに手札に1枚。

ここで、《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》のエコーを支払い、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》をブロック、相打った上で《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》を除去するというプランもあったが、しかし、それが決定打になるとは鈴木には考えられなかった。何故なら相手のデックには《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon》が入っているから。

鈴木はエコーを支払わず、《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》の能力で《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》を除去する。勝利のためにできることはすべてやった。

そして、結果がついてくる。

鈴木のドローは《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》。完全に場をひっくり返す。

Edelの続くアクションは、《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon》だった。

Edel 2-2 鈴木

Edel

Game 5

そして、今、鈴木は、「個人戦」のプロツアーでトップ8を入賞し、準々決勝の最終ゲームを戦っている。卓内最強と目されるEdelのデックとの対決で、勝ち星をイーブンにまで取り戻している。

もう、鈴木は「草の根のデックビルダー」ではない。

世界的にも、「ガジーの輝き」の原型製作者として、そしてプレイヤーとして、その名前を知らしめた。

経験は、確実に、人を成長させている。

しかし、対戦相手はEdel Willy。

鈴木の最初の経験であったPTチャールストンで一足先に決勝ラウンド進出を経験しているプレイヤーなのだ。

土地が《山/Mountain》1枚のハンドをマリガンした鈴木は、《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》2枚のハンドをキープ。1ターン目、2ターン目と続けて待機させる。

一方のEdelは、このマッチで初めて、1ターン目にノーアクション。

だが、2ターン目には《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》をキャスト。そして、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》とマナを無駄なく使いきる。

このまま押されるわけにはいかない鈴木は、《嵐雲のジン/Stormcloud Djinn》をキャスト。続くターンに、《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》の待機明け、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》への《突然のショック/Sudden Shock》と、2つのストームを稼いだ上での《巣穴からの総出/Empty the Warrens》で6体のゴブリントークンを場に送り出す。

《コカトリス/Cockatrice》キャストから、《嵐雲のジン/Stormcloud Djinn》への《絞殺の煤/Strangling Soot》でブロッカーを排除し、ダメージクロックを用意するEdel。ここで鈴木のライフは12。

このまま、ゆるゆるとライフ差をつけられてしまっては勝負にならない。

鈴木は、果敢にフルアタックし、9点のダメージを与え、一気にライフを逆転する。これでは、Edelの《コカトリス/Cockatrice》もアタックできない。

Edelが《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》に《絞殺の煤/Strangling Soot》をフラッシュバックする事により、場が膠着するが、この膠着を破ったのは、このマッチ4度目のキャストとなる《新緑の抱擁/Verdant Embrace》。

しかし、これだけでゲームを決められるわけにはいかない。鈴木はドローした《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》をキャストしブロッカーを排除、少しでもライフを削っていく。

《コカトリス/Cockatrice》のアタックで鈴木のライフは、2。Edelも、次ターンを生き延びるために《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を待機なしでキャストする。

お互いにやれる事はやり尽くした。

あとは結果を待つだけ。

鈴木の場には、8枚の土地。そしてドロー。

だが、このプロツアーで結果がついてきたのは、経験に勝るEdelの方だった。

Edel 3-2 鈴木

最後まで貪欲に勝利への執念を燃やし、だが、惜しくも及ばなかった鈴木 貴大。

無念のクォーターファイナル終了後、トップ8のプレイヤー達には、昼食が振舞われた。

その席で、何故か、食べる間も惜しむかのようにデックリストを記入している鈴木。

鈴木 「18歳以下限定のトーナメントがあるらしいんで参加しようと思いまして。」

経験は人を成長させる。
そして、貪欲さもまた、そうだ。

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