準々決勝 : 鈴木 貴大(東京) vs. 山本 昇平(広島)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 27日

By Daisuke Kawasaki

鈴木 貴大

メタゲームとは、生き物である。

常にめまぐるしく移り変わり、ひとつのデックが頂点に居座ることを決して許しはしない。それが正常なメタゲームであり、メタゲームの本質である。時に、ひとつのデックが圧倒的な地位を築いてしまう時期があるが、それは本質を外した姿であり、異常な事態なのである。だからこそ、それは歓迎されるべきではないという但し書きつきではあるが、禁止カードという制度があり、メタゲームの正常な状態を、本質を守っているのである。

クロック=パーミッションと呼ばれるデックカテゴリーがある。

少数の強力なクロック、そして、そのクロックが機能する事を相手がパーミット(許可)せざるをえないようにする妨害手段。完全に歪な存在である。そして、その歪さを誤魔化す為に、時にはマナを加速し、時にはドローを加速する。

ひとつのパワーカードやコンボのためにすべてが構築されていたり、そこにあるすべてのカードがお互いを高めあうシナジーを形成していたり、そういったものを、志向性のあるモノをデックと呼ぶのならば、クロック=パーミッションは決してデックとは呼べない存在である。デックの中のカード達はデックの中で共存してない。

しかし、メタゲームが、メタるべきデックがあった際、はじめて、クロック=パーミッションの中にあるカード達は結合する。クロック=パーミッションという歪なカテゴリーがメタゲームを正常に機能させ、メタゲームがクロック=パーミッションを光り輝かせる。クロック=パーミッションはすべてのパワーデックにパワーで劣る。だが、クロック=パーミッションというカテゴリーはすべてのパワーデックに勝つ可能性を秘めている。

ちなみに、クロック=パーミッションというカテゴリーは、カウンタースリバーに代表されるように、クロックを用意してカウンターを構えるデックの総称だと誤解されやすいが、例えば、ポンザのようにカウンターを持たないクロック=パーミッションも存在する。

山本の使用するデックは、Sea Stompyに土地破壊を組み合わせたデックである。マナクリーチャーからの大型クリーチャーとカウンターと土地破壊。一見筋が通っているように思われるかもしれないが、やっぱりこんなに歪なデックはない。このデックに詰め込まれているカード達はあるデックカテゴリーを明確に攻撃するためだけに選ばれている。

そのデックカテゴリーとは、ボードコントロール。

場の状況を制圧することを命題とするデックカテゴリー。マナを伸ばし、強力なソーサリーを炸裂させることをその本質とするデックカテゴリー。マナを攻撃され、スペルは《差し戻し》され、少数精鋭たちが場をにぎわしつつ手札にも待機する。ボードコントロールのやられたくないことの、そのほとんどがここにある。

自身も、タッチ青のセレズニアコントロールというボードコントロールデックで予選を通過した山本であるが、地元のフライデーマジックでであったこのデックには全く太刀打ちできなかったという。そして、その後の日本選手権予選を、アメリカ選手権をひとつのデックが席巻する。その名は「ソーラーフレア」。この結果をうけて、日本選手権の本戦はコントロールがメタの中心となるだろうと山本は予想、満を持して、このデックを持ち込む。その選択が正しかったのか、間違っていたのか。一概に言いきれるものではないが、しかし、今、このテーブルに山本が座っているということが、そのひとつの答えとはなるだろう。

彼については、ここまでで散々語り尽くされてきただろう。いまや関東を代表するデックビルダーのひとりと言いきってしまってもいいだろう。同じく関東を代表するデックビルダーである八十岡のデザインするデックが、すべて「ヤソコン」と呼ばれるように、彼のデザインするデックもまた、彼の愛称をとって「ムネオコン」とよばれている。

昨年度の日本勢の活躍を、日本のマジックの第一章の最終章と見る見方もある。それまで、日本のマジックは世界のトップを目指してひたすら疾走してきた。脇目もふらずに。そして、ついにそれは達成されたのである。世界選手権のあと、しばらくした時に浅原が語っていた言葉が印象的だ。

浅原 「正直、燃え尽きた感はありますよね」

だが、しかし、始まりがあれば終わりがあるように、終わりがあれば、そこには次の始まりがある。日本選手権のトップ8のメンバーの顔を見て欲しい。今、日本のマジックが変わろうとしている。そして、日本のトーナメントシーンも変わろうとしている。新しい時代がここからはじまる。

PTチャールストン8位入賞、GP広島トップ4、そして今、日本選手権トップ8。日本のマジックの第一章の最終章を最高の形にした立役者、ガジー=グレア。そのデベロッパーである鈴木 貴大が、今、この新しい時代に台頭してきているのは、決して偶然ではない。そして、それは運命なんていう漠然としたものでもない。彼が地道に実力を蓄え、まずはデックが、そして本人が華開いた、時代にストライクした、ただ、それだけのことなのである。そして、そういうムーブメントの積み重ねが、新しい時代というものを作り上げていく。小室が、GP広島に同時多発的に多くの海外プレイヤーが集まったことを称して「シンクロニシティ」と呼んでいたが、今日本で起こっていることこそが、まさにシンクロニシティと言えるのかもしれない。

そんな鈴木の肩書きには、常に「ボードコントロール」の影が見え隠れする。ガジー=グレアもボードコントロールであるし、PTチャールストンで使用していた「ヤソコン」も、ボードコントロールである。現環境を代表するボードコントロールである「ソーラーフレア」のデベロッパーにも名を連ねる。そして、この大会にも鈴木は、青黒氷雪「ヤソコン」、それは多分にパーミッションの要素を持つものの、やはりボードコントロールを持ち込んでいる。それが茨の道であるとしりつつも。

メタゲームは生き物である。

しかし、マジックが、プレイヤーがメタゲームだけを中心に動いているわけではない。

Game 1

先攻は、山本。

山本が《極楽鳥/Birds of Paradise》でのマナ加速から場にだした《三角エイの捕食者/Trygon Predator》を鈴木が《霊魂放逐/Remove Soul》するところからゲームがスタートする。

一見、お互いが順当に展開し、真正面からぶつかりあっているように見えるが、鈴木の手札には土地がない。そして、次の鈴木のドローも土地でない。仮に真正面からぶつかりあったとしても圧倒的に不利な展開になるが、しかし、鈴木はその舞台に登る事すらできない。

なんとか、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》は《呪文嵌め/Spell Snare》するが、その後の《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》はカウンターできない。マナがなければ手札は使えない。

その不利を、アドバンテージで取りかえすべく、そしてとにかく土地をひく確立を挙げるべく《闇の腹心/Dark Confidant》を展開する。

しかし、《闇の腹心/Dark Confidant》でめくれたカードは《撹乱する群れ/Disrupting Shoal》。ひいたカードも土地ではない。すべてのマナを使って《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》と《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を場にだす。

アップキープに《喧騒の貧霊》の効果で鈴木のライフは7。そして、メタゲームの申し子であるメインボードからの《氷結地獄/Cryoclasm》で4。

もう、黙っていても鈴木のライフはなくなる。むしろ、《ファイレクシアの鉄足》とのコンバットトリックで《喧騒の貧霊》を失う方が問題と考えた山本は、アタックをしない。鈴木のライフは今度は3に。そして2に。

《闇の腹心/Dark Confidant》によるダメージは《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》で解消していた鈴木だが、ここにきて、ライブラリーのトップが2枚の《呪文嵌め/Spell Snare》と《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》に。トップを《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》にしての《占術の岩床/Scrying Sheets》起動。めくられた新しい3枚目は…《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》。首の皮1枚つながる。

そして、鈴木のライフは1。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》によってめくられた新しいカードのうちの一枚は《占術の岩床/Scrying Sheets》。とりあえず《闇の腹心/Dark Confidant》のルーズライフは回避する。そして、ドロー。これでトップのうち2枚は新しいカードになる。

鈴木は、ライブラリーのトップをめくる。1枚、2枚、3枚と。

山本 1-0 鈴木

Game 2

山本 昇平

鈴木の初手には3枚の土地。

しかし、4枚目の土地をひけない。

1枚目の《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》は《霊魂放逐/Remove Soul》するが、2枚目の《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》を場にだす事を許してしまう。

やっと、やっとここで《闇の腹心/Dark Confidant》が真価を発揮し、鈴木の手札に《湿った墓/Watery Grave》を加える。渾身の《ネクラタル/Nekrataal》。

だが、山本も、2体の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》と《三角エイの捕食者/Trygon Predator》を展開、攻勢を緩めない。攻勢を保っている間だけが優位、いや、攻勢を保つことだけがこのデックの存在意義なのだから。

3体のクリーチャーがアタックする。

鈴木は《闇の腹心/Dark Confidant》で《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》へのブロックを宣言すると、スタックにのったダメージが解決する前に、鈴木の《三角エイの捕食者/Trygon Predator》へと《魂の捕縛/Seize the Soul》。そして、そのスペルは、今まさにダメージが解決されるのを待っている《闇の腹心/Dark Confidant》へと憑依する。

そして、山本のデックはその存在意義を失った。

山本 1-1 鈴木

Game 3

この2つのGameを見てもらえればわかるかと思うが、鈴木のデックは4枚目の土地をおけるか否かが肝となっている。そして、鈴木は、2回ともその4枚目の土地をひくまでに、かならず手間取っているのである。

鈴木の初手には4枚の土地。

だが、このゲームでもやはり、鈴木は4枚目の土地を置くのに手間取る事になる。

山本が《密林の猿人/Kird Ape》《極楽鳥/Birds of Paradise》と展開し、その《極楽鳥/Birds of Paradise》を鈴木が《最後の喘ぎ/Last Gasp》で除去した返しのターン。鈴木の《湿った墓/Watery Grave》に突き刺さる《氷結地獄/Cryoclasm》。

そして、《密林の猿人/Kird Ape》へ2枚目の《最後の喘ぎ/Last Gasp》除去した返しのターンに、今度は《石の雨/Stone Rain》が《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》へ。

なんとか3枚目の土地を引き、次の《石の雨/Stone Rain》へは《邪魔/Hinder》を打ち込むことに成功する鈴木だったが、その代償に《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》が場に出ることになる。鈴木の4枚目の土地は場に出せない。

《密林の猿人/Kird Ape》を《邪魔/Hinder》して、ドロー。土地ではない。
続く、2枚目の《密林の猿人/Kird Ape》を《差し戻し/Remand》して、キャントリップ。土地ではない。

そして、ドロー。

鈴木は、引いたカードを手札に叩きつける。

山本 2-1 鈴木

Game 4

1枚しか土地がない手札をマリガンして、土地が3枚の手札をキープする鈴木。

そして、ここまで順当な展開を続けていた山本がトリプルマリガン。

鈴木が《冠雪の島/Snow-Covered Island》から《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》、山本がショックランドをアンタップで置いて、《密林の猿人/Kird Ape》と、双方なかなかの立ち上がり。

に、見えるが、しかし、山本の《密林の猿人/Kird Ape》は1/1の《さまようもの/Wandering Ones》。置かれた土地は《蒸気孔/Steam Vents》。

続くドローは、《カープルーザンの森/Karplusan Forest》。山本は「ちがう」と小さくつぶやく。1/1の《密林の猿人/Kird Ape》がアタック。鈴木の場には《闇の腹心/Dark Confidant》がいるが、当然温存するべくこれをスルーする。山本の《密林の猿人/Kird Ape》は《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》へと変化する。たしかに序盤の爆発力には欠けるものの、ある程度の脅威を展開し続けることには成功する。山本は続く脅威として《三角エイの捕食者/Trygon Predator》も場に。

しかし、やっと鈴木は4枚目の土地を場にだすことに成功する。

《闇の腹心/Dark Confidant》でめくれたカードは《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》と、5点という手痛いライフロスがあったものの、山本の場の《三角エイの捕食者/Trygon Predator》を《最後の喘ぎ/Last Gasp》で排除しつつ、《闇の腹心/Dark Confidant》と《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》を相打ちさせる。そして、なにより、そこで2マナを残すことができたのだ。このマナが山本の《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》を《差し戻し/Remand》することを可能にする。場に、《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》だけが存在させることを可能にする。

アンタップした鈴木のファーストアクションは《冠雪の島/Snow-Covered Island》のセット。

そして、降臨する青い悪魔。

山本 2-2 鈴木

Game 5

《三角エイの捕食者/Trygon Predator
《梅澤の十手/Umezawa's Jitte
《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours
《密林の猿人/Kird Ape

山本は、クロックを展開し続ける。

鈴木は、《霊魂放逐/Remove Soul》で、そして、Game 2で場をひっくり返した《魂の捕縛/Seize the Soul》で、なんとかそのクロックを「妨害」しようと試みる。

しかし、頼みの《魂の捕縛/Seize the Soul》も、単体ではその真価を発揮しない。

鈴木の回答を封じるのではなく、それを上回る勢いで展開される山本のクロック。

鈴木は、その意思とは裏腹に、山本のクロックを「許可」し続けることしかできなかった。

山本 3-2 鈴木

この対戦で、山本と鈴木のどちらのプレイングスキルが優れていたか、どちらの勢いがよかったか、いいかえれば運がよかったか、そんな優劣をつけることに格別の意味があるとは思えない。結果、山本が勝ったのであり、それによって最低でも世界選手権への出場権を得ることになった山本の栄誉は無条件に賞賛されるべきである。

たしかに、鈴木がどうしようもない状況で4枚目の土地を置けないゲームもあった。だが、そういうゲームで勝てるようなデックを、そして、なにより土地破壊によってそういうゲームを作りやすいデックを選択したのは、山本自身なのである。自身の経験を踏まえての選択だったのである。その意味で山本は鈴木に勝ち、メタゲームに勝ったといえる。山本の選択は正解だった。

しかし、山本の選択が正解だったからといって、鈴木の選択が間違いであったとは言いきれないだろう。プレイヤーとしての鈴木は、依然として新時代を担う重要人物のひとりである。そして、やはりマジックが、プレイヤーがメタゲームだけを中心に動いているわけではない。鈴木には、鈴木が鈴木であるための譲れない矜持がある。


Takahiro Suzuki

Download Arena Decklist
ソーサリー (1)
1 Persecute
インスタント (20)
4 Remand 4 Hinder 3 Spell Snare 2 Disrupting Shoal 2 Rewind 2 Remove Soul 3 Boomerang
アーティファクト (5)
3 Sensei's Divining Top 2 Umezawa's Jitte
60 カード

Shohei Yamamoto

Download Arena Decklist
ソーサリー (8)
4 Stone Rain 4 Cryoclasm
インスタント (4)
4 Remand
アーティファクト (3)
3 Umezawa's Jitte
60 カード

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