準々決勝: Jin Okamoto vs. Peer Kroger

更新日 Event Coverage on 2003年 8月 10日

By Koichiro Maki

 ついに夢は現実となる。
 今年は日本にとって最も偉大な一年となった。Pro Tour では藤田剛史に続く三人の Top 8 プレイヤー(鹿島・大礒・池田)が誕生し、Venice では P.S.2(黒田・森・森田) がマスターズ優勝を成し遂げた。また、大礒が Pro Tour 準優勝を引っ提げ Rookie of the Year を獲得。これまでの苦戦が嘘のような大ブレイクだ。

 そして、2003年08月10日。初めての日本人が世界選手権最終日に登場する。

Game 1

 Kroger が振った10 面ダイスは、ころころと転がると 0 を上に止まった。完全なダイスロールにより先手を取った Kroger はまず 2 ターン目に《燃え立つ願い/Burning Wish》を。Kroger のメインデッキには僅か一枚《陰謀団式療法/Cabal Therapy》があるのみ。これではコントロールデッキ相手にろくな戦いを行う事が出来ず、サイドボードへのアクセスツールである願いは非常に重要な役目を持つ。

 《マナ漏出/Mana Leak》が手札に無い尋は、仕方無く《強制/Compulsion》を場にセットする。手札がずたぼろにされる事はほぼ確定済みであり、出来る事と言えば未来に備えるのみ。

 Kroger は予定通り《最後の儀式/Last Rites》を、枚数は 3。尋は手札を公開する。

 《神の怒り/Wrath of God
 《新たな信仰/Renewed Faith
 《クローサの境界/Krosan Verge
 《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake
 《狡猾な願い/Cunning Wish
 《正義の命令/Decree of Justice

 ここから、下三枚が取り除かれる。更に Kroger は二枚目の《燃え立つ願い/Burning Wish》から《消えないこだま/Haunting Echoes》を。旧ウェイクと違って、《正義の命令/Decree of Justice》を手にいれた現在のバージョンはサイドに《象の待ち伏せ/Elephant Ambush》が無い事がほとんど。尋のもその仕様であり、もしここで《正義の命令/Decree of Justice》が取り除かれようものなら、勝利の目はほぼついえてしまう。

 試合後の尋はこの時の心境をこう語っている。

 「ちびりそうになった。」

 しかし、事実は小説よりも。Kroger が 5 ターン目にセットした土地は...タップイン。尋にはもう 1 ターンの猶予が与えられた。冷静にフェッチランドと《クローサの境界/Krosan Verge》を使用し、土地を増やし体勢を整える。

 1 ターン遅れて《消えないこだま/Haunting Echoes》が使用される。序盤から願いを 2 枚引いた Kroger の引きもさすがだが、尋も負けてはいない。1 枚を《最後の儀式/Last Rites》によって落とされていながらも、この僅かな間に 2 枚目の《狡猾な願い/Cunning Wish》を引き当てていたのだ!

 Kroger が必死の思いで入手した《消えないこだま/Haunting Echoes》だが、尋の願いが具現化した《堂々巡り/Circular Logic》は《強制/Compulsion》の助けもあって、尋を守っただけでは無く追加のカードをももたらす。

 こうなると Kroger は苦境。コントロールデッキであるウェイクには《強制/Compulsion》《綿密な分析/Deep Analysis》といったアドバンテージカードが搭載されているが、奇襲デッキであるリアニメイトには瞬発的な妨害要素しか含まれていないからだ。

 これ以上の我慢は無駄、Kroger はそう判断した。《強制/Compulsion》が出てしまった以上、時が進めば進むほど、天秤は尋へと傾いていく。《縫合/Stitch Together》をキャストし、墓地の《戦慄をなす者ヴィザラ/Visara the Dreadful》を指定する。

 尋は冷静に Kroger の墓地の枚数を確認する。まだ六枚。スレッショルドしていなければただ手札に戻るだけだ。許可しておいて、返しのターンで《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》をセットする。

 Kroger も《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》を出し、一度出してカウンターされた《戦慄をなす者ヴィザラ/Visara the Dreadful》を縫合で場に出すが...

 《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》+《正義の命令/Decree of Justice

 この僅か 2 枚の究極コンボによって 13 体もの 2/2 兵士が誕生し。

 蹂躙。

Jin -1, Krooger -0

サイドボード

Jin Okamoto

 サイドイン

3 《もみ消し/Stifle
2 《堂々巡り/Circular Logic

 サイドアウト

1 《ミラーリ/Mirari
3 《一瞬の平和/Moment's Peace
1 《新たな信仰/Renewed Faith

Peer Kroger

 サイドイン

 3 《陰謀団式療法/Cabal Therapy
 1 《埋め合わせ/Recoup
 1 《罪を与えるもの/Guiltfeeder
 1 《消えないこだま/Haunting Echoes
 1 《不快な夢/Sickening Dreams

 サイドアウト

 1 《戦慄をなす者ヴィザラ/Visara the Dreadful
 3 《無垢の血/Innocent Blood
 2 《燻し/Smother
 1 《チェイナーの布告/Chainer's Edict

Game 2

 この大会は Web を通して世界中にネット配信されている。最初に放映されたのは David Humpherys vs Wolfgang Eder の一戦。Game 1 を終了すると、そちらのゲーム終了後、ここを映すから開始を待ってくれと言われる。振り向いた尋が一言。

 「Humpherysを!?」

 大の長考派として知られている Humpherys 。思わず卓上でも笑いが。

 先手の Kroger は 1 ターン目の終了時に《納墓/Entomb》を使用すると《共生のワーム/Symbiotic Wurm》を墓地に、更に先ほど尋を追い込んだ《燃え立つ願い/Burning Wish》を使用し《最後の儀式/Last Rites》を入手する。デッキリストは公開されており、1 マナで使用出来るカウンター呪文が無いのは判明済み。先手の利点を十二分に活用する。

 自らアクションするカードはそう多くないウェイク。尋は淡々と土地を並べるのみ。

 ならば、Kroger も?

 否。せっかく《最後の儀式/Last Rites》を異界より入手した Kroger だが、幾ら世界選手権 Best 8 の彼であっても 2 マナじゃ《最後の儀式/Last Rites》は使えない。

 この悲劇は数ターンに渡り続いてしまい...

 最後まで Kroger がこの呪文を使用する事は無かった。

Jin -2, Kroger -0

Game 3

 不幸な事故により早くも退路を断たれてしまった Kroger。

 《納墓/Entomb》から《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》を墓地へと落とし、3 ターン目には《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》をキャストする。

 島、《エルフェイムの宮殿/Elfhame Palace》と立てていた尋はこれを許す。墓地にある《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》と併せると、何が飛び出すか解らないこの状況は非常に嫌に思えるが...

 その Kroger のアップキープ、《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》は《共生のワーム/Symbiotic Wurm》を身代わりに墓地から Kroger の手札へと。そして落ちたばかりの《共生のワーム/Symbiotic Wurm》を覚醒させんと、《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》が墓地へと飛び込んでいく。デッキリストのどこにもバウンス系呪文を用意していない尋のデッキにとって致命的な巨獣だ。

 が。

 シナリオライターは異なるストーリーを用意していた。ワームのためにその身を捧げた《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》に対して、尋は一枚のカードを。

 《もみ消し/Stifle

 悲劇のネクロマンサーは身を挺して救ったはずのワームと墓地で運命の再開を遂げる。Kroger の顔には落胆の影が。

 まだまだ。Kroger は素早く立ち直ると、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で尋の手札を制限しにかかる。指定したカードは《正義の命令/Decree of Justice》の命令。見事に一枚の命令が尋の手札からぽろりと。

 そうした間に復活した《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》が攻撃を開始。一方尋は《強制/Compulsion》で手札を回転させ、ライフと手札の異種格闘技が始まる。

 十分な材料を揃えたのか、Kroger はその《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》を《陰謀団式療法/Cabal Therapy》フラッシュバックの生け贄に。体勢を整えてから《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》を場に送る。

 しかし、尋も負けてはいない。《狡猾な願い/Cunning Wish》で《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》を入手し、やすやすとは復活の儀式を許さない構え。いくら《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》が場に出ていたとしても、Kroger はこれに対処しない事には、にっちもさっちも。しかも単なる手札破壊ではフラッシュバックを持つ《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》を真に封じ込めた事にはならない。

 Kroger はこの難解な方程式を紐解く事が出来たのだろうか。

 まずは《陰謀団式療法/Cabal Therapy》を。尋もここが正念場だと思ったのだろう。《強制/Compulsion》を使うのでは無く、青マナを残す為に素の《堂々巡り/Circular Logic》でこれを拒否する。

 そして返しのターンで《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》を。エンチャント除去を持たない赤黒デッキにとって、決定打に成りかねない一枚だ。尋の前に並ぶ 9 枚の土地は一気に 18 マナを産み出す豊穣地帯へと早変わりだ。

 Kroger も必死に《縫合/Stitch Together》で《共生のワーム/Symbiotic Wurm》を指定するが、勿論尋は《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》を使用する。対象は《共生のワーム/Symbiotic Wurm》と《幻影のニショーバ/Phantom Nishoba》の二枚。

 そこまでは Kroger も計算済みだ。《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》の解決前、まだフラッシュバックが出来ない時を狙って《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》を起動する。祈りを受けたワームが冥界から復活に向け動き出す。

 が、そこで時は止まった。尋が放った必殺の《もみ消し/Stifle》が《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》の声を封じ込め、ワームは再びうつらと眠りに落ちる。僅か 1 マナにしてその効果のなんと偉大な事!

 観客席からは驚嘆の声が。

 必死のシナリオをぶち壊された Kroger だが、勿論くじけやしない。次のターンにも《陰謀団式療法/Cabal Therapy》をフラッシュバックで使用する。ここで岡本は《強制/Compulsion》を数度使用する。

 療法の解決。指定は《正義の命令/Decree of Justice》。が、岡本の手札にあったのは《狡猾な願い/Cunning Wish》《マナ漏出/Mana Leak》《堂々巡り/Circular Logic》。それを見た Kroger は思わず天を仰ぐ。

 尋は自身のターンで《綿密な分析/Deep Analysis》を表裏で使用する。これで尋のライフは 9。

 返しのターン。Kroger は《罪を与えるもの/Guiltfeeder》を召還する。彼の場には再び召還した《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》が死に時を今か今かと待ち構えている。更に手札には何かしらのカードがあるやも知れない。

 しかし、尋の防御も二段三段。

 先ほど入手しておいた《洞察のひらめき/Flash of Insight》で墓地の青いカードをまとめてリムーブすると、《狡猾な願い/Cunning Wish》から《堂々巡り/Circular Logic》を取り寄せ、《罪を与えるもの/Guiltfeeder》の出現を許さない。一旦《罪を与えるもの/Guiltfeeder》が墓地に落ちた後、《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》が動き出すが、今度は墓地に落ちていた《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》が。

 Kroger 、ついに万策尽きる。
 尋が膨大なマナの《正義の命令/Decree of Justice》を唱えると、力強く右手を差し出し勝者に祝福と武運の祈願を。

Final Results:Jin Okamoto -3, Peer Kroger -0

Jin Okamoto, 5-0-1

Download Arena Decklist
ソーサリー (11)
4 Wrath of God 4 Deep Analysis 3 Decree of Justice
アーティファクト (1)
1 Mirari
エンチャント (6)
3 Mirari's Wake 3 Compulsión
他 (6)
6 Islan
60 カード

Peer Kroger

Download Arena Decklist

最新Event Coverage記事

Featured

2015年 11月 16日

2001 Grand Prix Sendai Coverage by, Wizards of the Coast

2001 Grand Prix Sendai Coverage 相次ぐ新星の誕生 10 年ぶりの記録的大雪とのことで、積雪は 20cm 近かった。 2 日目は初日の豪雪が嘘であるかのような快晴となったものだが、やはり北国の冬らしく深々とした寒さが印象的だった。 細かい点にまで言及してはキリがないが、とりあえず今回の上位陣の顔ぶれを見て特に印象的...

記事を読む

Featured

2015年 11月 16日

2002 Masters Series San Diego Coverage by, Wizards of the Coast

2002 Masters Series San Diego Coverage In the first game of the finals, it seemed that Karma was on the side of Humpherys. Fuller only needed a bounce spell to wa...

記事を読む

記事

記事

Event Coverage Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る