準決勝 : 片山 英典(大阪) vs. 山本 昇平(広島)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 27日

By Daisuke Kawasaki

山本 昇平

片山 「そうですねー、昔、舞台やっていたんで、今は観劇ですかね。」

試合開始前の、「趣味はなんですか?」という質問に対して、片山 英典はこう答えた。

最近、関西でも勝ち頭としてじわじわと認識されはじめていた片山。だが、片山をRound 3で最初にフィーチャリングしたとき、その片山のプロフィールが意識されていたとは言い難い。

やはり、PTチャールストンで優勝し、現在Player of the Yearレースの首位を走る八十岡をフィーチャリングする為のおまけであった事は否定できない。

しかし、そこできっちり勝利した片山のラクドスバーンというデック選択と、その選択理由はこのデックが環境のソリューションのひとつだと思わせるに十分だった。

そして、なにより、片山は今回の大会での「ライジングスター」のひとりになるのではないかと思わせる何かを感じさせる雰囲気があった。それを、冒頭の「昔、舞台をやっていた」というプロフィールと強引に結びつけるようなことをするつもりもない。だが、確信にはいたらなくともなにかを感じさせたということは事実だ。

そこで、曖昧な表現として「願わくば、今年は、この門の扉が片山にむけて開かれんことを」という一文を入れさせてもらった。

そして、まさにその「登竜門」の扉は、片山にむけて開かれたのだ。

片山はトップ8に入賞し、そして、準々決勝で勝利することで、世界選手権への権利を獲得した。

一方の山本。

今年の日本選手権予選ラウンドは、10勝3敗1分の31点がトップ8確定ラインと思われていた。そして、13ラウンド終了時の順位が張りだされ、最終ラウンドの組み合わせが決まった時に、トップ8の全員が31点以上で占められると思われた。つまり、終了時点で30点以下のプレイヤー達にはトップ8の可能性はほぼないだろうと思われていたわけだ。
しかし、清水VS浅原戦で、浅原が敗北したことにより、30点のプレイヤーの為に、ひとつ席が開けられる事となったのだ。

そして、そのもっとも競争率の高い席に座る権利を得たのが山本なのである。

日本選手権に限らないが、長期に渡って行なわれるトーナメントで勝利するためには、もちろん実力も必要だが、それだけじゃない「なにか」が必要だと、よく言われる。多くのランダム要素を含むこのゲームで勝ち続けるのに、実力は必要条件ではあるが、十分条件ではない。片山から感じられたのも、その「なにか」だったのだろう。

その「なにか」のひとつを「勢い」や「運」とするならば、山本が一番なのではないか。薄い可能性の中にあった、さらに薄い可能性を引き当て、決勝トーナメントに進出し、そして、準々決勝も突破し、世界選手権への権利をも獲得したわけだ。「シンデレラストーリー」という言葉があるが、今大会で最終的にその言葉を与えられるのは、今後の成績によらず山本だろう。

山本の使用するデックは、土地破壊を組み込んだSea Stompy。現環境のソリューションの本命のひとつである。

すでに、昨日行われた第13ラウンドのフューチャーマッチで一度対戦しているこのふたり。この対戦は、片山の勝利に終わった。しかし、それぞれのデックがメタっている対象であるコントロール相手の対戦のように、マッチアップの相性がはっきりしているマッチとも言い難い。

勝負は水物である。

そこにどんな要素が影響を与えるかは予想がつかない。

Game 1

先攻は片山。

2ターン目に《闇の腹心/Dark Confidant》をキャスト、続くターンには山本の《極楽鳥/Birds of Paradise》を《ショック/Shock》で焼き払うという展開で主導権を握る。

8枚のマナクリーチャーを投入し、それによるマナ加速が山本のデックの強さのひとつである。

そして、8枚の1マナ火力を投入している片山のデックは、その長所を破壊する事ができる。この部分で片山のデックは山本のデックに対して優位だ。

片山は《闇の腹心》によるアタックを繰り返し、山本の《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》は《残酷な布告/Cruel Edict》で対処する。そして、《ラクドスのギルド魔道士/Rakdos Guildmage》を場に追加する。

山本はなんとか、2体目の《喧騒の貧霊》によって、片山のアタックを防ぐことに成功するが、そのときにはすでに片山の火力の射程圏内だった。

山本の手札には、《氷結地獄/Cryoclasm》。メタゲームの結果としてメインボードから投入されているこのカードが、他のデック相手には無駄カードとなってしまうのも、山本のデックの弱点のひとつである。

片山 1-0 山本

Game 2

片山

片山のデックが主導権を握り続けたGame 1だったが、このゲームで主導権を握ったのは山本のほうだった。

1ターン目に場にだされる《密林の猿人/Kird Ape》。

片山のデックは、その除去能力のほとんどを火力にたよっており、前述のように1マナ2点火力も多く投入されている。その為、タフネスの高いクリーチャーの除去を苦手としている。
これは、山本のデックが片山のデックに対して優位な点だ。

タフネスが3である《密林の猿人》を1枚で除去できるカードは、《火山の鎚/Volcanic Hammer》《黒焦げ/Char》と何種類か存在するが、タフネスが5を超えてしまうと1枚で除去できるのは火力ではない、《残酷な布告/Cruel Edict》に限られてしまう。

そして、山本の場に出てくる《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》。

続いて、《素拳の岩守/Iwamori of the Open Fist》。まったく伝説のクリーチャーを投入していない片山のデックに対してこのクリーチャーは、まったくデメリットのないクリーチャーとして機能する。これもまた、山本のデックの優位な点である。

《大竜巻/Savage Twister》が片山の場のクリーチャーを一方的になぎ払うと、山本は2体のクリーチャーをレッドゾーンに送り込んだ。

片山 1-1 山本

Game 3

山本の土地が2枚で止まる。

一方の片山は連続で《山/Mountain》をセットできている。

この隙に、まだ1/1だった《密林の猿人/Kird Ape》を《炎の印章/Seal of Fire》で焼き払う。山本が場にだすマナクリーチャーたちも、《火山の鎚/Volcanic Hammer》に《紅蓮地獄/Pyroclasm》に《黒焦げ/Char》にと連続して除去し、山本の展開を阻害する。

しかし、この山本の事故の隙にダメージを積み重ねられるようなクロックが用意できていない。結局は1:1交換を繰り返しているだけで、山本に与えられている時間が短くなっているわけではない。

そして、ついに山本が念願の3枚目の土地を手に入れ、《三角エイの捕食者/Trygon Predator》を2連続で。これには片山も2連続の《黒焦げ》で対応するが、やっぱり山本の本体へとダメージを与えることはできていない。

片山の手札は《闇の腹心/Dark Confidant》と《残酷な布告/Cruel Edict》。
しかし、片山の場の土地は《山/Mountain》と《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》しかなく、黒マナがでない。立場が逆転したわけだ。

山本は、《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》を。そして《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》。

《紅蓮地獄》で《巨大ヒヨケムシ》を除去し、数少ないクリーチャーである《ラクドスのギルド魔道士/Rakdos Guildmage》で《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》をブロックして時間を稼ぐ。だが、どうしても黒マナをひかない。

片山に与えられた最後のターン。ひいたカードで場がどうにもならないことを悟った片山は、《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》を起動してみる。

そして、それすらも黒マナのでるカードではなかった。

片山 1-2 山本

Game 4

先攻の片山が《灰の殉教者/Martyr of Ashes》をキャストという立ち上がり。そして、山本の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を1点の《悪魔火/Demonfire》で除去しつつアタックする。山本は続いて《密林の猿人/Kird Ape》。

片山は3枚目の土地を置けない。

そして、《密林の猿人》のアタック。ここで《密林の猿人》を除去する選択肢もあった片山だが、もっと有効なタイミングを待つべくスルー。山本は場に《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を追加する。土地が止まった片山に対して、山本も手札に土地しかない為、こちらはこちらで苦しい。

続くターンの山本のドローは《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》。ここで、《喧騒の貧霊》を場にだすプランと《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装備させるプランの二つがあった山本だが、山本は後者を選択する。
そして、この《梅澤の十手》が装備されるタイミングで、片山は《灰の殉教者》の能力を起動し、貴重な1ターンを確保する。

ここで、片山は待望の3枚目の土地をドローする。しかも、黒マナのでる土地だ。《闇の腹心/Dark Confidant》と、《灰の殉教者》の能力のために手札に温存していた《炎の印章/Seal of Fire》をキャストする。

返しのターンで山本は、片山の苦手とする大型クリーチャーである《喧騒の貧霊》を場にだす。が、それが1体であれば問題はない。《残酷な布告/Cruel Edict》で除去。ここで一気に攻勢に出るために片山は2体目の《闇の腹心》を追加する。

山本は、更なる追加の大型クリーチャーとして、Game 2の決定打となった《素拳の岩守/Iwamori of the Open Fist》を、このターンドローした《極楽鳥/Birds of Paradise》とともに場にだす。しかし、それまでマナが不足していた片山の手札にはまだまだ火力が余っている。《火山の鎚/Volcanic Hammer》と《炎の印章/Seal of Fire》で《素拳の岩守/Iwamori of the Open Fist》を除去し、攻勢を緩ませない。

そして、ここで山本のスペルは底をついたのだった。今度は片山が2体のクリーチャーをレッドゾーンに送り出して勝負を決める。

片山 2-2 山本

Game 5

ゲームは最終戦までもつれこむ。

片山の初手は、内容は申し分なかったのだが土地が2枚の《山/Mountain》しかない。片山の頭に、黒マナをひけなかったGame 3の記憶がよぎる。片山はマリガンを宣言し、ライブラリーのトップをめくる。ライブラリーのトップは《沼/Swamp》。

片山 「まぁ、でも《沼/Swamp》なら、まだ勢いはあるのかなぁと思いましたね。」

マッチの後に片山はこう語った。こういうときに「やっておけばよかった」と後悔するプレイヤーも少なくないし、それが嫌でマリガン時にトップを確認しないプレイヤーも多い。
しかし、片山は、結局どうだったのかわからないのもモヤモヤするし、《沼/Swamp》じゃなかったらなかったで「マリガンしてよかった」と、どちらにしろポジティブに捉えることにしているので、トップを確認することにしているという。こういった、前向きな意識が、片山が感じさせている「なにか」なのかもしれない。

しかし、今回ばかりはそうも言っていられなかった。

続く手札に土地はなく、ダブルマリガンで配られた5枚の手札には、やっぱり黒マナがなかった。

山本は、2ターン目に2/3となる《密林の猿人/Kird Ape》、3ターン目には《三角エイの捕食者/Trygon Predator》とまずまず順当に脅威を展開する。

片山は、3ターン目に黒マナのでる《血の墓所/Blood Crypt》をドローする。手札には《闇の腹心/Dark Confidant》があったので、もう1ターン早ければ、と思うが過ぎた事を言っても仕方がない。ここで片山は《闇の腹心》を場にだすか否かを長考する。
結果、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》キャストからの即装備でのアタックを警戒して、手札に《黒焦げ/Char》を握り締めてターンを返す。

結局、危惧していた《梅澤の十手》は場に出てこなかったので、《三角エイの捕食者》をへと《黒焦げ》。手札に《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》を持っていた山本ではあるが、ここはまず追加の《三角エイの捕食者》。
この《三角エイの捕食者》にも《黒焦げ》をうち、《密林の猿人》が忍術した《深き刻の忍者》は《極楽鳥/Birds of Paradise》ともども《紅蓮地獄/Pyroclasm》で除去すると、いい形で展開できた片山なのだが、目下土地が不足している状態が改善されない。《闇の腹心/Dark Confidant》を場にだす。

山本の《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》は、《闇の腹心》でブロックではなく《残酷な布告/Cruel Edict》で対処と、善戦する片山ではあったが、1体、また1体と場に送り出されてくる《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》と、お供の《密林の猿人》たちに対処するには、手数が足りなすぎる。

最後の最後には、山本のデックの長所が生かされる形の勝負となったのだった。

片山 2-3 山本

山本 「趣味ですか…マジックですね」

冒頭の質問に山本はこう答えている。

山本の持っている「なにか」とは、運や勢いだけでなく、こういうものだったのかもしれない。

山本 昇平、決勝進出!
片山 英典は3位決定戦へ

Shohei Yamamoto

Download Arena Decklist
ソーサリー (8)
4 Stone Rain 4 Cryoclasm
インスタント (4)
4 Remand
アーティファクト (3)
3 Umezawa's Jitte
60 カード

Katayama Hidenori

Download Arena Decklist
クリーチャー (8)
4 Dark Confidant 4 Rakdos Guildmage
ソーサリー (11)
4 Cruel Edict 4 Volcanic Hammer 3 Demonfire
インスタント (12)
4 Shock 4 Char 4 Flames of the Blood Hand
エンチャント (7)
3 Genju of the Spires 4 Seal of Fire
60 カード

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