第1回戦:捕食者を縛る鎖
Martin Juza(チェコ) vs. Ben Stark(アメリカ)

更新日 Event Coverage on 2013年 7月 31日

By Nate Price

A longtime member of the Pro Tour and Grand Prix coverage staff, Nate Price now works making beautiful words for all of you lovely people as the community manager for organized play. When not covering events, he lords over the @MagicProTour Twitter account, ruling with an iron fist.

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 信じられないほど強力な青白親和デッキを手に、ご満悦のベン・スターク。その気分は、マーティン・ジュザのデッキリストを目にした途端一気に落ちこんだ。

「メインから《三角エイの捕食者》2枚なんだよね」スタークのほぼ完璧な親和デッキに目を通し、笑顔を見せるジュザ。

「いっつもこうなるんだよな」スタークは笑いながら応えた。「勘弁してくれよ!」

 スタークとジュザ、リミテッドの達人として高い評価を受ける両者の名前が、この夢のような第1試合に流れる緊張感を高めている。新しい環境についての考察を集めよう、というときにまず名前が挙がるのがスターク。それに僅差で続くのがジュザで、スターク自身もジュザの名前を出すほどだ。ふたりは仲の良い友人で、中村修平を加えチームを組んで先日行われたグランプリ・プロヴィデンス2013に参加し、決勝まであと一歩のところまで登りつめている。

 スタークは『Modern Masters』を、お気に入りのブースター・ドラフト・フォーマットのひとつにすんなり入るね、と惜しみなく賞賛する。その言葉通り、彼は『Modern Masters』ドラフトにかなりの時間を費やしてきた。環境理解のためというよりは、楽しいからという理由で。そんな彼だから、青白親和のお手本のようなデッキを組み上げてきても驚くことはない。一方のジュザのデッキも、この環境ではメジャーなアーキタイプのひとつ、5CG(5色緑)だ。普通なら、スタークのデッキが持つ純粋なまでの攻撃性が、ジュザの使うデッキを圧殺することになるだろう。しかし、ジュザのリストには単体除去が豊富に取り揃えられ、ゲームの鍵を握る《三角エイの捕食者》を2枚擁しているのだ。

ベン・スタークの青白親和デッキは、強烈なカウンターに見舞われた。
ジュザのデッキには《三角エイの捕食者》が2枚潜み、スタークのカードを食べてしまおうと口を開けて待っているのだ。

「ちょっとこっちのデッキに刺さりすぎだろ」ジュザのデッキリストをひと通り見たスタークが本音を漏らした。「いや、たぶんデッキ自体はこっちの方が強いんだけど、このマッチアップじゃダメだ。まいったなあ」

ゲームの顛末

 第1ゲームは、ジュザにとって非常に悩ましい決断から幕を開けた。スタークが初手をすぐにキープした一方、ジュザはキープを慎重に検討しなければならなかった。

「こいつはいつもこんな感じだよ」と、スタークが笑い声と一緒に発する。「初手が完璧じゃないと、こうやって少し考えるんだ。でもやがてキープを宣言する。それが正しい決断で、彼が良いプレイヤーだからだ」

 実際に、ジュザがキープした手札は理想に限りなく近いものだった。《》1枚と《明日への探索》、《魔力変》、《巨大埃バチ》のある手札だ。

「土地1枚引ければ完璧なのはわかっていたよ」と、ジュザが語ってくれた。「《明日への探索》を使うことは決まっていたから、最悪のシナリオは2ターン目に土地が引けずちょっとつまずいてしまうことだった。土地さえ引ければほぼ磐石だった。《岩石流》も《永遠の証人》もあったから、ひとたびデッキが動き出せば、僕を後退させるものを除去することができた。もし先手だったら考える間もなく手札を戻していたかな。土地を引けるチャンスが1回多くなかったら、土地1枚の手札に託すのは危険すぎる。《明日への探索》が無い場合はもっとダメ」

 結果的に、ジュザは2枚目の《》を引き込み、スピード勝負に乗り出した。

ジュザはリスクが高いものの爆発的なスタートを切れる手札で、第一ゲームを駆け抜ける。

 そして、そこにはさらに速い男がいた。

「これから1/2の軍団を作ろうってとこさ」スタークは2ターン目に《エーテリウムの彫刻家》をプレイし、そう言った。「《マイアの処罰者》を倒せりゃ、君の勝ちだ」

「その言葉が聞きたかったんだ」と、ジュザは首を傾げて応える。

 予想通り、《エーテリウムの彫刻家》による軍勢は膨れ上がり、3ターン目にして《マイアの処罰者》が戦場に出た。ジュザのドローは引き続き彼に土地を供給し、開始当初の足場が定まらない感じは消え去った。《岩石流》で《マイアの処罰者》を焼くことができたが、不運にもスタークのデッキ・トップから現れた《聖域のガーゴイル》によって回収され、頭を抱えることになった。

「《曇り鏡のメロク》を流してこいつを取ったんだよね」と、スタークはガーゴイルについてそう語った。「今までで一番難しいピックだったよ」

曇り鏡のメロク》を見送り《聖域のガーゴイル》を取るというピックができる人は、そう多くないだろう。
ベン・スタークは、一切のブレなく目標を追える数少ないプレイヤーなのだ。

 スタークがゲームを支配するのに必要なのは、こうした盤面の迅速な回復だった。ジュザは《永遠の証人》で《岩石流》を戻し、その隙にスタークは更なる大型クリーチャーを盤面へ追加できた。こうしてスタークがクリーチャーの数で優位を保ち、ジュザは間もなくして地に伏せることとなった。ジュザの持つ「飛び抜けて最高のカード」である《三角エイの捕食者》が勝負の肝だ、とスタークが懸念していた試合は、彼にとって良い方向へスタートしたのだった。

 第2ゲームのスタークの初手も、1ゲーム目と同じくらい爆発的なものだった。ゲームを決める《上天の呪文爆弾》が2枚、さらに、《エーテリウムの彫刻家》が2体の《金属ガエル》を送り出した。天敵である《三角エイの捕食者》を呪文爆弾が抑え、毎ターン5点のダメージを通す道を拓いた。ところが、それ以上戦力が増えない。スタークはジュザのライフの大部分を奪い去ったが、ドローが土地ばかりで使える呪文が来ないのだ。《三角エイの捕食者》を縛り付けている《静寂の捕縛》が最後の希望だった。

 しかし、スタークが攻めきれない間にジュザは防衛策を築いていった。残りライフ5点となったターン、ジュザは《ダークウッドのベイロス》と《湿地の飛び回り》を繰り出した。これで彼の防御は見違えるほど強化され、同時に5点で反撃する手段を得た。5/5の《空に届くマンタ》がすぐに続き、スタークの小さなクリーチャーたちに対して盤面の優勢を維持した。

 続くターン、ジュザはほんのわずかになったライフを守るブロッカーを残しつつ、攻撃に転じられると考えた。ここ2ターンほど土地が並び続けるスタークの盤面には、ジュザを安全地帯へ送り込むのに十分な猶予があったのだ。スタークが再び盤面にクリーチャーを追加し始めても、《マイアの処罰者》や《聖域のガーゴイル》をもってしても盤面の不利は挽回できなかった。今度は《三角エイの捕食者》が現われ、スタークはすべてを投げうってジュザの攻め手を緩めざるを得なくなった。その後に続くものにはまったく手を出せないままに。

捕食者と愉快な仲間たち 1-1 アーティファクト軍団

 スタークのデッキの強烈なアグレッシブさを語った直後、それを見計らったかのように、第3ゲームはかなり受身な立ち上がりを見せた。スタークにとって幸運なことに、ジュザのデッキには早い段階でプレッシャーをかけて、受身に回ったスタークを罰する手段がほとんど無いのだ。

「最後はフェアなゲームになりそうだな」とスターク。「こっちは構築みたいな手札じゃないし、そっちも捕食者を持ってない。これこそマジックのあるべき姿だよ。もう6ターン目だってのに、どっちが勝つかわからないもんな」

 ジュザは状況が厳しいことを意識していた。スタークが「持ってない」と予想した《三角エイの捕食者》と《空に届くマンタ》が手札にあるのだが、現時点で盤面は負けていて、強烈な攻撃の危険に晒されていた。《上天の呪文爆弾》も睨みを効かせていて、何を唱えても1ターン無駄にしてしまう。

 ジュザは《魔力変》を唱えて赤マナと白マナを出した。《空に届くマンタ》を5色で出すつもりだ。と、ここでカードを引いたジュザは動きを止めた。この状況にぴったりな《サリッドの殻住まい》を引き込んだのだ。ジュザは《空に届くマンタ》ではなく、《サリッドの殻住まい》と《三角エイの捕食者》を展開するプランへの変更を考慮し始めた。思考の末、彼は《空に届くマンタ》を選び、スタークに《上天の呪文爆弾》を使わせることにした。結果的に、ジュザはこの決断が誤りだったと気づくことになる。

 続くターン、スタークの親和クリーチャーはさらに盤面を埋め尽くすが、スタークは攻撃に向かわなかった。そのとき、ジュザは《謎めいた命令》を相手にしていることにはっきりと気づき、先ほど《サリッドの殻住まい》を出さなかったことを後悔した。盤面に15点以上のダメージが揃ったところで、スタークは悲嘆に暮れるジュザの軍勢を《謎めいた命令》でタップさせ、勝利を掴んだのだった。

「《謎めいた命令》はサイコーだね」とスターク。

「スタークが勝つにはあれしかなかったんだ」と、ジュザがため息と共に吐き出した。「勝利は間近だと思っていたけど、彼に《謎めいた命令》があるのは知っていた。たぶんあそこで《サリッドの殻住まい》と《三角エイの捕食者》を出すべきだったんだ。そうすれば戦闘中に苗木を出して、《謎めいた命令》と戦うチャンスがあったはずだ。まだ呪文爆弾があると考えていたんだよ」

 結果を見れば、《三角エイの捕食者》はスタークの親和デッキ相手にふたつのゲームで姿を現したものの、うまく噛み合わなかった。この友人同士の、そしてリミテッドの達人同士の『Modern Masters』ドラフトによるエキサイティングな試合は、スタークに軍配が上がることになったのだ。

ジュザ 1-2 スターク


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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