第1回戦:波を捕まえて
Olle Rade(スウェーデン) vs. Craig Wescoe(アメリカ)

更新日 Event Coverage on 2014年 2月 21日

By Blake Rasmussen

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オーレ・ラーデ/Olle Rade vs. クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoe(世界ランキング23位)(ドラフト)

 これだからヨーロッパで行われるプロツアーはやめられない。

 殿堂顕彰者オーレ・ラーデ。2005年の第1回殿堂顕彰に選出された彼は黎明期のプレイヤーたちの中でも最古参のひとりだが、今は競技マジックの舞台から離れていた。彼の記録した最後のプロツアー・トップ8入賞は16年前で、初めてのプロツアー優勝に至っては1996年までさかのぼる。今大会に参加しているプレイヤーの中には、その頃に生まれていない者もいるのだ。

 かつて、ラーデは世界中のプレイヤーに恐れられる存在であった。殿堂顕彰者として、そして《森を護る者》としてその名を歴史に残すラーデだが、(スウェーデン出身の彼にとって)近い場所で行われるプロツアーには、つい足を運びたくなったようだ。長らく競技マジックの舞台で振るわれていなかったその力を、こうして目にすることができるとは、本当に嬉しい限りだ。

 ラーデはプロツアー『テーロス』にも参加していて、100位以内に入っていた。その前に参加したのは、プロツアー・パリ2011だ。今年はアメリカのプロツアーにひとつは参加するかも、と言ってくれた彼だが、かつてのようにヨーロッパを離れることは難しくなっているらしい。

 そんなラーデが今大会最初のラウンドに対峙したのは、プロツアー『ドラゴンの迷路』チャンピオンにして世界ランキング23位、新進気鋭のプラチナ・レベル・プロ、クレイグ・ウェスコーだ。なにより白ウィニー系デッキの達人として知られるウェスコーだが、プロツアーの優勝によってリミテッドの腕前も証明した。面白いことに、ウェスコーは《森を護る者》がスタンダードかモダンで使えたら絶対に使いたいくらい好みのカードだという――もちろん白のクリーチャーと一緒に。

殿堂顕彰者オーレ・ラーデと世界ランキング23位クレイグ・ウェスコーが激突する。新旧トップ・プレイヤー対決の開幕だ。

 またこの対決は、早くも今大会に参戦するふたつの「スーパー・チーム」の戦いとなった。ラーデは、スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifka、ウィリー・エデル/Willy Edel、ヨエル・ラーション/Joel Larssonなどヨーロッパのプレイヤーが連ねるチーム「Elaborate Ruse」で調整を行った。一方ウェスコーは、コンリー・ウッズ/Conley Woods、アリ・ラックス/Ari Lax、クリス・フェンネル/Chris Fennellなどが属するチーム「TCG Player」の看板プレイヤーなのだ。

ゲーム展開

「これは驚いた。あなたが《》で、私が《平地》ですか」両者がそれぞれ構築で得意とする色の土地を置くと、ウェスコーはそう口にした。

 ラーデはその得意の《》、それから《》を駆使して、《深海の催眠術師》から《彼方の工作員》と素早い立ち上がり。4ターン目には2マナ域のクリーチャーを2体追加した。一方《平地》に《》を加えたウェスコーだが、盤面には《天馬の乗り手》を繰り出せたくらいで、早くも劣勢に立たされる。

 しかしこれで打つ手が無くなるウェスコーではない。《希望の幻霊》が攻撃に向かう《天馬の乗り手》をさながら《悪斬の天使》へと変え、絆魂により続くターンのラーデの強打を抑えた。さらに《戦識の武勇》から《槌の一撃》を加えると、ゲームは完全にひっくり返る。攻めこむウェスコーはライフを25まで回復し、ラーデのライフを8まで落とした。《天馬の乗り手》単騎でのプランをとったウェスコーだが、まさに見事な「乗り手」になったのだ。

大きなリードを奪いにいくウェスコー。

 そのとき、劇的な瞬間が訪れた。

 《捕海》――ラーデのデッキに2枚入っているうちの1枚が彼を救い、ゲームは接戦へ。ウェスコーが盤面に追加できたのは《百手巨人》だけだったが、ラーデが《深海の催眠術師》の「神啓」を忘れてしまい、4点のダメージを損することになった。ラーデとしては、盤面が有利なうちに素早くダメージを与えたいところだった。

 ウェスコーが防戦に回る中、ラーデは小型から中型のクリーチャーの展開を続け、盤面を埋め尽くした。しかし、この時点では勝負はまだわからなかった。

 少なくとも、ラーデがようやく2枚目の《》を引き込むまでは。《空想の元型》がラーデに翼を与え、ウェスコーの防御を飛び越えていく。ウェスコーは次のドローで解決策を見出せず、次のゲームへ移るより他になかった。

「《捕海》とは、いい波が来たね」と、ラーデ。確かにあれが無ければ、ラーデは第1ゲームを決めた《空想の元型》が出るほどゲームを長引かせることができなかっただろう。試合後、あのときはもう投了寸前だった、と彼は打ち明けた。

 第2ゲームは、ウェスコーが「英雄的」を持つ飛行クリーチャー2体と《ドラゴンのマントル》でクロックを上げ、序盤の優位を築いた。一方のラーデは、然るべきときに4マナ用意できることを頼りに、地上戦を進める。

第1ゲームで奇跡的な勝利を掴んだラーデ。このまま第1回戦の勝利も決めるか。

 ウェスコーの戦場には《天馬の乗り手》と《アクロスの空護衛》。どちらも2/2だ。ラーデは4マナを構え、1ゲーム目に彼を支えた《捕海》を匂わせる。ウェスコーは《ドラゴンのマントル》の能力でダメージを増やし、ラーデが動き出し《捕海》を撃つのをじっと待った。

 やはり《捕海》を持っていたラーデだが、そこでウェスコーは《槌の一撃》をプレイ。残った《天馬の乗り手》を強化しつつラーデのクリーチャーを除去する。うまくラーデを誘導したウェスコーはここぞというタイミングで《槌の一撃》を通し、ライフ・レースの有利を保ったのだ。数ターン後、勝負は第3ゲームへ持ち込まれた。

「この環境、ブロックができるやつ全然いないね」とラーデが漏らす。どこか予言でもするような口ぶりだった。

 両者とも様々な軽量クリーチャーでアグレッシブなスタートを切る。ラーデは《菅草の蠍》で2ターン目から攻撃し、《旅するサテュロス》を加えた。ウェスコーは《アクロスの重装歩兵》2枚を素早く繰り出す。

 ゲームが大きく動いたのは、ラーデが《黄金の木立ちの蛇》を戦場へ送り込んだときだった。4点のライフを得ることでライフ・レースを有利に進め、またこの盤面で4/4というサイズは最大のものだ。さらにウェスコーは土地が3枚で止まっており、地上は一気にラーデが優位に立った。そして空中でも、ラーデの軍勢に《先見のキマイラ》が加わる。

 なんとか4枚目の土地を引き込んだウェスコーだが、ライフは7まで落ち込み、屈強な緑のクリーチャーたちが彼に牙を剥く。ウェスコーは最善手として《アクロスの重装歩兵》に《希望の幻霊》を「授与」し、5点のライフを得た。ところが、12点のライフを残しタップ・アウトの状態のウェスコーへ、ラーデが致死量に届く強化呪文を見せると、第1回戦はラーデのものとなった。

 この試合のターニング・ポイントをラーデに尋ねると、やはり最初のゲームの《捕海》だという。

「投了寸前だったよ。あの場を救えるのは、2枚入っている《捕海》だけだった」とラーデは打ち明けた。

 しかしそれでも、ラーデにとって決して安心できる状況ではなかった。

「まだ予断を許さなかったよ」とラーデ。ウェスコーの戦場には飛行を持ったクリーチャーがおり、ライフも十分にあったのだ。だがそこでラーデは、《空想の元型》に繋がる奇跡の《》を引き込んだ。これで後押しを受けたラーデは第1ゲームを勝ち取り、第1回戦勝利のきっかけを掴んだのだった。

オーレ・ラーデ 2-1 クレイグ・ウェスコー(世界ランキング23位)


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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