オーストリア代表チームの主役は弱冠21歳のトーマス・ホルジンガー/Thomas Holzingerだ。比較的短いキャリアの中で、97点のプロポイントを獲得している。彼は3年続けてオーストリア代表の座を手に入れており、プロツアー「アヴァシンの帰還」ではトップ8に残った。2012-2013シーズンではプラチナ・レベルの座を手にすることとなった。
しかし、オーストリア代表の中で彼が最も多くのプロポイントを持っているわけではない。その名誉ある座はデビッド・レイトバウアー/David Reitbauerのものだ。2009年のローマにおける世界選手権で準優勝し、ワールド・マジック・カップ2013で通算4度目の代表入りとなる。マーク・ミュールボク/Marc Muhlbockもまた何度かプロツアー出場経験があり、17歳のマヌエル・ダニンガー/Manuel Danningerがチームの中では唯一プロツアーの経験が無いプレイヤーだ。
対するアイルランド代表チームはデビッド・テュイト/David Tuiteが何度かプロツアー経験があるのみだ。そのため、比較的下馬評の低いこのチームを率いるのは、14点のプロポイントを保持するマーチン・シーシンスキ/Marcin Sciesinskiで、続いてステファノ・ランピニ/Stefano Rampiniとショーン・フィッツジェラルド/Sean FitzGeraldが12点ずつのプロポイントを持っている。
このマッチにおいて比較的「弱者」という立場ではあるが、アイルランド代表は『基本セット2014』によるチーム・シールドを無敗で駆け抜け、週末のチームスタンダードに向けて準備万端だ。アイルランド代表の国際チーム戦における過去最高位はジョン・ラルキンを擁していた2002年のシドニー大会での14位であるため、多くのアイルランド人が同胞の無敗記録がどこまで伸びるかを注目している。
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オーストリア代表とアイルランド代表は両者とも3-0でチームスタンダード戦へと突入することになった。どちらのチームが4-0へと記録を伸ばせるのか。 |
ダニンガー vs. フィッツジェラルド
オーストリアのダニンガーが使用するのは世界選手権2013でキブラーがプレイしていたような《ドムリ・ラーデ》入りのグルール・デッキで、フィッツジェラルドが使うのは一般的なジャンド・デッキだ。ミュールボクがオーストリア代表のチームスタンダードにおける監督としてチームメイトの傍に座り、アイルランド代表はシーシンスキが同様の位置を取った。
1ゲーム目はダニンガーが速攻で飛び出し、相対するフィッツジェラルドのジャンドを置き去りにした。
2ゲーム目、フィッツジェラルドは《遥か見》から《スラーグ牙》へと繋げたが、ダニンガーは《燃え立つ大地》を持っていた。フィッツジェラルドの5枚の基本でない土地が痛々しそうに見える。しかしながら、2枚目の《スラーグ牙》のおかげでゲームを続けることができた。そして、ダニンガーにも2枚の基本でない土地があったため、《燃え立つ大地》が自身に小さな火傷を負わせていた。鍵となったのはダニンガーに立ちふさがった《ケッシグの狼の地》だった。そのせいで、自身のエンチャントのダメージによって勝利への《雷口のヘルカイト》がキャストできなかったのだ。
第3ゲームでは新しい《ドムリ・ラーデ》グルールが《生命散らしのゾンビ》のようなカードを跳ね返すことになった。フィッツジェラルドが基本セット2014のレアカードをキャストすると、ダニンガーの手札から何も追放することができなかった。彼が公開したのは土地が数枚と、《燃え立つ大地》と《士気溢れる徴集兵》だけだった。
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オーストリア代表チームの主役はプロツアーの常連集団とマヌエル・ダニンガーというルーキーだ。彼は《ドムリ・ラーデ》入りグルール・デッキを携えチーム共同デッキ構築・スタンダードで奮闘しているのだ。 |
問題のエンチャントが次のターンに戦場に降り立ったが、フィッツジェラルドの2枚の《沼》がいくらかダメージを和らげた。ダニンガーの《士気溢れる徴集兵》が対戦相手のライフを18から9へと落とし込んだ、その次のターンに《高原の狩りの達人》がジャンド側へと現れた。ダニンガーのドロー時、彼はこの3ターンで完全なるマナフラッドに捕まってしまい、《高原の狩りの達人》が変身するのを防げなかった。
とは言っても、《燃え立つ大地》によるダメージが全てだった。アイルランド側は呪文のキャストから蚊帳の外になっていた。そして、オーストリア側のデッキは勝利するために必要なカードが迅速に供給されたのだ。
レイトバウアー vs. テュイト
レイトバウアーは黒白赤人間デッキで素早いスタートを切った。《教区の勇者》から始まり《町民の結集》が続いた。しかし、テュイトのエルフボール・デッキは3ターン目に《獣の統率者、ガラク》を送り出し、彼の手札を補充した。レイトバウアーはガラクが登場したとき、ダメージで押し通すことを選び、このプレインズウォーカーを無視して喉元に攻撃を仕掛けた。レイトバウアーの初動は十分に速かったため、3ターン目にガラクを出されたにもかかわらずテュイトはサイドボードへ手を伸ばすこととなった。
2ゲーム目、テュイトは《獣の統率者、ガラク》をまたもや3ターン目に登場させ、今回はこのプレインズウォーカーの+能力で《カロニアのハイドラ》と《孔蹄のビヒモス》を含む4枚のカードを引くことができた。だが、レイトバウアーの初動は《スカースダグの高僧》から《宿命の旅人》そして《カルテルの貴種》と恐るべきもので、レイトバウアーは飛行持ちの5/5デーモンを作りだし、ガラクを処理した。
しかし、ダメージは与えられたが、テュイトは十分なカードを引いていた。テュイトは《孔蹄のビヒモス》を開放する前に全てのクリーチャーをプレイし、それは2ゲーム目を終わらせるのには十分すぎるほどだった。
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チームシールド戦で3-0という結果を収めたアイルランド代表チームは、B席において非常に面白いデッキを持ち込んだ。 |
第3ゲームでレイトバウアーは《宿命の旅人》、《町民の結集》そして《ザスリッドの屍術師》という速いスタートを切った。だがテュイトが3ターン目に唱えた《カロニアのハイドラ》が攻撃時に8/8にまで成長した。次のターンの《オルゾフの魔除け》がレイトバウアーを残りライフ2点で踏み止まらせ、この時点で戦闘を生き残るための盤面上の有利を得ていた。続く2ターンの対戦相手の攻撃で、盤面はレイトバウアー側が2体のゾンビ、テュイト側は《復活の声》となった。
だがしかし、レイトバウアーの奮闘むなしく、全ては水泡へと帰した。アイルランド代表は攻撃するたびにサイズが倍々になる《カロニアのハイドラ》をトップデッキし、戦場へ解き放ったのだ。
そして全ては最終戦へともつれこんだ……
ホルジンガー vs. ランピニ
……のだがいまだ第1ゲームの最中だった。どちらのトリコロール・デッキも勝利へ足早と向かうデッキではない。
1ゲーム目はドロー・ゴーを繰り返す非常に遅いものだった。両者ともに、《熟慮》などのキャントリップ呪文を除くと、実のある呪文を唱える前に置いた土地の数は2桁に達した。ついに《ボーラスの占い師》が何枚か解決されるに至ったが、お互いに「捨てるくらいなら」の《火柱》の標的になることとなった。
だが、ホルジンガーは《ムーアランドの憑依地》でアドバンテージを取り始め、2枚の《スフィンクスの啓示》が控えていた。ランピニも同様それらを引きあて、お互い大きな動きをしないでいた。《修復の天使》と根気よく続けたタイトなプレイングのおかげで、ホルジンガーは対戦相手のライフを7まで落とし、ランピニはこれ以上ダメージを受けないようにするため1マナを残してタップアウトするしかなかった。
ランピニは辛抱強いプレイのおかげで、なんとかライフを保っていた。《至高の評決》がホルジンガーの鍵となる脅威を一掃し、2枚の《スフィンクスの啓示》をおびき出し、両方とも打ち消した。ランピニは最初の鍵となるドロー呪文こそ解決できなかったものの、2枚目は争うことなく彼に新たな手札をもたらした。しかし、このせいで彼のデッキは恐ろしいほどに消耗していた。さらなる《スフィンクスの啓示》のせいで、ライブラリーアウトの危機が訪れた。
そしてホルジンガーは、《至高の評決》や《対抗激》といったカウンター不可な呪文を抱えていて、それが起こるのを十二分に満足しながら見ていた。ホルジンガーが勝利を収めたころで、残り時間は14分しかなかった。これが意味するところは、ランピニがマッチを落とす危機に瀕しているということだ。
ホルジンガーは2ゲーム目で手札が4枚になり、それでも芳しくなく、ホルジンガーは3枚まで手札を減らした。
なんとか上手くやろうとしたものの、カード4枚分のディスアドバンテージは鍵となる数ターン内に土地に巡り会うためのマナもカードも奪い去っていた。《ボーラスの占い師》と2枚の《熟慮》はチャンスを運んできたが、アドバンテージ差が大きすぎた。しかし後れを取りながらも、ゲームの舞台には上がることができ、《修復の天使》と《ボーラスの占い師》が最初のダメージを与えたときに、マッチの時間の終了が宣告された。
《至高の評決》が速やかにアイルランド側のクロックを押しつぶし、続いてランピニは《スフィンクスの啓示》を繰り出したが、アイルランド代表プレイヤーがゲームを勝ち切れない可能性は十分にあった。
ホルジンガーが《至高の評決》でタップアウトになっている隙に《雷口のヘルカイト》が登場した。まさにランピニが頼みとしていたクロックだ。ホルジンガーは残りライフ7点まで落ち込んだ。
そして次のターン、《払拭》と《中略》がアイルランドの勝利を確実にし、チームを引き分けに持ち込んだ。
オーストリア 1-1 アイルランド
(Tr. Masashi Koyama)