Profiles by Brian David-Marshall; translated by Yoshiya Shindo
そもそも、レジデント・ジニアス(鬼才天才)とは、何をもって成すのが最も正しいのでしょうか? ここでの候補者の選び方は、昨年発表された段階でもまだ進行形でしたし、その結果として最も議論が戦われた項目でもありました。特に、今シーズンはコンストラクテッド・マスター(構築名人)のカテゴリーが追加されましたから、議論はさらに延長戦へともつれ込むことは必至でしょう。ただ一つだけ……レジデント・ジニアスとは単に60枚のデッキでのみ評される物ではありません。また、特定のプレイヤーが特定のデッキを使うことから来るものでもありません。プレイングの技術 — もちろん、ここの5人の一流の候補もこの点において劣るわけではありません — はコントラクテッド・マスター(構築名人)やリミテッド・エキスパート(限定名人)に譲る一方で、レジデント・ジニアスはもっと漠然とした物です。ここでのプレイヤーが持つ能力は、フォーマットを決定付けるデッキを作り上げたり、曲がりくねったメタゲームをどう切り抜けるかを見つけたり、最高機密の研究所での実験を経て、我々にゲームを進める道筋を示してくれたりする物なのです。
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ギョーム・ワフォ=タパ(Guillaume Wafo-Tapa)(全投票の43.8%獲得)
横浜でのインターネット放送でギョーム・ワフォ=タパを紹介する際に、ランディ・ビューラーと私は「彼の名前こそ皆さんには馴染みが無いかもしれませんが、ここ数年の彼のデッキはよくご存知のことと思います」と述べました。彼の名前が始めて登場したのは、ピエール・カナリが2004年終盤にプロツアー・コロンバスを親和で勝った時の、そのデッキの共同製作者としてでした。もっとも、彼自身は予選を通過できなかったのですが。ギョームがプロツアーに定期的に参加できるようになってからは、彼のファミリーネームは、マイク・フローレスが手を加えたその名も“ワフォ=タパ・コントロール”デッキで知られることとなり、そのデッキはフライデーナイト・マジックでの中核となりました。そして、とあるコントロールデッキの製作者の一部では飽きたりないかのように、ギョームは世界選手権に向けて“ドラルヌ・ド・ルーヴル”を作り上げ、このデッキは2007年シーズン前半のFNMからジュニア、はたまた8人トーナメントまであらゆる場所をまさしく席巻したのです。スタンダードを制圧した彼は、ブロック構築でも自らの青黒白デッキでプロツアー横浜を制しました。
マーク・ハーバーホルツ(Mark Herberholz)(全投票の21.3%獲得)
マーク・ハーバーホルツは、昨シーズンのプロツアー・ホノルルに先立つ伝説の海辺の面々の中でも、文字通りレジデント・ジニアスその物でした。10人を超えるこのゲームのトッププレイヤーが、プロツアーの一週間前からこのフォーマットを“解き明かす”ために集まっていました。彼らが頭をつき合わせて出した結果が、“ビーチ・ハウス”の名で知られる変成をベースとしたコントロールデッキでした。マークはイベントの数日前にそこに現れ、彼らが作り上げつつあるものを見るや、すぐさま赤緑の攻撃型デッキ“ヒーズィー・ストリート”でいくことに決めたのです。以降、マークは世界選手権でTEPS(訳注:儀式デザイア)を操り、あるいはガブリエル・ナシフと共に世界選手権でトップ8に入った“殉教者トロン”を生み出し、最近ではプロツアー横浜においてテフェリーデッキに《テフェリーの濠/Teferi's Moat》を投入することでトップ8へと上り詰めました。このカテゴリーが成績上位者を基準とする建前である以上、マークの成績を無視することは無理な話でしょう。彼の活躍は、まさしく構築フォーマットを席巻したと呼べる物であるからです。
マイク・フロン(Mike Hron)(全投票の3.5%獲得)
プロツアー・ジュネーブでの時のらせん+次元の混乱ブースタードラフトにおける共通認識は、黒はぶっちぎりで最弱の色だというものでした。しかし、そこで《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を流して《堕落の触手/Tendrils of Corruption》をピックしたマイク・フロンは、明らかにこの“共通認識”の回覧板のメンバーには入っていませんでした。プレイヤーが黒に固執しないかぎり黒を絶対取らないなんていうことはありませんが、トップ8のプロフィールを見ても、マイクは黒+何かを好んでプレイする希少種でしたが。二日間たっぷりとドラフトした後ですら、他のトップ8の面々はできれば黒を回避することを望んでいました。皮肉なことに、トップ8のドラフトは、5枚もの《結核/Phthisis》を含む黒のカードの宝庫でした — もっとの、マイクのプロツアー優勝を達成したデッキには、その5枚のカードは1枚も入っていませんでしたが。
ビリー・モレノ(Billy Moreno)(全投票の20.1%獲得)
2005年シーズン最後の大活躍を受けて、ビリー・モレノの2006年シーズンは、サイド後に“ガジーの輝き”へと変形する革新的な“ズー”デッキで幕を開けました。彼のデッキは《黒焦げ/Char》や《稲妻のらせん/Lightning Helix》や《ショック/Shock》では満足できず、《血の手の炎/Flames of the Blood Hand》までも投入して相手に対応を迫ったものでした。また、ビリーは彼の技術をクレイグ・ジョーンズへと渡し、その結果彼の血塗られた手はトーナメントの決勝まで到達したのです。昨年の世界選手権のエクステンデッドにおいては、ビリーは“繁殖力ゴブリン”(通称“バッド・キティ”)を作り上げましたが、それはMagic Onlineの許容範囲を超える数のゴブリン・トークンを生み出すものでした……そして、そのデッキを渡されたオシップ・レベドヴィッツは、たった一つのミスプレイのためにトップ10の座を逃すところまで行ったのです。もっと最近ですと、彼の《相殺/Counterbalance》搭載型“ハルク・フラッシュ”は、それを渡されたスティーブン・セイディンとともに、グランプリ・コロンバスで優勝を飾りました。
斎藤 友晴(全投票の12.4%獲得)
《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》が《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》と共に攻め入ってくるなんて。これは終末が目の前まで来ている兆しなのでしょうか? さもなくば……これは斎藤友晴の新たなデッキなのでしょう。斎藤の“シー・ストンピィ”という想像力を掻き立てる名のデッキは、彼をホノルルでトップ16に導き、後に日本選手権のトップ8へと送り込みました。彼はチャールストンに忍者を連れて来るわけにはいきませんでしたが、担当デッキに《血の魔女リゾルダ/Lyzolda, the Blood Witch》や《空騎士の軍団兵/Skyknight Legionnaire》を使う独特の対戦技術の甲斐があって、チームKajiharu80(チームメイトは鍛冶友浩と八十岡翔太)はチーム構築プロツアーで優勝を飾りました。彼と鍜治のコンビは今や「POYメイカー」のニックネームで呼ばれています — 2005年のチーム戦プロツアーの彼らのチームメイトは津村健志で、2006年にその穴を埋めたのが八十岡だったのですから。また彼は横浜において、自らの基本へと立ち返り、《喧騒の貧霊》の穴に《ティンバーメア/Timbermare》を持ってきたその名も“ピザ・ストンピィ”でトップ8に入りました。
さて、レジデント・ジニアスにふさわしいのは誰でしょうか? 投票はこちらから!