~「場」の戦いだったFinals~

更新日 Event Coverage on 2003年 1月 9日

By 小堺透雄

2002年を締めくくったFinals。ここで活躍したデッキが年明け以降のPTQ・GPTに大きな影響を与えるのは昨年、一昨年と同じく今年も変わり無いと思います。

しかし、今大会で築き上げられたメタゲームは1月末に行われるGP広島まではもたないであろうと考えます。Finals直後の今回のレシピですら「わずかな時間を戦い抜く為の参考資料」程度に考えなければ、激変する年明け直後のエクステンデッドの世界には対応出来ない…。

そう割り切った上で、Finals2002エクステンデッド構築戦の上位8つのデッキを見ていく事にしましょう。

■強すぎるが故に消えていたデッキ ~リアニメイト~

11月のPTヒューストンで、その絶対数の多さと安定感で一気にメタの中心に昇り詰めた“リアニメイト”。しかし、そのあまりの強さ故にメタられ過ぎて成績を残せなくなり、12月には国内のトーナメントシーンから姿を消しつつあったこのデッキが再浮上してきた理由とは何でしょう。

それは、対策をされなくなったからです。

もともとポテンシャルの高かったデッキが周囲から対策をされなくなったら…。
その結果は多くを語らずとも明らかでしょう。

Fujita Tsuyoshi

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ソーサリー (13)
4 Reanimate 4 Cabal Therapy 4 Duress 1 Roar of the Wurm
インスタント (9)
4 Entomb 4 Diabolic Edict 1 Coffin Purge
エンチャント (4)
4 Pernicious Deed
他 (2)
2 Vampric Tutor
60 カード
サイドボード (15)
1 Vampric Tutor 1 Ray of Revelation 1 Symbiotic Wurm 1 Woodripper 1 Engineered Plague 1 Visara the Dreadful 1 Perish 3 Comtamination 4 Exhume 1 Spellbane Centeur

藤田剛史のチューンによって蘇ったリアニメイトデッキは、よりコントロールシフトになって帰ってきました。

恐らくは、このデッキが「敵」と判断したのはクリーチャーデッキ。選択されたメインデッキのパーツは、さながら過去のリアニメイトデッキのサイドボード後を思わせる構成ですが、“マルカ・デス”“青緑マッドネス”に対して策を講じれば、当然出てくる選択肢である様に思います。

Pernicious Deed
そもそも《破滅的な行為/Pernicious Deed》が入っているだけで、デッキの安定感は飛躍的に増すのですが、メインで墓地から釣って来る「大物」が《幻影のニショーバ/Phantom Nishoba》だけである事から、対クリーチャー戦ならこれで充分という意識が更に伝わってきます。

一方で、フル投入された《強迫/Duress》《陰謀団式療法/Cabal Therapy》や《樹上の村/Treetop Village》《ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator》は、それらクリーチャーデッキにメタを張って増加した“サイカトグ”や“オース”に対して強烈に作用したと考えられます。
現在活躍している様々なデッキに対応出来る上に、ベースとなるデッキの完成度は証明済み。2日目全勝はある意味当然の結果であった様に思います。

デッキタイプとしては、“リアニメイト”というよりはオフェンシヴな“オーズ”であるという印象を受けます。安定感が期待出来るだけに、今後のトーナメントシーンで再び人気が出る事でしょう。

■負け組なんかじゃ終われない ~ティンカー~

今シーズンのエクステンデッドが始まる少し前。
オンスロートが世に出るちょっと前ぐらいに「今シーズンのメタの中心は“リアニメイト”と“ティンカー(青茶単)”だろう」という噂話をしていたプレイヤーは少なくないと思います。

その“ティンカー”は、《激動/Upheaval》を高速で決める前に手札破壊の嵐に攻められ、開幕戦だったPTヒューストンですら満足な活躍が出来ずに沈んでいったという過去があり、サイドボードに《再建/Rebuild》や《荒残/Rack and Ruin》を用意するまでも無くトーナメントシーンから抹殺された存在になっていました。

しかしアプローチの方法次第で十二分に戦えるデッキである事を、今シーズン“ティンカー”で戦いを挑み続けているプレイヤー、桧垣貴生が証明して見せたのでした。

Higaki Takao

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クリーチャー (8)
4 Metalworker 4 Masticore
ソーサリー (8)
4 Upheaval 4 Tinker
インスタント (6)
3 Stroke of Genius 3 Brainstorm
他 (4)
4 Grm Monolith
60 カード

このデッキを負け組と位置付けしていた要因は何でしょう?
それは「キーカードの少なさ」に他なりません。

デッキの大半はマナ生成の為のパーツであり、手札破壊によってピンポイントでキーカードを叩き落とすか《破滅的な行為》によってマナ基盤を一掃すれば安全という、エクステンデッドのトーナメントに出掛ければ最も多いであろう“マルカ・デス”に対して致命的な弱点を晒し続けたのが“ティンカー”の歴史でした。

裏返せば、それを打破するのに必要だったのは「キーカードを増やす事」だった訳です。

限られた相手にしか効果が期待出来ない《ファイレクシアの処理装置/Phyrexian Processor》をサイドに落として素直に《激動》を4枚投入し、過去のデッキでは1枚である事が多かった《天才のひらめき/Stroke of Genius》を3枚に増加。自身の引き増しに加えて、ライブラリーアウトという新たな勝ち手段を手にしてデッキとしての耐性を上げているのが読み取れます。

Upheaval
動き方を考えると、このデッキは《修繕/Tinker》で大型アーティファクトを持って来るより、《激動》を撃ち込み続けてマナを溜めて時間を稼ぐ事が目的なデッキである事が示されています。
特に《次元の門/Planar Portal》がそれを如実に物語っていると考えられるでしょう。この「茶色い《魔性の教示者/Diabolic Tutor》」によって、膨れ上がったマナを生かすシステムを次々に形成出来るという訳です。

それが、これ以降の“ティンカー”の回し方であり、方向性であると考えます。

ちなみに、このFinalsの前週に行われたPTベネチア大阪予選では、桧垣と同じ広島勢の大磯正嗣が“ティンカー”で権利を獲得しています。このデッキは再びエクステンデッドの主役になる可能性を秘めている、それを感じさせる2週間だったのではないでしょうか。

問題は、もう一度メタられた時に第一線に踏み止まれるかどうか。これが焦点になります。

■過去の世界でなお進化を続ける最強生物 ~サイカトグ~

前スタンダード。環境に合わせて様々なマイナーチェンジを繰り返し、王座に君臨し続けたデッキ“サイカトグ”。このエクステンデッドの世界でも既製の形にこだわらずに柔軟な進化を続けています。

今大会で好成績を残した2種類の“サイカトグ”は、それぞれデッキコンセプトは異なっていますが、その目的は同一であると判断しましたので、同じフィールドに並べて解説をしていく事にしましょう。

Asahara Akira

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クリーチャー (5)
4 Psychatog 1 Wonder
ソーサリー (1)
1 Upheaval
他 (1)
1 Forbit
60 カード
サイドボード (15)
4 Duress 3 Deep Analysis 2 Gainsay 3 Ghastly Demise 3 Poweder Keg

Nakamura Shuuhei

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クリーチャー (8)
4 Psychatog 4 Nightscape Familiar
ソーサリー (5)
2 Upheaval 3 Deep Analysis
エンチャント (2)
2 Treachery
他 (7)
4 Lonelysandbar 3 Undergrond River
60 カード

まずは浅原のデッキから。
レシピを見て気付かれた方も多いかと思いますが、浅原のデッキには《狡猾な願い/Cunning Wish》が入っていません。これがどういう事かといいますと、回答は桧垣のデッキに用意されていた答えと一致します。

それは、手札破壊への耐性です。

《狡猾な願い》の部分を《嘘か真か/Fact or Fiction》や《噴出/Gush》に切り替えて、1枚のカードで自己完結するドローサポート呪文を詰め込む事によって、常にハンドを豊かに保つ為の構成を取っている考えられます。
特にミラーマッチにおいては「カードをたくさん引いた方の勝ち」な対戦になるのですから、この構成には納得が行きます。

また、これまで《悪魔の布告/Diabolic Edict》である事が多かった除去呪文が《燻し/Smother》に変更されている点も見逃せません。“青緑マッドネス”や“マルカ・デス”を相手にした時、共鳴者や《樹上の村》などに対象を取れる除去が必要になる場面が多々ある為です。

しかし“サイカトグ”にとって、サイドボードのスペルに頼らずにメインデッキのみで勝負するには、プレイングで回し切るという自信と実力が必要です。今では定番となった「《激動》→《サイカトグ》」直前の相手のエンドに撃ち込む《枯渇/Mana Short》が無いだけでもそれは顕著ですが、“サイカトグ”のプレイングに自信のある方は浅原の“サイカトグ”が手に馴染むと思われます。

続いて中村のデッキ。
八朔人平デザインによる中村の“サイカトグ”は、現在のエクステンデッドという環境を見事に体現していると感じます。

考えてみましょう。
今のエクステンデッドでは、主流のデッキタイプはクリーチャーデッキです。つまり手札で勝負する世界ではなく、場で勝負する世界であるという事を理解していなくてはなりません。

中村のデッキレシピを見ていくと、カウンターがわずかに8枚なのに対し《排撃/Repulse》《不実/Treachery》《燻し》と、クリーチャーに対処出来るカードが8枚も投入されており、浅原のデッキの倍のスロットを割いて対策しているのがわかります。
つまり、これが「世界はクリーチャー」と割り切った上での選択であり、それが見事にハマった好例であると思われます。カウンターをギリギリまで絞ってパーマネントコントロールを重視した構成は、色は足されていないものの、かつての“赤サイカ”を彷彿とさせます。

また、中村のデッキには“サイカトグ”で良く見かける「《直観/Intuition》→《蓄積した知識/Accumulated Knowledge》」のエンジンが投入されておらず、代わりに《綿密な分析/Deep Analysis》が3枚積まれているのも、浅原のデッキと同じく手札破壊に対しての耐性を上げる為だと思われます。

Psychatog
最後に、これは浅原・中村両者のデッキに言える事なのですが、《サファイアの大メダル/Sapphire Medallion》が入っていないのは《破滅的な行為》に流されるアーティファクトを嫌って、そのスロットをドローサポートや《破滅的な行為》で流されない《夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar》を投入する事によってアドヴァンテージを獲得しているという事です。
確かに同キャラ対戦での《サファイアの大メダル》は圧倒的な優位を築いてくれますが、それ以外の場面では劇的な効果は期待出来ないと読んでの選択だったのでしょう。

実際《夜景学院の使い魔》はブロッカーとしての機能が重要なのは、皆さん御承知の通りでしょう。

しかし、“サイカトグ”のプレイヤーは今の環境が「場」なのか「手札」なのかを判断すべく、常に神経を研ぎ澄ませておく必要がある事を付け加えておきます。

■第一線で戦い続けているデッキ ~マルカ・デス~

エクステンデッドにおいて、最も安定したデッキ“マルカ・デス”。
このデッキも“サイカトグ”同様、様々なマイナーチェンジや個々のカード選択によって昨シーズンからずっと第一線に生き残ってきましたが、今大会においてもそれは例外ではなかったようです。

Kinoshita Jun'ichi

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ソーサリー (8)
2 Living Wish 3 Cabal Therapy 3 Duress
インスタント (4)
4 Terminate
エンチャント (4)
4 Pernicious Deed
他 (8)
3 Revenous Baloth 2 Vampric Tutor 3 Wooded Fothills
60 カード
サイドボード (15)
1 Flametongue Kavu 1 Cabal Therapy 1 Duress 1 Bottle Gnome 1 Génesis 1 Thrull Surgeon 1 Faceless Butcher 1 Visara the Dreaful 1 Crypt Creeper 1 Haunting Echoes 2 Coffin Purge 3 Terror

Murakami Yuuki

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ソーサリー (8)
4 Burning Wish 3 Cabal Therapy 1 Duress
インスタント (2)
2 Terminate
エンチャント (4)
4 Pernicious Deed
他 (2)
2 Vampric Tutor
60 カード

木下・村上の両者とも、同じタッチ赤の“マルカ・デス”ですので一緒に解説をしていきましょう。

まず、基本構成は過去のレシピと比較して大差はありませんが、「天敵」として最近増加してきた“青緑マッドネス”を意識して両者とも《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》がメインから投入されています。
特に村上のレシピでは《火炎舌のカヴー》が3枚も投入されており、その分手札破壊呪文が少なめになっていますが、これは先程も説明した通り環境が「場で勝負」になっている事の表われと言って良いでしょう。

また、本来「土地を並べるデッキ」である“マルカ・デス”にフェッチランドが投入されているのが少し気になりましたが、これだけ赤いカードがデッキの中に増加してくるとやむを得ないといった所でしょうか。実際に回してみましたが、安定して「緑緑黒赤」のマナを揃える為にはギリギリのラインであるように思えます。

しかし、デッキのギミックとして村上のデッキに4枚フル投入されている《燃え立つ願い/Burning Wish》が光ります。

これは同キャラ対戦を特に意識した構成だと思われますが、一般に同キャラ対戦では《生ける願い/Living Wish》を多く引いた方が場を有利に進める事が出来ます。しかしデッキに4枚の《生ける願い》を積むスロットは無い事から引きゲーになる事が多かったのですが、村上は「タッチ赤」の特性を最大限利用して、デッキの中に《燃え立つ願い》と《生ける願い》を4枚ずつデッキに組み込む事に成功しています。

Burning Wish
そう、それは極めて単純ですが《燃え立つ願い》→《生ける願い》のコンボです。

潤沢にマナを揃えられる上にデッキスピードが比較的穏やかな“マルカ・デス”だからこそ出来る芸当ですが、クリーチャーだけでなく強力なソーサリー呪文を用意出来る事によって、更に勝率を高める事が出来るでしょう。

ただ、良くも「悪く」も安定したデッキだった“マルカ・デス”。どんなデッキに対しても安定して勝つ反面、どんなデッキにも安定して負けるのがこのデッキのツラい所でしたが、今回の結果を受けていよいよデッキを「尖らせる」工夫も必要な時代に差し掛かったと考えて良いのではないでしょうか。

■全ての“サイカトグ”に死を ~赤スライ~

真に特化した赤スライは“マルカ・デス”でも止める事は出来ない―――。

GP Reimsで証明された史実は再び繰り返されました。特に国内では“サイカトグ”が人気・実力ともにジリジリと上昇している現状から、その圧倒的な相性の良さで再び「赤い旋風」が起こる可能性は決して低くはないと考えます。

しかし、赤の天敵である《野生の雑種犬/Wild Mongrel》を擁した“青緑マッドネス”の増加が赤の進行に待ったをかけます。“赤スライ”を選択するプレイヤーは、まず使用する時期を見極める事が大事になってきそうです。

Iwai Tsuyoshi

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ソーサリー (4)
4 Reckless Charge
インスタント (3)
3 Lava Dart
アーティファクト (2)
2 Cursed Scroll
エンチャント (4)
4 Seal of Fire
他 (9)
3 Grim Lavamencer 2 Spark Smith 4 Wooded Foorhills
60 カード
サイドボード (15)
1 Spark Smith 2 Cursed Scroll 4 Pillage 3 Ensnaring Bridge 2 Fledgling Dragon 2 Mogg Salvage 1 Masticore

■空飛ぶ非常識 ~青緑マッドネス~

「“マルカ・デス”がスタンダードの“青緑”に勝てないよ?」
友人達とこんな話をしていたのが11月の終わり頃でしたが、それから1ヶ月で“マルカ・デス”の「天敵」として一気にエクステンデッドの世界に殴り込みを掛けてきたデッキが“青緑マッドネス”です。

空を飛ぶ非常識なサイズの生物達は瞬く間にメタの一角に食い込むまでになり、その強さ、エクステンデッドでは重要な要素である「デッキ構築コストの安さ」から、一躍人気デッキの仲間入りを果たしました。

Shimura Ichirou

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Aquamoeba
とにかくテンポを最優先に空から急襲していくのが唯一絶対の展開手段で、アドヴァンテージが取れる《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter》ではなく《アクアミーバ/Aquamoeba》を採用しているあたりからも、デッキ構成が「最も早く20点のダメージを叩き込む」という一点に特化している事が読み取れます。

しかし徐々にこの“青緑”に対するマークは厳しくなっており、年明け以降は思うような成績が残せるかどうか、微妙なラインにいます。実は私もエクステンデッドでは“青緑マッドネス”を使っているんですが、年明け以降も使うかどうか正直悩んでいます。
とは言えまだまだ発展途上のデッキ。ここから先は各プレイヤーのカード選択にかかってくると思います。

■結論は「混沌」

今回勝ち上がったデッキの他にも、“オース”“スーサイド・ブラック”“白黒青ジャンク”“白青パニッシャー”“爆発ドラコ”などの有力デッキも、手を変え品を変えトーナメントの舞台に名乗りを上げて来ると思います。
今回の結果から全く新しいデッキが生まれる可能性もありますし、まだこのレシピが通用するかも知れません。今現在負け組のデッキが、今大会のように突然蘇って来る可能性だってあります。今ある情報から「これから」を読み取って、嗅ぎ取って、感じ取って。激動の2003年のスタートを乗り切っていく事にしましょう。

それでは、また機会があればお会い致しましょう。
(文中敬称略)

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