参照:参照:2001 GP Shizuoka Event Coverage2001 GP Shizuoka Event Coverage
山田屋耕平今やあたりまえのように日本国内でグランプリが定期的に行われている中で、ここ静岡も二度目の大会のホスト地となり、晴れて「定番開催地」の仲間いりをはたすこととなった。ちなみに、前回のグランプリ静岡はちょうど2年前にオデッセイという当時の最新エキスパンションがリリースされた直後の大会で、フォーマットはリミテッドだった。時期でいうと…森勝洋がトロントの世界選手権でKen Hoとの熾烈なデッドヒートを果たし、新人王(Rookie of the Year)タイトルを獲得したあとの秋の日である。
オデッセイというのは《炎の稲妻/Firebolt》のフラッシュバックや《熊人間/Werebear》のスレッショルドといった「墓地」にかかわるメカニズムをフューチャーしたブロックで、悪名高い《サイカトグ/Psychatog》や《激動/Upheaval》、それに《野生の雑種犬/Wild Mongrel》に《獣群の呼び声/Call of the Herd》といった強力なカードを含むセットでもある。そうそう、先日エクステンデッドで禁止されたばかりの《納墓/Entomb》もオデッセイであった。ちょうどマネードラフトの普及でリミテッドを日常的に愉しむプレイヤーが国内でも爆発的に増えた頃でもあり「《セファリッドの物あさり/Cephalid Looter》と《野生の雑種犬/Wild Mongrel》のどちらをファーストピックとすべきなのか」といったドラフティングの命題を覚えてらっしゃる方も多いのではないだろうか。
しかしながら、振り返ってみると…グランプリ静岡当時のオデッセイ・ブロックというのはまさに黎明期そのもので、たとえばEivind Nitterがプロツアー・ニースで優勝したときにドラフトしたデッキのメインディッシュとなった《入門の儀式/Rites of Initiation》のような「わかりにくい」カードの潜在能力はごく一部のプレイヤーにしか認識されていない状況だった。
初日予選のシールドデッキというフォーマットが大きく運の要素に左右されてしまいがちだったことに否定の余地はまったくないが、それでも未開拓のフォーマットのロチェスター・ドラフトという激戦を勝ちあがったものたちは…ほとんどが既に全国区で名前をあげている強豪ぞろいであった。予選ラウンドを首位で駆け抜けたのは新人王を獲得した勢いそのままに快進撃を続けていた森勝洋で、後にPS2のチームメイトとして森とともにマスターズチャンピオンに輝くことになる森田雅彦が二位につけている。森と森田だけでなく…愛知の塩津龍馬、フランスからはるばる遠征してきたOlivieri Ruel 、元日本王者の堂山剛志、さらにチームPanzer Hunterの切り込み隊長安藤玲二…とまだまだビッグネームが名を連ねており、今になって当時の記事を振り返ってみても実に壮観なトップ8である。
top 8 bracket
そして、そんな強豪ひしめく決勝ドラフトで異彩をはなったのが大阪の「元祖シルバーコレクター」森田雅彦と東京の知られざる山田屋耕平だった。
森田雅彦が作り上げたのは当時見向きもされていなかった二枚の「ゴミコモン」を組み合わせて瞬間的に大ダメージを与えるという脅威のシークレット・テク、通称「真空波動拳」をフューチャーした赤緑ビートダウン・デッキで…実際に《意気沮喪/Demoralize》と《入門の儀式/Rites of Initiation》の二枚は「残り数枚」という段階でピックできるというほど知られていないカードだった。
一方の山田屋のドラフティングで光っていたのはアマチュア・プレイヤーらしからぬ豪胆さで、《セファリッドの皇帝アボシャン/Aboshan, Cephalid Emperor》、《石舌のバジリスク/Stone-Tongue Basilisk》、《玉虫色の天使/Iridescent Angel》という三枚のレアをピックしてデッキに投入して見せていた。
素晴らしい着眼点によって隠れたコンボを発見した「技」の森田と、《森/Forest》6+《平地/Plains》6+《島/Island》5+《広漠なるスカイクラウド/Skycloud Expanse》1というマナベースで3枚の強力なレアをフューチャーしたデッキを組み上げた「力」の山田屋。まさしく対照的な二人によるカードによってグランプリ静岡の最終戦は争われることになった。
そして…柔よく剛は…制さず、山田屋耕平がアマチュア・プレイヤーにしてグランプリチャンピオン獲得という日本初の快挙をなしとげたのが2001年グランプリ静岡の最終結果である。ちなみにオデッセイ・ブロックというのは多くのアマチュア・プレイヤーのグランプリチャンピオンを生み出したことで後に語り草となったほどで、荒堀和明が仙台(エクステンデッド)で、熊谷真一(オデッセイ・ブロック構築)が札幌で栄冠をつかみ取っている。
そんなわけで、二年前のグランプリ静岡をふりかえってみると「アマチュア・フィーバー」ともいうべき新人豊作の一年の先駆けとなった大会であった。はたして第二回静岡グランプリではどのようなドラマが繰り広げられるのだろうか?