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BLOG
GPバンコク王者、森田 雅彦のグランプリ初日
このコーナーでは、つい先日行われたGPバンコクを優勝した森田 雅彦プロのグランプリ北九州・1日目における戦いぶりを紹介し、デッキ構築の段階から、1日を戦い終えての感想・反省まで詳しくお届けします。
1日目のフォーマットとなっているのはシールド戦。森田プロの感想を参考に、みなさんも是非ローウィンのシールド戦を楽しんでみて下さい。
ローウィンのシールド戦って?
森田 雅彦
まずトーナメント開始前、森田にローウィンの限定戦について簡単に印象を聞いてみた。
筆者 「森田さんは先日行われたグランプリ・バンコクでも優勝されていますが、ローウィンの限定戦はどれくらい練習されていますか?
森田 「練習量はそこそこといった感じですね。GPバンコクの時にプロポイント1点がとにかく欲しかったので、2日目のフォーマットであるドラフトの練習はひとまず置いておいて、1日目のフォーマットであるシールドの練習を重点的に行っていました」
筆者 「そういった練習をしてきた中での、ローウィンのシールド戦における印象を教えて下さい」
森田 「ドラフト戦だとドラフトのピック段階で意識をして集めれば部族のシナジーを活かしたデッキが組めるので、自軍のカードとカードが連動させて戦う感じの戦いとなりますが、シールド戦はランダムに与えられたカードプールの中からデッキを組むので、そう都合よく部族のシナジーを活かしたデッキは組めません。シールド戦は、カード単体でのスペックで戦う感じですね」
筆者 「なるほど。各色の強さについてですが、何色が強いと思われますか?」
森田 「プールの大半を占めることになるコモンだけで見た場合、青が一番ですね。《熟考漂い》を始めとして全体的にカードの質がよく、強い印象を受けます。そして、次に強いのが白ですね。《忘却の輪》といった除去カードもありますし、クリーチャーも飛んでいるものが多いので。 僕の場合は実際の練習でも、青白のデッキに赤や黒の除去カードをタッチで入れるといった構築になることが多かったですね」
筆者 「除去カードをタッチして、デッキの色を増やすとデッキの安定性が落ちますが、タッチしてでも入れるべきでしょうか?」
森田 「そうですね。生かしておいては駄目なクリーチャーが多い環境なので。 構築時のイメージとしては、クリーチャーの質・枚数が揃っている2色を中心にデッキを組んで、タッチで入れたい除去を詰め込むといった感じです」
除去を詰め込んでデッキは多色になるものの、あくまでデッキの屋台骨は2色でしっかり組むということである。試合で色事故を起こしてしまったら元も子もないので、多色化をサポートできるカードの枚数と相談しながら節度を持ってデッキ構築を行いたいところ。
大会開始、そしてデッキ構築
森田のシールド構築術は二色をベースに除去をタッチするスタイルだ
ヘッドジャッジによる開会宣言で大会がスタート。353名による戦いが始まった。
いよいよパックが配布され、デッキ構築がスタートする。
・各色にある除去の確認
森田はまず最初に、事前に最重要と語っていた除去を各色に何があるかを確認する。今回、森田が開封したパックからは...
無色:《ツキノテブクロのエキス/Moonglove Extract》2枚
黒:《名も無き転置/Nameless Inversion》1枚、《雑草の絡めとり/Weed Strangle》1枚
緑:《木化/Lignify》1枚
赤:《焼夷の命令/Incendiary Command》1枚、《雷雲のシャーマン/Thundercloud Shaman》1枚
...といった除去カードが出たようだ。
森田 「2枚出た《ツキノテブクロのエキス》は、絶対に腐らないので嬉しいですね。また、今回出た《名も無き転置/Nameless Inversion》は個人的にはこの環境のTopコモンカードだと思っているので、これも嬉しいですね」
除去カードには、そこそこ恵まれた内容だったようだ。
・各色にあるクリーチャー陣の確認
除去カードの確認の次は、クリーチャーカードの確認だ。色ごとにマナコスト順でカードを並べてゆく。
森田 「正直厳しいですね」
今回の森田のパック内容は、どの色も生物の強さ・枚数ともに足りておらず、組むのが難しいパックのようだ。
・デッキ構築
各色ともクリーチャーカードの枚数・質ともに不足している苦しい状況において、森田はどうデッキ構築を行うのか?
森田は、デッキの多色化をサポートできる《肥沃な大地/Fertile Ground》が2枚あるので、メインに据えた2色をベースに3色目のカードは多少色拘束の厳しいカードでも積極的にデッキに入れてゆくといった方向になりそうだ。
森田 「《肥沃な大地》が2枚あるから、土地も16枚に削ろうかな。ローウィンの環境は、激突があるから意外と事故らないんですよね」
まぁ、時にはある程度セオリーを無視して無理してでもデッキパワーを求めて構築を行わないといけないと。
森田 「青緑タッチ黒になりそうですが、緑は練習でもほとんどやったことが無い色なのが不安です」
そして、出来たデッキがコレ!
筆者 「デッキの点数としては、どれくらいでしょうか?」
森田 「55点ですね(苦笑)」
デッキ構築時間が終了し、いよいよラウンドがスタートした。
不戦勝(Bye)の間に
森田はプロポイントによる3 Bye(不戦勝)を所有しており、ゲームを行うのはRound 4から。 Round 4が開始されるまでの間、仲間達と一緒に構築にミスが無かったかどうか検討をしてみたり、ゲームをしてデッキの感触を確かめてみたりして時間を待つことになる。
そろそろRound 4が始まるといったタイミングで、現時点で新たに気がついた事や、デッキ構築ミスが無かったかどうか聞いてみた。
森田 「構築の段階から分かっていましたけど、実際にゲームをしてみると想像以上にデッキが弱いですね。仕方が無く数合わせでデッキに入っているクリーチャーが多かったりと、クリーチャーの質が全体的に悪いのが決定的すぎます。《肥沃な大地》2枚・《鮮烈な小川》から色マナは出るんで、《概念の群れ/Horde of Notions》を投入するくらいのテコ入れが必要だったかもしれません」
森田としては、今日は厳しい戦いとなりそうだ。
Match Report
R4 vs.ナカムラ タカヒロさん(青白タッチ赤)
勝ち(×○○)
森田 「相手は《チャンドラ・ナラー》《黄金のたてがみのアジャニ》という2枚のプレインズウォーカーを搭載している強いデッキでした。運よくこちらに都合がよいゲーム展開となり、勝つことが出来ましたがデッキの弱さを改めて実感するゲームでした。」
R5 vs.ヤマシタ ヒデトシさん(4色レインボー)
負け(××-)
森田 「パワーカードを詰め込んだ多色デッキなので、普通に回られればカードパワーの差で負けるという(苦笑)」
R6 vs.マエダ ケンタロウさん(赤青タッチ白)
勝ち(×○○)
森田 「1ゲーム目を《焼夷の命令》で負け、サイドインした《思考囲い》が大活躍でした。後の2ゲームで、都合よく《チャンドラ・ナラー》を《思考囲い》でハンデスできたのが勝因ですね」
R7 vs.ウエマツ コウイチさん(緑青タッチ白)
負け(××-)
森田 「2ゲームとも、2ターン目に《レンの地の克服者/Wren’s Run Vanquisher》が出てきてビートが展開される厳しい展開でした。1本目に見た《レンの地の克服者》はノーマルで、2本目に見た《レンの地の克服者》は光っているという。最後は、《活力/Vigor》に殴り殺されてGGでした。」
R8 vs.クロダ マサシロさん(赤青タッチ黒)
勝ち(×○○)
「1ゲーム目を《焼夷の命令》で負け、2本目から青緑タッチ白のデッキに変形されたのですが、うまく勝つことができました。この環境は、サイドからデッキを変形するケースが多いですね」
1日を終えての感想
結局、森田は1日目を6勝2敗の43位で終えた。
森田 「やはりというか、デッキ構築を間違えていました。最初に組んだデッキは青緑タッチ黒でしたが、緑黒タッチ青といった形にしたほうが良かったようです」
筆者 「具体的にはどういった改善でしょうか?」
森田 「環境的に、僕が最初に選択した《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》《休賢者/Fallowsage》《紙ひれの悪党/Paperfin Rascal》といったカードよりも、長期戦で強かったりアドバンテージを取れる《ウーナのうろつく者/Oona’s Prowler》《泥棒スプライト/Thieving Sprite》《思考囲い/Thoughtseize》といったカードを選択したほうが良かったです。ローウィンのシールド戦は、ゆったりとした展開なので」
森田ほどのプレイヤーでも、なかなかに正解にたどりつけないのがこのローウィンのシールド構築。しかし、カードプールが悪いなら悪いなりに、弱いなら弱いなりに、ラウンドの間にサイドボーディングのプランを調整し、最終的な落としどころを見つけられたところはさすがだ。ドラフト巧者の森田だけに、とりあえず二日目にさえ残れれば、という部分も少なからずあっただろう。
果たして、森田の二日目は...?
示唆にとんだ森田のコメントが、みなさんのお役にたてれば幸いだ。
初日全勝者インタビュー
部族シナジーを重視したセットであるがゆえに、部族同士がかみあわなかった時の(特にコモンの)カードパワーの全体的な低さと、《叫び大口/Shriekmaw》《熟考漂い/Mulldrifter》などの想起クリーチャーに代表される容易に1:多交換が可能なカードがあふれていることから、難易度の高いものとなったローウィンシールド。
ここではそんなローウィンシールド8回戦の荒波を、無敗でくぐり抜けた3人に、その構築についてインタビューしてみようと思う。
また、Round 4での三原 槙仁(東京)(勝負)や中島 主税(神奈川)(7勝1敗)に代表されるように、サイドボード後の大きな変更が目立ったこともひとつの大きな特徴であった。
したがって、登録されたメインボードと、実際のデュエルで変更が多かった点、特にほぼ毎回のデュエルでサイドボーディングされた点にも焦点を当ててみることにしよう。
■朴 俊映(韓国)
韓国籍の朴 俊映ではあるが、十二分に日本語でコミュニケーションが可能だったため、インタビューは非常にスムーズに行われた。
なお、トピックとしてここまで大きく取り上げられてこなかったことだったが、このグランプリ北九州は、韓国や台湾といったアジア圏からの参加者が非常に多いイベントであったことも追記しておこう。
- 「まずは、デックの中で活躍したカードを教えてください」
朴 「そうですね...いっぱいありますが(といって、デックの中から、《活力/Vigor》《光り葉のナース/Nath of the Gilt-Leaf》《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》《叫び大口/Shriekmaw》《増え続ける成長/Incremental Growth》といったカードをピックアップしつつ)、やっぱりこれですかね...」
といって、朴が筆者に提示したのは、《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》であった。
すでに都道府県選手権での活躍は周知の事実であり、超構築級のカードであることが判明している《野生語りのガラク》だが、リミテッドにおいてもそのカードパワーは、破格なものであった。そこらかしこから「《野生語りのガラク》1枚で負けたー」といった声も聞こえてきたくらいである。
朴 「もちろんトークンを出す能力も強いんですが、(環境が遅いために)マナを加速するアンタップの能力も活躍しましたね。特に、《平地/Plains》が4枚しかないので(白マナの供給が不安定だったので)《雲山羊のレインジャー》のダブルシンボルを出すのに活躍しましたね。」
マナベースの不安定さや、アドバンテージ重視が故のテンポの悪さについても意見が大きく分かれることとなったこのローウィンシールド。その不安要素を一気に緩和できるからこそ《野生語りのガラク》は構築以上の働きを見せるのだ。
さらに《野生語りのガラク》についての朴の説明は続く。
朴 「《雲山羊のレインジャー》といえば、小さいトークンを並べるカードも多く入っているので、《野生語りのガラク》の3つめの能力が一気にゲームを決めたことが多かったです。そういう意味では《増え続ける成長》も大活躍でした。」
なるほど。全体のカードパワーの高い朴のデックの中でも、《野生語りのガラク》は特にパワーが高いのみではなく、全体の潤滑油としての活躍も大きかったようだ。
さらに、構築の反省点と、変更が多かったカードを聞いてみた。
朴 「そうですね...多色になるだろうと思っていましたが2色にタッチ1色の3色にまとめられたのは非常に運がよかったですし、そういう意味ではパックに恵まれてそれをうまく生かせたと思います。変更したカードは...《骸骨の変わり身/Skeletal Changeling》ですかね。これはちょっと弱かったです。毎回《夜明けヒラメ/Dawnfluke》に変更してました」
《夜明けヒラメ》とは...確かにあまり目にすることの少ないカードだが、インスタントスピードのトリックの少ない朴のデックの場合はそれなりに渋い活躍を見せたようだ。
実際、朴は全勝のかかったRound 8の三田村 和弥(千葉)でも《夜明けヒラメ》をサイドインし、中盤の接戦を優位に進めていた。
《野生語りのガラク》単体のカードパワーだけではなく、それを周りのパワーカードで活かせる構成にできたのが朴の勝因だろう。
■今川 浩匡(大阪)
大阪の若手として「うみんちゅう」の愛称で知られる今川 浩匡。浅原 晃(神奈川)との最後のトップデック合戦に関して「はずかしいからあんま書かんといてください」と笑いながらインタビューに答えてくれた。
今川 「キーとなったカードですか...《叫び大口》が2枚あったことですかね」
黒のクリーチャーが全体的に貧弱であり、畏怖が圧倒的に強い中、3/2という攻撃的なボディに畏怖がついたクリーチャーが弱いわけが無い。しかも、それに《恐怖/Terror》がついているのならばなおさらだ。
単体のカードパワーが重視される事が多い初日のシールドだったが、大抵のレアよりも、アンコモンの《叫び大口》の方が重要だったと語るトッププロも多かった。
今川 「たいていの強いレアは、たとえばさっきの浅原さんだと《鏡の精体/Mirror Entity》ですけど、これだけで対処できちゃうんですよね。」
この《叫び大口》を緑・黒の《命令/Command》で協力にサポートできたため、ほとんどのゲームは優位に進められたという。
今川 「特に除去が多かったのが強かったですね。また、大抵の除去も《スズメバチ騒がせ/Hornet Harasser》や《泥デコの松明走り/Mudbutton Torchrunner》のようにクリーチャーなので《不敬の命令/Profane Command》や《足の底の饗宴/Footbottom Feast》で使いまわせたのが大きかったです。」
続いて、変更について聞いてみた。
今川 「構築後にローリーさん(藤田 剛史(大阪))にアドバイスもらったんですけど、《泥棒スプライト/Thieving Sprite》と《嘆きウェルク/Mournwhelk》は毎回サイドインすることになりました。」
手札破壊がゲームをさらに優位にしてくれたという。余談だが、《泥棒スプライト/Thieving Sprite》は地上を固めあうトップデック合戦となった浅原戦において、最後の1点を削るのにも活躍してくれていた。
ちなみに、逆に毎回のようにサイドアウトされていたのは《最後のお祭り騒ぎ/Final Revels》で、理由は「自分のクリーチャーが小さくておいしくない場面が多かったから」とのこと。
今川 「あと、《叫び大口》が除去しながらテンポ稼いでくれるので、毎ゲーム先手を取れたのが大きかったですね。」
アドバンテージ環境だからこそ、後手を選択するプレイヤーが多かったのも、また事実。そんな中で、先手でアグレッシブに攻められる形のデックとなったのも、今川の勝因だったのだろう。
■津村 健志(広島)
最後は、「広島の産んだ麒麟児」津村 健志。
この数週間で一気に混戦に持ち込まれてしまったPlayer of the Yearレースだったが、今回の初日全勝によって、巻き返しに大きく期待ができることとなった。どうやら、今シーズンでの自身2度目のPoYには本人も期するところが大きいようだ。
津村 「やっぱり、この環境はサイドボーディングが重要ですね。特に、決定的な相性差や渡りのせいでどうにもならなくなるゲームが多いので、それに少しでも対処できるようにしていくのが必要です。」
膠着しやすいがゆえに、突破力が求められる。
だからこそ、飛行や畏怖の回避能力をもちつつアドバンテージを稼げる《熟考漂い》《叫び大口》が強い、と言われているのだが、津村は「渡り能力」を持つクリーチャーの多さも指摘している。
津村 「渡りに対処できないだけで負けるゲームもありますし、対応する渡りクリーチャー入れるだけで勝てるゲームもあります。特に(マーフォークによって)島渡りが多いので、(自分のカードプールで)同じくらいの強さだったら青をできるだけ使わないっていうくらいです。」
コモンに優良カードが多数あり、環境最強色とも名高い青。だが、逆に津村はその青をできることならば避ける選択も時には必要であるという。なるほど、単体のカードのパワーではなく、環境全体への理解が深いからこその発言である。
- 「なるほど。今回赤黒の2色でまとめあげて、青を避けたのもそういう理由ですか?」
津村 「いや、この2色だけ異常に強くて、あとは弱すぎたので自動的にデッキができあがっちゃった感じではありましたね。過去最も構築時間をあまらせました。」
とはいえ、終了後に反省点が無かったわけではない。
津村 「対戦相手がほとんど緑だったので《炉かごの巨人/Hearthcage Giant》はほとんど活躍できませんでしたね。逆に、デッキにエレメンタルが意外と多かったので、序盤の展開を助けるために《煙束ね/Smokebraider》をサイドインするのがほとんどでした。」
やはり、序盤のマナ展開は大きなキーであったようだ。
三者三様、それぞれがそれぞれのデックで勝ったという印象だが、共通して言えたのは単体のカードパワーだけでなく、デック全体のバランスや、マナ展開のスムーズさに助けられたという点であった。
そういう意味で、やはり樽 元気(神奈川)の着眼点は敬服に値するものであったと言えるだろう。
Draft Report: 第1ドラフト1番卓
Draft Report: 第1ドラフト1番卓
By Naoaki Umesaki
栄光の1番卓、(左上から時計回りに)森、川田、Tsai、今川、Park、三田村、浅原、津村
1日目を勝ち残った64名の選手達による2日目が始まった。 2日目のフォーマットであるドラフト戦は、1日目のフォーマットであったシールド戦とは大きく違い、ドラフトでのピック選択によって戦略的にデッキに使うカードを集められるので、真の意味で種族がメインテーマであるローウィン限定戦(リミテッド)の腕が問われる勝負となる。
早速、第1ドラフトの第1番ドラフト卓の様子をお届けしたい。
席順は以下の通りとなった。
1番席:今川浩匡
2番席:Tsai Chih-chun
3番席:川田千尋
4番席:森勝洋
5番席:津村健志
6番席:浅原晃
7番席:三田村和弥
8番席:Park,Jun-Young
森・津村・浅原・三田村の4人が並んでいる分のドラフトレポートは他の記事で紹介されるので、こちらの記事ではその反対側に位置する初日全勝の今川 浩匡(大阪)を中心としたドラフトレポートをお届けしたい。
「ドラフトはまったく練習していないので、特に戦略というのはありません。ただ、ある程度デッキを種族で固めたほうが良いと友人から聞いているので、それだけは意識してピックをしたいと思っています」と謙虚に語る今川。
ローウィンというエキスパンションは、同じ種族で集めることによって初めてカードパワーを発揮するカードが多い。もちろん、種族に依存しないドラフト戦術もあるのだが、考え無しにそういった種族を無視したドラフトをすれば、デッキに入れたいレベルの強さを持ったカードの枚数が足りなくなり、結果として弱いカードがデッキに入ってしまい失敗となるだろう。
今川は、どんなドラフトを見せるのか? それでは、ドラフトスタート!
1 Pack目
今川は《白熱の魂炊き》からスタート!
1手目⇒《白熱の魂炊き/Incandescent Soulstoke》
他の候補:《外身の交換/Crib Swap》《エレンドラ谷の衛兵/Sentinels of Glen Elendra》
2手目⇒《やっかい児/Pestermite》
他の候補:《首のへし折り/Neck Snap》《葉光らせ/Leaf Gilder》
3手目⇒《白熱の魂炊き/Incandescent Soulstoke》
他の候補:《ルーン刻みの鍾乳石/Runed Stalactite》《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》
4手目⇒《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》
他の候補:《砕けた野望/Broken Ambitions》
5手目⇒《輝き帯び/Glarewielder》
他の候補:《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》
6手目⇒《低地の鈍愚/Lowland Oaf》
他の候補:《一握りの力/Fistful of Force》《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》
7手目⇒《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》
他の候補:《鮮烈な小川/Vivid Creek》
8手目⇒《嘆きウェルク/Mournwhelk》
他の候補:《自我の消去/Ego Erasure》
9手目⇒《煙束ね/Smokebraider》
他の候補:《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte》
10手目⇒《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte》
11手目⇒《ボガートの丸太運び/Boggart Loggers》
12手目⇒《アシュリングの特権/Ashling’s Prerogative》
13手目⇒《羽軸投げのボガート/Quill-Slinger Boggart》
14手目⇒《炎族の喧嘩屋/Flamekin Brawler》
15手目⇒《沼のチンピラ/Bog Hoodlums》
初手と3手目でエレメンタルの王様である《白熱の魂炊き/Incandescent Soulstoke》をピックして、エレメンタルを中心としたデッキを目指す展開となった。 2・3パック目で、強いエレメンタルを集めて《白熱の魂炊き》を活かしたいところだ。
2 Pack目
1手目⇒《熟考漂い/Mulldrifter》
他の候補:《雑草の絡めとり/Weed Strangle》《外身の交換/Crib Swap》《突風粉の魔道士/Galepowder Mage》《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》
2手目⇒《熱の陽炎/Heat Shimmer》
他の候補:《コショウ煙/Peppersmoke》《キンズベイルの風船使い/Kinsbaile Balloonist》《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte》
3手目⇒《タール火/Tarfire》
他の候補:《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》《キスキンの大心臓/Kithkin Greatheart》
4手目⇒《タール火/Tarfire》
他の候補:《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》《鳥の変わり身/Avian Changeling》《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》
5手目⇒《炎族の先触れ/Flamekin Harbinger》
他の候補:《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》
6手目⇒《炎族の反乱/Rebellion of the Flamekin》
他の候補:《鋳塊かじり/Ingot Chewer》《三つ目巨人の視線/Triclopean Sight》
7手目⇒《嘆きウェルク/Mournwhelk》
他の候補:《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》
8手目⇒《内炎の点火者/Inner-Flame Igniter》
他の候補:《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》《木化/Lignify》
9手目⇒《足の底の饗宴/Footbottom Feast》
他の候補:《ヴェリズ・ヴェルの翼/Wings of Velis Vel》
10手目⇒《ツキノテブクロの選別者/Moonglove Winnower》
11手目⇒《樫族の戦士/Kashi-Tribe Warriors》
12手目⇒《鋳塊かじり/Ingot Chewer》
13手目⇒《樫族の戦士/Kashi-Tribe Warriors》
14手目⇒《森のこだま/Sylvan Echoes》
15手目⇒《薬草の湿布/Herbal Poultice》
2 Pack目を終え、火力も取れてメインカラーとなるであろう赤の地盤は固まった感じだが、まだ2色目が決まっていない印象だ。赤いカードを中心に集めて2色目を保留気味にすることで、ドラフトの流れに柔軟に対応できるとも言えるが、果たしてどうなるか。
3 Pack目
1手目⇒《霊気撃ち/AEthersnipes》
他の候補:《タール火/Tarfire》《輝き帯び/Glarewielder》
2手目⇒《霊気撃ち/AEthersnipes》
他の候補:《タール火/Tarfire》《ワンダーワインの預言者/Wanderwine Prophets》
3手目⇒《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》
他の候補:《炎族の刃振り/Flamekin Bladewhirl》《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》
4手目⇒《輝き帯び/Glarewielder》
他の候補:《ゴールドメドウの侵略者/Goldmeadow Harrier》《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》《泥デコの松明走り/Mudbutton Torchrunner》
5手目⇒《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》
他の候補:《増え続ける成長/Incremental Growth》《木化/Lignify》《巨人の先触れ/Giant Harbinger》
6手目⇒《思考囲い/Thoughtseize》
他の候補:《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》《タール投げ/Tar Pitcher》
7手目⇒《薬草の湿布/Herbal Poultice》
他の候補:《民兵団の誇り/Militia’s Pride》《ヴェリズ・ヴェルの翼/Wings of Velis Vel》
8手目⇒《ヴェリズ・ヴェルの刃/Blades of Velis Vel》
他の候補:《エルフの行列/Elvish Promenade》《炎族の喧嘩屋/Flamekin Brawler》
9手目⇒《炎族の喧嘩屋/Flamekin Brawler》
他の候補:《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》
10手目⇒《夜明けヒラメ/Dawnfluke》
11手目⇒《炎族の刃振り/Flamekin Bladewhirl》
12手目⇒《夜明けヒラメ/Dawnfluke》
13手目⇒《鋳塊かじり/Ingot Chewer》
14手目⇒《森のこだま/Sylvan Echoes》
15手目⇒《薬草の湿布/Herbal Poultice》
今川 「3パック目は、《霊気撃ち/AEthersnipes》を2枚取れたのはよかったんですけど、結局デッキの構成がグチャってしまい微妙なデッキになってしまいました。2色に1色タッチするという感じを超えて、均等3色では無いんですけど、それ一歩手前の赤メインな赤青黒というか。」
完成したデッキは、こちら。
今川の上席であるPark,Jun-Youngのデッキは、序盤からのビートダウンすることを意識した感じの綺麗な緑白ツリーフォーク/エルフ。 朴は緑白エルフ/ツリーフォーク
下席のTsai Chih-chunのデッキは、ほぼ白単気味のキスキンデッキとなっており、赤が火力のためにタッチされているというこちらも綺麗なデッキだ。
今川の上下に座っているプレイヤーのデッキ情報を見ると、色・種族の住み分け強調も出来ていること感じられるので青いカードがもっと取れていてもよさそうな感じだが、3番席の川田に加えて5~7番席のプレイヤーのデッキが全員青という事態になっており卓内に青いデッキを目指したプレイヤーが多かった為に、青を目指した今川がハマってしまった格好となってしまったようだ。
エレメンタルを部族として選択する上でのキーカードである《煙束ね/Smokebraider》が多く取れていると、通常だと無理な多色化も可能になるのだが...今回は1枚しか取れていない。卓内の情報を見ると単純に出ていない様で、この不運も今川にとっては厳しいところだ。
Round 8、今川の相手はPark,Young-Jun(韓国)。初日全勝同士の対決である。熱戦を期待したい。
Round 9 ダイジェスト
舞台をドラフトに移して、栄光の決勝ラウンドを目指す二日目戦いの火蓋が切って落とされた。
単純なカード一枚のクオリティが問われたシールド戦とは違って、全体としてのまとまり、部族シナジーによるプラスアルファを問われる戦いになることだろう。
今川 浩正(大阪) vs. 朴 俊英(韓国)
全勝の二人が直接対決: 朴 vs. 今川
今川: 赤黒タッチ青/エレメンタル
朴: 白緑/ツリーフォーク・エルフ
まずは全勝対決。先ほどのドラフト記事でも紹介された1番卓から今川と朴が登場する。
Game 1
まずは先手の朴が《ツリーフォークの先触れ/Treefolk Harbinger》で《森/Forest》をサーチ。対して、今川は《煙束ね/Smokebraider》から4/2速攻の《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte》を召喚し、ダメージレースで先行を試みる。しかし、朴の《一握りの力/Fistful of Force》によって《先触れ》が巨大化し、このプランは出鼻を挫かれてしまう。
しかし、朴の後続である2/4《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》を今川が《霊気撃ち/AEthersnipes》でバウンスし、今川がこの4/4エレメンタルでビートダウンをスタート。
朴は《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》を再召喚。続くターンには瞬速《茨角/Briarhorn》による強化能力をからめて対抗しようとするが(対象2/4トネリコ)、今川も《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》でトネリコを除去し、それを許さなかった。
ここで朴は戦線に《エルフの小間使い/Elvish Handservant》を加え、続けざまの多相《森林の変わり身/Woodland Changeling》召喚でさっそくこれに+1/+1カウンターを置いた。双方、ここから殴り合いのダメージレースを開始する。
今川はマナをアンタップさせたまま《霊気撃ち》でのアタックを継続し、朴も殴りあいに応じる。まもなくライフレースは10対12で朴がわずかにリードという状況になり、朴は4/4《種導きのトネリコ/Seedguide Ash》をブロッカーとして呼び出してターンを返した。しかし、すぐさまエンドステップに今川が《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》でこれをバウンスし、さらに《足の底の饗宴/Footbottom Feast》で墓地の《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte》を回収する。
このエンドステップでのアクションから、4/2速攻と4/4で今川がアタック。ライフレースはとうとう10対4(今川リード)と緊迫した局面を迎えることになる。
しかし、ここからの朴のカムバックが圧巻だった! ディフェンスモードに作戦を切り替えて4/4《種導きのトネリコ》再展開から盤面を膠着させると、すぐさま5/7トランプル《樫瘤の戦士/Oakgnarl Warrior》、さらに《忘却の輪/Oblivion Ring》を引き当てる豪腕。サイズに勝る韓国製ツリーフォークたちがレッドゾーンを蹂躙した。
今川 0-1 朴
Game 2
第2ゲームでは今川が溜飲を下げた。
まず今川は《炎族の刃振り/Flamekin Bladewhirl》、《煙束ね/Smokebraider》、《白熱の魂炊き/Incandescent Soulstoke》、と一気呵成の攻勢に出るスタートに成功し、朴を防戦一方に追い込む。一方の朴は《煙束ね/Smokebraider》を《木化/Lignify》したものの、《一握りの力/Fistful of Force》をからめて《白熱の魂炊き》をブロックで討ち取るプランを台無しにされてしまう。ここぞと今川がそれを《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》で阻む(対象:《ツリーフォークの先触れ》)という攻防だった。
今川は《炎族の先触れ/Flamekin Harbinger》から2体目の《白熱の魂炊き/Incandescent Soulstoke》を呼び出すという絶好調ぶりで、朴の後続も《タール火/Tarfire》でシャットアウト。まもなく、朴はカードを片づけはじめた。
今川 1-1 朴
Game 3
朴は《ゴールドメドの侵略者/Goldmeadow Harrier》で今川の《煙束ね/Smokebraider》をタップアウトし続け、《霊気撃ち/AEthersnipes》を使いたい今川になかなか青マナの確保を許さなかった。一方の今川も土地が伸び悩む朴のマナベースを見逃さず、《ボガートの丸太運び/Boggart Loggers》で《森/Forest》を破壊するという判断でゲームをスローダウンさせた白熱の戦いである。
しかし、白熱しすぎた。
両雄一歩も引かぬ一進一退のゲームとなり、制限時間内でこの試合に決着はつかなかったのだった。
引き分け
栗原 伸豪(東京) vs. 森田 雅彦(大阪)
グランプリ・バンコク勝の再現: 森田 vs. 栗原
森田:緑黒/エルフ
栗原:赤タッチ白/巨人
一方その頃、もう片方のテーブルではつい先日のグランプリ・バンコクの決勝カードが再現されていた。森田 雅彦 vs. 栗原 伸豪。二週間前、森田の3枚の《霊気撃ち/AEthersnipes》によるビートダウンが栗原のフェアリー軍団を撃破している。
しかしながら、ここ北九州では栗原の巨人デッキが森田のエルフ軍にリベンジを果たしている。《雷雲のシャーマン/Thundercloud Shaman》が盤上を一掃し、重量打線が試合を決めたのだ。
栗原 2-1 森田
Draft Report: 第1ドラフト1番卓―浅原・津村の事情

2 Tsai Chin-chun(台湾)
3 河田 千尋(東京)
4 森 勝洋(大阪)
5 津村 健志(広島)
6 浅原 晃(神奈川)
7 三田村 和弥(千葉)
8 朴 俊映(韓国)
ランダムシートのいたずらか、「帝王」森 勝洋を筆頭に、津村・浅原・三田村という世界レベルでの強豪が一列に並ぶこととなった、Pod 1。
ここでは、浅原・津村のふたりのピックを中心に、この4人のドラフトを追いかけつつ、この環境のドラフト環境を解読する糸口をみつけたい。
なお、ちょうど対面に位置する初日全勝の今川のピックを追った記事もアップされているので、あわせて読んでいただければ卓全体の様子が伝わりやすいのではないだろうか。
1st Pack
1st Pack | Akira Asahara | Kenji Tsumura |
1 | Warren Pilferers | Aethersnipes |
2 | Warren Pilferers | Aethersnipes |
3 | Warren Pilferers | Aethersnipes |
4 | Silvergill Adept | Sygg, River Guide |
5 | Peppersmoke | Kinsbaile Balloonist |
6 | Glen Elendra Pranksters | Neck Snap |
7 | Thieving Sprite | Runed Stalactite |
8 | Makeshift Mannequin | Tideshaper Mystic |
9 | Lowland Oaf | Colfenor's Plans |
10 | Familiar's Ruse | Tideshaper Mysti |
実は、浅原・津村はもちろんのこと、2人上の河田までがほとんど同じ強コモンソートを引き当てた1st Pack。
レア・アンコモンにめぼしいものが無かった浅原・津村ともにプール内でもっとも強いコモンと思われた《巣穴のこそ泥/Warren Pilferers》と《霊気撃ち/AEthersnipes》をピックしている。
この時の他の考慮対象は、共に同じコモンソートの《鳥の変わり身/Avian Changeling》。特筆するべきは、津村が《巣穴のこそ泥/Warren Pilferers》を流していることくらいであろうか。
そして、3回連続で流れてくる同じソートに、苦笑しつつも、方針をぶれさせないために同じカードをピックし続ける2人。
当然のことながら、彼らが考慮対象にしつつも流していった《鳥の変わり身》を、今度は三田村が連続してピックするという形になっており、この時点で3人がほぼ色がかぶってしまう事が確定してしまった(浅原は、ゴブリンをピックしているが、種族というよりは単純なカードパワーからピックしている)。
続く4手目でやっと2人が動いた時には手遅れだった。
津村 「正直、《川の案内者、シグ/Sygg, River Guide》が流れてきて上が赤で、マーフォーク開いてるのがわかった時点で、《銀エラの達人/Silvergill Adept》とって置けばよかった!って思いましたよ」
そう、単純なカードパワーであれば、《霊気撃ち》は他のコモンを凌駕するのだが、青という色でエレメンタルは部族アピールにかけるのである。
津村は、《霊気撃ち》をピックした時点では、青赤のエレメンタルデックを構想していたというが、《川の案内者、シグ》が流れてきたことから、森が赤であるということを認識し、後手に回ってしまったことに気づかされたのだ。
これは、同様に浅原にも言えることであり、もともと青黒のフェアリーを念頭に置いていた浅原は、遅く、なおかつアピールの少ない形で《銀エラの達人/Silvergill Adept》をピックするという中途半端な動きを余儀なくされてしまう。
浅原 「シュークリーム(ここではゴブリンデックの意味と思われる)でもよかったんですけど(《銀エラの達人》が多く流れていたので)青黒は捨てがたかったですね...空論的にはうまくいってたんですけど現実的には罠でしたね、あの序盤は」
2人がまったく部族アピールの無いまま動いている中、ファーストピックで《川床の水大工/Streambed Aquitects》をピックし、ある程度部族的な方針が固まっていた三田村は、少し早い段階で《銀エラの達人》を拾うことに成功していたが、4手目から浅原・津村が迷走したあおりを受けることとなり、やはり「(そこまでの流れから)本来十分に流れてくるはずだった」マーフォークを確保できない形になってしまった。
三田村にとって、それまでの青白マーフォークができるという部族シグナルから一転して、津村が《川の案内者、シグ》をキャッチし、マーフォークに展開し始めてしまったこと自体が非常に手痛い誤算となったのだ。
世界レベルの強豪3人が、らしくない迷走を続ける中、ひとりほくそえむ男がいた。
「帝王」森 勝洋である。
ファーストピックとして《暁の君主/Sunrise Sovereign》をピックした森。《霊気撃ち》《巣穴のこそ泥》《鳥の変わり身》といったパワーカードを流しつつ、いったい何をピックしたのだろうか。その答えは驚愕に値するものだった。
森 「2手目?《低地の鈍愚/Lowland Oaf》とったよ。」
2nd Pack
2nd Pack | Akira Asahara | Kenji Tsumura |
1 | Whirlpool Whelm | Purity |
2 | Benthicore | Changeling Hero |
3 | Shriekmaw | Kithkin Greatheart |
4 | Weed Strangle | Militia's Pride |
5 | Peppersmoke | Deeptread Merrow |
6 | Hornet Harasser | Paperfin Rascal |
7 | Turtleshell Changeling | Scattering Stroke |
8 | Hornet Harasser | Faerie Trickery |
9 | Quill-Slinger Boggart | Kithkin Greatheart |
10 | Quill-Slinger Boggart | Eyes of the Wisen |
森 「1パック目はコガモ(津村)に青やらせていいと思ってたから、代わりに完全に赤をとめて2パック目にかけたんだよね。」
そんな森の計略は見事に成功する。
この時、浅原・津村・三田村のパックから同時に《タール火/Tarfire》があらわれたのだ。
初手では《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》を手に入れた森だが、思惑通りの赤祭りに喜びを隠せない様子。
森 「やっぱ、マジックセンスだよね。」
三田村が《霊気撃ち》スタートから、青を集めてしまった為、このパックでは津村は更なる迷走をする事となる。
津村 「結局マーフォークが集められなくて、キスキン集めるしか無かったですね...《キスキンの大心臓/Kithkin Greatheart》ばっかだったんで多相か巨人欲しかったんですけど...」
実際、津村はこの後かなり早い順目から《ヴェリズ・ヴェルの翼/Wings of Velis Vel》のような圧倒的に質の劣るカードを選択肢に入れざるを得なくなる。たとえば、このパックの場合、5手目でかなり長いこと《ヴェリズ・ヴェルの翼》と《深海踏みのメロウ/Deeptread Merrow》で悩んでいた。
一方の浅原は、確かにデックの中核になるカードを集められなかったものの、サブとなりうるカードをそれなりに集められたので、パワー的には不満があれど、シナジー的には十分満足だったようだ。
浅原 「正直、部族とかいいからシュークリーム買って来いって感じだったので、《コショウ煙/Peppersmoke》や《スズメバチ騒がせ/Hornet Harasser》を遅めに取れたのはラッキーでしたね。」
この辺で、上下と黒がまったくかぶっていないという浅原のメリットが発揮された形となった。
3rd Pack
すでにこの時点でデックのほとんどは完成していたという浅原は、ここで、《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》《霊気撃ち》をピックしデックパワーを高めたうえで、《スズメバチ騒がせ》《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》を補給する事でデック全体の完成度を高めることに成功する。
浅原 「序盤の《巣穴のこそ泥》大量ゲットの時点で、大体ゴブリン・フェアリーっていうデッキになるだろうっていう感じだったので、まぁまぁいい感じになったんじゃないですかね。」
最終的に浅原のデックは、部族というよりは、ゴブリンに割り当てられたテーマである「墓地回収」に焦点があてられたものとなっており、トリッキーな流れからは想像できないくらいにまとまったデックとなっている。
浅原 「ただ、2手目で《霊気撃ち》ごときの為に《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》流さなきゃいけなかったのは、そりゃあ悪手じゃろ、アリンコって感じでしたね。」
浅原が《チューパイくすね》にどれくらいの思い入れがあるかは、機会があったら聞いてみようと思う。
一方、圧倒的な森との協調ドラフトができているにもかかわらず、《霊気撃ち》に翻弄され迷走してしまっている津村。ここでも、やはり体勢を立て直すにいたらなかったか。
津村 「5手目で《亀の甲の変わり身/Turtleshell Changeling》を大喜びでピックしてしまいましたから。《ヴェリズ・ヴェルの翼》と迷って。こんなに種族ないデッキ作ってて本当に大丈夫なのか不安になりましたよ。」
確かに、めだった部族シナジーは無いものの、低マナ域でのビートダウンから、3枚の《霊気撃ち》につなげるテンポデックには仕上がっており、なんとかデックの形を整えることには成功したようだ。
津村 「3勝は厳しいけど...できればここで2勝してTop 8を確定させたいですね。」
三田村はここで《黄金のたてがみのアジャニ》をファーストピックし、一気にデックの完成度を高める。予定通りにマーフォークデックの完成ではあったが、やはり上2人、特に津村の迷走につきあわされてしまった感は否めない。
三田村 「クリーチャー少ないですねぇ...しかも全体的に線が細い...厳しいですね。」

この4人に関しては、完全に卓上の支配者であった森 勝洋は、ここで《名も無き転置/Nameless Inversion》をファーストピック。この《名も無き転置》と《黄金のたてがみのアジャニ》という2枚のファーストピックをタッチしたほぼ赤単の巨人デックを構築する。
練習をほとんどできなかったという割には、非常にマニアックなアーキタイプを選択したものだ。
森は繰り返す。
森 「やっぱマジック、センスだから」
期せずして、今回ピックをとらせてもらった2人が、部族に頼りきれない状態の中でデックを纏め上げざるを得なくなっている。
部族によるシナジーがメインのテーマとなっているローウィンドラフト。しかし、様々な事情で部族シナジーに恵まれないこともある。だが、そんな中でもデックは作り上げなければならない。
この2人の例は、そういう意味では、この環境のひとつのテキストとなるのではないだろうか。
Round 10 : 森 勝洋(大阪) vs. 浅原 晃(神奈川))
森: 赤タッチ黒白/巨人
浅原: 青黒/フェアリー・ゴブリン

津村 健志(広島)が関東に、特に古淵の中島 主税(神奈川)の家によく停留しているというのはよく知られた事実であると思う。だが、果たして津村ほどのプレイヤーが、わざわざ関東にまで来る理由はなんなのだろうか?
津村 「いろいろありますけど...大きいのはかっちん(森)と浅原さんの存在ですね」
「帝王」森 勝洋(大阪)と「歴伝」浅原 晃(神奈川)。津村はこの2人の評価を常に自分より上に置いているのである。
現実として、この2人と津村の力量を天秤にかけることは難しいかもしれないが、しかし、この2人が圧倒的な実力を持っているということは疑う余地が無いだろう。
というわけで、対戦すれば好勝負が期待できるに違いないこの2人なのだが、これがまた、よくプレミアイベントで対戦しているのである。たとえば、2年前のGP北九州でも、浅原と森の対戦は実現している。その時、森はこう語っていた。
森 「浅原さんには勝てないんだよなー」
一方の浅原も、Podが発表された時点でこう語っていた。
浅原 「モリカツにだけはあたりたくないですね...やっぱダントツでやりにくいです。」
他のプレイヤーに対する評価を明言することの少ない浅原にしてみれば、これは最大限の賛辞であろう。
そんな2人の対戦がまたも実現した。
大阪に転居し、仕事に追われ練習の時間が取れなかったがセンスでいけるという森 勝洋。
マジックの本質である「シュークリーム」にたどり着いた為練習が必要なかったという浅原 晃。
なんとなく似たような事をいいつつも、結果を残している以上は、多少胡散臭い話でも認めざるをえないだろう。
勝利するのは、森の「センス」か浅原の「シュークリーム」か。
浅原 「朝、シュークリームが売り切れてたのが不安要素ですね」
Game 1
久しぶりのプレミアイベントで全体的にテンションの高い森。特に、浅原との対戦は苦手意識がありつつも大好きとの事で、いつも以上に異常にテンションが高い。
森 「いやー、これフィーチャーしたの、センスあるよ。好カードだよ」
後手は。
浅原の2ターン目の《骸骨の変わり身/Skeletal Changeling》に対して、森はいきなりの長考から入るが、結果は除去はうたずに《火腹の変わり身/Fire-Belly Changeling》キャスト。浅原は、続いて、《泥棒スプライト/Thieving Sprite》をキャスト。これに対して森は、2枚ある《タール火/Tarfire》を公開し捨てさせる。
森は、続いて《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》をキャスト。だが、《コショウ煙/Peppersmoke》で《火腹の変わり身》が除去されてしまい、この巨人はただの置物に成り下がる。土地がつまり気味の森は《放浪者の小枝/Wanderer's Twig》で《沼/Swamp》をサーチする。
森 「地上、かたいなー」
浅原は、続けて《亀の甲の変わり身/Turtleshell Changeling》をキャスト。さらに地上を固めていく。
森は《低地の鈍愚/Lowland Oaf》をキャストし、《死角持ちの巨人》でアタック。浅原は《霊気撃ち/AEthersnipes》で《低地の鈍愚》をバウンスし、森のテンポを阻害しつつ、コツコツとダメージを積み重ねる。
森が再び《低地の鈍愚》をキャストした次のターン、浅原が土地を5枚タップした瞬間に森は頭を抱えた。
森 「うわー、負けたー」
だが、浅原のキャストしたスペルが懸念していた《叫び大口/Shriekmaw》ではなく、《雑草の絡めとり/Weed Strangle》であった事で、森はなんとか気を取り直す。
《タール火》を《泥棒スプライト》に打ち込み、《亀の甲の変わり身》へも、《つっかかり/Lash Out》となんとかライフを2まで削られつつも首の皮一枚つながった形の森。
《炉かごの巨人/Hearthcage Giant》のキャストによって、なんとか場に均衡を取り戻す。
だが、浅原も攻め手を緩めない。《エレンドラ谷のいたずら者/Glen Elendra Pranksters》を場に投入。森のライフを1まで追い詰める。
森は、強硬な《炉かごの巨人》とエレメンタルトークンのアタックの後に でフェアリーを一掃。場のクリーチャーを3:2と優位にする。
だが、ここで浅原がキャストしたクリーチャーが、《巣穴のこそ泥/Warren Pilferers》。ここで、シュークリームならぬ《スズメバチ騒がせ/Hornet Harasser》を回収して速攻を与える。
場に3体クリーチャーがいるものの、1体はタップ状態の森にはなす術が無かった。
森 「うわー、先攻だったら勝ってたよー」
後手を選んだのはほかならぬ自身である。
浅原 1-0 森
Game 2
森は《低地の鈍愚》をキャストし、浅原も《スズメバチ騒がせ》を投入して場の均衡を崩させない。《泥デコの松明走り/Mudbutton Torchrunner》にも《亀の甲の変わり身》をあわせられ、森は頭を悩ませる。
森は、再び《臭汁飲みの向こう見ず》《ツキノテブクロのエキス/Moonglove Extract》を場に投入するものの、2体目の《スズメバチ騒がせ》が浅原の場に並ぶと完全に突破口を失った状態となってしまう。
そんな森に対して、浅原は《霊気撃ち》での《低地の鈍愚》バウンスによって攻め手にまわる権利を手に入れ、《スズメバチ騒がせ》2体でのアタックを決行。このアタックに結構困った森。結果的に《泥デコの松明走り》《臭汁飲みの向こう見ず》でのブロックで、《泥デコの松明走り》のダメージと《ツキノテブクロのエキス》のダメージで《霊気撃ち》を除去するプランを構築する。
圧倒的優位を築かれる事は阻止したものの、受け手であることに変わりは無い森。《低地の鈍愚》を《スズメバチ騒がせ》と相打ちしても、浅原は《巣穴のこそ泥》で《霊気撃ち》回収と一切手を緩めない。
だが、ここで待望の7枚目の土地を引き入れた森は、バウンスされにくいファッティである《断層削り/Faultgrinder》を場に投入。じわじわと膠着へと場を動かしていく。
ここで困ったのは浅原。全体的に攻め続けているように見えても、その実、順調に受け流され、結局森のライフを削るにいたっていないのだ。《死角持ちの巨人》に《巣穴のこそ泥》が相打たれてしまうと、段々と消耗戦の様相をしめしはじめてしまう。
その場合、優位を築くのは、森の「巨人のサイズ」か? 浅原の「青黒のアドバンテージ能力」か?互いが互いを警戒し、読みあいが始まる。
先に動いたのは浅原。森のエンドに《その場しのぎの人形》で《巣穴のこそ泥》を回収すると、その能力で《スズメバチ騒がせ》を回収、一気にアドバンテージを稼ぐ。そして、自身のターンに森の《断層削り》へと《霊気撃ち》。まさか《断層削り》がバウンスされるとは考えていなかった森は、思わず「これ?」と驚きを隠せない。
これによって、テンポを稼ぐ戦略の浅原。予定通り、森が再び全てのマナをタップして《断層削り》をキャストすると、その隙に《泥棒スプライト》をキャスト。森の地上を固めていた厄介な《臭汁飲みの向こう見ず》を《コショウ煙》で除去し、森のライフを一気に削りにかかる。
森も、《つっかかり》《名も無き転置》の合わせ技で《霊気撃ち》を除去し、さらに《ボガートの誕生の儀式/Boggart Birth Rite》で《泥デコの松明走り》を回収し、ブロッカーとするという形でなんとかわずかなライフを守りきる。
そして、浅原のメインのアタッカーである《巣穴のこそ泥》を《泥デコの松明走り》で除去し、なんとか攻勢を押しとどめつつ、逆転の手を模索する森。
浅原の手札からは2枚目の《巣穴のこそ泥》。これが《巣穴のこそ泥》を回収し、さらに《スズメバチ騒がせ》回収と連続速攻持ちアタックの前に、森のライフとやる気は削がれきったのだった。
浅原 2-0 森
Round 11 : 平林 和哉(神奈川) vs. 高橋 優太(東京)
平林:白青/キスキン
高橋:青黒

平林 和哉のデッキは、青白キスキン。1Pack目の初手で《皺だらけの主/Wizened Cenn》を取り、2手目に《忘却の輪/Oblivion Ring》を取って白単気味にピックを進めてキスキンを主体とした青白になったという。「戦略的に、白単か青単気味にピックして行きたいと考えていた」と語る平林。 その理由を聞いてみたところ、「早い段階でデッキの色を2色とも決めてしまうと上席と被ってしまう可能性があるし2・3Pack目で違う色の強いカードを引いた時にそれを取り入れやすいし、デッキを多色にしたくないのと白・青が環境的に優秀だと思っているのでそうなることが多い」という返答が返ってきた。
ローウィンには多色化をサポートするカードが結構あるため、デッキを多色にしても強いカード(特に除去カード)を詰め込むというプレイヤーも多数存在する中、平林は綺麗にデッキを組むことを意識した戦略のようだ。
高橋 優太のデッキは、青黒。1Pack目の初手に《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を取ってから、除去を優先しながら種族には拘らずに流れのよい色をピックして行った結果、青黒になったという。高橋も平林と同じく、デッキは2色で綺麗に組む考えのようである。
Game1
《ボガートの先触れ/Boggart Harbinger》から《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》を持ってきてビートダウンを仕掛ける高橋に対して、平林は《ゴールドメドウの侵略者/Goldmeadow Harrier》《キスキンの癒し手/Kithkin Healer》で凌ぎながら《鳥の変わり身/Avian Changeling》でアタックを続ける序盤戦。
平林が《キスキンの癒し手》の2枚目を場に追加し、高橋が《熟考漂い/Mulldrifter》でドローを進めた所で場は膠着するかと思われたが、平林は《キスキンの癒し手》と《鳥の変わり身》でアタックを仕掛ける。
ブロックして相打ちにとってもいいところだが、平林が何かを持っている空気を感じとったのか高橋は慎重にこのアタックをスルー。平林は《キスキンの癒し手》を覇権しての《変わり身の勇士/Changeling Hero》を場に送りこみ、攻勢を強める。
続くターンには平林はフルアタックを慣行し、戦闘により《鳥の変わり身》《キスキンの癒し手》を失うが高橋のライフを6へと追い込む。
《ルーン刻みの鍾乳石》をつけての《熟考漂い/Mulldrifter》と《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》で殴り返す高橋だが、《変わり身の勇士》のライフ回復能力が効いていて、平林を一桁にすら減らすことができない。
平林は《忘却の輪/Oblivion Ring》でブロッカーをどかし、《銀エラの消し去り/Silvergill Douser》《皺だらけの主/Wizened Cenn》を場に追加して、優勢に。
高橋は最後の力を振り絞って《変わり身の勇士》のアタックを3体のクリーチャーでブロックして殺しにかかるが、平林は《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》で戦闘を一方的に有利なものとして高橋のライフを削りきった。
平林 1-0 高橋
Game 2
平林は1ゲーム目の勢いそのままに、1ターン目から休むターン無くマナを使いきりながら《ゴールドメドウの侵略者》《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》《鳥の変わり身》《やっかい児》《丘漁りの巨人/Hillcomber Giant》と綺麗に展開してビートダウンを仕掛ける。
そのビートダウンは圧倒的で、高橋の抵抗むなしく平林が殴りきった。
平林 2-0 高橋
Draft Report : 第2ドラフト2番卓―津村 健志

第2ドラフトから、第2テーブルの津村のドラフトをレポートしたい。
世界を旅しながら各国のグランプリ・プロツアーに参加しているインターナショナルなプロプレイヤーである津村は、現在Player of the Yearタイトル争いに加わっており、このグランプリは是非とも勝ってポイント争いで優位に立ちたいところである。
津村が2005年に若干18歳でPlayer of Yearのタイトルを獲得してから、はや二年。 津村の二度目となる栄冠に期待が集まる。
1日目を全勝で駆け抜け、「ここ最近に参加した2回のグランプリは、1日目のシールド戦で負けて2日目に進出できていなかったので、嬉しい」と津村はここ最近を振り返るが、ドラフト戦においてはどんな戦略を持って挑むのか聞いてみた。
津村 「ローウィンのドラフト戦では緑を敬遠する人が多いですけど、俺は流れが良い色だったら何でもやりますよ。あえて言うなら、キスキンは少し遠慮したいくらいです」
なるほど。あまり色・種族の好き嫌い無く、ドラフト卓の流れの中で流れが良い色をチョイスしていくというスタイルのようだ。
現在9勝2敗という成績である津村がTop8に進出する為には、この第2ドラフトにおいて2勝0敗1分以上の成績を残す必要があると予想される。
もちろん誰しも目指すのは優勝であろうが、まずはTop8進出を目指して津村の正念場となるドラフトがスタートした!
席順は以下の通り。
1番席:津村健志
2番席:黛慎一
3番席:今川浩匡
4番席:小倉陵
5番席:斉藤友晴
6番席:田中久也
7番席:オリヴィエ・ルーエル
8番席:高橋優太
1Pack目
1手目⇒《清廉潔白な判事/Immaculate Magistrate》
他の候補:《ツキノテブクロのエキス/Moonglove Extract》
2手目⇒《森林の庇護者/Timber Protector》
他の候補:《雑草の絡めとり/Weed Strangle》《鋸歯傷の射手/Jagged-Scar Archers》《湿地に潜むもの/Marsh Lurker》
3手目⇒《リス・アラナの狩りの達人/Lys Alana Huntmaster》
他の候補:《やっかい児/Pestermite》《ルーン刻みの鍾乳石/Runed Stalactite》《首のへし折り/Neck Snap》
4手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
他の候補:《休賢者/Fallowsage》《臭汁飲みの向こう見ず/Stinkdrinker Daredevil》
5手目⇒《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》
他の候補:《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》《骸骨の変わり身/Skeletal Changeling》
6手目⇒《ボガートの丸太運び/Boggart Loggers》
他の候補:《丘漁りの巨人/Hillcomber Giant》《内炎の点火者/Inner-Flame Igniter》
7手目⇒《肥沃な大地/Fertile Ground》
他の候補:《ヴェリズ・ヴェルの翼/Wings of Velis Vel》《花粉の子守唄/Pollen Lullaby》
8手目⇒《樫瘤の戦士/Oakgnarl Warrior》
他の候補:《内炎の点火者/Inner-Flame Igniter》《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》
9手目⇒《樫の喧嘩屋/Oaken Brawler》
他の候補:《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》《紙ひれの悪党/Paperfin Rascal》
10手目⇒《キスキンの短刀挑み/Kithkin Daggerdare》
他の候補:《エルフの枝曲げ/Elvish Branchbender》
11手目⇒《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender》
12手目⇒《エルフの小間使い/Elvish Handservant》
13手目⇒《樫瘤の戦士/Oakgnarl Warrior》
14手目⇒《追い詰め/Hunt Down》
15手目⇒《ゴールドメドウの身かわし/Goldmeadow Dodger》
津村 「初手は他に強いカードが無かったので、迷いませんでしたね。2手目の段階で《鋸歯傷の射手》をピックしてエルフ決め打ち気味な展開を目指すことも出来たんですが、広く受けたいのと単純なカードパワーで《森林の庇護者》を取りました。その後は、メインカラーにしたい緑を固めるピックを続けた感じですね。エルフに行くのかツリーフォークに行くかで迷うところでしたが、《包囲の搭、ドラン》で楽しくなってツリーフォーク行きました」
内容が濃い緑単気味のピックとなった1Pack目。既に目指す方向(ツリーフォーク)は見えているので、ここからのピックでいかにデッキを仕上げられるかが勝負となりそうだ。
2 Pack目
1手目⇒《増え続ける成長/Incremental Growth》
他の候補:《やっかい児/Pestermite》《首のへし折り/Neck Snap》《葉光らせ/Leaf Gilder》
2手目⇒《増え続ける成長/Incremental Growth》
他の候補:《一握りの力/Fistful of Force》《霊気撃ち/AEthersnipe》《タール投げ/Tar Pitcher》《暁の君主/Sunrise Sovereign》
3手目⇒《エルフの先触れ/Elvish Harbinger》
他の候補:《戦杖の樫/Battlewand Oak》《エルフの枝曲げ/Elvish Branchbender》
4手目⇒《勇壮な体形/Epic Proportions》
他の候補:《光り葉の待ち伏せ/Gilt-Leaf Ambush》
5手目⇒《鋸歯傷の射手/Jagged-Scar Archers》
他の候補:《葉光らせ/Leaf Gilder》
6手目⇒《ルーン刻みの鍾乳石/Runed Stalactite》
他の候補:《根組み/Rootgrapple》《川床の水大工/Streambed Aquitects》
7手目⇒《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》
他の候補:《樫瘤の戦士/Oakgnarl Warrior》《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》
8手目⇒《キスキンの短刀挑み/Kithkin Daggerdare》
9手目⇒《光り葉の予見者/Gilt-Leaf Seer》
10手目⇒《一握りの力/Fistful of Force》
11手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
12手目⇒《光り葉の待ち伏せ/Gilt-Leaf Ambush》
13手目⇒《潮刻みの神秘家/Tideshaper Mystic》
14手目⇒《ベラドンナのとげ刺し/Nightshade Stinger》
15手目⇒《薬草の湿布/Herbal Poultice》
津村 「《鋸歯傷の射手》が取れたのは嬉しかったですね。《やっかい児/Pestermite》が沢山出ていると感じていたので、飛行を落とせるこのカードが取れてデッキが引き締まりました。」
津村の上席の高橋優太(東京)のデッキは青白マーフォーク。下席の黛のデッキは赤青となっており、色・種族の住み分けもばっちり。
《増え続ける成長》2枚・《勇壮な体形》といったフィニッシュブローも獲得し、ツリーフォークデッキとしては高いレベルでデッキがまとまってきた。贅沢をいうならば、あとは除去カードが欲しいところである。
3 Pack目
1手目⇒《名も無き転置/Nameless Inversion》
他の候補:《外身の交換/Crib Swap》《戦杖の樫/Battlewand Oak》《チドリの騎士/Plover Knights》
2手目⇒《名も無き転置/Nameless Inversion》
他の候補:《戦杖の樫/Battlewand Oak》《天上のヒゲエラ/Ethereal Whiskergill》《民兵団の誇り/Militia's Pride》
3手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
他の候補:《ゆらめく岩屋/Shimmering Grotto》《川床の水大工/Streambed Aquitects》《亀の甲の変わり身/Turtleshell Changeling》
4手目⇒《肥沃な大地/Fertile Ground》
他の候補:《エレンドラ谷の衛兵/Sentinels of Glen Elendra》
5手目⇒《秘密を溺れさせる者/Drowner of Secrets》
他の候補:《砕けた野望/Broken Ambitions》《川床の水大工/Streambed Aquitects》
6手目⇒《沼うろつきのトネリコ/Bog-Strider Ash》
他の候補:《エルフの枝曲げ/Elvish Branchbender》
7手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
他の候補:《肥沃な大地/Fertile Ground》
8手目⇒《一握りの力/Fistful of Force》
他の候補:《ちらつき粉のうたた寝/Glimmerdust Nap》
9手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
10手目⇒《戦杖の樫/Battlewand Oak》
11手目⇒《黒ポプラのシャーマン/Black Poplar Shaman》
12手目⇒《川床の水大工/Streambed Aquitects》
13手目⇒《麗しき者の勇気/Prowess of the Fair》
14手目⇒《針落とし/Needle Drop》
15手目⇒《炎族の喧嘩屋/Flamekin Brawler》
1・2手目で念願の除去カードを獲得。残るピックは、デッキの仕上げといったところである。これまでのピックを見る限り、かなり強力なツリーフォークが完成してそうだが、はたして?

津村 「返ってこいって祈ってたらね、全部返ってきて6枚も集まったんですよ。デッキリストに6って数字を書くのはコールドスナップ以来ですね(笑)」
何と《戦杖の樫/Battlewand Oak》が6枚という、構築デッキを思わせる超強力ツリーフォークデッキが完成した。
津村 「相当に強いデッキに出来上がりましたね。 これなら、Top8進出に向けていい勝負ができそうです」
筆者 「不安素があるとすると、相手の飛行が止まらないことくらいですか?」
津村 「2マナ域が薄いのも心配ですが、完全に無い訳でもないですし3マナ域がしっかりしていて枚数も多いので序盤で押しつぶれてそのまま負けという展開もないでしょう」
筆者 「デッキに点数をつけるとすると何点でしょう?」
津村 「Top 8進出の希望も込めて、100点といっておきましょう!」
全14回戦と長かったスイスラウンドも、残るは3 Round。100点満点のデッキとともに津村のラストスパートが炸裂するか!?
Round 12 : 津村 健志(広島) vs. 高橋 優太(東京)
津村:緑タッチ黒白/ツリーフォーク・エルフ
高橋:青白/マーフォーク

Player of the Yearレースのためにもこの大会ではぜひともポイントを稼いでおきたい津村 健志(広島)。そんな津村の前に立ちはだかるのは、関東でも有数の負けず嫌いで知られる高橋 優太(東京)。
使用するデックだが、高橋は、本人いわく「140点」というかなり高水準のマーフォーク。
一方の津村のデックは...部族の中でも、人気の無さには定評があるツリーフォーク。なぜ津村がこの選択をしたか...については梅咲によるドラフト記事に譲るとして、やはりそのデックパワーが気になるところだ。
津村 「いや、ツリーフォークむっちゃ好きですから」
と、強さの答えにまったくなっていないコメントをする津村ではあるが、デッキの出来には相当の自信があるようだ。
お互い満足のいく基準のデック同士による全力対決。今シーズン絶好調の高橋だけに、津村も厳しい戦いとなるだろう。
Game 1
2ターン目に《石ころ川の釣り師/Stonybrook Angler》をキャストする高橋に対し、3ターン目4ターン目と続けて《戦杖の樫/Battlewand Oak》をキャストする津村。
ここに《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》をうちこむ高橋だが、激突でめくられたライブラリーのトップがまたも《戦杖の樫》。
《亀の甲の変わり身/Turtleshell Changeling》でなんとかこの攻勢を押しとどめようと画策する高橋。続けてキャストされた《戦杖の樫》と《森》のセットによって5/7に膨れ上がった《戦杖の樫》のアタックは、一度スルーするものの、《森林の庇護者/Timber Protector》キャストからのアタックは、《石ころ川の釣り師》と《外身の交換/Crib Swap》できれいにさばく。
さらに《霊気撃ち/AEthersnipes》《チドリの騎士/Plover Knights》と続ける高橋。しかし、津村の呼び出す《戦杖の樫》は、もはやそれ自体が《森》といってもいいほどに膨れ上がる。4体目がキャストされ、《森》がセットされると、3体の5/7が高橋に襲い掛かる。
《霊気撃ち》を失いつつの《チドリの騎士》とのダブルブロックでタフネスばかり高いツリーフォーク軍団をやっとこ1体対処した高橋は、《群れの召喚/Summon the School》でパーマネント数を稼ぎ、この異常な成長を押しとどめようとする。
しかし、《キスキンの短刀挑み/Kithkin Daggerdare》によってバックアップされた津村の軍勢への回答は、《熟考漂い/Mulldrifter》からは導き出されない。
《群れの召喚》を回収し続けてなんとか耐え続ける高橋だったが、ついにライフは1にまで落ち込む。だが、じわじわと戦線は膠着し始め、《高潮測り/Surgespanner》によって段々と優位を築けるかに思えた。
が、《エルフの先触れ/Elvish Harbinger》が生み出した黒マナによって伝家の宝刀《名も無き転置/Nameless Inversion》が抜かれ、それにより突如膨れ上がったツリーフォークによって高橋の防御戦は再びズタズタにされてしまったのだった。
津村 1-0 高橋
Game 2
高橋は、十分とはいえないまでも、土地に恵まれたハンドをキープ、一方の津村は2枚の土地に《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》《森林の庇護者》という非常に厳しいハンドをキープする。
だが、この選択が結果的に正解となった。
2ターン目に《肥沃な大地/Fertile Ground》を引き込んだ津村は、3ターン目に《包囲の搭、ドラン》をキャスト。これは《渦巻沈め》で手札に戻されるが、順調にマナが伸びている津村は、《森林の庇護者》をキャストする。
《群れの召喚》と、更なる《渦巻沈め》でテンポを稼ぎに行く高橋だが、またも続けてキャストされる《森林の庇護者》《包囲の搭、ドラン》を前に、《ゴールドメドウの侵略者/Goldmeadow Harrier》しか回答を用意できない。
津村は《キスキンの短刀挑み》さらに追加するが、ここでドローを見た高橋は小さく「よし」と。引いたカードは《川の案内者、シグ/Sygg, River Guide》。
これによって、地上を固められつつ、《群れの召喚》でじわじわと不利になってしまうことが明らかな津村は、一種の賭けに出る。
《一握りの力/Fistful of Force》。
ライブラリーのトップは《エルフの先触れ》。
高橋のトップは...《石ころ川の釣り師》。
そして、高橋がライブラリーのトップをキープしたのを確認して、さらなる《一握りの力》。
津村 2-0 高橋
高橋 「このデッキで負けるとは思いませんでしたよ。まぁ、負け惜しみですけどね。」
Deck Tech : "激突/CLASH"―浅原 晃
グランプリ北九州で決勝ラウンド一番乗りを果たしたプレイヤーのひとりが浅原 晃だ。何かにつけて本人はしきりとローウィン環境における《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》について語りたがっているようだが、彼が秘策として用意していたドラフトテクニックは決してシュークリームでもチューパイでもなんでもない「激突/Clash」メカニズムに関するものだった。
まずはデッキリストをご紹介しよう。
それが確信に変わったのが第2パック。さらに《炎族の反乱/Rebellion of the Flamekin》が2 枚出現したことにより、浅原は秘策として暖めてきた作戦をついに敢行することにした。
「激突デッキの一番のメリットは、とにかくカードを安く集められることですね」
浅原はその独特の語り口調とともに《マムシ杖のボガート/Adder-Staff Boggart》や《輪跳び/Ringskipper》といったカードを取り出した。《炎族の反乱》さえあれば、浅原はこれらの「安い」カードによって激突を行うごとに、たったの1マナで3/1のトークンクリーチャーを陣容に加えることができるようになるのだ。
「テキストに激突と書いてあることをのぞけば、こういった連中はただの2マナ2/1や2マナ1/1飛行。そういった数合わせカードが激突システムのおかげでいきなりシナジーを作り出しはじめるわけですからね。もはや、バウンスの《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》なんかは神級のカードといっても過言ではなくなります。あと、《チューパイくすね/Squeaking Pie Sneak》と違ってあまり知られていないことも今の段階ではアドバンテージかもしれません」
なるほど、さほど強くないと思われているカードをうまく活用して驚異的なシナジーを得ると言うのは、リミテッドにおけるデッキテクとしては理想的なものだ。
しかし、浅原自身が奇策ゆえの危うさも指摘している。
「決め打ちだけは間違いなく避けるべきですね。山頂に陣を張るようなものです。流れの中でうまくスタートするように」
Round 13 : 八十岡 翔太(神奈川) vs. 中野 圭貴(大阪)
グランプリ北九州もついに終盤戦に突入し、Top 8をめぐって過酷な争いが繰り広げられる。
そんな中、「歴史と伝統の男」浅原 晃(神奈川)と「機械割原理主義者」平林 和哉(滋賀)がIDによってTop8一番乗りを揃って決めた。

さて、浅原が神奈川の、特に古淵を主な活動拠点としているのは周知であろうが、実は平林も、先日の日本選手権終了後からGPバンコクまでの約2ヶ月間、古淵の中島邸に停留していた。
という繋がりかどうかは置いといて、ここではTop8の為には負けられない2敗対決の中から、現在中島の同居人である八十岡 翔太(神奈川)と、大阪の強豪「スカージ」こと中野 圭貴(大阪)の対戦をお送りしよう。
八十岡のプロフィールについてはいまさら特に語る必要は無いだろう。
中野は先日の日本選手権でも、終盤までギリギリのラインで健闘しており、最近の大阪勢の中でも特に勢いのあるひとりだといえるだろう。日本選手権では最終ラウンド前のラウンドで惜しくも平林に破れTop8を逃しているだけに、ぜひとも雪辱を果たしてもらいたい。
八十岡:赤タッチ黒/巨人
中野:青緑/マーフォークメインの軽量ビートダウン

Game 1
八十岡が《思考囲い/Thoughtseize》で《キスキンの短刀挑み/Kithkin Daggerdare》をディスカードさせるところからゲームはスタート。
中野は《潮刻みの神秘家/Tideshaper Mystic》キャストからの《水大工の意思/Aquitect's Will》でライブラリーを掘り進めようとするが、ここにスタックしての《つっかかり/Lash Out》によって、実質的にはアドバンテージを失ってしまう。
中野の《葉光らせ/Leaf Gilder》キャストに《泥デコの松明走り/Mudbutton Torchrunner》を合わせる八十岡だが、《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》でテンポを稼がれ、激突で負けアドバンテージも奪われる。
しかし、サイズに勝る八十岡。《低地の鈍愚/Lowland Oaf》と《泥デコの松明走り》を覇権した《変わり身の狂戦士/Changeling Berserker》を連続でキャストし、攻守のイニシアチブを奪う。
中野も《深海踏みのメロウ/Deeptread Merrow》の島渡りでじわじわと八十岡のライフを削りに行くが、しかし、ここには《眼腐りの終焉/Eyeblight's Ending》が。
《変わり身の狂戦士》が《低地の鈍愚》の能力で6点のダメージをたたき出し、中野のライフを1にすると共に、場に《泥デコの松明走り》を呼び戻す。
続いて《低地の鈍愚》がアンタップすれば、どうやってもライフを削りきられる事を察し、中野は土地を片付けた。
八十岡 1-0 中野
Game 2
一方で順調に土地を伸ばす八十岡は、《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》をキャスト。このデメリットを2体目の《死角持ちの巨人》でクリアすると、ビートダウンを決行する。
なかなか3枚目の土地を引けない中野だが、しかし、《深海踏みのメロウ》《銀エラの消し去り/Silvergill Douser》と後続を送り出し、並んだシステムクリーチャーで容易にイニシアチブをあけ渡さない。
《低地の鈍愚》を八十岡が場に送り出しているうちに、《潮刻みの神秘家》に2体目の《キスキンの短刀挑み》と続けざまにキャストし、マナで優位なのは八十岡なのに、展開で勝っているのは中野という奇妙な状況を作り出す。これが、マナカーブの力なのか。
だが、だからといって、コストの重いカードに意味が無い、わけではない。八十岡の手札から現れたのは《敵愾/Hostility》。
これには少々驚いた中野だったが、《キスキンの短刀挑み》でチャンプブロックし、冷静に対処する。
《川床の水大工》がアタックし、《一握りの力/Fistful of Force》でライフを削る。非常にタイトなダメージレースを演出している中野だが...しかし、いまだ場の土地は《島》《森》の2枚なのだ。
ここにきて、ついに中野はライフを削ることをあきらめ、いったん受け手にまわることを選択する。この隙に勝負を決めたい八十岡は、ブロッカーとなった《川床の水大工》へと《眼腐りの終焉》。
そして、3体の巨人と1体のエレメンタルがレッドゾーンに送り込まれる。
中野は、手札に眠るアドバンテージエンジンである《休賢者/Fallowsage》を恨めしげに眺めるのであった。
八十岡 2-0 中野
中野 「あと一枚土地があれば...」
デッキ相性自体は決して悪くなかっただけに中野にとって無念の敗北であった。
Round 14 森 勝洋(大阪) vs. 八十岡 翔太(神奈川)
グランプリ北九州最終戦。
上位6名がすでにTop8進出を決定させ、残る2つの席を、10人のプレイヤーによる5つのマッチで争われることとなった。
このうち、栗原 伸豪(東京)と三原 槙仁(千葉)のマッチアップは、勝利してもTop8の可能性がない三原が栗原に投了するという形になり、残った4つのマッチアップがここフィーチャリングエリアに呼ばれることとなった。

非常に興味深いマッチアップの中でも、勝利でオポーネントマッチパーセンテージでの勝負を待たずにTop8を確定させる八十岡 翔太(東京)と、復帰戦ながらも圧倒的な「センス」で快進撃を見せる森 勝洋(大阪)のマッチアップをお送りしたい。
特に、八十岡は、サーキット組同士の中村 修平(大阪)との初日最終戦を勝利し、中村に引導を渡しての初日突破からの連勝であることは特記しておきたい。
森:青黒緑/フェアリー
八十岡:赤タッチ黒/巨人
Game 1
八十岡が《煙束ね/Smokebraider》と《臭汁飲みの向こう見ず/Stinkdrinker Daredevil》とマナを加速しながら展開するのに対して、森は、《森》《島》《沼》と3枚土地を置くのみ。
この不振か不審かわからない森の動きに対して、八十岡が意を決して《煙束ね》《敵愾/Hostility》をキャスト。これになんのリアクションも起こせない森は、一気に大ダメージ。
続いて《暁の君主/Sunrise Sovereign》がキャストされると、森は早々に土地を片付けた。
八十岡 1-0 森
Game 2
八十岡の1ターン目の《思考囲い/Thoughtseize》に対して、悲鳴を上げる森。
森 「つえーなそれ」
これによって、《エルフの先触れ/Elvish Harbinger》を捨てさせらた森は、《葉光らせ/Leaf Gilder》でマナを加速する。だが、ここで土地が2枚でストップ。手札が4マナ以上のカードで構成されているだけに、《エルフの先触れ》を失ったのが手痛い。
八十岡は《死角持ちの巨人/Blind-Spot Giant》《低地の鈍愚/Lowland Oaf》《変わり身の狂戦士/Changeling Berserker》(覇権は《死角ちの巨人》)と連続で展開。
森はやっと、3枚目の土地を手に入れ、《夢棄ての魔女/Dreamspoiler Witches》をキャストするが「おせーよ...」と一言。そして、またも土地がストップ。まったく思うようにプランを構築できない森。一方の八十岡は悠々と《変わり身の狂戦士》をレッドゾーンへ。
しかし、森も伊達に世界王者にまで上り詰め、日本選手権・Finalsの国内2大タイトルをとった男ではない。
ここが勝負どころと考えた森は、《ウーナの末裔/Scion of Oona》をキャスト。今度は八十岡が選択を迫られる。八十岡は、《ウーナの末裔》が場に出る前に、《名も無き転置/Nameless Inversion》を《夢棄ての魔女》へ。森は予定調和的に、《コショウ煙/Peppersmoke》を《低地の鈍愚》へ打ち込み、2回の誘発でこれを葬り去る。
そして、続くターンに待望の土地を手に入れた森は5マナで《原初の命令/Primal Command》。これでライフをゲインしつつ《霊気撃ち/AEthersnipes》を手に入れた。
森 「やっとゲームになった」
八十岡 「うわ、きつい...」
過去に数々の逆転劇を演出してきた森だけに、八十岡もなんとか勝負を決めたいところだが、今度は八十岡の土地が4枚でストップする。
一度手札に戻された《変わり身の狂戦士》が《霊気撃ち》と相打ちになり、この《霊気撃ち》を回収した《巣穴のこそ泥/Warren Pilferers》が《死角持ちの巨人》と相打つと、《エルフの枝曲げ/Elvish Branchbender》《エルフの小間使い/Elvish Handservant》が森の防衛線を固め、《霊気撃ち》が八十岡のライフを削り始める。
だが、森が世界王者ならば、八十岡はPlayer of the Yearだ。これで用意にイニシアチブを与えてしまうような男ではない。6枚目の土地を引き込むと、《魂光りの炎族/Soulbright Flamekin》でマナブーストし、森の《砕けた野望/Broken Ambitions》をケアした《雷雲のシャーマン/Thundercloud Shaman》キャスト。これで森の場は《霊気撃ち》のみに。
この状況を打破するべく、森は《足の底の饗宴/Footbottom Feast》で《巣穴のこそ泥》を手札にもどし、即キャスト。八十岡の2体の巨人に対し、場に2体のブロッカーを用意する。
が、次のターンの八十岡のレッドゾーンにはさらに《敵愾》が追加されていたのであった。
八十岡 2-0 森
こうして、八十岡は、スタンディングの発表を待たずに、2つの席のうちのひとつを得ることとなった。
森田 雅彦(大阪) vs. 川中 義明(福岡)
地元勢として奮闘する川中 義明さて、森が破れたことにより、八十岡の無条件Top 8が決定してしまったため、オポーネントマッチパーセンテージでは勝負にならない形になってしまったのが、この対戦。とはいえ、ここでの勝敗が最終順位に大きく影響するのは間違いない為、やはり気の抜けない対戦となっている。
森田 雅彦(大阪)は、過去3回の九州で行われたグランプリのうち、2回でTop 8入りを果たしていることからもわかるように、非常に九州という土地と相性がよいという。さらに、この環境のリミテッドではすでに先日のGPバンコクでの優勝と大きな実績を残している。
だが、九州との関係という意味では、さすがの森田も対戦相手の川中 義明(福岡)にはかなわないだろう。というのも、川中は地元福岡のプレイヤーなのである。ここまでいわゆるトッププロたちばかりがクローズアップされてばかりの北九州だが、地元プレイヤーがここまで健闘していたことは、素直に賞賛に値するだろう。
森田:青黒/マーフォーク
川中:黒緑/エルフ・ツリーフォーク
エルフの群れでGame 1を川中が制すれば、Game 2はマーフォークによるビートダウンで森田が取り返し、勝ち点はイーブン。
このゲームで全てが決することとなる。
Game 3
序盤から激しく攻め立てる川中を、《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》《石ころ川の釣り師/Stonybrook Angler》《銀エラの消し去り/Silvergill Douser》といったマーフォークの基本にして優良パーツで森田がいなすという序盤戦。
森田の場には、さらに《川床の水大工/Streambed Aquitects》が追加されてしまい、川中は攻めようにも攻められない場を構築されてしまう。
《雑草の絡めとり/Weed Strangle》が《銀エラの消し去り》に打ち込まれるが、ここに《渦巻沈め/Whirlpool Whelm》を自ら打ち込み救出に成功する。
すでに《沼》を《水大工の意思/Aquitect's Will》で《島》されている川中は、このままでは攻められないまま攻められてしまうという非常につらい展開を強いられることとなる。
だが、川中にも秘策はあった。
《光り葉の待ち伏せ/Gilt-Leaf Ambush》からの《エルフの行列/Elvish Promenade》。
場に5体のエルフがすでにいる川中は、これによって増量したエルフトークンでの消耗戦に持ち込もうというプランなのだ。だが、森田は長考の後に、《使い魔の策略/Familiar's Ruse》でカウンター。川中は思わずため息をつく。
だが、そんな川中にさらにため息をつかせたのが、森田のライブラリートップから現れた《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》。
《川床の水大工/Streambed Aquitects》にバックアップされた《亀の甲の変わり身/Turtleshell Changeling》によって、ライフが18の川中は3ターンのクロックを刻まれることとなってしまう。
意を決して、果敢なアタックを行いながら、《光り葉の予見者/Gilt-Leaf Seer》によってライブラリーのトップに回答を求める川中だったが...無常にもライブラリーのトップにあったのは2枚の《沼》だった。
森田 2-1 川中
Side Event Report : 回顧レガシー大会
熱戦続くグランプリ北九州。
Top8への最後の関門である2nd Draftの裏で、この大会の目玉のひとつである回顧レガシー大会のRound 2が開始されようとしていた。

参加者14名の4回戦、Top 4によるシングルエリミネーションで行われているこの大会。まずは参加者全員に、今では希少価値のPortal Second Age日本語版のブースターパックが振舞われたというから驚きだ。
初心者入門用セットと侮るなかれ、ご存知ではあろうが、なんとレガシーではいわゆるPortalシリーズのカードも使用可能であり、このSecond Ageに含まれる《海のドレイク/Sea Drake》は、レガシーのトップメタの一角を占める重要なカードなのだ。
さて、実際の試合のほうをと、テーブルに目を移すと...なんと、黒田 正城(大阪)が参加しているではないか。見てみると、使用しているデックは、レガシーの中でも現在トップメタと言われているスレッショルドである。
対戦するのは、原田 佳雄(大阪)。使用するデックは赤単バーン。
Game 1は黒田が次のターンでの勝利の為にカウンターを使い果たした瞬間に《火炎破/Fireblast》で焼ききり、Game 2は、カウンターにバックアップされた《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》と《翻弄する魔道士/Meddling Mage》が原田をビートダウン。
原田 「残りのライフは?」
黒田 「18です。」
原田 「(手札を見て悩み)投了します。」
黒田 「うわ、その確認むっちゃ怖い...」
そう、この環境での赤単は一気に10点以上のライフを削ることも可能なのだ。
カウントをタイに持ち込んでのGame 3。
フェッチランドを多用する黒田のデックには厳しい《ミシュラのアンク/Ankh of Mishra》が場に出てしまい、一見苦しい黒田だが...実は手札に土地はない。場にはたった2枚の土地。
しかし、それがまったく苦とならない黒田。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》とキャスト。そして、《タルモゴイフ)》へと《梅澤の十手》を装備させるためにマナをフルタップ。
ここが勝負時、とばかりに、《火炎破》を《タルモゴイフ》に打ち込む原田。
ここで、レガシーならではの「フルタップした青」と「フルバーンの赤」とのカウンター合戦が始まる。
まず、《火炎破》へと《誤った指図/Misdirection》が打ち込まれ、これをカウンターするべく原田は《紅蓮破/Pyroblast》。
だが、ここには《Force of Will》が突き刺さる。
見ごたえのあるカウンター合戦を制した黒田が、マッチも制することとなった。
原田 「マジックをはじめたのは、Tempestのころですね」
こう語る原田。やはり、昔のカードを使いたいものの、地元ではめったにレガシーの大会が行われないため、是非にと参加したそうだ。
黒田 「やっぱり、とにかく懐かしいね。ちょうどはじめの頃のエクテンみたいな感じだから、《翻弄する魔道士》でカード指定する時も、自分のマジック人生を走馬灯のように思い出したよ」
それだと死んでしまうわけでちょっと大変な黒田だが、やはりキャリアの長いプレイヤーこそ楽しめるレギュレーションなのは確かなようだ。
黒田 「かといって、初心者がだめなわけじゃないしね。最近のカードはやっぱり強くなってるよ。(高額なデュアルランドをはじめとした)土地のせいで敷居が高い部分もあるけど、是非みんなにはじめてもらいたいし、もっと人気出てほしいね。」