Draft Report : 第2ドラフト―Richard Hoaen

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 20日

By Koichiro Maki

Richard Hoaen というプレイヤーがいる。世界最高のリミテッドプレイヤーと評される男で、これまでに派手な成績こそ残していないものの、リミテッドプロツアーにおける平均勝率は尋常じゃなく高い。今回はそんなリッチーの第二ドラフトとその後の試合模様を追っかけてみたい。ちなみに、第一ドラフトの成績は当然のように3-0である。

■第二ドラフト

まずはじめに脳みそに叩き込んでおいて欲しいのが、リッチーのドラフトモットーだ。本人の言ではないのであれだが、これまで何度か観戦した内容を端的にまとめる。

堅実重視、夢完無視。

これ。とにかくデッキの冗長な部分を排除しソリッドに絞り込むのがリッチー流だ。それを念頭におけば、以下のピックに対する疑問の何割かは解消するはずである。では、実際のピックをご覧頂こう。

■Pack 1

Lightning Axe

一手目 《稲妻の斧/Lightning Axe
大いなるガルガドン/Greater Gargadon》《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel

二手目 《絞殺の煤/Strangling Soot
《石炭焚き/Coal Stoker》《増力スリヴァー/Might Sliver

三手目 《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination
《版図の踏みつけ/Tromp the Domains》《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel

四手目 《ヴェク追われの侵入者/Trespasser il-Vec
《稲妻の天使/Lightning Angel》《ウェザーシードのトーテム像/Weatherseed Totem》《流動石の媒介者/Flowstone Channeler

五手目 《玄武岩のガーゴイル/Basalt Gargoyle
《奈落の守り手/Pit Keeper

二手目までの二枚で赤黒の除去を揃えると後は淡々と赤か黒のカードを手にするリッチー。ただ、若干流れが悪かったこともあり、六手目以降はカット気味に適当に緑のカードをピックしている。無い物はしょうがない。

■Pack 2

Corpulent Corpse

一手目 《肥満死体/Corpulent Corpse
《魔力の篭手/Gauntlet of Power

二手目 《ぶどう弾/Grapeshot
《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》《奈落の守り手/Pit Keeper》《アーボーグの邪眼/Evil Eye of Urborg》《ヴェク追われの侵入者/Trespasser il-Vec

三手目 《肥満死体/Corpulent Corpse

四手目 《ベラドンナの暗殺者/Nightshade Assassin
《炎の刃のアスカーリ/Blazing Blade Askari

五手目 《虚弱/Feebleness《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers

六手目 《虚弱/Feebleness
《地の底のシャンブラー/Subterranean Shambler》《ヴェク追われの侵入者/Trespasser il-Vec

七手目 《石炭焚き/Coal Stoker

八手目 《虚弱/Feebleness

《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》に眉一つ動かすことなく、淡々と《ぶどう弾/Grapeshot》を取る辺りさすがリッチーだが、五手目以降全く贅沢なカードに恵まれず、本当に大丈夫なのかと若干いらだちはじめるリッチー。後ろ姿から漂うものが後光から哀愁に代わり始める。

■Pack 3

Sulfurous Blast

一手目 《運命の盗人/Fortune Thief
《ゴルゴンの世捨て/Gorgon Recluse》《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem

二手目 《硫黄破/Sulfurous Blast

三手目 《石炭焚き/Coal Stoker

四手目 《奈落の守り手/Pit Keeper
《アーボーグの吸魂魔道士/Urborg Syphon-Mage

五手目 《ゴブリンの空切り/Goblin Skycutter

六手目 《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier

七手目 《顔なしの貪り食い/Faceless Devourer

二手目の《硫黄破/Sulfurous Blast》こそガッツポーズ気味のリッチーだったが、そこから先は残念ながら地味リッチーに。だが、それこそが彼のドラフトの真骨頂でもある。よくあるそこらのカードに魔法をかけ、珠玉のデッキを作り上げるのだ。

Richard Hoaen

Download Arena Decklist
ソーサリー (2)
1 Mindstab 1 Grapeshot
インスタント (3)
1 Lightning Axe 1 Strangling Soot 1 Sulfurous Blast
エンチャント (3)
3 Feebleness
土地 (17)
8 Mountain 9 Swamp
他 (2)
2 coral stoker
40 カード

Twisted Abomination

タイムシフト1、アンコモン5。流石はリッチーらしい燻し銀デッキである。特にこの「時のらせん」というレア祭り環境にあって、入っているレア&タイムシフトカードが《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》一枚だっていうのが素晴らしい。

こうやって並べてみると、彼のマナカーブへのこだわりが見えてくる。

1cc 3(全て待機)
2cc 2
3cc 6
4cc 3
5cc 1(ただし沼サイクリング)

驚くべきことに、待機できるカードを除くと、5マナ以上のカードはこれまた《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》ただ一体なのである。しかも、4マナ3体の内の2体は《石炭焚き/Coal Stoker》であり、同時に2体出しすることによるテンポ狙いの戦略が伺える。

では、この渋いデッキで実際にリッチーがどう闘ったかを追いかけてみることにしよう。

■第四ラウンド vs. David Brucker

超リアリストなリッチー

David が構築したのは、青赤白の三色デッキ。リッチーが序盤優先でデッキを組み立てているのに対して、中盤以降に展開の山場を持ってきている。

Game 1

2ターン目 《ゴブリンの空切り/Goblin Skycutter
3ターン目 《顔なしの貪り食い/Faceless Devourer
4ターン目 《石炭焚き/Coal Stoker》→《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers

正にお手本のようなカーブの描き方だ。相手も《熟慮/Think Twice》の表裏によって手札的にはアドバンテージを得ているのだが、一対複数交換するカードが乏しく、かつクリーチャーのサイズカーブが緩やかに上がるこの環境では、単純にクリーチャーを連打されるとそれだけで苦しい。逆に突破する側からすると、一対一交換するカードだけはそれなりにあるので、ダメージを通すのはそれほど困難ではない。

David も《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を駆使しなんとか場を支えにかかるのだが、序盤のダメージが多すぎ、コントロールしきる前に《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers》によってライフを削り取られてしまう。

リッチー 1-0

Game 2

6ランドの初手をマリガンするリッチー。致し方ない。リッチーとて人の子、どれほど卓越したドラフト手腕を持っていたとしても、運命まではピックできない。

ゲームを決めたのは、次の場面だ。

David :《流動石の媒介者/Flowstone Channeler》《玄武岩のガーゴイル/Basalt Gargoyle

リッチー:《石炭焚き/Coal Stoker》《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers

David の場に残されたマナは平地と山。Game 1で見ている《一瞬の瞬き/Momentary Blink》が気になるところではあるが…だからと言って待っても状況が好転するとは思えない。

リッチーは《稲妻の斧/Lightning Axe》を宣言。そのコストとしてディスカードした《病的な出来事/Psychotic Episode》をマッドネスで使用し、場と手札の両方を一気に侵略しようと試みるが、そこに突き刺さるはやはり《一瞬の瞬き/Momentary Blink》。

《玄武岩のガーゴイル/Basalt Gargoyle》を場にキープしつつ、David は《幽霊船/Ghost Ship》に《海賊船/Pirate Ship》という豪華船団によってゲームをイーブンに。

リッチー 1-1

Game 3

《肥満死体/Corpulent Corpse》待機、《奈落の守り手/Pit Keeper》《炎の刃のアスカーリ/Blazing Blade Askari》とテンポ良く展開するリッチー。さすがは展開力だけを念頭に置いたデッキ構築だけあって、毎ターンとも無駄の無い動きだ。

対して、 David はパーツは派手だが3色デッキ。立ち上がりを突かれてしまうと厳しいものがある。結局、序盤の差を活かしたリッチーがそのまま勝利する。

リッチー 2 – 1 David

■第五ラウンド vs. Falske David

リッチー vs. David二人目

第五ラウンドの相手は新たな David 、そしてこれはカナダ同士の同郷対決でもある。今回のDavid のデッキは、赤緑に青をタッチした待機デッキだ。

Game 1

いきなり相手が《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を待機するちょっと嫌な感じのスタート。しかも、相手が次のターンに召喚したのは《ジョイラの時虫/Jhoira's Timebug》だ。いきなりターン制限がかかってしまう。

だが、リッチーのデッキも展開力ならば負けてはいない。まずは《肥満死体/Corpulent Corpse》を待機させると、3ターン目には《炎の刃のアスカーリ/Blazing Blade Askari》を、そして4ターン目には《石炭焚き/Coal Stoker》から《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers》という絶好の展開。

なにしろ序盤すぎるので、生け贄によって待機を加速できるガルガドンにしても材料が無さ過ぎた。

結局、1ターン差で、リッチーが勝利する。

Game 2

初手に《硫黄破/Sulfurous Blast》を発見したリッチーは、順調かつおざなりにターンを重ね、4ターン目に使用。2対3交換に成功する。そして、そこからは一方的な展開祭りだ。《蠢く肉裂き/Drudge Reavers》から《顔なしの貪り食い/Faceless Devourer》、そして《よじれた嫌悪者/Twisted Abomination》と完璧な展開だ。

だが、沼一枚をアンタップさせていたリッチーの場に突撃してきた《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》が全ての流れを変えてしまった。

襲いかかる5/5の目の前には、再生可能な5/3。さすがにこれを見逃す手はない、仮に巨大化するにしても再生すればいいだけだ。リッチーもそう考えてこれをブロックした。バトルが終わり、ベイロスは死に、嫌悪者は再生を終える。だが、これでリッチーの再生マナは全て無くなった。

そこに、今度は相手の《硫黄破/Sulfurous Blast》が突き刺さる。何も無くなった場に降臨する《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を止める術は残されていなかった。

Game 3

リッチー in Round 5

気を引き締めてかかりたいところだが、リッチーは初手が微妙。結果から言えば、ここが勝負の分かれ目だったのかもしれない。元々リッチーの今回のデッキは序盤の展開力が全てなのだ。その展開力を失ってしまえば、残るは軽くて小さい獣の群れだ。

なんとか少し引き当てたクリーチャーを展開し、《顔なしの貪り食い/Faceless Devourer》や《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers》でダメージを与え、あと1ターンで勝てるという場面までは演出したのだが…

そこに待ち構えていたのは、相手の《版図の踏みつけ/Tromp the Domains》。《新緑の抱擁/Verdant Embrace》によって数多くのトークンを揃えていた相手の攻撃は、一撃でリッチーを吹き飛ばしたのだった。

ちなみに、おそらくではあるが、2ゲームに渡りリッチーを吹き飛ばした《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》だが、おそらくリッチーが1パック目の初手でスルーしたカードであろうことを付け加えておく。

リッチー 1 – 2 David

■第六ラウンド vs. Bernat Michael

リッチー in Round 6

4連勝からの敗北。既に二日目進出は決まっているが、ここで連敗するようだと一気に今後が厳しくなってしまう。なんとか勝って第三ドラフトを迎えたいところだ。

対戦する Bernat が使用するのは赤緑白の三色スリヴァー・レベルデッキ。種族の統一感が無いのが気になるが、はまった時の爆発力はすさまじい、はず。

Game 1

このゲームでも変わらずマナカーブ通りのきっちりとした展開を続けるリッチーなのだが、このゲームに限っていえば、普通の展開では絶対に勝てない状況が待ち構えていた。なにしろ、

《羽軸スリヴァー/Quilled Sliver
《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver
《増力スリヴァー/Might Sliver
《増力スリヴァー/Might Sliver

端から順に、5/5、5/5、6/6、6/6である。こうなってしまったら、どーもこーも。

リッチー 0-1

Game 2

考えもしなかった展開に目を白黒させたリッチー。背中から漂うものが哀愁ですらなくなっていると思うのは筆者だけだろうか。

だが、考えてみて欲しい。方や展開力だけを念頭に置いた二色の速攻デッキ。方や爆発力だけを考えた三色デッキだ。どっちが平均してまわりやすいかを。

それを証明するべく、このゲームでもリッチーのデッキは普通にまわった。そして相手は普通に少しまわらなかった。だが、それだけでリッチーには十分だった。

リッチー 1-1

Game 3

常に変わらずリッチーのデッキは順調にターンを終えていく。ここまで見てきた九つのほぼ全てで、リッチーは4ターン目までに3枚のカードを使っている。それどころか、4ターン目までに5枚のカードを使っていることすらある。

だが、希に普通では勝てない展開もある。Bernat は、《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》の力を借り、《火跡スリヴァー/Firewake Sliver》と《監視スリヴァー/Watcher Sliver》を並べて全軍突撃をかけてきた。

《火跡スリヴァー/Firewake Sliver》のおかげでろくにブロックできなかったリッチーは一気に大ダメージを受けてしまう。そして、更につまり気味だった土地がそのピンチに拍車をかける。

《稲妻の斧/Lightning Axe》から《ベラドンナの暗殺者/Nightshade Assassin》というマッドネスを駆使した二体除去でリッチーも食い下がるのだが、いかんせん運がなかった。なにしろ、相手はスリヴァーを揃えつつ、レベルをサーチするデッキだ。平均値は低いかもしれないが、はまった時のデッキの爆発力は高い。

そして、まさにその最高値が目の前にあった。マジックが平均値を勝負するゲームではない以上、リッチーにできるのは右手を差し出すことだけだった。

リッチー 1 – Bernat 2

■最後に

リッチーの妙技を味わいまくる、という最初の企画意図とは若干そぐわない結果が出てしまったが、それもまたマジックらしいと言えるだろう。

だが、ここで参考にして欲しいのは勝敗がどうだったかではない。何を目的にデッキを作り、その目的を達成できたかどうかである。

リッチーは、確実性を重視し、不安定な要素を極力切り捨ててデッキを構築している。残念ながら第二ドラフト自体は1-2という不本意な結果に終わってしまったが、第一ドラフトで3-0しているので、合計すれば4-2、二日目の進出は決まっているのだ。

是非、今後もリッチーのドラフトに注目して欲しい。そして何かを感じとって欲しい。

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