Draft Report : 第3ドラフト―斉藤 友晴

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 20日

By Keita Mori

プロツアー・チャールストン王者、斉藤 友晴

予選2日目への切符をかけた第一関門、2回のブースタードラフトを終えて6連勝を記録したプレイヤーはわずかに6人。そこには今季のプロツアーで優勝を飾っている2人のチャンピオンの名前もリストアップされている。

新時代のステロイドとも言われた「グルール・ビート」でプロツアー・ホノルルに戴冠したMark Herberholz(マーク・ハーバーホルツ/アメリカ)と、チームKajiharu80(with鍛冶 友浩&八十岡 翔太)としてプロツアー・チャールストンで栄冠をつかんだ斉藤 友晴(東京)だ。

参照記事:The 6-0 Drafters

本稿では、この第3ドラフトにおける斉藤のドラフティングを観察し、「時のらせん」環境下のドラフトで彼がどのようにして勝機を見出してきたのかを探ってみよう。

ちなみに、斉藤とHerberholzによるプロツアー・チャンピオン対決は第8回戦で注目の対戦(Feature Match)ともなっている。

■斉藤の戦略―流動的完全協調ドラフト

斉藤 友晴が6連勝を飾った段階で、私は彼にインタビューを試みた。いかな理由で、どんな色を選択しているか? そして、それはいわゆる「キメウチ」なのか? などなど。

以下、ここでは斉藤が熱く語ってくれた内容についてまとめておこう。

斉藤いわく、

まず、大前提として「時のらせん」環境と「ラヴニカ」環境はまるで異なったものである。おそらく、そのどちらかを得意とするタイプのプレイヤーは他方でなかなか苦しむのではないか。

「ラヴニカ」時代は、それぞれのブースターパックで特定の二色をフューチャーした「ギルド」という概念に支配されたパワーカードが出現していたため、よく言えば完成形を見据えた投機的なピックが、端的に言ってしまえば「キメウチ」がハマりやすい環境だった。

斉藤は上流からのシグナルを読んで、自分の居場所を見出していくタイプであり、別の環境では暴挙とも思えるピックが結果論的に肯定されてしまうような「ラヴニカ」は苦手だった。

しかしながら、「時のらせん」は違う。

もちろん、どのような環境でも初手でピックすることになるのはパワーカードで、それが最終的にデッキに投入できるに越したことはない。…が、三手目、四手目といったあたりでいかに進路を決定し、可及的速やかに上下とかぶらない自分の根幹色を見出せるかどうかが実に重要である。結果的にファーストピックの爆弾級カードがタッチカラーないし戦力外となってもまったく問題ない。

具体的には、最初のパックを終えた段階で「単色プラスアルファ」的なピックを成し遂げられているのが理想系で、いかに上下と協調できるか、その協調的気配の中で自分の利権を確保できるかが命題なのだ。

また、個別のカード評価という意味では1~2マナ域の「待機」クリーチャーは基本的にどれも強い。…にも関わらず、たとえば《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》あたりは過小評価されている感が強いという。

ちなみに、斉藤は現在の環境を明確に得意種目であると実感していて、このセットを使用したプレミア戦線の開幕戦であったグランプリ・シドニーでさっそくのベストエイト入賞を果たしている。

Tomoharu Saito - Draft 1

Download Arena Decklist
ソーサリー (4)
3 Search for Tomorrow 1 Assault // Battery
インスタント (2)
1 Sudden Shock 1 Fiery Temper
アーティファクト (1)
1 Weatherseed Totem
エンチャント (1)
1 Stormbind
土地 (15)
9 Forest 5 Mountain 1 Swamp
40 カード

シドニーでも好調(3位入賞)だった斉藤が第1ドラフトで作り上げたのか緑メインに赤と黒を加えたGr/bデッキ。完全に協調に成功し、おかげで現在の「時のらせん」環境化でベストコモン候補にノミネートされている《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》や《明日への探索/Search for Tomorrow》が面白いように流れてきたという。

土地15枚というデザインはかなり先鋭的なもののようにも見えるが、9枚の《森/Forest》が投入されているために、上述した2種5枚の「待機」呪文からのスタートが期待できる。それを受けて2マナ圏にも3枚の《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》をはじめとした優良クリーチャーがひしめいており、テンポ勝負になりやすい中で着実な盤面を最序盤から構築できるように仕上げている。

Tomoharu Saito - Draft 2

Download Arena Decklist
ソーサリー (3)
1 Psychotic Episode 1 Mindstab 1 Phthisis
アーティファクト (1)
1 Gauntlet of Power
土地 (17)
2 Mountain 15 Swamp
40 カード
Sangrophage

第1ドラフトでは「不人気の気配を感じて切り込んだ」緑で確実な手ごたえをつかんでいる斉藤が第2ドラフトで仕上げているのが「マッドネス」のエンジンをしっかりと組み込んだ黒単タッチ赤。

緑系デッキでの先ほどの成功に固執せず、いわゆる青白「待機」系やサイズ勝負の緑といったアーキタイプを狙っているシグナルを上下から察知し、斉藤は針路を定めたのだ。

3枚の《ゴルゴンの世捨て/Gorgon Recluse》、《病的な出来事/Psychotic Episode》1枚、《闇の萎縮/Dark Withering》1枚といった「マッドネス」カードを2枚の共鳴者(シャドーを得る)と3枚のスペルシェイパー(2点ドレイン)でバックアップするというシステムを比較的な安価なピックで構築している。

それぞれ、単体ではそこそこ程度の強さをほこるカードたちだが、アーキタイプとしてそれらを組みあせることによってそのパフォーマンスは一変するので覚えておきたいところだ。

また、ライフ獲得手段が豊富であるということもあって、2マナ域に投入された2枚の《サングロファージ/Sangrophage》もおそらく周囲が考えている以上の力を発揮していたということだ。ちなみに、17枚のうち15枚が《沼/Swamp》というマナベースだけに、《堕落の触手/Tendrils of Corruption》の吸収量期待値も相当なものとなる。

ちなみに、タッチ赤している最大の理由は現環境最高の黒除去とされている《絞殺の煤/Strangling Soot》のフラッシュバックのため。

さあ、それでは名手のドラフトを堪能しよう。流動的完全協調ドラフトの真髄とはいかなるものか!?

■3rd Draft -Pack 1

開封!

1.《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter
2.《鋸刃の矢/Serrated Arrows
3.《古木のヴァーデロス/Verdeloth the Ancient
4.《拭い捨て/Wipe Away
5.《獣群のナール/Herd Gnarr
6.《水深の予見者/Fathom Seer
7.《版図の踏みつけ/Tromp the Domains
8.《ウルザの工廠/Urza's Factory
9.《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker
10.《流水の海蛇/Slipstream Serpent
11.《腐れ落ち/Molder
12.《サリッド/Thallid
13.《戸惑い/Bewilder
14.《アトランティスの王/Lord of Atlantis

斉藤が開封したパックに封入されていた主要なカードは《闇の萎縮/Dark Withering》、《明日への探索/Search for Tomorrow》、《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》といった内容で、単純なカードパワーと※シグナルとの意味を含めて迷わず《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》をピックすることとなった。

※シグナル:
自分のドラフトしようとしている色を周囲につたえるために、暗黙のメッセージをパックに残されたカードにこめること。もっとも一般的なのは当該色のカードを(多少弱くとも)自分でしっかりとせきとめるというピックを一貫するやり方だ。また、自分のドラフトしない色のカードであれば(たとえパワーカードであっても)迷わず下流に流し「この色はやってくれてかまわないよ」というサインを送り、逆説的に、そのパワーカード以外の色をドラフトしようとしていることを知らせるという手段もある。

クリーチャー除去という面に問題を抱えがちな青を志向したところで、斉藤 友晴は第2パックに「タイムシフト」してきた強力アーティファクトの《鋸刃の矢/Serrated Arrows》を見出すという幸運に恵まれた。そもそもこれは下家までまわってくる機会の少ない強力な一枚であるのだが、さらに喜ぶべきことに、今回の斉藤はこれをピックした後に下流へと青いパワーカードをまわさずに済んだのである。ここで《突然のショック/Sudden Shock》、《ぶどう弾/Grapeshot》、《アムローの偵察兵/Amrou Scout》といったカードを隣にパスすることになったが、「協調第一」を掲げる斉藤にとっては望むところだっただろう。

黒除去、赤除去をすでに下流へとパスしていた斉藤は2色目に緑を選択。第3パックで《古木のヴァーデロス/Verdeloth the Ancient》をピックしてからは青緑を標榜した。

斉藤 友晴を特に驚かせ、喜ばせたのは9手目で《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》がまわってきたことだった。これはドラフト前にも彼が口にしていたことだが、今の環境で1~2マナ域の「待機」はすべからく強いのだ。

1パック目を終えた段階で、斉藤 友晴の上家が赤白に、下家黒系(二色目模索中)になっている。

■3rd Draft -Pack 2

Call of the Herd

1.《獣群の呼び声/Call of the Herd
2.《不安定性突然変異/Unstable Mutation
3.《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker
4.《獣群のナール/Herd Gnarr
5.《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer
6.《芽吹き/Sprout
7.《獣群のナール/Herd Gnarr
8.《時エイトグのトーテム像/Chronatog Totem
9.《ダークウッドの足跡追い/Durkwood Tracker
10.《芽吹き/Sprout
11.《知恵の蛇の眼/Ophidian Eye
12.《戸惑い/Bewilder

「時のらせん」というセットの最大の売りは「タイムシフト」という復刻カードが実装されたことであろう。そして、数ある「タイムシフト」の中でも白眉とされているのがエクステンデッド級のパワーカードであるオデッセイの《獣群の呼び声/Call of the Herd》だ。そして、斉藤は青緑路線を確定したところでその一枚にめぐりあった。

さらに、斉藤は5パック目で《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》を加えて、先ほどの《鋸刃の矢/Serrated Arrows》とあわせて除去能力を充実させた。青緑というアーキタイプにはバウンスこそあっても除去は薄いものなのだが、斉藤はその弱点をも補完しつつある。

目立たないカードかもしれないが、《獣群のナール/Herd Gnarr》というのは緑の地上戦線のビートダウンを支える優良カードである。いわゆるサリッド軍団との相性の良さは折り紙つきのもので、後半で斉藤が押さえている《芽吹き/Sprout》もこの《ナール》と組み合わせると廉価ながら+2/+2修整をあたえるコンバットトリックとして活躍するのだ。

■3rd Draft -Pack 3

Errant Ephemeron

1.《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron
2.《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate
3.《応じ返し/Snapback
4.《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron
5.《ワーム呼び/Wurmcalling
6.《トゲ尾の仔ドレイク/Spiketail Drakeling
7.《取り消し/Cancel
8.《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear
9.《不安定性突然変異/Unstable Mutation

強固な地上戦線を築き上げている斉藤にとって、この3パック目に期することは制空権の確保だった。そして、彼が開封したパックには《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》、《巣立つ大口獣/Fledgling Mawcor》、《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》、《セラの報復者/Serra Avenger》、《絞殺の煤/Strangling Soot》といったカードが封入されており、斉藤は4/4飛行クリーチャーを迷わずピックした。

2手目でCIPバウンス能力を兼ね備えた飛行クリーチャーである《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》、3手目で《応じ返し/Snapback》を加えたところで――斉藤 友晴はこの第3ドラフトにおける「完全協調」の成功を確信した。

現環境最強の青いコモン、2枚目の《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》が4手目にまわってきたのだ!

このトピックがすべてを物語っているかのようで、斉藤 友晴は《トゲ尾の仔ドレイク/Spiketail Drakeling》や《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》といった優良カードを陣営に加えていくこととなり、実に見事な青緑のデッキを完成させた。

先ほど《獣群のナール/Herd Gnarr》とのトリックで《芽吹き/Sprout》が悪くないという話をご紹介したが、いかんせんデッキが強すぎてそういった地味なカードは入る余地がないほどの充実ぶりである。

Tomoharu Saito

Download Arena Decklist
ソーサリー (3)
1 Tromp the Domains 1 Wurmcalling 1 Call of the Herd
インスタント (3)
1 Cancel 1 Snapback 1 Wipe Away
アーティファクト (1)
1 Serrated Arrows
エンチャント (2)
2 Unstable Mutation
土地 (16)
7 Forest 9 Island
40 カード

ドラフトを終えた斉藤は第1、第2ドラフトと比べるとデッキの出来が良くないのではないかと懸念していたが、実際に選択した針路や構築したデッキについては「ベストを尽くしたという満足感はある」ということだった。

そして、

とにかく協調、
流れを大事に、

という斉藤の首尾一貫したドラフトスタイルによってもたらされた青緑デッキは、結論として大成功をおさめた。

斉藤 友晴は389名の参加者によって争われることになった今回のプロツアーで唯一の9連勝を達成し、今季二度目の、そして個人としては初となるプロツアーサンデー入りへ向けて、絶好のポールポジションで第4ドラフトへと臨む。

関連記事:Feature Match Round 7 : vs. Andre Coimbra(ポルトガル)
関連記事:Feature Match Round 8 : vs. Mark Herberholz(アメリカ)

最後に、一連のドラフト取材の中で、もっとも私に強い印象を残した斉藤の言葉をご紹介して本稿を終えよう。

本来、ドラフトっていうのは、全員が余計なことを考えずに自分のデッキをひたすら強くすることに集中して、ベストを尽くして三連勝を狙うべき場所だと思うんです。 
――斉藤 友晴

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