本日最後のドラフトである、第5ドラフト。ピックする1枚1枚のカードが日曜日への切符だと言っても仕方ないこのドラフトではあるが、それは上位卓での話。
しかし、すでにトップ8入りの目がないプレイヤーだからといって、適当にドラフトをやっている、というわけではない。
あるものは賞金圏内を目指して、そしてあるものは来年のプロプレイヤークラブのレベルをかけて、トップ卓と同じように真剣な勝負を展開している。
そこで、ここは目先をかえて、4敗ラインの中でも、Player of the Yearレースのトップを走り、とにかく少しでもポイントを上乗せしたい、八十岡 翔太(神奈川)のピックをおってみようと思う。
八十岡は、3-0だとBest 16が視野に入り、2-1でも十分にBest32を狙える位置である。
■Pack 1
1 《聖なるメサ/Sacred Mesa》
他候補:《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》《結核/Phthisis》《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》
何はともあれ、まずは初手。
八十岡 「正直強すぎて、さすがにてんぱりましたね」
色拘束の薄い《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》で広く受けるもよし、勝負を決するパワーカードの《結核/Phthisis》を取るもよし。
正直、筆者など目移りしすぎて時間が足りなくなってしまうだろうと思う。
そんななかから、八十岡は《聖なるメサ/Sacred Mesa》をピック。その理由を聞いてみた。
八十岡 「悩みすぎて時間が足りなくなっちゃったので、手拍子で」
八十岡ほどのプレイヤーでも、か。
2 《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》
3 《新緑の抱擁/Verdant Embrace》
他候補:《城の猛禽/Castle Raptors》
初手に関しては、なんともいえないコメントをする八十岡だったが、続くピックで方向性を定める。
3手目では《城の猛禽/Castle Raptors》をとり、白赤にまとめる選択肢もあったが、やはり、カードパワーを重視したという。
八十岡 「この時点で、白緑タッチ赤の未来がみえましたね」
八十岡、ついに預言者としての才能に目覚めたか。
4 《グリフィンの導き/Griffin Guide》
他候補:《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》
5 《アムローの求道者/Amrou Seekers》
6 《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》
他候補:《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》
7 《補強/Fortify》
他候補:《紡績スリヴァー/Spinneret Sliver》《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》
着実に白緑のパーツを集める八十岡。
ちなみに、二日間を通して、八十岡が《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》をよくピックしていると感じた筆者は、八十岡に質問してみた。
筆者 「《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》好きなんですか?」
八十岡 「なにいってるんですか?ただただ、強いじゃないですか」
非常にリアリストな八十岡。
8 《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》
他候補:《紡績スリヴァー/Spinneret Sliver》《象牙の巨人/Ivory Giant》《一瞬の瞬き/Momentary Blink》
Pack 1での一番の注目のピックはここだろう。他の白緑の重要パーツを無視して、八十岡は《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》をピック。
筆者 「やっぱり、13/13には夢がありますか。」
八十岡 「夢なんかじゃないですよ。このカードは現実なんです。」
やっぱり、八十岡はリアリスト。
9 《一瞬の瞬き/Momentary Blink》
他候補:《永遠からの引き抜き/Pull from Eternity》《数の力/Strength in Numbers》
そして、その言葉の通り、ここでの八十岡のピックは《一瞬の瞬き/Momentary Blink》。
これによって、4ターン目に変異の《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》が表になるという夢の、失礼、「現実」のコンボが可能となった。
10 《腐れ落ち/Molder》
11 《ヴェズーヴァ/Vesuva》
12 《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》
13 《霊気の網/AEther Web》
14 《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》
15 《心鞭スリヴァー/Mindlash Sliver》
カードパワーに溢れる、非常に「現実味」溢れるPack 1となった。
■Pack 2
1 《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》
他候補:《ゴブリンの戦術家、半心臓のイッブ/Ib Halfheart, Goblin Tactician》《象牙の巨人/Ivory Giant》《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》
そして、ここで、さらに《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》をピック。
このデックを見た、鍛冶が八十岡にコメントする。
鍛冶 「すごいじゃん!これ、《一瞬の瞬き/Momentary Blink》とコンボじゃん!」
八十岡 「当たり前でしょ」
鍛冶 「あぁ、うん…」
2 《肺臓スリヴァー/Pulmonic Sliver》
他候補:《ムーア人の騎兵/Moorish Cavalry》
3 《魔力の篭手/Gauntlet of Power》
他候補:《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》
4 《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》
他候補:《ザルファーの指揮官/Zhalfirin Commander》
5 《ベナリアの騎兵/Benalish Cavalry》
他候補:《補強/Fortify》
6 《荊景学院の戦闘魔道士/Thornscape Battlemage》
他候補:《ウェザーシードのトーテム像/Weatherseed Totem》
7 《アヴナントの癒し手/D'Avenant Healer》
他候補:《ウルザの工廠/Urza's Factory》
さらに、パワーカードをかき集める八十岡。
「ただ、強いだけ」の《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》もきっちり2枚目をピックしている。
8 《念動スリヴァー/Telekinetic Sliver》
他候補:《城の猛禽/Castle Raptors》
ここで、《城の猛禽/Castle Raptors》を流してまで、《念動スリヴァー/Telekinetic Sliver》をカット。白緑の八十岡のデックの場合、やはりこのカードだけで勝負を決められてしまうという判断だという。
ちなみに、森の記事で齋藤 友晴がカットに対して否定的なコメントをしていた事を八十岡に伝えると、一言。
八十岡 「ドラフトは、カットですよ。」
カットをやらせたら日本で五指に入ると評判の八十岡だけのことはある。
9 《虚弱/Feebleness》
10 《ムーア人の騎兵/Moorish Cavalry》
11 《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》
12 《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》
13 《オークの司書/Orcish Librarian》
14 《裏切り者の手中/Traitor's Clutch》
15 《芽吹き/Sprout》
こうして、なおも、デック全体のカードパワーを高めていった八十岡。
カットに関しても、ああは言っていたものの、デック全体のカードパワーの高さからカットの余裕があると判断しての事だろう。
少なくとも、筆者はそう信じているし、信じたい。
■Pack 3
1 《コーの先導/Outrider en-Kor》
他候補:《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》
八十岡 「マナベースに不安があったんですよね…」
と、Pack 2終了時点の感想を語る八十岡。
そして、ここで、そのマナベースを補強してくれる《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》があらわれる。
八十岡 「でも、初手だと…あと、序盤のクリーチャーも足りなかったですし…」
と、なくなく《コーの先導/Outrider en-Kor》をピック。
2 《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》
他候補:《アムローの偵察兵/Amrou Scout》
このピックに関しての八十岡のコメント。
八十岡 「リクルーターはレベルが2枚あってやっとギリギリなんですよ。この時点で、レベルはそのギリギリの2枚。だったら、1ターン目からの行動の選択肢を増やしたかったですね」
パワーカードをピックしすぎて、デックが重くなってしまう事はよくある事。
そして、テンポが何よりも重要視されているこの環境で、それは致命傷となりうる。
全体を通して、八十岡は、Pack 3でマナカーブのバランスをとっていたように感じられていた。
3 《ベナリアの騎兵/Benalish Cavalry》
他候補:《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》
4 《一瞬の瞬き/Momentary Blink》
他候補:《霊気の網/AEther Web》
5 《菌類の到達地/Fungal Reaches》
他候補:《ヘイヴンウッドのワーム/Havenwood Wurm》《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》
この5手目の貯蓄ランドピックはできればピックしたくはなかったという。
八十岡 「でも、1枚はないとマナベースがどうにもならないですから。この順目だと一周は期待できないですし」
と、非常に現実的な判断から、しかたなくこれをピックする。
6 《狩りの興奮/Thrill of the Hunt》
他候補:《獣群のナール/Herd Gnarr》
7 《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》
他候補:《幻影のワーム/Phantom Wurm》《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》
8 《菌類の到達地/Fungal Reaches》
他候補:《ジェディットの竜騎兵/Jedit's Dragoons》
その後も、マナカーブを調整する事に余念がない八十岡。
八十岡 「6マナは《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》で十分」
と、リアルに《幻影のワーム/Phantom Wurm》を切り捨て「現実のカード」《クローサの雲掻き獣/Krosan Cloudscraper》をピックしている。
しかし、そんな現実主義者の八十岡ですら、夢のようだと思う出来事が。
9 《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》
なんと、初手で泣く泣く流した《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》が一周して戻ってきたのである。
八十岡 「さすがにありえない出来事ですよ」
とはいうものの、嬉しさを隠し切れない表情の八十岡。
10 《地の底のシャンブラー/Subterranean Shambler》
11 《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》
12 《霊気の網/AEther Web》
13 《霊気の網/AEther Web》
14 《略取/Plunder》
15 《心鞭スリヴァー/Mindlash Sliver》
以上、カードパワーを重視しつつも、最終的には、マナバランスを調整する事に余念がなかった八十岡のピックを見ていただいた。
最終的に出来上がったデックに関して、ニヒルに「まぁまぁ」といいつつ、90点と高い点数をつけ、本人としても満足できる出来上がりの様子。
八十岡 「3-0してきますよ」
ちなみに、このデックでの結果は、Round 13を事故で落してからの2連勝で2-1。八十岡は最終的なスコアを10勝5敗とした。十分にBest 32を狙える成績である。
さて、気になる順位の方は…
八十岡 「Op差で33位でした。負けが初戦以外だったら、Best 32だったんですけど…」
現実主義者の八十岡に対しても「現実」は等しく非情だったようである。