大礒正嗣。
殿堂入りプレイヤーであり、かつて現役時代に「歴代日本人最強」と言われたプレイヤーだ。
今でこそ就職などにより練習の時間が取れてこそいないものの、そのセンスは健在だろう。なにしろ「練習が足りてない」と言いながらもここまで3Byeを含めて10-1の成績により、この2番Podに座っているのだ。
できればオルゾフかシミックがやりたいという大礒。どうしても時間が足りず練習ができていないギルドが有るということらしいが、しかしそこは大礒。地力が違う。
そんな大礒のドラフトポッドの上家に、若手のエースである遠藤亮太が座った。
遠藤といえば昨年の「PWCチャンピオンシップ」や「関東Finals」を優勝し、グランプリやプロツアーでも活躍しているまさに今から世界に羽ばたこうという若手だ。
歴史は、引き継がれる。
過去から未来へ。
古豪から若手へ。
しかし、大礒はまだ、現役だ。まだ、過去ではない。
遠藤の動向を絡めて、大礒のピックを中心に見ていこう。
第1パック
1手目
初手は単色で使いやすくカードパワーの高い《聖なるマントル》を選択。《贖罪の高僧》も強力ではあるが、簡単に勝てることも多いこのカードには敵わないだろう。
なお、この時の遠藤のピックは《スカルグのギルド魔道士》。
2手目
2手目にしてはなんとも微妙なカードしか候補に上がらない。
《殺戮角》を取ってもギルドに渡りはないし、一応ながらボロスでも使用できる《闘技》をピックといったところか。
しかしこの時の遠藤のピックは《サンホームのギルド魔道士》。ボロスが被る可能性も発生した。
3手目
3手目で一転、各色の強力カードが並び、どれを取るのか迷うパック。
悩んだ上で《ウォジェクの矛槍兵》をピックした。
後でこの時のピックの感想を訊いてみたが、
「《門なしの守護者》を取ろうか悩んだんですが、このカードは結局オルゾフに行くカードなんですよね。別に行っても良いんですけど、だったらここで《ウォジェクの矛槍兵》を取っておけば下とボロスが被らないから返しが有利になるかなーと。」
さすが大礒。切り込んだように見えたピックもしっかり考えられている。
4手目
《都邑の庇護者》はボロスで使うには重いカードであるため、《盲従》をピック。相手のブロッカーを寝かせられるこのカードはボロスにおいてはわりと強力だ。
5手目
ここでも重い除去である《天使の布告》よりは軽いコンバットトリックである《軍部の栄光》をピック。軽さを優先している。
6手目
ここも一貫して軽いところを。
7手目
- ○《千年王国のガーゴイル》
- 《シミックの変転魔道士》
- 《反逆の行動》
《シミックの変転魔道士》がこの時点でも残っているのが少し嫌だが、ここは自分でも使えるクリーチャーを。
8手目
- ○グルールの魔除け/Gruul Charm(GTC)》
- 《反逆の行動》
自分が使えるカードである《反逆の行動》をピックするかと思ったが、ここでは飛行ビートの障害になる《グルールの魔除け》をピックした。
9手目
前のめりに攻撃できるボロスにおいては見た目よりも強力なアーティファクトクリーチャーをピック。
10手目
- ○《新緑の安息所》
11手目
- ○《すがりつくイソギンチャク》
12手目
- ○《順応する跳ね顎》
- 《ディミーアのギルド門》
- 《霊気化》
12手目にしては異常なカードパワーのパックとなった。ここでは二種類のギルドを回さず一つのギルドに絞り、下家を混乱させないようにしていく。
13手目
- ○《はじける境界線》
14手目
- ○《死に際の願い》
1パック目終了時点で方針はほぼボロスに決まっている形。
現時点ではクリーチャーが不足気味なので、ここからはクリーチャー、特に低マナ域のクリーチャーを集めていきたいところだろう。
遠藤のピックはオルゾフ方面にまとまっており、白が被っているのが少々辛いところか。とはいえボロスとオルゾフは使用するカードの方針がかなり違うため、住み分けは可能だ。
第2パック
1手目
関係ない色の強力レアを引き当ててしまうが、ここは落ち着いて待望の軽マナクリーチャー。
2手目
- ○《突撃するグリフィン》
- 《ヴィーアシーノの軸尾》
コンバットトリックにもなる優秀なクリーチャーである《ヴィーアシーノの軸尾》と最後まで悩んでいたが、安定して攻撃できる飛行持ちの《突撃するグリフィン》を。とはいえ2手目に取りたいカードではないので苦しいところ。
3手目
3手目としては少々寂しいが、とにかく低マナ域のクリーチャーを。
4手目
安定した戦力になる《戦心の歩兵》をピックするかと思われたが、ここは《くすぶり獣》をピックした。
「《闘技》を取っていたのと、このカードは集めれば強いので1枚目は点数高めにピックしました。」とのこと。
5手目
全部デッキに入る!あまりにも強力なラインナップに苦笑いする大礒。なかでもカードパワーが高く、役割も他ではカバーできない《オルゾヴァの贈り物》。この順目でとれたのは僥倖だろう。
6手目
まだまだ流れてくる飛行クリーチャー。
7手目
軽いほうを取るかと思われたが、継続して攻撃しやすいクリーチャーを優先した。
8手目
- ○《軍部の栄光》
- 《ディンローヴァの恐怖》
- 《シュラバザメ》
どうにも強力なカードが残っているのは気になるものの、落ち着いて自分の色のカードをピック。
9手目
- ○《騎士の見張り》
10手目
- ○《力線の幻影》
11手目
この順目で強力なドロー強化が残っているのは、卓にシミックがほぼ居ないサインだろう。しかし今からシミックに行くわけにもいかなく、自分の色のカードを獲得。
12手目
- ○《散乱する電弧》
13手目
《影切り》はかなり強いカードでありこの時点まで残っているのは驚きだが、ここは色の主張をしておきたいということであえてのスルー。
14手目
- ○《塔の防衛》
全体の流れが悪く、卓にボロスが多い雰囲気。大礒も後に「ボロスを絞ったつもりでしたけど、決め打ち気味にやってる人が多かったみたいですね。流れがあんまり良くなくて苦しいです。」と語っていた。
上家の遠藤と白が被ってしまい、順回りのシーンでは遠藤に白のパーツを回収されてしまい苦しいピックになってしまったようだ。
2パック目では軽いクリーチャーをある程度回収できたものの、質がそれほど高いといえる状態ではないため、3パック目でも同じように継続して優秀なクリーチャーを回収したいところだ。
呪文も数こそ十分あるものの除去といえるカードがほとんど無い状態ために、除去も回収したい。足りていないパーツも多いため、3パック目では割り切りが必要になってしまい苦しいところ。
第3パック
1手目
引いたのは優秀な呪文2枚。安定した除去である《強盗》を取る選択肢もあったが、そこは割りきって《聖なるマントル》をピックした。
「《強盗》は確かにデッキに欲しいところではあるんですけど、今からこれを取っても勝てるようなデッキじゃないと思うんですよね。それよりも簡単に勝てるほうを。」とのこと。
2手目
これまた2手目にしては悲しい。兎にも角にもクリーチャーを。
3手目
悪いとは言わないものの、3手目としては苦しいところか。もう少し優秀な低マナ域が欲しいが、贅沢は言えない。
4手目
大礒の逆境は続く。マナカーブは整うとはいえ、4手目に単なる《さまようもの》をピックさせられるのは苦しいとしか言いようがない。
5手目
サイドボードとしては悪くないカードだが、メインには多くて1枚しか入らなそうなカードであり既に2枚目。メインに入らないであろうカードをこの順目で取るのは本当に苦しい。
6手目
重いソーサリーながら、必要だった除去。文句は言えない。
7手目
一度は《ドレイク翼の混成体》をカットしようとするも、考えなおしてのピック。
サイドボードとして使用する可能性がある程度のカードだが、今更カットに意味もない。
8手目
9手目
- ○《宮廷通りの住人》
このカードが一周は嬉しい誤算。デッキがぐっと引き締まった。
10手目
11手目
- ○《原初の訪れ》
12手目
- ○《すがりつくイソギンチャク》
13手目
- ○《殺人の捜査》
14手目
- ○《構造崩壊》
卓のボロスを上手く絞りに行ったつもりだったが、決め打ち気味にボロスをピックしていた人が多かったようで大礒としては苦しいところ。デッキについても2枚の《聖なるマントル》と《オルゾヴァの贈り物》で勝ちやすい部分は良いのだが、クリーチャーの質は十分とはいえない。
上記3枚のオーラが上手く働くかがキーになるだろう。

「頑張って1-2ですかね……。」と気落ちした様子で謙虚に答えてくれた大礒だが、卓で苦しいのは大礒だけではないはずだ。ぜひ頑張ってTop8への道を切り開いてほしい。