Feature: 変形サイドボードの美学

更新日 Event Coverage on 2006年 4月 8日

By By Daisuke Kawasaki

Giant Solifuge

さて、皆様は変形サイドボード、いわゆるアグレッシブサイドボードと言うものをご存知だろうか。

古くはプリズンにおける《命取りの昆虫/Deadly Insect》やネクロドネイトの《ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator》が有名であり、また最近ではイゼット系がサイドで《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》を入れたり、マガシュー(ハートビート)がサイドボード後に《殴打蔦の葛/Vinelasher Kudzu》ビートダウンに姿を変える姿がPTホノルルで注目された。

その一番の目的は何か。

それは、対戦相手の虚をついて大幅にサイド後の勝率を上げたり、また、苦手なタイプのデックや同型に対してデックの戦略そのものを変化させる事で優位にたつという事にある。

一度ばれてしまえば、もう効果は無い…というのは昔の話で、特に相性差の克服という点ではそれがすでに既存の戦略であったとしても、対戦相手の迷いを誘ったり根本的な相性の変化を狙ったりと十分な効果があげられる。近年で、ハイブリッドと共にかなり注目されているデックテックの1つである。

さて、別記事でのチームスタンダードの基本戦略でも触れたように、この環境は、幅広い勝率を持つデックが求められ、決定的な相性差をひっくり返すデックテックが必要とされる。そこで目がつけられたのが変形サイドボードである。

特に、ノンクリーチャー系のデックに相性の悪い《神の怒り/Wrath of God》系のデックや、逆にサイド後に除去を抜いた隙を狙いたいノンクリーチャーデックにおいて、変形サイドボードはマッチにとっても、チームにとっても重要な一勝を稼ぎ出してくれる戦略として欠かせないものとなっている。

その結果、今回のGP浜松の会場では、史上空前といっても過言ではないほどに変形サイドボードを搭載したデックが多数を占めている。もはや、変形サイドボーディングはチームスタンダードに置いて重要な戦略の一つなのである。

そこで、ここでは、2日目に進出したデックの中から、代表的な変形サイドボード戦略を紹介したいと思う。

■《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge

まずは、冒頭で紹介した《命取りの昆虫/Deadly Insect》と虫つながりでこのクリーチャーから。

この伝統ある変形サイドボードクリーチャーである《命取りの昆虫/Deadly Insect》に速攻とトランプルがついた、いわばスーパー《命取りの昆虫/Deadly Insect》である《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》は、もはやイゼット系のデックのサイドボードの定番となっていると言える。

今回も、Manmoth Teikokuなどのイゼットロンのサイドボードに採用されている。また、更に過激に《激憤明神/Myojin of Infinite Rage》をいれるというのもすでに浸透したデックテックの一つとなっているようだ。

だが、最近では、イゼットロンでは同型対決でより直接的に効果のある《呪師の弟子/Jushi Apprentice》や《併合/Annex》をサイドボードに入れる為のスペースを確保する為に、追いやられてしまう傾向にある。

他にも、ノンクリーチャーデックに弱いGreater Goodのようなデックに、ノンクリーチャーに強い《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》を入れるNon-Satoponのような例も当然ある。

また、かわった所で、ノンクリーチャーである八十岡の赤白バーンが、主に同じくノンクリーチャー寄りのデックに対して、《神の怒り/Wrath of God》と入れ替えるサイドボードとして採用しているのが面白い。

■ゴドー・システム

《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord
+《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang
+《梅澤の十手/Umezawa's Jitte

さて、森 勝洋がGodo's Giftとしてけちコントロールのサイドボードに入れて以来、よく知られるようになった変形サイドボードであり、最近ではFinalsで中村 修平のイゼ…もとい、服部半蔵トロンのサイドボードから浅原のFinals連覇を阻止した事が記憶に新しい。

そんな、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》であるが、この浜松の地でも人気は衰えていない。

Hakujin RevolutionのランデスボアやOre no Mutyaのイゼットロンのようなイゼット系のマナジェンダーデックに入るのはもはや常識である。

今大会においては、Love smkyの様に、マガシュー(ハートビート)の変形サイドボード枠に《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》を採用したデザインもあった。もともとがけちコントロールのサイドに採用されたものである事を考えると、確かに違和感が無く、ある種の原点回帰であると言えるだろう。

■《殴打蔦の葛/Vinelasher Kudzu

PTホノルルのオリジナルデザインであるマガシュー(ハートビート)で採用されていたこのカード。決勝ラウンドの場で、軽快にコンボモードとビートダウンモードを切り替えて対戦相手を翻弄していた姿が脳裏に焼きついている方もいるのではないだろうか。これこそ変形サイドボードの醍醐味のいい例である。

Vinelasher Kudzu

さて、土地を並べ続けるマガシュー(ハートビート)というデックタイプの構造にがっちり合致し、それこそゼロックスとであった《クウィリーオン・ドルイド/Quirion Druid》よろしくミラクルにグローするこのクリーチャーの姿はやはり魅力的なのか、RomanesqueやStardust Crusadersといったチームをはじめ、多くのチームがこのクリーチャーによるビートダウンとのスイッチを選択している。

珍しいところでは、Sirのタッチ緑のオルゾフコントロールのサイドボードにその姿を見つける事ができる。

■《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror

神河最強の青クリーチャーとも、《変異種/Morphling》を超えたとも言われる盤面制圧能力をもつ青のスーパースターである《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》だが、色拘束が非常に薄い為、青マナが出る多くのデックの「変形サイドボード」要員として大人気である。

その能力の性質上、土地を並べるタイプのデックであるマガシュー(ハートビート)との相性は抜群で、Dirty Nurseの様に純粋に《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》単体で使用するものもあれば、Stardust Crusadersの様に《殴打蔦の葛/Vinelasher Kudzu》と併用したり、Love Smkyの様に《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》と併用したりと欲張り放題なサイドボードも可能だ。

また、もちろんもともと青のクリーチャーなので、Fuzen-no-tomoshibi-BMのオウリングマインの様に他の神河ドラゴンと共にサイドインする事だってもちろん可能である。

また、変形サイドボードが当たり前となっているマガシュー(ハートビート)のなかでも、Rikadaisukiの射場本のデザインは、《殴打蔦の葛/Vinelasher Kudzu》1枚《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》1枚とかなり独特である。

これらのクリーチャーの他にも、神河のドラゴン等も変形サイドボード要員としてサイドボードに用意されていることが多かった。サイドボードに何枚も変形の為だけにスペースを用意するわけにも行かないので、1枚で勝ちを狙えるようなクリーチャーが好まれる。

また、ただ、メインに入っていないクリーチャーを投入するだけが変形サイドボードではない。中には、デックの構造そのものをサイドボードで変えてしまおうというデックだってある。

Oita TriNEETの使用するオルゾフアグロは、メインでは白の《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を軸にしたビートダウンだが、サイドから《オルゾフの御曹子、テイサ/Teysa, Orzhov Scion》が入ってくる事で、オルゾフスピリットよりのボードコントロールを重視したタイプに変化可能だ。

Meloku the Clouded Mirror

The KagemaroのZooは、サイドボードから《制圧の輝き/Glare of Subdual》と《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー/Vitu-Ghazi, the City-Tree》《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》が入る事で、擬似セレズニアコントロールとなり、クリーチャーデックに対する相性が劇的に変化する。

これらのデックは、メインでは勝率のいいビートダウンをつかいつつ、サイド後には同型に相性のいいデックに変形する事で、チームスタンダードで重要な同型対決での勝率を大きく上げることが可能である。

通常のスタンダードに以上に、メタデックに対する相性と勝率が重要視されるチームスタンダードだからこそここまで浸透した変形サイドボード、1戦目と2戦目以降の戦術の違いをチェックするのも面白いだろう。

サイドボードに、メインボードのコンセプトと違ったカードが入っているからと、飾りだなんだと騒ぎ立てる時代は終わりを告げたのである。

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