今年の日本選手権のスタンダードラウンドは、例年と比べて異色である。その理由は言うまでも無く、本戦の直前に1つエキスパンションが加わっている点であり、先日のGP広島2日目で"ブースタードラフト"として使用されたコールドスナップこそが、その新たに加わったカード群なのだ。GP広島から1週間と経たない間に、今度は構築戦のプレミアイベントでその真価を発揮する。
まず、発売当初の頃。コールドスナップが環境に与えるインパクトがどのくらいかという話を、参加したPTQの会場などでプレイヤーに聞いたのだが、当時はそれほど高い評価を得ていたわけではなかった。例えば《オーランのバイパー/Ohran Viper》《占術の岩床/Scrying Sheets》《ルーンのほつれ/Rune Snag》《魂の撃ち込み/Soul Spike》など、目に見えて明らかなパワーカード達にのみ注目が集まり、他は……どうかな? といった印象だった。
それに関しては、筆者も否定しない。実際、いろいろ考えてデッキを組んではみたが、既存のデッキにいくつかのカードを溶け込ませるくらいしか、考えが及ばなかった。
だが、1ヶ月の間にその流れはだいぶ変化を帯びてきたようだ。
そもそも、日本選手権の予選シーズンが終わってから、公認大会でコールドスナップの使用が解禁になったのは今週の日曜日であり、プレミアイベントでは初お目見えなのだ。発売から充分な時間はあった。サプライズとは言わず、トッププレイヤーの間では常識とさえされているテクニックはいくつか発見されているようである。
実は、筆者は前日のオープン予選に参戦していた。もっとも、突撃レポートといった企画の類ではなく、本気で予選を通過したら選手権本戦に参加するつもりで戦ったのだ。……と、まぁ「じゃあ、ここで記事を書いているという事は?」という事実を察して頂きたいというお話であって。要するに、コールドスナップのある世界で実際にゲームをしてみたかったのである。
それをふまえて、実際のトーナメントに参加して得た実体験も交えて、説明的な話と雑感の両アングルから斬り込んで行きたいと思う。
■ソーラーフレア
もう世界レベルで定着した、現環境最強の呼び声高いど真ん中デッキ。日本では「太陽拳」の呼び名で親しまれている、青黒白コントロールである。デッキ製作に関しての話は別に記事になっているので、そちらを参照して頂きたく。
ラヴニカが登場してからしばらく流行した黒緑白のコントロールデッキがイメージとしては近いだろう。カテゴリー的には、「ぜいたくコントロール」に仲間分けできる。アドバンテージを取るカードをふんだんに詰め込んで勝ちに行くデッキという点、《迫害/Persecute》をキーにしている点が同じである。違うのは、青を採用する事で「スペル」に対処出来る所だ。
トップから降ってきたビッグスペルで、それまでに築いてきたアドバンテージが無に帰る(例:《燎原の火/Wildfire》《迫害/Persecute》)事もあったが、《差し戻し/Remand》で一時的に回避したり、ドロースペルで本質的に持ち直したりと、非常に汎用性が高い。
その反面、プレイヤーには半端ではないプレイスキルを要求するデッキでもある。さすがに、これだけ強いデッキが簡単に扱えるはずが無い。自分で使っても対戦相手が使ってても「取扱注意」なのだ。
■蛇(クロックパーミッション)
8月に入ってからのカナダ選手権とドイツ選手権で、相次いでトップ8フィニッシュを決めているのが、この蛇デッキだ。
とにかく、アドバンテージを取るカードが山盛り。そのほとんどが「蛇」クリーチャーであるのが大きな特色であるデッキだが、この「青緑」というカラーを日本のプレイヤーが特に好むのは、ずっと変わらないようだ。
それは、最近行われた草の根トーナメントやオープン予選でも顕著であり、正確な数は取れてないのであくまでも雑感だが、昨日のオープン予選でも相当数の「蛇」デッキを確認する事が出来た。本戦出場者も、この「蛇」デッキを無視する事は到底出来ず、デッキ分布の中に相当数の《神の怒り/Wrath of God》が見て取れたほどだ。
ヘッドジャッジの若月氏から、「今日は《旗印/Coat of Arms》に関しての質問を良く受けている。蛇デッキは相当数に上るのではないか」とのコメントを頂いている事からも、その勢力拡大の波は本物だ。青緑の「クロックパーミ」と言われたデッキが、ほぼこのタイプにシフトしている事からも、同系統と括らせて頂いた。
1年ほど前、ネズミでアドバンテージを取るタイプのクリーチャーコントロールデッキを「ネズバンテージ」と呼んでいたのに対し、この蛇デッキは「蛇バンテージ」と呼ぶとか呼ばないとか。もちろん、コールドスナップから《オーランのバイパー/Ohran Viper》が入ったのも大きな後押しになっている。
Carlo Mazzurco
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■ビートダウン(Zoo、ボロス、グルール)
「ビートダウンデッキが強いのは、環境が健全である証拠」
という言葉がある通りに、今年のPTホノルル段階では「ステロイド」「Zoo」といったビートダウンデッキが環境を席巻するなど、活躍を続けていた。ところが、ディセンション導入後は《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》《糾弾/Condemn》の登場で、一気に防御力を増したコントロールデッキを前に苦戦を強いられるようになった。
そうなると、バーンデッキや土地破壊といった方面へのシフトを余儀なくされ、純粋に「クリーチャーで殴る」というアクセスは次第に厳しくなっていった。コントロールデッキが増えた事で、《氷結地獄/Cryoclasm》も加えての土地破壊8枚体制といったデッキや、バーンスペルを効率良く引いてくる為に、《吠えたける鉱山/Howling Mine》《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》といった無色カードのサポートを受けて焼き払うデッキなど、かなり変形と多様化を重ねている。
■ウルザトロン
予選段階で"Solar Flare"と勢力を二分していたのが"ウルザトロン"だった。しかし、《迫害/Persecute》の有無がその後の運命を大きく変えてしまった印象がある。
クリーチャーデッキに対して強さを発揮した《電解/Electrolyze》や《撤廃/Repeal》といった、ライブラリーを掘り進めるカードが有効的に撃てない以上、その差は結果となって現れていった。しかし、チーム戦ブロック構築のPTチャールストンでも、環境最強と言われた《シミックの空呑み/Simic Sky Swallower》と緑を加え、《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》以外の安定したフィニッシャーを手にした事で、コントロールに対しても力を見せ始めている。
■オルゾフビート
他のビートダウンデッキとあえて分別したのは、実はここまでで解説した内容に準ずるからだ。
《迫害/Persecute》が強い、というテーマで「ソーラーフレア」を解説したのだが、同じ理由で《酷評/Castigate》《迫害/Persecute》を搭載出来る「オルゾフ」に一目置いているプレイヤーも多い。
引き増しや、ランドサーチ系のカードが多くなるコントロールデッキにおいて、キーになる数枚のカードをピンポイントで捨てさせる、もしくは《屈辱/Mortify》で一発除去するのがメイン戦術だ。理屈は"クロックパーミッション"に近いが、メリットとデメリットがある。
メリットは、能動的に動けて、自分に余裕のあるタイミングや相手が「動く直前」という瞬間に手札破壊を打ち込める点であり、クロックとなるクリーチャーのほとんどが、プロテクションなど、何かしらの特殊能力を持っている事。デメリットは「ぜいたくコントロール」の項で触れた通り、「ライブラリーの上から降ってきたビッグスペル」に対して全くの無力である点だ。
特性を読み違えずに使いこなせれば、かなりパフォーマンスを発揮出来るデッキであるが、マナ拘束の厳しさから安定感という面で苦戦を強いられているのも現状である。
■その他
メタの中心たる、コントロールデッキに対して強さが際立つ「マガシュート」と《猛烈に食うもの/Magnivore》を主眼に据えた、「赤青Magnivore」。「オルゾフ」よりも、よりクリーチャー除去と手札破壊に重きを置いた「ラクドスビート」など、少数派ながらも確実に存在し、結果を残してきたデッキがある。
本戦のスタンダードラウンドでも、実際にこれらのデッキは存在し、また全く新しいタイプのデッキも確認されている。明日は、それら新規のアーキタイプやスタンダードラウンド全勝デッキなど。スタンダードの「今」に迫りたいと思う。