Feature: 歩み行く者たち

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 20日

By Yusuke Yoshikawa

それぞれの戦い

ここ最近のプロツアーでの日本勢の活躍や日本選手権での「新たな力」の勃興に見られるように、プロツアーに参加する日本勢はその層が年々厚くなり、また勢いも増してきている。まだ気の早い話かもしれないが、日本勢からPlayer of the Yearが2年連続で誕生するのを目にすることができるかもしれない。

しかし、「時のらせん」を引き合いに出すまでもないが、時間は移ろい行くものであり、戻ってくる人がいれば、また去っていく人もいるものだ。

このプロツアー神戸では、第3ドラフトに進むためには12点の勝ち点、成績にして4勝2敗のラインをクリアする必要がある。そのため、第1ドラフトを1勝2敗で折り返したプレイヤーにとって、次の敗戦は即、この大会からの脱落を意味する。日程はまだ第2ドラフトに入ったばかりでも、彼らにとっては負けられない戦いが続くのだ。

志村 一郎(茨城)もまた、そのひとりであった。

昨年の日本代表チームで優勝したときの活躍もまだ記憶に新しい彼だが、来年に就職を控えたこともあり、この大会で一線を退くことをこのほど、表明した。

プロ・レベルでマジックを続けることは、よほど才覚に恵まれた者でなければ非常に難しい。

もちろん、マジックが楽しいゲームであることは間違いないし、プロツアーでマジックをすることは至上の楽しみになるだろう。しかし、楽しみを得るためには、相応の対価を必要とするのもまた、事実である。それを払えるタイミングもあるし、そうでない時が来れば、悲しいことだがマジックから離れざるを得ないのだ。

そんな彼にとって、今大会での3敗目は、そのままプロ・マジックからの別れを意味していた。しかしそうであるからこそ、彼はいつも以上に真摯に勝負に向かっていたように見えた。

それでは、ラウンド 4の第2ゲーム、ゲームスコア0-1のところから、試合に注目しよう。対戦相手はMatt Sperlingである。

Game 2

Sperlingは白青、志村は緑黒のカラーコンビネーションでの対決となった。そういえば、世界選手権団体戦決勝でも、志村は緑黒のデッキを用いていた。

初動は志村の《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》から。これに対し、Sperlingは《アムローの求道者/Amrou Seekers》で応える。

第4ターン、志村は初の攻撃から《紡績スリヴァー/Spinneret Sliver》《死胞子のサリッド/Deathspore Thallid》と流れるように展開。Sperlingも、攻撃後《監視スリヴァー/Watcher Sliver》で守りを固め、ここまでは互角の形勢。

志村は《ヴァティ・イル=ダル/Vhati il-Dal》で戦況の支配を目論むが、これには《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》プレイからの《正義の凝視/Gaze of Justice》が飛んでくる。

この時点での志村の手札は、《吸血スリヴァー/Vampiric Sliver》に《闇の萎縮/Dark Withering》2枚。十分な土地かカードを捨てる手段が欲しいところだ。

だがまずは、相手がフルタップになったところに総攻撃、Sperlingのライフを13に減らしておく。そして《吸血スリヴァー》をプレイしてターンを返す。

Sperlingは、ブロックされづらい《アムローの求道者》に《魂の因縁/Spirit Loop》をつけてライフ回復エンジンを作り上げ、地上は《監視スリヴァー》《聖なる後光の騎士》で固めてくる。

《死胞子のサリッド/Deathspore Thallid》で《アムローの求道者》を除去できるトークン2つ分が溜まったターン、志村はまず《紡績スリヴァー》《吸血スリヴァー》とトークンで攻撃してから-1/-1を《アムローの求道者/Amrou Seekers》に向けるが、これは《一瞬の瞬き/Momentary Blink》でかわされ、《魂の因縁/Spirit Loop》も手札に戻っていった。志村は気を取り直して、このターン引いた《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》をプレイして終了とした。

Sperlingは《雷のトーテム像/Thunder Totem》プレイから《アムローの求道者》に《魂の因縁》を貼りなおして攻撃、ライフレースを互角に保つ。

志村のドローは5枚目の土地。ここも《吸血スリヴァー》《紡績スリヴァー》で攻撃するが、《紡績スリヴァー》の方が《聖なる後光の騎士》《監視スリヴァー》でダブルブロックされ、志村は2マナを払って《聖なる後光の騎士》との相打ちを選択。しかし《雷のトーテム像》と《アムローの求道者》に逆襲され、ライフレースで遅れをとりだした。

しかしここで6枚目の土地を引き込み、手札の《闇の萎縮/Dark Withering》が輝きだす。唯一のブロッカーだった《監視スリヴァー》を排除し、勇躍攻撃に向かうが、主力の《吸血スリヴァー》に《時間の孤立》がプレイされ減速を余儀なくされてしまった。

とはいえ、Sperlingも大威張りの攻撃はできないのか、《アムローの求道者》のみで攻撃し、《乳白スリヴァー/Opaline Sliver》を追加して《雷のトーテム像》と起動用のマナは残してくる。

志村はここで考える。手札は《増力スリヴァー/Might Sliver》《闇の萎縮》とあるが、相手のブロッカーは《乳白スリヴァー/Opaline Sliver》と都合が悪い。何としても攻撃したいところだが、ここは相手を強化してでも《増力スリヴァー》を出し、次の攻撃へつなげることとした。

続くSperlingのアップキープ、志村は2つのトークンを消費して《アムローの求道者》を排除する。これで、まだ望みはつながるか。

…しかし。
そのドローで8マナに到達したSperlingがプレイしたのは…慈悲なき天の使い、《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》。

志村のライフ10が4へと激減し、残されたターンは1つのみ。

カードを引いて、志村は…
勝ち手段がないことをじっくりと噛み締めるように確認し、引いた《絞殺の煤/Strangling Soot》を見せながら、ゆっくりと右手を差し出した。

志村 -0 Sperling -2

岡本 尋

去り際に、「お疲れ様でした」とだけ言い残した彼の顔は、いつも以上にさわやかなものであったことを追記しようと思う。

彼の後ろの席で、黒田 正城(大阪)もまた、苦闘していた。手札の《結核/Phthisis》を見ながら何とか粘ろうとするも、対戦相手の《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》+《グリフィンの導き/Griffin Guide》の前に敗北を喫し、彼もまた1勝3敗となった。
社会人として多忙な生活を送りながらもトーナメントで奮闘する彼だが、12月にパリで行われる世界選手権は不参加とのことである。

そういったスタンスを取る彼にとってもまた、プロツアーは数少ない、一期一会のイベントなのだ。「次の機会」はなかなか、得にくいのである。

もちろん、去り行く者があれば、戻ってくる者もいる。ラウンド3のフィーチャー・マッチに登場した岡本 尋(愛知)は、最後となったアジア太平洋選手権を制した「ラスト・エンペラー」としてご存知の方も多いだろう。しかしそんな彼も、今年は一線を退き、トーナメントプレイから離れていた。だが、一念発起して戻ってみれば、この活躍である。もちろん、この後も注目したい。

継続してトーナメントに参戦し、その上結果を残し続けることもまた、もちろん素晴らしいことである。しかし、それぞれの事情に合わせてトーナメントを離れ、あるいは戻ってくることを、マジックというゲームシステムは認めてくれているのだと思う。「タイムシフト」カードは、その最たる例かもしれない。

マジックから離れて歩んで行く者、マジックに向かって歩んでくる者、どちらにも幸いあらんことを。

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