P.S.2
A 黒田正城
B 森勝洋
C 森田雅彦
S.S.D
A 窪内直樹
B 中村修平
C 今井公雄
参加者の心の中でドラムロールが鳴り響く中、運命を決めるダイスロール。まだこの時点でこのロールの持つ重大な意味を知る者はいない。勝利した中村は、よりアグレッシブに先手を選択する。
■ Pack 1
《野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)》《エイヴンの風読み/Aven Windreader(OD)》《病的な飢え/Morbid Hunger(OD)》と並ぶ。三枚のうちどの一枚を相手に渡すか。そして色の配色をどうとるか。
中村 - 《病的な飢え/Morbid Hunger(OD)》
今井 - 《野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)》
中村が黒、今井が緑を選択してドラフトが始まる。これに対し、
黒田 - 《ゾンビの暗殺者/Zombie Assassin(OD)》
森 - 《エイヴンの風読み/Aven Windreader(OD)》
森田 - 《敬愛される司祭/Beloved Chaplain(OD)》
と選択。続いて
窪内 - 《縄抜け名人/Escape Artist(OD)》
■ Pack 2
今井 - 《クローサの射手/Krosan Archer(OD)》
黒田は今回も P.S.2 の基本戦略通り、黒を突き進む。
黒田 - 《恐ろしい死/Ghastly Demise(OD)》森 - 《熊人間/Werebear(OD)》
森田 - 《隊長補佐カーター/Lieutenant Kirtar(OD)》
森が青緑へ。森田は白をキープしながら、緑特有の攻撃力への耐性を増す飛行生物を手中へ。
窪内 - 《シートンの願望/Seton's Desire(OD)》 中村 - 《エイヴンの群れ/Aven Flock(OD)》《薄汚いネズミ人間/Dirty Wererat(OD)》
森田の飛行に対抗する形で射手が。緑に対抗し再生能力のある鼠が中村へと。
■ Pack 3
第一弾。P.S.2側開始となるパックで現れたのが《踏み荒らし/Overrun(TE)》
黒田 - 《ナントゥーコの信奉者/Nantuko Disciple(OD)》
森 - 《セファリッドの物あさり/Cephalid Looter(OD)》
森田 - 《踏み荒らし/Overrun(TE)》
黒田は若干防御的なピック。P.S.2 の特徴は出たパック全体を見渡し、自分等にとって急所的なカードがある場合、それに対し親指を下に向けた合図で見方に示している。今回はそれに答えて、特に必要となるカードの無かった黒田が味方の護衛に。
窪内 - 《リフレッシュ/Refresh(OD)》
中村 - 《炎熱の突風/Thermal Blast(OD)》
一部カードを除き高得点カードの少なかった今パック。S.S.D には厳しい展開。
■ Pack 4
開けた瞬間、 S.S.D の顔が微妙に歪む。登場した緑の高得点カード群。
森 - 《飛びかかる虎/Springing Tiger(OD)》《獣の墓場/Animal Boneyard(OD)》
森田 - 《獣群の呼び声/Call of the Herd(OD)》
窪内 - 《凶暴象/Rabid Elephant(OD)》
中村 - 《秘教の盲信者/Mystic Zealot(OD)》
今井 - 《霊力/Psionic Gift(OD)》
黒田 - 《液状の火/Liquid Fire(OD)》
青緑である森がスレッショルド能力を優先し虎を、黒を相手にとる森田が獣群と最高のピックを行う。それでもまだ象が余っていたのだからこのパックの濃度は濃い。中村も5手目盲信者なら悪くない。黒田も先ほどの奉仕のご褒美とばかりに6手目で大味な一枚を入手。
■ Pack 5
森田 - 《凶暴象/Rabid Elephant(OD)》
窪内 - 《クローサの射手/Krosan Archer(OD)》
中村 - 《墓所を歩くもの/Crypt Creeper(OD)》
今井 - 《シートンの願望/Seton's Desire(OD)》
黒田 - 《巣立つインプ/Fledgling Imp(OD)》《飢えたる食屍鬼/Famished Ghoul(OD)》
森 - 《励まし/Embolden(OD)》
森田が更にデッキを強化。今井と窪内がそれぞれ既に入手済みの一枚を他方へ。取るものが無かった森は、直接対決で脅威となる一枚を抑えに。この辺り、団体戦ドラフト特有の何を抑え何を渡すかといったコントロールゲームの面白いあたりだ。
コントロールできない部分もあるのだが。
■ Pack 6
窪内 - 《エイヴンの煙の紡ぎ手/Aven Smokeweaver(OD)》
中村 - 《薄汚いネズミ人間/Dirty Wererat(OD)》
今井 - 《熊人間/Werebear(OD)》
黒田 ー 《投鎖獣/Chainflinger(OD)》
森 - 《エイヴンの風読み/Aven Windreader(OD)》《操作室/Chamber of Manipulation(OD)》
森田 - 《天使の壁/Angelic Wall(OD)》《正義の巡礼者/Pilgrim of Justice(OD)》
一周目の最終パック、邪魔の入らないここで強烈な決め技を引き当てたい S.S.D だが開けたパックは標準的。更に対戦相手の森に風読み、加えて予め押さえられていた墓場と対を成す操作室までもが。もっとも既に中村の手には《ねじれの光/Ray of Distortion(OD)》があり、森がこれを双方投入するかは微妙。
■ Pack 7
窪内 - 《セファリッドの仲介人/Cephalid Broker(OD)》
森田 - 《秘教の十字軍/Mystic Crusader(OD)
森 - 《考え直し/Second Thoughts(OD)》
黒田 - 《薄汚いネズミ人間/Dirty Wererat(OD)》
今井 - 《リサトグ/Lithatog(OD)》
中村 - 《苦悩/Afflict(OD)》《薄暮のインプ/Dusk Imp(OD)》
どんどんと強くなる森田のデッキ。森は押さえの意味と白への可能性を残したまま除去カードをピック。一方 S.S.D もそれなりのカードを補充しているのだが、ちょっと苦しい展開は否めない。
■ Pack 8
再び苦悶の表情が S.S.D に。なんと森田の空けたパックには二枚目!となる《踏み荒らし/Overrun(TE)》。森と森田は互いのカードをチェックしあった後、他に取るべきカードがあった森は譲ることに。
森田 - 《踏み荒らし/Overrun(TE)》
森 - 《夢繰り/Dreamwinder(OD)》
黒田 - 《投鎖獣/Chainflinger(OD)》
今井 - 《入門の儀式/Rites of Initiation(OD)》
中村 - 《グレイブディガー/Gravedigger(OD)》
窪内 - 《くすぶり獣/Ember Beast(OD)》
二枚の《踏み荒らし/Overrun(TE)》。この時点で S.S.D は切ない決断を決心する。それが、「今井男泣き大作戦」だ。チーム戦は3人対3人の闘い。たとえ一人が圧敗しようとも、残りの二人が勝利すればよいのである。確かに現時点では、それを上回る豪快なカードが出ない限り最善策なのかもしれない。
■ Pack 9
ちょっと笑った。皆で笑った。いやはや。
何故かそこにあるのは三枚目の《踏み荒らし/Overrun(OD)》。開けたのは先ほど二枚目を森田に譲ったばかりの森。正直者は桜の樹を切っても怒られないというか、貴方が落としたのはこの金の踏み荒らしなのか銀なら5枚なのか。もはや、対戦相手である S.S.D でさえも力無い笑いを。そりゃ笑うしかないよねぇ。
後手を選んでいれば逆だったんですけれど。今更すぎます。
森 - 《踏み荒らし/Overrun(TE)》
黒田 - 《無政府主義者/Anarchist(OD)》
今井 - 《リフレッシュ/Refresh(OD)》
中村 - 《巡視犬/Patrol Hound(OD)》
窪内 - 《一瞬の平和/Moment's Peace(OD)》《大洪水/Deluge(OD)》
森田 - 《秘教の幻想家/Mystic Visionary(OD)》
だが、S.S.D は先ほどの決意を胸にすぐさま冷静な姿勢を取り戻す。男泣きへの第一歩。まずは2回の踏み荒らしを無にできる貴重なこの一枚を今井にではなく、窪内へと渡す。でも、元から緑なわけだし、さすがに渡しておいてあげても罰はあたるめぇなどとと思う今日この頃です。
■ Pack 10
黒田 - 《集中砲火/Flame Burst(OD)》
今井 - 《クローサの報復者/Krosan Avenger(OD)》
中村 - 《巡視犬/Patrol Hound(OD)》
窪内 - 《追い返し/Repel(OD)》
森田 - 《献身的な世話人/Devoted Caretaker(OD)》
正直に語ると、実はこのパックのピックはちょっと嘘が入っているかもしれない。何か先ほどの一枚で筆者の脳みそも荒らされてしまったようだ。
■ Pack 11
今井 - 《凶暴象/Rabid Elephant(OD)》
中村 - 《苦悩/Afflict(OD)》
窪内 - 《くぐつ師/Puppeteer(OD)》
森田 - 《秘教の盲信者/Mystic Zealot(OD)》
森 - 《追い返し/Repel(OD)》
黒田 - 《集中砲火/Flame Burst(OD)》
妙に濃度の故意パックというのは中々始末に終えない。少しでも自軍に流れを取り戻したい S.S.D だが、返しの相手にも十分旨味のあるパックを引いてしまった。丁度3枚強いカードがあるのが理想だったのだが。黒田が地味に二枚目の集中砲火。
■ Pack 12
中村 - 《投鎖獣/Chainflinger(OD)》
窪内 - 《変態するワーム/Metamorphic Wurm(OD)》
森田 - 《リフレッシュ/Refresh(OD)》
森 - 《エイヴンの魚捕り/Aven Fisher(OD)》
黒田 - 《くすぶり獣/Ember Beast(OD)》
今井 - 《公証人/Scrivener(EX)》
森田といえばリフレッシュ。勝手な思い込みかもしれないが、森田のデッキには常にリフレッシュが入っている気がする。中村が三色目の赤に手を伸ばす。最も白・黒ともにカードが薄かったので防御用ピックかもしれない。自身のパックで爆弾の出た森とは対照的な一枚である。今井も同様に防御ピック魂前回。
■ Pack 13
ついにトーメントまできてしまった。S.S.D に何かが欲しいところ。
中村 - 《怪奇な混種/Grotesque Hybrid(TO)》
今井 - 《ドングリの収穫/Acorn Harvest(TO)》
黒田 - 《精神ヘドロ/Mind Sludge(TO)》
森 - 《綿密な分析/Deep Analysis(TO)》
森田 - 《戦闘的な修道士/Militant Monk(TO)》
窪内 - 《不快な夢/Sickening Dreams(TO)》《かそけき翼/Ghostly Wings(TO)》
緑を含む森に対して、ようやくはめ要素のある一枚を中村が入手。白緑である森田に対して、今井にこれを採用させる手もあったが、それよりも赤儀式を生かすと同時に相手のクリーチャー数を奪う意味でドングリも悪くないピックである。
■ Pack 14
今井 - 《尊大なワーム/Arrogant Wurm(TO)》
黒田 - 《ひどい憔悴/Crippling Fatigue(TO)》
森 - 《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla(TO)》
森田 ー 《復讐に燃えた夢/Vengeful Dreams(TO)》
窪内 - 《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》《一時的狂気/Temporary Insanity(TO)》
中村 - 《墓をこじ開けるもの/Gravegouger(TO)》《大音響攻撃/Sonic Seizure(TO)》
今井は勿論白夢を無視してワームを選択。たとえ邪魔しようとも、相手にワームとワラを渡してしまうのでは自分だけマイナス、相手がプラスで意味をなさない。ならば、自分を強くしたほうがましである。
■ Pack 15
黒田 - 《怪奇な混種/Grotesque Hybrid(TO)》
森 - 《ひどい憔悴/Crippling Fatigue(TO)》
森田 - 《ティーロの信者/Teroh's Faithful(TO)》
窪内 - 《ハイドロモルフの守護者/Hydromorph Guardian(TO)》
中村 - 《孤立の力/Strength of Isolation(TO)》
今井 - 《長角火獣/Longhorn Firebeast(TO)》
まだまだ強化される P.S.2 。今度は青緑を主体とした窪内に対してのグロテスク。はた迷惑な観客者としてはもう少し平たくなるパックの方が面白いのだが、それは勝手な意見。選手に出来て必要なことは、与えられたパックに対していかに創造性を発揮するか。S.S.D の頑張りに期待したい。よく見ていると今井のデッキがどんどんと即効性のみにとがっていくのが解る。対する森田も長期戦に持ち込みさえすれば勝利と解っているわけで、ライフキーパーを選択。
■ Pack 16
森 - 《空翼のエイヴン/Skywing Aven(TO)》
森田 - 《浮揚盾/Floating Shield(TO)》
窪内 - 《荒れ狂う夢/Turbulent Dreams(TO)》
中村 - 《狂気の力/Strength of Lunacy(TO)》
今井 - 《長角火獣/Longhorn Firebeast(TO)》
黒田 - 《臓器をすり砕く者/Organ Grinder(TO)》
今ひとつ地味なカード群。P.S.2 は青夢を見ながら「困る?」「全然」と意思疎通を行った上で、冷静にデッキを強化。喋ることが許されない団体戦ドラフト。互いにどう意思の疎通を図るか。これは一朝一夕では見につくものではない。是非日ごろから遊び、慣れ親しんでみて欲しい。短い時間でいかに情報を共有するかの難しさと面白さがわかるはずだ。これがまた、よく失敗するんですよ。
■ Pack 17
再び笑った。爆笑。この決勝のパックは正直寄りすぎである。
森田 - 《ナルシシズム/Narcissism(TO)》《平等な扱い/Equal Treatment(TO)》
窪内 - 《土喰い巨獣/Petradon(TO)》
中村 - 《にじり寄るストーカー/Slithery Stalker(TO)》
今井 - 《ドングリの収穫/Acorn Harvest(TO)》
黒田 - 《魂の災い魔/Soul Scourge(TO)》《催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend(TO)》
森 - 《クローサの締めつけ蛇/Krosan Constrictor(TO)》《かそけき翼/Ghostly Wings(TO)》
もはや完全なオーバーキルの匂いがぷんぷんしないわけでもないが、またもや森田に凶悪な一枚が。それに対して、もういいです。好きにして下さい。こっちも好きにしますといわんばかりに今井も延々とドングリを補充。瞬発芸に全てをかける。
■ Pack 18
泣いても笑ってもこれが最後のパック。
窪内 - 《逆巻く渦/Churning Eddy(TO)》
中村 - 《屍肉ワーム/Carrion Wurm(TO)》
今井 - 《ドングリの収穫/Acorn Harvest(TO)》
黒田 - 《催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend(TO)》《臓器をすり砕く者/Organ Grinder(TO)》
森 - 《麻痺の感触/Stupefying Touch(TO)》
森田 - 《戦闘的な修道士/Militant Monk(TO)》
いやはや、なんともかんとも。一枚でも十分な《踏み荒らし/Overrun(TE)》が三枚も出てしまうとは。中身が面白すぎるパック達であったが、この厳しい大会を見事決勝まで残った2チームだ。きっと絶妙の味付けを施してくれるに違いない。出来上がったデッキリストと全パックの内容は別項に掲載されている。是非一度実際にこの内容を再現して、ちょっと笑ったりしながら真剣に自分ならどうするかを考えてみて欲しい。
そして自分が今井ならどうするかも。
例えどんな状況であろうとも、負けられない局面は存在するのである。勝利への努力を怠った者に、女神が微笑むことはない。