First Draft Coverage : 王者のドラフトとマナベース

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 25日

By Yusuke Yoshikawa

プロツアー・プラハ王者、大澤 拓也

直前のイベント・グランプリ広島で採用されたのはラヴニカブロックのシールド戦とコールドスナップのドラフトという組み合わせであったが、本大会で採用されているのはラヴニカブロックとコールドスナップ双方のドラフトである。

混迷極まるスタンダード構築戦に加え、全く異なる2つのブロックで結果を残さなければならないプレイヤーの負担は相当なものがあると聞くが、見る側としては様々なテクニックを見ることができるという意味で、非常に興味深いイベントとなった。

ところで、ドラフトで使用されるのはラヴニカブロックとコールドスナップ、である。多色を前提としてつくられた世界と、2色が当然の環境。一見、共通点は全くないように思えるが、実はこれら2つのドラフトを貫くキーポイントが存在する。それが、「いつ土地をドラフトするか」という問題である。

土地をドラフトする、というとピンと来ない方もいらっしゃるかもしれない。多くの場合、土地それ自体は何も生み出さないからだ。

しかし、多色デッキのマナベースの確保は言うに及ばず、2色デッキであっても「多色のカードパワーが発揮する前に勝負を決めるため」に安定したマナベースを構築するかという課題があるし、もっと分かりやすい例でいえば、コールドスナップ環境における「氷雪土地」は、氷雪マナを必要とするカードの強さを直接的に左右する、大切な要素なのである。

コールドスナップのドラフトに関しては明日の記事に譲るとして、今回はラヴニカブロックのドラフトを、「マナベース」を鍵として1人の王者の視点から取り上げてみたい。

すなわち、大澤 拓也(神奈川)の登場である。

ラヴニカブロックのドラフトが表舞台に登場するのはプロツアー・プラハ以来であり、それ以後も理論のドラスティックな進展があるとは考えにくい。その意味で、彼の理論と経験値は群を抜いていると考えるべきであるし、実際成功もしているのである。注目しないわけもない。

そんな大澤の理論は明快であった。

とにかく軽く軽く。
出来る限りシングルカラーのカードを。
そして、ビートダウン(出来れば赤緑系)を。

マナベースに注意が払われるからこそ、それと引き換えに迅速な攻撃手段を確保し、同時に自らが事故に陥らない自然なマナベースを確保する。
それが、王者のマナベース理論なのである。

しかし最近では、彼自身その考えを見直す動きもあるという。
プロツアー・プラハの決勝では使用していなかった「お帰りランド」も、最近彼が好んでドラフトしているという青系のデッキではやはり必須のものであるし、それらに渡りをつける意味でも「お帰りランド」のドラフトには注意を払っているという。

説明はこのくらいにして、実際のドラフトを追ってみることにしよう。
彼が配されたのは第8ポッド。強豪ひしめく、屈指の激戦区となった。

配置順
小室修→大澤拓也→中村修平→三田村和弥→谷口勇亮→平林和哉→志村一郎→山中智史

■第1パック(ラヴニカ:ギルドの都)

初手 《ヴィーアシーノの牙尾/Viashino Fangtail
他の候補 《番狼/Watchwolf》《エルフの空掃き/Elvish Skysweeper》《ボロスの駐屯地/Boros Garrison

カードパワー的にも、色の強弱から言っても自然なピック。
上家の小室は《ヴィダルケンの放逐者/Vedalken Dismisser》からのスタート。

2手目 《強迫的な研究/Compulsive Research
他の候補 《議事会の乗馬兵/Conclave Equenaut》《ディミーア家の護衛/Dimir House Guard

最近の彼の好みどおり、青いアドバンテージカードに手を伸ばす。
小室と色と被る可能性が出てきたが、もちろんこの時点では知る由もない。

3手目 《ウォジェクの燃えさし魔道士/Wojek Embermage
他の候補 《幻の漂い/Drift of Phantasms

《ヴィーアシーノの牙尾/Viashino Fangtail》と並べてダブルティム(=任意の対象に1点のダメージを与えるクリーチャーの総称)、同時に赤路線の継承。

4手目 《極楽鳥/Birds of Paradise
他の候補 《エルフの空掃き/Elvish Skysweeper

ここで、主だったカードがないことから緑の「マナベース」に手を伸ばす。
「緑青赤になることを考えると、このデッキタイプは序盤から色拘束が厳しくなるので必要」と大澤のコメント。

5手目 《ボロスの駐屯地/Boros Garrison
他の候補 《隠れ潜む密通者/Lurking Informant》《セレズニアの聖域/Selesnya Sanctuary

相変わらずカードパワーのない面々なので、ここで「お帰りランド」を確保。ある程度のカードパワーを設定しておき、それを上回るカードがなければ土地を取る、というのは基本戦術ではある。

6手目 《屍賢者の助言/Consult the Necrosages
他の候補 《土を形作る者/Terraformer》《セレズニアの聖域/Selesnya Sanctuary
7手目 《屍賢者の助言/Consult the Necrosages
他の候補 《時間の把握/Telling Time》《セレズニアの聖域/Selesnya Sanctuary

ここで、青黒のカードである《屍賢者の助言/Consult the Necrosages》をピック。先ほどの《極楽鳥/Birds of Paradise》ピックとは方向性が異なり、同時に使うことは考えづらいが、これについては「青赤+αをイメージして、使いそうなカードを取っておいた」とのこと。つまり、ここで「渡りをつけた」のである。

8手目 《鉄の樹の拳/Fists of Ironwood
9手目 《エルフの空掃き/Elvish Skysweeper

どうやら、緑が卓に少なそうな感触である。

10手目 《戦松明のゴブリン/War-Torch Goblin
11手目 《無気力なモロク/Torpid Moloch
12手目 《ヴィーアシーノの斬鬼/Viashino Slasher

ラヴニカ:ギルドの都のピックが終了した時点で、上家の小室は黒中心、下家の中村は青黒中心のピックとなっていた。

■第2パック(ギルドパクト)

Stratozeppelid

初手 《ストラトゼッペリド/Stratozeppelid
他の候補 《撤廃/Repeal》《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova

4/4飛行の好戦力を入手。下家の中村が《思考訓練/Train of Thought》に手を伸ばしたのは懸念材料といえるのだが。

2手目 《グルールの芝地/Gruul Turf
他の候補 《松明ドレイク/Torch Drake》《金切り声の混種/Shrieking Grotesque》《ゴブリンの捻術師/Goblin Flectomancer

2手目で早くも「お帰りランド」に手を伸ばす。前述のとおり、青がらみになりそうな大澤のデッキにはこの種のカードが必要との判断である。
ただ、これは結果論であるのだが、「ここまで(フィニッシャー・飛行戦力が)出ないとは思わなかった。ここは《松明ドレイク/Torch Drake》を取っておけばよかったかもしれません」と大澤。

3手目 《イゼットの時術師/Izzet Chronarch
他の候補 《世慣れたドライアド/Dryad Sophisticate》《シラナの星撃ち/Silhana Starfletcher

カードパワー的に少し抜けてはいるのだが、大澤はこの時点で「タッチ黒(の4色)まであるかなと」考えていたそうである。ビジョンは広めに取っておくに越したことはない。

4手目 《電解/Electrolyze
他の候補 《イゼットの時術師/Izzet Chronarch

《イゼットの時術師/Izzet Chronarch》に手を伸ばしかけたところに思わぬプレゼント。これは、下(中村方面)に青赤がいないか、少ないことのサインでもある。

5手目 《グルールの芝地/Gruul Turf
他の候補 《思考訓練/Train of Thought》《いかづち頭/Thunderheads

《思考訓練/Train of Thought》も欲しいカードではあるが、「青デッキだからこそお帰りランド」という先の路線を継承してマナベースの確保。

6手目 《血鱗のうろつく者/Bloodscale Prowler
他の候補 《炎樹族の血鱗/Burning-Tree Bloodscale

ここまでも、そしてその後もなのだが、この《血鱗のうろつく者/Bloodscale Prowler》に度々興味を惹かれていた大澤が印象的だった。これについて、「《胞子背のトロール/Sporeback Troll》と組み合わせて再生したり、《ヘリウム噴射獣/Helium Squirter》と組み合わせて空を飛んだり、安く取れるわりにマナカーブを埋めてくれるいいカードですよ」。

7手目 《連弾炎/Pyromatics
他の候補 《炎樹族の血鱗/Burning-Tree Bloodscale

この順目で取れる赤い火力は、大澤の読みが当たっていることを示している。

8手目 《瘡蓋族のやっかい者/Scab-Clan Mauler
他の候補 《血鱗のうろつく者/Bloodscale Prowler》《小柄な竜装者/Wee Dragonauts

このピックで、大澤は相当悩んでいた。結局、「この時点で線が細くなりそうだったので、少しでも太くなる可能性のある」こちらをピック。

9手目 《血鱗のうろつく者/Bloodscale Prowler
他の候補 《グルールのノドログ/Gruul Nodorog

10手目 《毒腹のオーガ/Poisonbelly Ogre
11手目 《抗い/Withstand
12手目 《スカルガンの穴潜み/Skarrgan Pit-Skulk
13手目 《野生の朗詠者/Wild Cantor
14手目 《不時着/Crash Landing

ギルドパクトの流れは決して悪くないのだが、《通り砕きのワーム/Streetbreaker Wurm》や《ゴーア族の野人/Ghor-Clan Savage》に恵まれず、ややサイズに不安の残るラインナップに。

上家の小室は、大澤の流した2枚の《盲目の狩人/Blind Hunter》で白黒メインになったようだ。

第3パック(ディセンション)

初手 《粘体マンタ/Plaxmanta
他の候補 《破壊の宴/Wrecking Ball》《暴動のとげ/Riot Spikes》《シミックの成長室/Simic Growth Chamber

決して弱くはないが、地味なスタート。大澤は《破壊の宴/Wrecking Ball》に相当心残りがある様子だったが、さすがに4色まで伸ばす手はなく、自重したもよう。

2手目 《シミックのギルド魔道士/Simic Guildmage
他の候補 《水辺の蜘蛛/Aquastrand Spider

優秀な「熊(2マナ2/2)」を獲得。しかし、今熱烈に欲しいのは決定力ではある。

3手目 《炎の印章/Seal of Fire
他の候補 《細胞卵のシャンブラー/Cytospawn Shambler
4手目 《純粋+単純/Pure/Simple
他の候補 《とぐろ巻きの巫女/Coiling Oracle》《絹羽の斥候/Silkwing Scout

火力、除去を確保。

5手目 《絹羽の斥候/Silkwing Scout
他の候補 《新緑の幻霊/Verdant Eidolon
6手目 《ヴィグの水植物/Vigean Hydropon
他の候補 《楽園の拡散/Utopia Sprawl

マナを充実させるカードも欲しいが、既に《グルールの芝地/Gruul Turf》を2枚取っており「《森/Forest》が少なくなりそう」だったので、細い戦線をつなげるカードを。

7手目 《粘体投げの小蛙/Plaxcaster Frogling
他の候補 《呪文嵌め/Spell Snare》《シミックの成長室/Simic Growth Chamber

この順目でこのカードが取れるということは、成功ドラフトの証でもある。しかし…。

8手目 《肥沃な想像力/Fertile Imagination
他の候補 《シミックの印鑑/Simic Signet

どうやらこれが主力の一翼を担いそうな予感。

9手目 《忍び寄る復讐/Stalking Vengeance
他の候補 《シミックの成長室/Simic Growth Chamber

あまりにクリーチャーが小さいため、「インパクトのあるカードが必要」との判断。

10手目 《ヴィグの水植物/Vigean Hydropon
他の候補 《肥沃な想像力/Fertile Imagination
11手目 《ヴィグの水植物/Vigean Hydropon
他の候補 《シミックのバジリスク/Simic Basilisk

安定しない《肥沃な想像力/Fertile Imagination》よりも《ヴィグの水植物/Vigean Hydropon》の2枚目の方が必要、との判断だったのだが、皮肉にも直後にもう1枚流れてきてしまい。これは判断ミスというより不運な印象。

12手目 《病的な憤激/Psychotic Fury
13手目 《シミックの信徒/Simic Initiate

微調整の末、登録したメインデッキは以下のようなものになった。

Takuya Oosawa

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「順回り(ラヴニカ:ギルドの都、ディセンション)のパックが弱かった!」と大澤。「《粘体投げの小蛙/Plaxcaster Frogling》とかは取れているんで、そこは予定通りではあったんですが…」との言葉が示す通り、ドラフト自体にはある程度成功しているものの、ディセンションで《胞子背のトロール/Sporeback Troll》もなく、出るカードに恵まれなかった印象なのである。

これが卓全体的にカードパワーの低い状況なのか、それとも特定色に強いカードが集中したかでデッキの評価は変わってくるのであるが、ドラフト自体は参考になるスムーズなものであったと考えられる。

それでは、彼の4マッチを追ってみよう。

4回戦 vs. 谷口 勇亮(白緑黒) 2-0勝利

第1ゲームは谷口がマリガン、その後も展開が芳しくないところに大澤が先攻。線の細さが災いして《ゴルガリの腐れワーム/Golgari Rotwurm》に一旦は停止を余儀なくされるも、飛行クリーチャーやスペルで押し切った。

第2ゲームは《肥沃な想像力/Fertile Imagination》でトークンが6体発生。その差は大きく勝ち。

Yuusuke Taniguchi

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5回戦 vs. 小室 修(白黒青) 2-0勝利

フィーチャーマッチにつき、そちらの記事をご参照ください。

Shu Komuro

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6回戦 vs. 中村 修平(黒赤白タッチ緑青) 2-1勝利

第1ゲームはマナ事故につき落とすものの、第2ゲーム以降は逆に中村がマナトラブルに陥り、逆転勝ち。

中村のデッキには強力カードが詰め込まれているのだが、その代償としてかなりタイトなマナベースを要求されており、その弱点を持たない大澤が目論見どおりに勝利を手にした一番といえるだろう。

上手く行っている表れなのか流れも良いとのことで、「《ヴィグの水植物/Vigean Hydropon》(の+1/+1カウンター)、毎回使い切ってますよ!」

Shuuhei Nakamura

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7回戦 vs. 平林 和哉 黒緑白タッチ赤 2-0勝利

「相手のデッキがティムに弱い構成で、《ウォジェクの燃えさし魔道士/Wojek Embermage》《ヴィーアシーノの牙尾/Viashino Fangtail》が刺さりました」とは本人談。

謙虚な表現ではあるが、自らのデッキの長所が活かされた喜びは伝わってきた。

Kazuya Hirabayashi

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こうして、大澤 拓也が残したラヴニカ・ドラフト成績は4-0。王者の名に恥じない、堂々たる全勝である。

デッキを組んだ当初は線の細さが指摘されたが、見回してみれば卓全体のカードパワーがそれほどでもなく、一部のパワーカードを手にしたプレイヤーもその代償としてマナベースに苦戦することになり、相対的には問題のない、優れたレベルのデッキを構築できていたのだ。

そして、その主因に、最初のテーマにも掲げた「マナベースの安定」を挙げたい。

同卓の各プレイヤーが色の半分しか合っていない「お帰りランド」を投入したり、あるいはカードパワーを高めるため4色、5色に手を出した中にあって、基本土地+色の合った《グルールの芝地/Gruul Turf》2枚+《極楽鳥/Birds of Paradise》という安定したマナベースは、それだけで勝因になりえることを示している。

土地をドラフトすること、もう少し考えてみてはいかがですか?

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