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2007年シーズンの開幕を告げるプロツアー・ジュネーブの決勝戦は、《結核/Phthisis》と《幽体の魔力/Spectral Force》をめぐる実にスリリングなライフレースによって演出された。そして、大澤 拓也を3勝2敗で退け、Mike Hronがアメリカに6年ぶりとなるタイトルをもたらした! これは2001年にMike Pustilnik以来の快挙である。
Hronはウィスコンシン州ミシガンで、偉大なる伝道プレイヤーBob Maherとともにドラフトしている人物である。また、偶然にも、Hronのデビュー戦となったプロツアー・シカゴ1999で、Maherも王者に輝いている。
おめでとう、Mike Hron!
top 8 bracket
観戦記事 | ベスト8最終順位 | |||||||||||||||||||||||||||||
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BLOG

個人的な意見としては、いまやリミテッド世界一は大澤 拓也(神奈川)か津村 健志(広島)。ランダムで決まる座席で運よく上下に座れた二人だけに、この二人の決勝戦が見たいところ。最近の津村は押し引きがうまくなっていて、かなり安定した勝率を残している。そろそろ初のチャンピオンになってもおかしくない十分な強さ。さあどうなることやら。
■Pack 1 : Time Spiral
1st Pick : 《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》
《結核/Phthisis》《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》と強力なパックで、内容確認の後ノータイムで《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》。
狙うは津村が今大会でも好んでドラフトしている赤緑、赤青といったところだろう。
2nd Pick : 《早すぎる埋葬/Premature Burial》
黒は人気の薄い色。できればあえて黒をやることでおいしいピックが期待できる。津村の中でも緑の次に好きな色なだけに、これを選択したわけだが…実は、上家の大澤はこのとき《結核/Phthisis》をピックしている。協調という意味では苦しい展開になりそうだ。
3rd Pick : 《闇の萎縮/Dark Withering》
赤黒一直線だがこのときまたも上家の大澤が黒をピック。このままでは強いデッキを組めそうにない。早めの色変えに期待したい。
4th Pick : 《吸血スリヴァー/Vampiric Sliver》
またも黒を選択。津村ぁぁ、気づいてくれ~!
5th Pick : 《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》
やっと赤。色変えしたときに上の大澤が青黒なので、赤は回ってくる可能性が高い。なのでカードの強さより赤いカードを取れたことが嬉しい。
6th Pick : 《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer》。
7th Pick : 《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》
とりあえず今のところ赤黒のカード中心。緑のまわりがいいのでここらで緑に手を伸ばしたいところ。あまり遅れると返しで緑が回ってくる確率が下がるため、早めに緑を止めておきたい。
8th Pick : 《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》
緑の足がかりになってほしい。
9th Pick : 《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》
本格的に緑の足がかりとなりそうなピック。
10th Pick : 《数の力/Strength in Numbers》
ここらへんで上に黒が固まっているコトに気がつき色変え。間に合ったか?
11th Pick : 《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》
上3人くらい緑があいてる感じ。
1パック目が終わり、津村も渋い顔。2手目、3手目、4手目とデッキの主軸になるところで思うように色主張を読み取れなかったため、ここから頑張りどころ。
■Pack 2 : Time Spiral

1st Pick : 《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》
緑を一気にかき集めるしかないといった感じ。1枚目の待機。
2nd Pick : 《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》!!
値千金とはまさにこのこと。光が差し込んできた。
3rd Pick : 《獣群のナール/Herd Gnarr》
緑の打撃には欠かせない1枚。赤緑一直線でなんとかデッキを仕上げられそう。
4th Pick : 《部族の炎/Tribal Flames》
2枚目の除去。いい感じ、いい感じ。
5th Pick : 《ぶどう弾/Grapeshot》
《菅草スリヴァー/Sedge Sliver》が一緒にありかなり際どい。しかし、もう迷わないぞ、とこのピック。
6th Pick : 《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》 7th Pick : 《霊気炎の壁/AEtherflame Wall》
8th Pick : 《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》
赤の人気がない卓なのか、かなり遅くいいカードが回ってきた。
9th Pick : 《狩りの興奮/Thrill of the Hunt》
いれるの?(笑)
10th Pick : 《腐れ落ち/Molder》
■Pack 3 : Planar Chaos
1st Pick : 《死亡+退場/Dead+Gone》
分割カード。《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》と相当迷うもぎりぎりで分割。うーん、たしかに迷うな。
2nd Pick : 《ケルドの後継者、ラーダ/Radha, Heir to Keld》
待望の2マナ域。ノータイムです。
3rd Pick : 《調和/Harmonize》
緑の《集中/Concentrate》。アドバンテージの取れるビートというよりコントロール気味の赤緑に仕上がる感じ。
4th Pick : 《ユートピアの誓約/Utopia Vow》
この順目では不満足ながら他に見当たるカードなし。
5th Pick : 《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》
これは嬉しい。セーフ!
6th Pick : 《図書館の大魔術師/Magus of the Library》
思いデッキなのでマナ加速は神。
7th Pick : 《野生のつがい/Wild Pair》
思うようにカードが回ってこない。色がかぶってないだけにでてないだけほんと苦しい。
8th Pick : 《セラの加護/Serra's Boon》
取るカードがなく泣く泣くピック。もう泣きそうだよ。
11th Pick : 《シタヌールの樹木読み/Citanul Woodreaders》
おおー! 最後にこれはうれしい! パワーカードが多いだけに強い。
■総括
最初の方に無駄ピックが多く、しかも展開も悪い。おまけにカードも出ないといった最悪の結果と言えるだろう。
スタートダッシュはよかったものの…正直1-2か2-1のデッキ。
初のタイトルに向けて…もうあとはプレイスキルで勝負するしかないが、さすがに苦しそう。がんばれ津村!
仕上がったデッキは「長引くとアドバンテージで勝てる」赤緑。赤緑の理想系はテンポで一気に押し切る感じのデッキがよく、今回の場合は2枚の《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》にすべてがかかっている。
それでも、冷や冷やの展開ながら見事に色変えしたところはさすがの一言。今や日本人最強の男と誰もが認める津村だけに、弱いデッキでも勝ってほしい。
津村に感想を聞いて見たところ。
「きつい」の一言。
展開は悪かったけど精一杯の努力はしたし、後は勝つだけ。「序盤の黒がかぶってるのをもう少し早く気がつけたらよかった」とも語っている。
ちなみに、ドラフトを終えてテーブル内のデッキの強さはダントツで大澤。次に栗原。
個人的には大澤の優勝しか正直みえない。
あんなデッキめったに組めないってくらいの強さ。
Sunday, Feb 11: 12:01 p.m. - 準々決勝 : 栗原 伸豪(東京) vs. Ervin Tormos(アメリカ)

「デッキの半分をクリーチャーに」という生物満載理論の青白でプレイオフ進出を果たした栗原 伸豪(東京)。《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》を愛好するという彼は、決勝ラウンドでも青白の同タイプのデッキをねらってドラフトして行った。
第1パックの初手《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》からはじまり、赤黒緑の各種パワーカードには目もくれずに《城の猛禽/Castle Raptors》、《アムローの求道者/Amrou Seekers》、《壺の大魔術師/Magus of the Jar》、《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》、《監視スリヴァー/Watcher Sliver》、《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》といった具合にクリーチャーたちをかき集めはじめて行ったのだ。
そして、そんな栗原を待ち受けるErvin Tormos(アメリカ)も、奇しくも青白をドラフトして準々決勝に臨んでいる。Tormosはレベル軍団や飛行クリーチャーを搭載したオーソドックスなスタイルで、対する栗原はスリヴァーデッキの側面ももったデザインである。
はたして、二つの青白デッキの明暗やいかに?
Ervin Tormos : 青白
栗原 伸豪 : 青白
ちなみに、栗原はプロツアー・チャールストン(チーム戦)での8位入賞や日本選手権ベストエイトといった戦果をあげているという次代の注目株。一方のTormosは低迷がちなアメリカ勢の期待の星で、プロツアー・ロサンゼルスで「ボロス・デック・ウィンズ」を駆ってベストエイトに進出した経験をもっている。
Game 1
第1ゲームでは両者ともに慢性的に土地を引きすぎるという、いわゆる「マナ・フラッド」状況に陥ってしまった。しかし、そんな中でもクリーチャー・サーチシステムである「レベル」に、具体的には《アムローの偵察兵/Amrou Scout》に恵まれたTormosが序盤から優勢にゲームを進めることになる。《アムローの求道者/Amrou Seekers》2体、《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》といった面々がアメリカ勢の陣容に登場。
ライフを削られながらも《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》をからめたトリックでなんとかコンバットでは奮戦する栗原だったが、いかんせんタッパーである《遍歴の宿命語り》が主導権を握っている。

さらにライフを削られながらもなんとか白いクリーチャーの頭数を並べ、《正義の凝視/Gaze of Justice》でタッパーを除去してみせる栗原。しかし、Tormosは次なる脅威を上空に展開してプレッシャーをかけてくる。特に、除去回避能力をもっている《ちらつくスピリット/Flickering Spirit》の存在はゲームの最終局面まで大きく響いた。
なんとか中盤になって戦線を膠着させた栗原だったが、この段階でライフレースは2対18。最初にご紹介したようにクリーチャーが20対近く投入されている栗原だけに、長引けばクリーチャーの展開数では決して引けをとらないわけなのだが、完全に膠着してしまった地上戦線を捨てたTormosは航空部隊を重点投入。《霊糸の幻/Gossamer Phantasm》と《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》を追加し、空から最後の一撃を加えることとなった。
栗原 0-1 Tormos
Game 2
黒星スタートとなってしまった栗原だが、第2ゲームでは快心のサイドボーディングで序盤をリードすることになった。遅い手札をよそおってTormosに気持ちよく《ベナリアの騎兵/Benalish Cavalry》と変異クリーチャーを展開させ、それをサイドからスプラッシュした《乱暴+転落/Rough+Tumble》、つまり2点の《地震/Earthquake》で一掃したのだ! しかも、変異も「次元の混乱」を代表するパワーカードである《模る寄生/Shaper Parasite》であったため、これは栗原にとってビッグプレイとなった。

一斉除去を見舞った栗原はフェイバリット・カードでもある《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》を展開してドローを加速。《筋力スリヴァー/Sinew Sliver》、変異、《城の猛禽/Castle Raptors》と展開して優位にダメージレースを進めることになった。
Tormosも《エイヴンの裂け目追い/Aven Riftwatcher》を呼び出してからサーチエンジンでもある《アムローの偵察兵/Amrou Scout》を召喚。しかし、栗原の変異がフェイスアップして《模る寄生/Shaper Parasite》となったことで、この2/1レベルも儚く散ってしまう。なんとか敵軍のダイナモとなっている青いシャドーを除去してやろうと《隆盛なる勇士クロウヴァクス/Crovax, Ascendant Hero》を呼び出したが、皮肉にも、ほとんど純白といって過言ではない栗原の軍勢こそがその恩恵を蒙るということになってしまった。
そして、栗原はこのゲームのフィニッシュブローとしてスリヴァー軍団を送り込んだ。2体目の《筋力スリヴァー》によって+2/+2、さらに《監視スリヴァー/Watcher Sliver》を追加して累計+2/+4、さらにそれを《同期スリヴァー/Synchronous Sliver》によって「警戒」もちへと進化させたのである。
栗原 1-1 Tormos
Game 3
Tormosを襲う色マナトラブル。青マナが、とにかくない。
なんとか栗原のドローソースである《コー追われの物あさり》を《太陽の槍/Sunlance》で打ち落としてみたものの…《雷のトーテム像/Thunder Totem》経由で2体の《筋力スリヴァー》、《塩平原の世捨て/Saltfield Recluse》、《城の猛禽》と展開してくる栗原の猛攻をさばききれない。
Tormosも変異クリーチャー、ありていに言えば青マナの欠乏ゆえにフェイスアップできない《模る寄生》などを出しては見るものの、-2/-0システムクリーチャーである《塩平原の世捨て》ゆえにブロックもなかなか出来ない状況。出血を止めるべく《城の猛禽》に《時間の孤立/Temporal Isolation》をエンチャントしたり、《濃霧/Fog》よろしく《暁の魔除け/Dawn Charm》をプレイしたりしてみるものの、これはもう完全な手遅れだった。
栗原 2-1 Tormos
Game 4
泣きっ面に蜂、先手ダブルマリガンとなったErvin Tormosは、さらに栗原 伸豪に快心の好プレイを決められてしまう。
にわかに空中戦の様相を呈してきた中で、栗原の《城の猛禽》へとTormosが《正義の凝視/Gaze of Justice》を撃ち込むと、これが「救出クリーチャー」《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》に守られてしまう。
そして、タップアウトしたTormosの空軍めがけて栗原がプレイしたのが《乱暴+転落/Rough+Tumble》! 6点の赤い《ハリケーン/Hurricane》がTormosの《城の猛禽/Castle Raptors》と《ちらつくスピリット/Flickering Spirit》を撃墜したのだ。
悠々と栗原は《城の猛禽/Castle Raptors》を召喚しなおして、ゲームを終わらせにかかった。
栗原 3-1 Tormos
栗原 伸豪、準決勝進出!
Sunday, Feb 11: 3:17 p.m. - 準々決勝 : 津村 健志(広島) vs. Willy Edel(ブラジル)

津村と言えば元々は自他共に認める構築畑だったが、寝ている時間以外はMagicOnlineと言うくらいの練習量と世界中のGPを回る行動力でその総合力を格段に向上させた。PT神戸に続いてのベストエイトである。そのうえ、今回ピック時にメインカメラに映し出されていたのは津村。そう、世界中で一番の注目は間違いなく津村なのである。しかし対戦相手のEdelもチャールストン、神戸とここジュネーブで脅威の3連続プロツアーサンデーと勢いのあるプレイヤー。好勝負が期待される。
津村は赤緑に《部族の炎/Tribal Flames》のダメージアップと《狩りの興奮/Thrill of the Hunt》のフラッシュバック用に1枚平地が入った形。目に付くのはアンコモン最強と名高い《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》が2枚! マナ加速クリーチャーもいてかなりビートが出来そうな構成。
対するEdelは青緑に《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》を2枚スプラッシュした形。青緑と言えばPT神戸の決勝で卓内最強と言われたEdelが屈することになった対戦相手のデッキカラー。変異あり《心霊破/Psionic Blast》ありと柔軟なデッキに仕上がっている。
Edel : 青緑タッチ白
津村 : 赤緑タッチ白
Game 1
どちらもマリガンなしでスタートし、Edelは《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》、《明日への探索/Search for Tomorrow》と連続で待機し、津村は《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》を待機と未来への備えをする2人。Edelが変異を出した返しで《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を待機してドローアップを図ろうとする津村だが変異の中身が《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》だったためランドをタップされてドローも展開も出来ずちょっとげんなり。
このあともキッカー込みの《シタヌールの樹木読み/Citanul Woodreaders》を《トゲ尾の仔ドレイク/Spiketail Drakeling》でカウンターされたり、待機の解けた《巨大埃バチ》に《ユートピアの誓約/Utopia Vow》を付けられたりと対応されっぱなしだった津村だったが、ここで《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》をき当てて場を膠着させることに成功する。
Edelが追加の変異を2体ほど出したあとにとうとう《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》が召還。クロックがかかってしまう津村は盤面的にはあまり殴れない状態だが意を決してアタックを敢行後2枚の火力で場が津村側に傾くように整える。しかし、変異が残っているためまだまだうかつには殴りづらい状況に。
ここからEdelは《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》の力により舞い戻った《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》を召還。次ターンに《進化の魔除け/Evolution Charm》の一番使わないといわれて居るモードである飛行を《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》に纏わせて《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》と共に攻撃して《心霊破/Psionic Blast》見せると一桁しかなかった津村のライフは一瞬にして0になってしまったのであった。
津村 0-1 Edel
《ユートピアの誓約/Utopia Vow》のおかげでフライングビートを決められなかった津村は《腐れ落ち/Molder》をInして平地をOut。
Game 2
《ケルドの後継者、ラーダ/Radha, Heir to Keld》からスタートした津村のビートはEdelの変異達をアタックから出るマナを利用して《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》と《死亡/Dead》でテンポよく除去していく。そして《ケルドの後継者、ラーダ/Radha, Heir to Keld》のもう一つの能力であるマナを使って《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》が登場。

Edelの出した《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》もさっきのお返しとばかりに《ユートピアの誓約/Utopia Vow》をつけて攻勢を緩めない津村はさらに《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer》を追加するとあえなくEdelは投了した。
津村 1-1 Edel
Game 3
《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》待機、《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer》、《獣群のナール/Herd Gnarr》と動く津村に対して《ワームウッドのドライアド/Wormwood Dryad》と変異を展開するEdel。緑同士のため地上が膠着気味になるこの対戦であまり使われないこのドライアドは思ったよりも活躍することが多い。
そのため《調和/Harmonize》で引き増して先にかたをつけようとする津村が《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》の待機が解けたターンに勝負をかける。壁も追加で出したため6/6になった《獣群のナール/Herd Gnarr》は《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》でタップされるも、アタック後に《部族の炎/Tribal Flames》を本体に打って《ぶどう弾/Grapeshot》でEdelの軍勢を壊滅させてゲームを決めた。
津村 2-1 Edel
ここで津村は《腐れ落ち/Molder》をOutし、《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》をInして防御を固める形をとることにする。
Game 4

後手で《図書館の大魔術師/Magus of the Library》を出すことが出来た津村だが、いかんせんマリガンをしているため追加のドローはできず。もちろんドローのために出したわけではなく、もう一つの能力であるマナ加速としての効用によりいつもより1ターン早く《獣群のナール/Herd Gnarr》を登場させる。Edelは先程と同じ《ワームウッドのドライアド/Wormwood Dryad》からのスタート。
《増力スリヴァー/Might Sliver》、《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》と出すEdelに対し、津村は《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》、《シタヌールの樹木読み/Citanul Woodreaders》と防御を固めながらドローアップを図りつつ《死亡/Dead》で後々脅威なるであろう《ワームウッドのドライアド/Wormwood Dryad》を退場させる。
盤面を動かそうとする後続もお互いの《ユートピアの誓約/Utopia Vow》により無力化されたところにEdelが《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》(《増力スリヴァー/Might Sliver》を回収)とインパクトを与え、さらに《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》と明確なクロックを用意する。ならばと津村は《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を連続待機して回答策を求める。そして《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》でクロックをはずすと《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》を召還。実はこの攻防の間、Edelはランドをセットしないことがほとんど無かった。
要するにいつのまにか場のクリーチャー数に差ができていたのだ。そして回答策が見出せないEdelは唯一できることとして手を差し出した。
津村 3-1 Edel
終わったあと津村が開口一番、
「1戦目は火力を本体に打ち込んでいたら削れてましたね」と。
完勝に近い勝ち方をしても反省をすることを忘れない。この姿勢がある限り、津村の身長は止まっても成長は止まることがない。
Sunday, Feb 11: 3:40 p.m. - 準々決勝 : 大澤 拓也(神奈川) vs. Jim Herold(ドイツ)

唯一人残ったプロツアーチャンピオンの相手をするのは、予選ラウンドで大澤 拓也(神奈川)に唯一人、土を付けた男であるJim Herold(ドイツ)。
大澤が青黒の待機&変異に対して、Heroldは青の変異と赤のシステムクリーチャーを備えたコントロール寄りのデッキとなっている
Game 1
Heroldが先行しての開幕。
大澤が2ターン目《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》待機スタートに対して、Heroldが《放蕩紅蓮術士/Prodigal Pyromancer》で答えるという展開。
だが、大澤は3枚目の土地が置けない。仕方なく《覆われた奇異/Veiling Oddity》を待機。しかし今日の、いや、今大会の大澤はここで終わるような状態では無い
ちゃんと次のターンには土地を引き当て、遅れを最小限に留めた上で変異をプレイ。これには即座に《突然のショック/Sudden Shock》で墓場行き。ちょっと悔しそうに、あらわになった《模る寄生/Shaper Parasite》を見つめる大澤。Heroldは返す刀で《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》、《針先の蜘蛛/Needlepeak Spider》と展開。
一方、大澤の方は土地を引けず、《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》プレイから《肥満死体/Corpulent Corpse》待機という切りかえしで、次ターンには待機が解けた《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》と変異をプレイで攻撃せずにエンド。
攻勢を強めるHeroldに対して待機が解けるまで守りきりたい大澤の構図となった。
次のHeroldのターン。蜘蛛と深み歩きの攻撃に対して大澤の選択は、深み歩きをカゲロウ獣、蜘蛛を変異でブロック。Heroldは深み歩きを2回パンプ、スタック後に《粗暴な力/Brute Force》。一旦大澤の場にクリーチャーはいなくなり、Heroldには深み歩きと紅蓮魔術師。
だがここからは大澤の時間となった。
魔術師には《深夜の魔除け/Midnight Charm》、深み歩きには待機が解けた《覆われた奇異/Veiling Oddity》のブロックから《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》のスイッチ。
Heroldも即座に《燃焼/Conflagrate》で応酬するがその隙を突いた《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》の攻撃と待機の解けた《肥満死体/Corpulent Corpse》、《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》で大澤の有利は覆らない。
奇襲を狙った最後の切り札、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》も大澤の慎重なケアにより《肥満死体/Corpulent Corpse》を殺すのみで、これが《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》で対処されてそこまで。
我慢に我慢を重ねた大澤には大きな報酬を得ることとなった。
大澤 1-0 Herold
サイドイン 《マナを間引くもの/Mana Skimmer》
アウト 《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》
Game 2

初動は大澤の第1ターン、《エピティアの賢者/Sage of Epityr》。そこから《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》待機→変異プレイと順調な立ち上がりを見せる。
一方、Heroldの方は初動が第3ターンの変異プレイ。続くターンに大澤の変異を《粗暴な力/Brute Force》に乗り越え、《放蕩紅蓮術士/Prodigal Pyromancer》をプレイする。
大澤は《マナを間引くもの/Mana Skimmer》、《覆われた奇異/Veiling Oddity》をプレイと着々と自陣を増強するのに対して、Heroldはクリーチャーをプレイできない代わりに、待機の解けた《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》に対して《陰鬱な失敗/Dismal Failure》で対処(大澤のディスカードは《結核/Phthisis》)、変異を《水変化の精体/Aquamorph Entity》に解除、5/1にしてダメージレースで押し切る構えを見せたい。
…ということは手札があまり宜しくないと言うわけで、なんとかその後の展開では互角の攻防見せているのだが、2体のクリーチャーの差がなかなか縮まらない。とうとうライフがHerold4対大澤14とまで開いてしまう。
だが、ここからHeroldの逆転がはじまる。引きの悪い時は悪いなりに、で溜まった土地を4枚を《燃焼/Conflagrate》のフラッシュバックコストに充て大澤の場をリセット。
最後の一押しの《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》を《放蕩紅蓮術士/Prodigal Pyromancer》で打ち落として残りライフ1で踏みとどまり、土地ゾーンに入ってしまった大澤を尻目に《なだれ乗り/Avalanche Riders》を追加して攻守逆転。残りライフ6まで迫った上で、更にダメ押しとなる《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》を追加する。
もしもここで放蕩魔術師の召喚酔いが解けてしまうと大澤は残り少ないライフの中、クリーチャーはおろか、起死回生の《結核/Phthisis》ですら魔術師達の狙撃によって防がれてしまう。果たして間に合うか…
間に合った!!
祈るように対象を《なだれ乗り/Avalanche Riders》に指定する大澤に対して、手札が1枚のHeroldはしばし逡巡の後、カードを片付けだした。
大澤 2-0 Herold
Game 3

後手の大澤が《肥満死体/Corpulent Corpse》待機、《覆われた奇異/Veiling Oddity》待機、変異プレイと動く中、先手のHeroldは3ターン目すらもドローゴー。こうなってしまうとゲーム2のビックプレイで傾城がついたように思えてしまう。
Heroldは4ターン目に《棘鞭使い/Stingscourger》で大澤の変異(《模る寄生/Shaper Parasite》)を戻し、《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を待機するが、大澤は《エピティアの賢者/Sage of Epityr》をプレイした後に再度、変異を召喚。
Heroldは《棘鞭使い/Stingscourger》のエコーを支払い、ターンを終了。大澤は《ゴルゴンの世捨て/Gorgon Recluse》をプレイし同じくターンを終了。第6ターンには両方の待機が解け総攻撃して合計で10点。
Heroldが隠し持っていた《乱暴/Rough》/《転落/Tumble》、《突然のショック/Sudden Shock》も死期を1ターン遅くしただけだった。
大澤 3-0 Herold
大澤、準決勝進出!
Sunday, Feb 11: 6:33 p.m. - 準決勝 : 大澤 拓也(神奈川) vs. 栗原 伸豪

大澤 拓也(神奈川)vs. 栗原 伸豪(東京)。
Jim Herold(ドイツ)を準々決勝3タテで下した大澤と、Ervin Tormos(アメリカ)を3-1で降した栗原。お互いに良く知る相手であり、それぞれが鬼門と語った準々決勝を突破して来たもの同士、心持ち表情も柔らかい。
栗原 「ぐっどるぅぁっく」
大澤 「ゆぅーとぅー」
Game 1
大澤がダブルマリガン。
初動は後攻の大澤、第1ターンに《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を待機からスタート。その後も順調に土地を引きあて、4ターン目に《覆われた奇異/Veiling Oddity》、5ターン目には《ゴルゴンの世捨て/Gorgon Recluse》ダブルマリガンを感じさせない立ち上がりを見せる。
一方、栗原の方は、《筋力スリヴァー/Sinew Sliver》、《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》、《監視スリヴァー/Watcher Sliver》と立て続けにプレイ。
この《監視スリヴァー/Watcher Sliver》をプレイするときに《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》を警戒して多少考えた以外、終始、小気味良い速度でプレイグラウンドにクリーチャー達が行き来される。
しかし、徐々に、だが確実にダブルマリガンの差が出始めるゴルゴンには《時間の孤立/Temporal Isolation》がプレイされ、栗原のライフが18に対して大澤のライフは既に9。
力なくドローゴーする大澤に対して栗原は致死圏内に引きずり込むべく《象牙の巨人/Ivory Giant》をプレイ。これによって大澤の場にブロッカーがいなくなり、攻撃に向かう3体。
いや、《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》を留めて2体にするべきか、二度、三度、そぶりを見せた後、出した結論はスリヴァー2体。
そして現れる《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》。
好判断で骸骨は無効化され、次のターンには更なる駄目押しの《アムローの求道者/Amrou Seekers》が登場。ゲーム1は栗原が先取。
栗原 1-0 大澤
栗原 サイドアウト 《正義の凝視/Gaze of Justice》
サイドイン 《水変化の精体/Aquamorph Entity》
最後まで《凍りつく霊気/Frozen AEther》を検討していたが結局採用せず
大澤 サイドアウト 《マナを間引くもの/Mana Skimmer》、《哀愁/Melancholy》
サイドイン 《覆われた奇異/Veiling Oddity》、《羊術師/Ovinomancer》
Game 2

前回は大澤、今回は栗原がと、ばかりに栗原がダブルマリガン。白いカードに島1枚でキープする羽目となり、引き込んだ土地は島。第3 ターンには土地も置けず。
大澤は第1ターンに《エピティアの賢者/Sage of Epityr》をプレイし、たっぷり時間をかけて後のターンの展開を見定める。大澤が選んだプランは第2ターン沼、《虹色のレンズ/Prismatic Lens》。第3ターン島、《肥満死体/Corpulent Corpse》待機、変異をプレイ。
この変異は栗原の《応じ返し/Snapback》で手札に返されるが(《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》)次のターンには《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》を表で出して、2 マナ浮かした状態でターンを渡し、《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》を強烈に匂わせる。と、ようやく土地を引き始めた栗原を尻目に更なる変異をプレイ。
この変異が次のターンには《潮路の海蛇/Sliptide Serpent》にと表返り、後続と海蛇を同時に処理しきれない栗原はここで投了。
栗原 1-1 大澤
Game 3
どちらがというわけでもなく、
「ホント、どっちかが事故だよねー」
とぽつり。
2本ともどちらかのワンサイドゲームの感がある
そして2度あることは、3度あるとは言うが、栗原がマリガン、再度マリガン。
一方で大澤の方も沼1枚に《虹色のレンズ/Prismatic Lens》と危険なキープだったのだが、見事に第2ターンに沼を引き当て、第1ターンの《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》待機とあわせて、第2ターンには《エピティアの賢者/Sage of Epityr》をプレイしつつ《肥満死体/Corpulent Corpse》を待機。と、傍目にはブン廻りにしか見えない。
栗原も第2ターンに《筋力スリヴァー/Sinew Sliver》から、第3ターン、土地を置いて《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》と1本目を彷彿させる展開を見せるが、大澤は《結核/Phthisis》待機、栗原の《城の猛禽/Castle Raptors》を《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》した上で、さらなる《結核/Phthisis》待機、《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》待機。
場が硬直しきって、《肥満死体/Corpulent Corpse》に殴られている状態の栗原はここで投了。
栗原 1-2 大澤
Game 4

これまでの3ゲームともどちらかがダブルマリガンしているのだが、今回は双方とも初手をキープ。
後手の大澤が《肥満死体/Corpulent Corpse》待機で口火を切れば、栗原が第2ターンに今大会のMVPカードと語る《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》をプレイ。大澤はこれを無効化することが出来ず、ダメージが通り1枚ドロー。序盤戦は栗原がリードする展開となる。
だが、栗原の方も決して楽なわけではない。ルーターに続いて《アムローの求道者/Amrou Seekers》をプレイするか、《遍歴の宿命語り/Errant Doomsayers》をプレイしつつ《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を待機するか。
栗原の選択はルーターのディスカードで宿命語りを捨て、《アムローの求道者/Amrou Seekers》をプレイ。そこに狙い済ました《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》が突き刺さる。
大澤が変異をプレイしてターンを返すと、栗原には更なるダメージとドローを進め、懸案だった2枚目の平地を手に入れた上で島をディスカード。《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》をプレイ
しかし大澤の方も負けてはいない、4枚目までに置いた土地こそ全て沼だったが、そこに《虹色のレンズ/Prismatic Lens》を経由して更なる変異をプレイ。前のターンにプレイした変異が攻撃、これが通り、ライフはお互い18。
さて、ここで難しい判断を迫られることになったのは栗原である。今までは大澤の場に沼しか無かったため、変異に気を取られる必要は無かったのだが、とうとう、《虹色のレンズ/Prismatic Lens》から青マナが出る事態となってしまった。
《模る寄生/Shaper Parasite》だった場合、命綱の《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》を手札の《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》で守りプランもあるが、そうなるとこのターンの展開が大幅に遅れてしまう。
栗原は攻めを維持すること選択。ケストレルとルーターを攻撃して大澤を15点にした上で、《象牙の巨人/Ivory Giant》をディスカード。タップアウトして《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》をプレイ。
返すターンの大澤の動きは、変異を攻撃に出さず、さらなる沼に《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》。変異をプレイしてターンを返した。
栗原は3体全てで攻撃。大澤は深み歩きに変異2体でブロック。ダメージスタック後に栗原はライオンで深み歩きを「救出」(変異は2体とも《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》)。
ルーターで2枚目の《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》をディスカードして大澤は12に。
栗原は土地をプレイしてターンを渡す。
大澤にとって待望の《肥満死体/Corpulent Corpse》が待機開けしたが、これには攻撃したところで即、栗原が《時間の孤立/Temporal Isolation》。
《時間の孤立》によって貴重な攻め手が失われた大澤だったが、《コー追われの物あさり》への壁が出来たと切り替えてプラン変更。最後に残った変異を《模る寄生/Shaper Parasite》に表返して《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》を除去。
これで一気に苦しくなったのは栗原。ルーターがくれる最後のドローを噛み締めつつ《ヴィセリッドの深み歩き》を再度プレイ。
そこへ放たれるは《結核/Phthisis》、《模る寄生/Shaper Parasite》の攻撃と合わせて一気に8点のダメージが入り、栗原は11にまで落ち込んだ。
大澤の場には《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》。手札に解決策が無い栗原は、座して死ぬよりは、と《時間の孤立/Temporal Isolation》が付いた《肥満死体/Corpulent Corpse》に打ち込んで、《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》と攻撃。ドローを無理矢理進めると同時に大澤の残りライフは8に。
大澤も《模る寄生/Shaper Parasite》が攻撃して栗原を残り9にしつつ、先ほどライブラリの上に乗った《肥満死体/Corpulent Corpse》をプレイ。
栗原が祈るようにルーターで攻撃。大澤を7にした上でルーターで引き当てた《監視スリヴァー/Watcher Sliver》をプレイしてターンを終了。
そして大澤のターン。大澤は《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》をクリーチャー化、《肥満死体/Corpulent Corpse》、《模る寄生/Shaper Parasite》の3体で攻撃。
《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》と《監視スリヴァー/Watcher Sliver》で迎え撃つ栗原は《模る寄生/Shaper Parasite》のみを《監視スリヴァー/Watcher Sliver》で受けて残りライフ1にして、《補強/Fortify》のトップデッキに賭けることを選択した。
だが、ダメージ解決後にプレイされた大澤の《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》が栗原の最後の希望を摘み取った。
栗原 1-3 大澤
大澤 3-0 Herold
大澤、決勝進出!
Sunday, Feb 11: 7:07 p.m. - 準決勝 : 津村 健志(広島) vs. Mike Hron(アメリカ)

津村 健志(広島)vs. Mike Hron(アメリカ)。
津村は赤緑スプラッシュ白。一昔前では考えられない「緑によるドローアップ」が相当数入っていて、そこから《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》2枚によりビートしていく感じである。
対するHronは緑黒に《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》、《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》と《絞殺の煤/Strangling Soot》のフラッシュバック用のタッチ赤。《幽体の魔力/Spectral Force》や《ワーム呼び/Wurmcalling》も入っており、同系に強い形になっている。という事は…津村としては厳しい戦いかもしれない。
Game 1
後手の津村が《図書館の大魔術師/Magus of the Library》を出してそれをHronが《深夜の魔除け/Midnight Charm》で除去する動きからスタート。《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer》、《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》待機×2と順調に動いている津村だったがHronが《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》の後に出したのが比べ物にならないくらいでかい《幽体の魔力/Spectral Force》。このモンスターが殴り始めると手がつけられないところだが、返しで《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》を出して睨みをきかす津村。
これで膠着かと思われたところだが《大火口のカヴー》に《絞殺の煤/Strangling Soot》が飛ぶ。さらに《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》がHronの場に出てしまい、これによりかなり進退窮まった津村は一回り大きいクリーチャー相手にフルアタックを敢行する。Hronはライフが10と少々心もとないため津村が前ターンに出した《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》に対してもあわせて全てブロックすることに。
もちろん津村はただ闇雲にアタックしたわけではなく、《幽体の魔力》にブロックされた《ダークウッドのベイロス》には《数の力/Strength in Numbers》、《クローサの英雄、ストーンブラウ》に対しては《ナントゥーコのシャーマン》のダメージが入っているところへ《死亡/Dead》と場がかなりきれいに整理されることとなった。
それならばとHronは《ワーム呼び/Wurmcalling》バイバックにより1/1だがトークンを量産するモードに移行しようとするも、津村は《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》をアタッカーに《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》召喚からの《ぶどう弾/Grapeshot》でトークンを一掃。
先程からライフが10しかないHronはバイバックなしで5/5《ワーム呼び》を出し地上をとめて次ターンで《絞殺の煤/Strangling Soot》のフラッシュバックにより《巨大埃バチ》を殺すプランに望みをつなぐ。しかしその望みは津村のトップデッキによる《ユートピアの誓約/Utopia Vow》により瓦解してしまうのだった。
津村 1-0 Hron
Game 2
ここでHronがダブルマリガン。ランドも2枚で一旦ストップしてしまい《本質の管理人/Essence Warden》、《暗心スリヴァー/Darkheart Sliver》と一応の回りを見せるものの相当気分悪そうというかふてくされた感じでプレイするHron。

しかしこの試合、本当苦しかったのは津村のほう。山3枚《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》緑のカード3枚の手札を相手がダブルマリガンしたのを見てスタートしたのだが、引けども引けども森が来ない。やっと森を引いたターンは…Hronのライフが27で場には止まらない《肥満死体/Corpulent Corpse》込みでクリーチャーがいっぱい。もう一桁しかない津村は投了するのみだった。
津村 1-1 Hron
Game 3
Hronが《緑探し/Greenseeker》、《明日への探索/Search for Tomorrow》待機、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》と動いていたのに対しマリガンした津村のファーストアクションは《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》待機。これをHronの出した《暗心スリヴァー/Darkheart Sliver》と相打ちさせ、《ケルドの後継者、ラーダ/Radha, Heir to Keld》を召還。
ここでHronは《緑探し/Greenseeker》の能力で《肥満死体/Corpulent Corpse》を捨てランドを増やし、《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》で《肥満死体/Corpulent Corpse》を回収とどんどんアドバンテージを取っていく。さらに《本質の管理人/Essence Warden》と《ワーム呼び/Wurmcalling》の地味コンボでライフとトークンを増量。さすがにライフが圏外に行ってしまうと勝ち目のない津村は《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》で《本質の管理人/Essence Warden》を墓地へ送る。
《ワーム呼び/Wurmcalling》のトークンを《死亡/Dead》で焼きながら無理やりにでもアタックにより戦線をこじ開けようとする津村。《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》の追加により加速の増したビートは最高値24あったHronのライフを8まで押し込むことが出来た。ただHronも《肥満死体/Corpulent Corpse》により与えていたダメージがあり、最後は《版図の踏みつけ/Tromp the Domains》により+3されたクリーチャー達に蹂躙されるのであった。
津村 1-2 Hron
ここで津村は多少出すのに時間のかかる《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk》をOutして序盤の防御用として《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》をInすることに。
Game 4

Hronの召還した《暗心スリヴァー/Darkheart Sliver》×2と津村の《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》が見合う序盤。津村が《ケルドの矛槍兵/Keldon Halberdier》召還により《暗心スリヴァー/Darkheart Sliver》を乗り越えるかと思われたが返しのHronはパワーが倍ある《幽体の魔力/Spectral Force》!
普通ならこれだけできついところだが津村には《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》と一応の解決策を提示。Hronは《本質の管理人/Essence Warden》、《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk》と展開したため《幽体の魔力/Spectral Force》と《大火口のカヴー/Firemaw Kavu》を6ライフと引き換えに相打ちさせる。
出てしまうと微妙に硬い《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk》に対して津村は前のターンに出した《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》と《ペンデルヘイヴンの古老/Pendelhaven Elder》でブロックと微妙においしくないトレード。ただそれも場が膠着するようにするため。その我慢のプレイも《奈落の守り手/Pit Keeper》により墓地から戻ってきた《幽体の魔力/Spectral Force》が登場してかなりのいっぱいいっぱい。
津村は残存兵力でなんとかブロックしようとするがそこで飛んでくるのは《版図の踏みつけ/Tromp the Domains》。クリーチャーが半壊したところにとどめの《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》&《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》。ライフが2でどのクリーチャーでさえも通せない展開に津村は最後のドローをした後、悔しそうに場を片付けはじめた。
津村 1-3 Hron
津村は終わったあと「Game 2はマリガンだったなぁ、あとそれよりも《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》をピックするべきだった」と反省することしきり。
そして「すごい悔しい」と一言つぶやいた。
負けたといえども、前日倒した相手に気分が悪くなるほど心を痛め、ミスとも言えない所を反省し精進する謙虚な若武者は今シーズンも日本、いや世界のマジックを牽引していく存在であることは疑いようがない。

Sunday, Feb 11: 11:38 p.m. - 決勝 : 大澤 拓也(神奈川) vs. Mike Hron(アメリカ)

6年。
「マジックの母国」アメリカが最後のリミテッド・プロツアーのタイトルを獲得してから、気がつけばこれだけの月日がたっていたのだった。
その間、後進国であったはずの日本は二人のリミテッド王者を送り出すことになり、いつの間にやら競技コミュニティにおける中心的な存在に成り上がっていた。今ここに座っている大澤 拓也(神奈川)は、まさにその日本新時代を象徴する一人、プロツアー・プラハ2006チャンピオンである。
おそらく、6年前には誰も想像することさえできなかったことだろう。
王座奪回をかけて、無名の若者に「マジックの母国」の人々が希望を託すことになるとは。
しかも、そこに立ちはだかるのが二冠の栄光を目前にした日本人であるなどとは。
かくて、アメリカの人々の期待を一身にあつめたMike Hronの挑戦を、大澤 拓也が受けてたつことになった。
Mike Hron : 緑黒タッチ赤
大澤 拓也 : 青黒
Game 1
プロツアー決勝戦に恥じない、素晴らしい立ち上がりを両者が見せる。
先手の大澤が《肥満死体/Corpulent Corpse》待機、《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》待機、変異をプレイという動き出しを見せると、後手Hronも《明日への探索/Search for Tomorrow》待機、《暗心スリヴァー/Darkheart Sliver》召喚、《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》召喚という動きで応じる。そして、《ドライアド》と変異が相打ちとなった。
大澤が《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を、Hronは《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》でアドバンテージクリーチャーである《ドライアド》を回収するという動きで続く。
そして、待機クリーチャーたちが出現し、大澤がレッドゾーンへと3体を送り込む。ここでHronは《ヴィセリッドの深み歩き》を《暗心スリヴァー》と《ヤヴィマヤのドライアド》のダブルブロックで相打ちにとり、《肥満死体》には《絞殺の煤/Strangling Soot》をプレイ。《遍歴のカゲロウ獣》だけが上空から4点のダメージを与えることとなった。

大澤は3/6《ツリーフォーク》による反撃を「瞬速」で召喚した再生クリーチャーである《蠢く肉裂き/Drudge Reavers》でブロックし、さらに追撃のアタックを行った。Hronは《ツリーフォーク》が墓地に落ちた際に《暗心スリヴァー》を回収し、これを再度召喚。さらに《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》を呼び出す。
そして、《遍歴のカゲロウ獣》がMike Hronのライフを削り落としたところへ、大澤 拓也は《結核/Phthisis》を詠唱。この究極的な除去魔法がクローサの英雄を襲い、その主のライフ8点を失わせることになったのである。
大澤 1-0 Hron
Game 2
先手マリガンながら、開幕ターンに《本質の管理人/Essence Warden》を呼び出すことに成功する挑戦者Hron。ゲームの展開が長引いたこともあって、このカラーシフトクリーチャーは驚くほどのライフアドバンテージをアメリカ人にもたらすことになる。
ここからは、めまぐるしい攻防。
Hronが《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》、大澤が変異、Hronが《暗心スリヴァー》、大澤が《肥満死体》待機、Hronが《ワーム呼び/Wurmcalling》バイバック、大澤がさらに変異を出してそれが《流水の海蛇/Slipstream Serpent》に、Hronは《シタヌールの樹木読み/Citanul Woodreaders》キッカーでドロー2…と、二人は互いにパーマネントを展開していく。静かな、慎重な睨み合い。
そうこうするうちにMike Hronは《魔力の篭手/Gauntlet of Power》を引き当て、これが一気に天秤を傾かせることとなった。膨大なマナを供給するようになった《森/Forest》によって循環する《ワーム呼び/Wurmcalling》バイバック。さらに、緑色のクリーチャーたちは+1/+1の修整を得ているのである。
その上で、大澤にとっては悪いことに、このゲームで登場した最初のノンランドパーマネントでもある《本質の管理人》がHronに延々とライフを供給し続けたのだった。
大澤 1-1 Hron
Game 3
第3ゲームも長い戦いになった。
先手の大澤がワンマリガンながら《エピティアの賢者/Sage of Epityr》でライブラリを整えるという立ち上がりで、対するHronも《本質の管理人/Essence Warden》を呼び出すというスタートを迎える。
そして、大澤が2ターン目に《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》待機、3ターン目に変異、4ターン目に《結核/Phthisis》待機というアクションで先に動きを見せる。第1ゲームの勝利を大澤にもたらした、そして彼のデッキに3枚投入されている《結核/Phthisis》のプレッシャーゆえに――少なくとも、それが「待機」というかたちで目に見えた脅威となっている段階では――Hronもファッティを展開することが出来ない。大澤としては、まさにそこを狙ってダメージレースを仕掛けたいところなのだった。事実、《命取りの幼虫/Deadly Grub》を成虫にすることくらいしか出来ないHronの手札にはファッティがあふれている。
大空の覇者、4/4飛行《遍歴のカゲロウ獣》があらわれ、さらにこれに《吸血の絆/Vampiric Link》を纏わせて一撃。ダメージレースを完全に支配しにかかる大澤だった。「ここまでは」彼のプランどおりだった。
しかし、Hronもここで《吸血の絆》を使用したため、せっかくの《遍歴のカゲロウ獣》はダメージクロックとしての機能を失い、ただの4点ゲインライフマシーンとなってしまう。ニヤリと笑いながらHronは《シタヌールの樹木読み/Citanul Woodreaders》キッカーで手札を肥やし、大澤の呼び出した《砂丘乗りの無法者/Dunerider Outlaw》を《絞殺の煤/Strangling Soot》で葬る。そこへむなしく大澤の《結核/Phthisis》の待機があけ、《本質の管理人/Essence Warden》を対象としたのだった。

黒い嵐が過ぎ去ったことで、Hronはアクションを起こす。《ワーム呼び/Wurmcalling》バイバックで5/5クリーチャーを毎ターン生み出しはじめ、その間に大澤は変異をフリップアップして《流水の海蛇/Slipstream Serpent》へと変えた。さらにHronは《クローサの英雄、ストーンブラウ/Stonebrow, Krosan Hero》、《ヴェク追われの侵入者/Trespasser il-Vec》を召喚する。
毎ターン4点ずつのライフを獲得してきた大澤は完全な安全圏へとライフトータルを引き上げている。つまり、Hronの陣立てが終わる前に、いかにして回避能力をもったクリーチャーを展開できるかというのが大澤にとって最大のポイントとなるのだった。そして、《肥満死体/Corpulent Corpse》という回答を見出し、敵陣の黒いブロッカーを《哀愁/Melancholy》で排除するプラハ王者。
他方、 Mike Hronも《ストーンブラウ》によって6点のダメージを与えられるようになり、途方もない数だった大澤のライフトータルも2点ずつ減少していくことになった。そこへ《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を待機させ、長引いた試合を終わらせるための仕掛けとした。
大澤はなんとか3/3畏怖でのダメージレースで勝負を決めたかったが、残り16点というところでHronの《絞殺の煤》が襲い掛かり、望みを2匹目の《遍歴のカゲロウ獣》に託すことになった。《絞殺の煤》をものともしない4/4飛行という性能は、この局面では完璧なる機能美とよべるものだ。
明確な時間設定をされてしまった今、Hronは全軍突撃を開始することを決断した。3体のクリーチャーを大澤の的確なブロックによって失ってしまいながらもダメージを通し、ライフトータル28対16(大澤リード)。次の大澤の航空爆撃で、このライフは32対12へと変動した。
しかし、アメリカ復権の期待を一心に背負った若者は、ここで素晴らしいトップデッキを成し遂げ、場内を沸かせた。
《版図の踏みつけ/Tromp the Domains》、突撃。
大澤 1-2 Hron
Game 4
第4ゲームが開幕し、大澤が《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》と《遍歴のカゲロウ獣》を待機し、3ターン目に《虹色のレンズ/Prismatic Lens》を置くという立ち上がり。長い長い決勝戦はまだ折り返したばかりだ。
ゲーム外に将来の脅威を予約して行ったライバルを尻目に、対するHronは完全なウィーニー戦術をとった。1ターン目に《本質の管理人》、2ターン目に《灰毛皮の熊》。3ターン目にも《暗心スリヴァー》と《緑探し/Greenseeker》の2体同時展開を見せる。
Hronは4ターン目に《緑探し》を起動して3色目のとなる《山》を調達し、さらに《ヴェク追われの侵入者/Trespasser il-Vec》を召喚。このターンのエンドステップに大澤は《蠢く肉裂き/Drudge Reavers》を瞬速でプレイした。
ここで《ヴィセリッドの深み歩き》をアタックするのか?
大澤は逡巡する。
結局プロツアー・プラハ王者はこれをレッドゾーンに送り込み、《ヴェク追われの侵入者》と相打ちということになった。そして、Hronは環境を代表する超構築級ファッティである《幽体の魔力/Spectral Force》を呼び出す。
大澤は《結核/Phthisis》へとたどり着けるだろうか?
《幽体の魔力》の一撃で大澤の残りライフは8点。そこに後続として《クローサの英雄、ストーンブラウ》が加わったのは大澤にとっては危険なサインだった。
しかし、土壇場で大澤はきっちりと「間に合う」力強さを見せた。《結核》という強烈なカウンターパンチによってライフレースは一気に8対9というタイトなものになる。
Hronの《ストーンブラウ》が大澤の《流水の海蛇/Slipstream Serpent》と相打ちとなる。それでも《巨大埃バチ/Giant Dustwasp》を続けるHronだったが、大澤は《遍歴のカゲロウ獣》に《吸血の絆/Vampiric Link》を纏わせることに成功する。
Hronはなんとか2枚がかりで《遍歴のカゲロウ獣》を葬り、続く脅威である《肥満死体》をトップデッキの《絞殺の煤》で退けるという力強さを見せた。
そうこうするうちに、いつの間にやら大澤の場には《蠢く肉裂き》のみ、Hronのもとにも《緑探し》と《本質の管理人》のみという状況が演出された。
そして、紙一重の勝負で大澤が《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》を引き当て、《本質の管理人》を「瞬速」で葬る。この飛行クリーチャーがそのまま攻撃陣に加わったところで、Hronはデッキをかたづけはじめた。
大澤 2-2 Hron
Game 5
日本に二冠王者が誕生するか、アメリカが悲願を成就させるか。すべてが賭けられた試合である。
そんな中、まさしく血戦の第5ゲームでもテイクマリガンを余儀なくされ、開幕2ターンに何も出来ないという立ち上がりに不満を隠せないHrons。しかしながら、大澤も「待機」エンジンからのスタートを果たせず、《虹色のレンズ》に変異が続くという凡庸な立ち上がりとなってしまった。
Hronsは《明日への探索/Search for Tomorrow》で4枚目の、《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》で5枚目の土地を手に入れながら陣容を固めていった。その間、大澤は静かに土地をならべ、変異を場に加えている。
実は3枚もの《結核/Phthisis》をすでに引き当てている大澤 拓也は、変異2体をレッドゾーンへと送り込んだ。そして、ノーブロックが宣言されたところで片方を《水変化の精体/Aquamorph Entity》へと変身させたのだが、これを《深夜の魔除け/Midnight Charm》で葬られてしまうという憂き目に会った。
準々決勝では対戦相手の《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を読みきって《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》の起動をピタリとストップしたという冷静な判断力を見せた大澤にしては、らしくない不用意なプレイだっただろうか。もっとも、スポットライトを浴びながらの試合時間が数時間に渡ってきているわけで、両者ともに、とくに大澤の表情には疲労の色が濃い。
Hronは《魔力の篭手/Gauntlet of Power》:緑と《マイアー・ボア/Mire Boa》を展開し、蛇こそ大澤の《揺り籠から墓場まで/Cradle to Grave》が討ち取ったものの、強化された緑色のアタッカーたちが大澤のライフを削り取った。ライフトータルは17対10でHronのリードである。
続くターンのHronの突撃に際して、大澤は3/3クリーチャーを2体の変異でブロックし、片方を《模る寄生/Shaper Parasite》にフリップアップして《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad》を除去することを選択。1点のダメージも通さずに敵陣の2体のアタッカーを葬りつつ、自軍の《寄生》が生き残るという好プレイを見せた。
ここで後続の出せないHJronだったが、大澤は《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》を警戒して《寄生》のアタックを自粛し、続くクリーチャーとして《肥満死体》を呼び出すにとどまった。
大澤のマナは6マナでとまっていて、手札が3枚。
ライフは20対10。
そして、Hronはとうとうそれを、9/9トランプルの《幽体の魔力/Spectral Force》を召喚した。《結核/Phthisis》されると18点。しかし、されなければ、これはまさしく勝利に直結するフィニッシャーとなる。
《幽体の魔力/Spectral Force》のアタックを前に、大澤 拓也は悩みに悩んだ。自陣には2/3《模る寄生/Shaper Parasite》と3/3《肥満死体/Corpulent Corpse》。どうブロックしたものか。
そして、最終的に大澤は《模る寄生》をレッドゾーンへと差出し、このブロックによって6点スルー。残りライフを4点とした。
…続くターンの動きとあわせて判断するに、これは明らかなミスプレイで、大澤 拓也は《幽体の魔力/Spectral Force》のテキストを読み違えていた。Hronの《幽体の魔力/Spectral Force》が次のターンにアンタップできるかどうかが判定されるのは、攻撃宣言時に大澤が黒いパーマネントを持っているか、否か、なのだ。
このときは誤解に気がつかないまま、《幽体の魔力/Spectral Force》は「1ターンごとにアンタップする」と思い込んだまま、大澤は続く自ターンを迎えてしまい、《肥満死体/Corpulent Corpse》でアタックを宣言し、それから《ヴィセリッドの深み歩き/Viscerid Deepwalker》を召喚してターンを終えた。
そして、Mike Hronの《幽体の魔力/Spectral Force》がアンタップしてレッドゾーンに再び送り込まれると、すべてを理解した大澤は右手を差し出すことになった。
信じられない世紀の見落としをしてしまった自分の迂闊さを呪いながら大澤がめくりだしたライブラリの一番上のカードは、やはりというか、7枚目のマナソースなのだった。
Hron 3-2 大澤

「次元の混乱」とは、パラレルワールドを、別の未来を題材にした物語である。
はたして、このプロツアー・プラハで、どれだけのプレイヤーが「もしも、あのとき…」と唇をかみ締め、別の未来に思いを馳せたことだろうか。
準決勝でMike Hronに敗れた津村 健志は、自身の「次元の混乱」でのファーストピックで《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》をピックできなかったことを、そして、決定的なマリガニングミスを悔いた。
最後の最後で階段を踏み外してしまった大澤も、「もしも《幽体の魔力》のテキストをきちんと確認していたら…」と悔やみきれない思いを抱えている。
だが、プロツアーの舞台に「もしも」はない。
ふだんでは考えられないようなミスで、数え切れないほどの名手たちが斃れていく非情な舞台だ。
それゆえ、人々は「プロツアーには魔物が棲んでいる」と言う。
そんな熾烈極まりない舞台を制して、
Mike Hronはアメリカに6年ぶりのタイトルを持ち帰った。
Congratulations to Mike Hron, the Pro Tour—Geneva 2007 champion!