Live Coverage of 2005 Pro Tour Nagoya

更新日 Event Coverage on 2005年 1月 30日

By Yusuke Yoshikawa

とうとうここまで勝ち上がってきた。

東京の小室 修は、グランプリ横浜の勝利こそあったものの、プロツアーでの目立った活躍もなく、海外勢からは無名の存在と見られていた。同時に立ち上がってきたのがPT神戸覇者たる黒田 正城であったのも、注目が薄かった一つの要因であろう。

だが彼自身の経験が少なくとも、練習において彼は関東勢のみならず、前述の黒田や森田 雅彦、PTコロンバス準優勝の中村 修平などといったプレイヤーと意見交換を重ねていた。マジックにおいてのコミュニティの力は既に語られているところであるが、素晴らしい仲間に恵まれ、小室は彼らに匹敵する実力を蓄えていたのである。

対するは、スウェーデンのAnton Jonsson。彼の実績はもはや各所で書かれているので、割愛させていただこう。準々決勝で黒田との好勝負を、準決勝ではTerry Sohとの難しいゲームを制してこの舞台に上がってきた。

今大会では日本語でのビデオ・カバレージも行われているのだが、その解説を務める藤田 剛史が舌を巻くほどの的確な読みと判断を見せている。彼は物静かな雰囲気に得体の知れなさをまとった、対戦相手としては非常に厄介なキャラクターの持ち主である。そして今、Jonssonはその力をもって快挙を狙う小室の前に立ちはだかる。

開始前にお互いのデッキリストが交換された。入念に内容をチェックし、情報戦への備えをする二人。Jonssonが「これで3回目だね」と声をかけた。小室も「ここまで1-1ですよね」と応える。

小室がJonssonから挙げたその1勝は、第13ラウンドという正念場において《山伏の長、熊野/Kumano, Master Yamabushi》を三度出されながらも跳ね返して得たものだ。この勝利によって、小室は強い自信を得て、その後の戦いも勝ち抜いてくることができたのだという。もう一度壁を乗り越えれば、彼自身が王者となるのだ

余計な言葉は要らない。神と人の祭りが始まる。
神の世界の戦いを制するは、新鋭か、名手か。

Game 1

コイントスで勝利した小室は先攻を選択した。

気になるオープニングハンドは《森/Forest》2枚《島/Island》《山/Mountain》《聖鐘の僧団/Order of the Sacred Bell》《空民の鏡術士/Soratami Mirror-Mage》《残忍な詐欺師/Feral Deceiver》。やや遅いが、パワーは悪くはない。

ファーストアクションはJonssonの《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》となる。この大会通して青をプレイしつづけた彼だが、このカードを使うのを何度目にしただろう。

小室は静かに第3ターンを終えるが、彼を驚かせたのはJonssonが小室の《島/Island》に向けて放った《未達の目/Eye of Nowhere》であった。

《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》を引いた小室は、少し考えながらこれをプレイグラウンドへ。対して《川の水神/River Kaijin》をプレイするJonsson。この終了フェイズに小室は少し考えるが、《桜族の長老》を温存することを選んだ。

ターンが返ってきて4マナが使える状況となるが、《密の反抗/Hisoka's Defiance》を見ながら、あえてそのままターンを返す小室。場の《桜族の長老》と合わせて、次のターンにカウンターを構えて展開するプランだ。

Jonssonが攻撃からメイン起動の《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》でターンを返してくると、小室は予定通り《残忍な詐欺師/Feral Deceiver》を展開。返しに現れたのは《溶岩の魂/Soul of Magma》で、小室は少し考えに沈む。しかし、「《伝承の語り部/Teller of Tales》と《地揺すり/Earthshaker》だけカウンターするつもりだった」という小室はあえてカウンターしなかった。

自らのターン、《残忍な詐欺師/Feral Deceiver》でライブラリの一番上をチェックした上で攻撃する小室。これはブロックされず、ここで初めてJonssonのライフは動く。続いて《聖鐘の僧団/Order of the Sacred Bell》をプレイする。

これに対しJonssonは自らのターン、この《聖鐘の僧団》に向けて《山伏の炎/Yamabushi's Flame》。ここで手札(《木霊の力/Kodama's Might》《密の反抗/Hisoka's Defiance》《空民の鏡術士/Soratami Mirror-Mage》)を見ながら考えた小室は、失うわけにはいかないと《木霊の力》を使用してこれを守る。だが、Jonssonがそれに重ねて2枚目の《山伏の炎》。これには小室も素直に《聖鐘の僧団》を墓地に置くこととなった。

小室はアップキープにライブラリトップを確認し、それをそのまま公開して《残忍な詐欺師》を5/4として攻撃。さらに2マナ残した《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》をプレイする。

ここでJonssonは満を持して《地揺すり/Earthshaker》。先ほどは我慢した小室であったが、これは前述の予定通りカウンター。場での主導権を渡さない。

例によって5/4となった《残忍な詐欺師》と《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》の2体で攻撃する小室。《残忍な詐欺師》はJonssonのライフを7に落とし、《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》は《川の水神/River Kaijin》を休ませる。
Jonssonは《空民の雲乗り》でドローを増やしてから《伝承の語り部/Teller of Tales》で場を支配にかかる。だがここで《島/Island》1枚を残して土地はフルタップとなった。

小室はこの隙を見逃さなかった。
土地が10枚あることを利して、《空民の鏡術士/Soratami Mirror-Mage》からブロッカーの《伝承の語り部》《溶岩の魂》を戻して総攻撃!
Jonssonをライフ1まで一気に追い詰める。

ターンが返ってきて、Jonssonはここで考慮に沈む。有利なのは間違いないが、この時間が小室にとってはなんとも不気味だ。

厳しい顔をしながら、《空民の鏡守り/Soratami Mirror-Guard》《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》と並べてJonssonはターンを返してきた。

小室は早い段階で決めてしまいたいが、残りの土地が4枚であることを考え、ドローした後に1マナ使ってライブラリトップを確認、これは《空民の学者/Soratami Savant》。《残忍な詐欺師》を温存することも考えられたが、ここでは素直に《樫族の肉裂き》と共に突っ込み、《残忍な詐欺師》が《浪人の犬師》と相打ちに、《樫族の肉裂き》は《川の水神》を休ませる。小室は《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》を持ちながら、《密の反抗/Hisoka's Defiance》を構えて終了。

Jonssonは《空民の雲乗り》で打開策を求めてみるが、その2体目を出すのみ。

小室の《樫族の肉裂き》が《空民の雲乗り》を吹き飛ばし、《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》が戦列に加えられる。

もう幾ばくかのカードを引いてはみたJonssonだが、マナが足りず状況を打開できないため、首を振りながらカードを片付けた。

小室 –1 Jonsson –0

Game 2

今回も土地4枚に《空民の学者/Soratami Savant》《空民の鏡術士/Soratami Mirror-Mage》《伝承の語り部/Teller of Tales》とやや重い内容に不満の残る小室だが、考えてこれをキープ。時間さえあれば十分に未来の開ける内容だ。

しかし、Jonssonがお決まりの《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》に続いて第3ターンにプレイしたカードが小室を凍りつかせる。

《罰する者、ゾーズー/Zo-Zu the Punisher》!

もともと土地を伸ばすことが中心の小室のデッキにとって厳しいクリーチャーだが、この状況ではさらに痛すぎる。さらに畳み掛けるように、Jonssonは《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》をプレイして攻撃してくる。

小室は《根走り/Rootrunner》をブロッカーとして呼ぶが、第4ターンにしてライフは既に10。これが《秘教の抑制/Mystic Restraints》で封じられると、小室はあっさりと投了した。

ここはJonssonの作戦勝ちか。

小室 –1 Jonsson –1

Game 3

致命的な弱点を突かれてしまった小室。何とかして星を取り戻したいところ。
今回の初手には《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》がある。が、緑マナソースが《松の頂の峰/Pinecrest Ridge》であるため、《残忍な詐欺師/Feral Deceiver》が遅れるのは仕方のないところか。

序盤はその通りにゲームが進み、《かまどの神/Hearth Kami》に《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》が待ち構える展開になるが、わざと《桜族の長老》を使わずに《密の反抗/Hisoka's Defiance》で待っていた第3ターンに走ってきたのは《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》。これを、少し考えつつも《桜族の長老》でチャンプし、《森/Forest》を入手。

さて第4ターンにして《伝承の語り部》が出せる小室だが、手札の《木霊の力/Kodama's Might》を考え《残忍な詐欺師》から入る。

これで《浪人の犬師》をブロック、ここでも《木霊の力》を迷うが《残忍な詐欺師》でライブラリを確認するだけで相打ち。やはりこの場のプレッシャーは相当なもので、少し手が震えているようにも見える。

だが、プレイングは堅実そのもの。満を持して《伝承の語り部》をプレイ、もちろん《森》はアンタップ状態だ。

そこに飛んでくる《山伏の炎/Yamabushi's Flame》。もちろん、これは《木霊の力》でかわす。続くターンには《地揺すり/Earthshaker》が現れるが、これも予定通り《密の反抗》でカウンター。落ち着いたプレイが、歴戦の強者さえも手玉にとっているように見せている。

Jonssonは《戦に狂える浪人/Battle-Mad Ronin》を追加。少し驚きだが、ライフレースに持ち込もうという意図が伝わる。

だが小室は《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》によってクロックと状況をより強固なものとし、さらには《樫族の肉裂き/Kashi-Tribe Reaver》をプレイしてJonssonに迫る。

Jonssonは《樫族の肉裂き》を《秘教の抑制/Mystic Restraints》して攻撃を続行してくるが、やはりダメージクロックが違いすぎる。

小室はダメ押しのようにここで《消耗の渦/Consuming Vortex》をドロー。何も動きがないJonssonに対し、対応があることもわずかに考えたようだが、《消耗の渦》をプレイして《樫族の肉裂き》を起こす。Jonssonに対応はなく、小室は栄冠に王手をかけた。

小室 –2 Jonsson –1

Game 4

何かを期待したざわめきが起き始めた。

今回の小室の初手は《森/Forest》2枚《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》2枚と強固なマナベースに《聖鐘の僧団/Order of the Sacred Bell》《密の反抗/Hisoka's Defiance》《木霊の力/Kodama's Might》。プランの見える、悪くない手札である。

Kodama's Might

例によってJonssonの《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》でゲームが開幕する。続いて《空民の雨刻み/Soratami Rainshaper》と航空戦力で押してくるが、小室は第2ターンに《桜族の長老》、第3ターンには《桜族の長老》2枚と、着実にマナベースを構築していく。

土地が3枚で止まりながらも、さらに《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》で押すJonssonに対し、小室は落ち着いて《桜族の長老》の片割れで《浪人の犬師》を止め、片方は残す。

小室は5枚の土地から《聖鐘の僧団/Order of the Sacred Bell》をプレイして終了。《森/Forest》を残し《木霊の力/Kodama's Might》を匂わせる陣営に対し、Jonssonは《浪人の犬師》を残し飛行のみで攻撃。ここでようやく4枚目の土地を引いたようで、《火の咆哮の神/Kami of Fire's Roar》を展開してターンを終了とする。

さてようやく攻勢に入ろうとするところ、だが《火の咆哮の神》は攻防に邪魔な存在となる。ここは慎重に行くか悩むところだが、ここは思い切って《消耗の渦/Consuming Vortex》を使用する。《聖鐘の僧団》の攻撃はブロックなく、Jonssonのライフも動き出す。

土地が伸びずに苦しいJonssonだが、ライフ面での主導権を握っているのは変わりない。全軍での攻撃に対し、小室は《浪人の犬師》を《桜族の長老》でブロックした上でダメージスタック前に《木霊の力》の合わせ技で相打ちに持ち込む。だが空民は相変わらず小室のライフを蝕み、10に。続いて《火の咆哮の神》が再プレイされるが、これは即座に《密の反抗》する。

飛行への回答が欲しい小室がドローしたのは…このターンは《川の水神/River Kaijin》であった。毒にも薬にもならない感じだが、それでも貴重なクリーチャー。《聖鐘の僧団》での攻撃でJonssonのライフを12とした後、これをプレイして明日への礎に。

ようやく、といった感じでJonssonは5枚目の土地を置く。攻撃によって小室のライフは7。ここから《伝承の語り部/Teller of Tales》をプレイするのだが、待ってましたと小室が最後の手札である《密の反抗》で対応。これには、ポーカーフェイスのJonssonも少し呆れ顔を見せる。

さて、ここで現状のダメージレースを整理しよう。

(小室ライフ7)÷(Jonssonのダメージ源3)=3ターン
(Jonssonライフ12)÷(小室のダメージ源5)=3ターン

Jonssonのライフから減り始めることを考えると計算ではやや勝っているものの、手札が尽きている小室に対し土地が詰まった分だけスペルを抱えているであろうJonssonの差は歴然だ。

何とかして決めたい、そう願うところに引いたのは2枚目の《木霊の力》。これで、妨害がなければクロックがあと2ターンに縮まった。攻撃してJonssonのライフは7、期を待つ形で終了を宣言。

だがJonssonも動き出す。メインで《空民の雲乗り/Soratami Cloudskater》を起動して手札を動かす。攻撃により小室のライフを4としたあと、土地4枚を立たせたまま終了を宣言してきた。

続く小室のターンのアップキープ。Jonssonはその4マナから《秘教の抑制/Mystic Restraints》を引き出し、小室の希望である《聖鐘の僧団》を対象に指定した。小室も、やや諦め顔でそれを受け入れる。

唐突に、
その時は、
やってきた。

小室がカードを引く。にわかに、彼の表情が変わる。そのカードに何より驚いたのは、間違いなく彼自身だろう。
そして全てを理解した彼は、そのカードをプレイした。

《伝承の語り部/Teller of Tales》――
この大会で数々の局面を制し、誰あろうJonsson自身がよく使っていたカード――
そして、この局面で唯一の回答。

小室は《伝承の語り部》をプレイし、その後に《木霊の力》を《聖鐘の僧団》にプレイする。《伝承の語り部》の力が《聖鐘の僧団》を揺り起こし、《川の水神》とともにレッドゾーンに向かう。その総パワーは、まさに7点。

――Jonssonは、信じられないという表情で天を仰ぎ、
《山伏の炎/Yamabushi's Flame》を含む手札を取り落とすように置き、
一息置いて、
右手を差し出した。

プロツアーチャンプ・小室 修の誕生だ!

小室 –3 Jonsson –1

まさに信じられないようなトップデッキ。もちろん、それを活かすだけのプレイングの下積みがあったのは間違いない。それも含めて、最高の状況で最高のドラマを生み出してしまえることが、王者の資質の何より証左だ。
そして、この1枚のドローは語り継がれる伝承となるだろう。

見ていた全ての人が、この伝承の語り部。

そしてこの伝説は終わりではない。
タイトルホルダーとなった小室にはよりいっそうの活躍が期待されるし、今年の11月には、日本で6年ぶりとなる世界選手権が予定されている。
次なる主役になれるのは、果たして誰なのだろう。

新たな伝説を、我々は心待ちにしている。

おめでとう、プロツアー名古屋2005チャンピオン・小室 修!

Anton Jonsson

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Shu Komuro

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