カードプールの評価なんてものは、やっぱり人それぞれだろう。Onslaughtは実にリミテッド向きのセットであるのかもしれないし、「Rath ブロック以来もっとも運ゲー的な」フォーマットなのかもしれない。十人十色とはよくぞ言ったものである。
ところで、ことロチェスターに関して特化した場合、Onslaughtというエキスパンションはいかがなものだろうか。よく出来たフォーマットなのか、はたまた実力に関係なく勝者の決まってしまう世界なのか。やはり、これまた意見は人それぞれだった。
Zvi Mowshowitz と Kai Budde というのはこの手の問題を語らせる上では二強ともいうべきビッグネームだろう。そのZviに言わせれば、「ほとんどの場合、ロチェスタードラフトというのは強制されたもの」ということになる。「各自の果たすべき役割というのは最初のパックを開封された時点で定まってしまう」わけだからだそうだ。しかし、より良いピックをするための他の方法が存在しないわけではない、ということもZviはしぶしぶ認めている。「それでも、90%のプレイヤーは最初の数ピックの段階で進む方向性を決定しているはずだよ」
そして、Kai BuddeもこのZviの意見に同調する一人だ。「7人の優秀なプレイヤーに囲まれてのロチェスターであるなら、お互いが色を選択し、合意と理解のもとでカードを分配しあうという展開になるはずだ。各自がデッキの方向性を確立するまでは、誰もヘイトドラフト(=カット)なんてしないだろうし、それこそがロチェスターというものなんだから」と、ドイツ人は語る。
ここで例題を出してみよう。一番最初のパックで、そこには・《疾風衣の侵略者/Gustcloak Harrier》・《陽光の突風/Solar Blast》・ 《狙いすましたなだれ/Pinpoint Avalanche》しかまともなカードが含まれない場合を想定して欲しい。そして貴方は二番目のプレイヤーである。
「それなら、白黒に落ち着くしかないね。以上。青白とか青緑とか、やってはいけない色の組合わせっていうのがこのフォーマットでは多すぎるから」とは先ほどのZviの言である。
そして、Dave Williamsもこれに同意する。「誰がなんと言おうと、赤か黒のどちらかをドラフトしなければダメだ。《火花鍛冶/Sparksmith》や《幸運を祈る者/Wellwisher》のようなカードに対処できないデッキというのは意味がないから。そして、黒より赤の方が数段優れているわけだけど、右手(上家)のプレイヤーが赤に走ろうとしているなら黒に落ち着くしかないないね」
…ということは、だ。このフォーマットはいかに赤と黒とを住み分けた上で卓上のカードを分配するしかない、というゲームだということなのだろうか?
しかし、これに異を唱える者ももちろん存在する。ヒューストンでのマスターズ(Onslaught Booster-Draft)で見事準優勝をはたしたGary Wiseがそうだ。「これは素晴らしいフォーマットだ」と前置きした上で、彼はこう語る。「赤黒信仰というのはまやかしで、都市伝説みたいなものだ。誰しもがこの理論に基づいてプレイしているというならオレもこの意見をちょっとは尊重するかもしれないが、そうでない者たちのなんと多いことか。それに、青白も青緑もそう捨てたものじゃない」
そして、”Superman” Ben Rubinも「このフォーマットは素晴らしい」と支持するサイドの一人である。ドラフトというシステムそれ自体に問題はあるものの、それをプレイスキルがリカバーできるはずだ、というのが彼の主張だ。「僕自身のここ4戦に関して、そのうちの3つは間違いなくプレイスキルで対戦相手を圧倒できたと確信している。ドラフティングの段階はともかく、実戦においては様々な局面で重要な決断を強いられるわけだからね」。またGary Wiseに言わせるとこうなる。「テンポとカードのシナジーが重要なフォーマットにおいては、優れたプレイヤーは他人とは違うパターンに基づいてカードのピックを行うことが可能なはずだ。」つまり、実力者こそが勝てるフォーマットだ、というのだ。
どうやら、トッププレイヤーと呼ばれるプロ達のほとんどはロチェスターに関して不満を抱いてないようだ。予測の範疇でものごとが調和するからだろう。そうなると、予定調和しようとする世界に歯向かい、隣の席のプレイヤーへと流れていくはずの爆弾カードへと手を伸ばさないと結果を変えることは出来ないのだろうか?
少なくとも、Mike Turian はそう考えているらしい。先ほどの例題に関して言うなら「白いカードを二番目にピックすることはないね。緑か黒のカードを考えたいところだけど、もしも候補となりうるようなものが存在しなかったなら、赤に手を伸ばすかな。上家と色が重なるのはリスクをともなうことだけど、そうせざるを得ないことは実際にあるからさ」。また、Turianのチームメイトであり、プロプレイヤーの間では名うてのヘイトドラフターとして知られているNick Eiselがファーストドラフトを見事に4-0で勝ち上がっているという事実もある。つまり、邪道と言われようとなんだろうと、ヘイトドラフトで活路が開けることもあるのだ。
そう考えると、ロチェスターに関してプロプレイヤーがやたらと「暗黙裡の協調」について言及しているのはいささか大袈裟すぎるのではないだろうか。しかし、Zviはこれに猛反発する。「ロチェスターはただのドラフトとはまったく異なるものなんだ。一挙手一投足、すべてのピックは他人へのシグナルであり、たとえ強力なカードが目の前に現れたからといって色を変えるということは許されないんだよ」。
ともあれ、このシカゴでの週末がOnslaughtロチェスターというフォーマットに結論を出してくれることになるだろう。はたして、これは単なる政治と記憶術のエクササイズにすぎないのか、それとも実力者のための素晴らしいフォーマットなのか。《火花鍛冶》やトップレアをいかに引き当てることができるかという勝負となってしまうのか、はたまた、卓上の全員を敵にまわしてでも裏切りの刃を振りかざすべきなのか。