Round 1: 大礒 正嗣(広島) vs. Ruud Warmenhoven(オランダ)

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 20日

By Keita Mori

大礒 正嗣

久々にマジック:ザ・ギャザリングのトーナメントシーンをチェックするという方には、まずこのこと――新たなる時代の到来――をお伝えしておかなければならないだろう。

いま現在、プロマジックの世界を牽引しているのは日本勢である。

Jon Finkel(アメリカ)やKai Budde(ドイツ)といった海外のスタープレイヤーが君臨していた時代を思えば、まさしく隔世の感がある。しかし、事実そうなのである。

実際問題、2006年度の年間最優秀プレイヤー(Player of the Year)賞レースは(暫定ながらも)八十岡 翔太(神奈川)、中村 修平(大阪)、大澤 拓也(神奈川)という三名のプロプレイヤーによる三つ巴の様相を見せており、今季ここまで開催されたプロツアー三大会のうち、二大会を日本勢がつかみとっている。

FinkelやBuddeの時代のように突出した一個人が支配しているというわけではなく、日本勢という集団がシーンを席巻しているという意味で、これは特徴的なムーブメントと言えるかもしれない。

ちなみに、「強い日本」の時代の到来という事実を満天下に印象づけたのが昨年度の世界選手権で、日本は世界王者(森 勝洋)、団体戦世界一(諸藤 拓馬/大礒 正嗣/志村 一郎)、年間最優秀プレイヤー賞(津村 健志)の三冠達成を成し遂げてしまった。

このプロツアー神戸の第1回戦の注目の対戦(Feature Match)で紹介する大礒 正嗣というのも、「強い日本」という現在のムーブメントを考察するうえで欠かすことの出来ない重要人物だ。プロツアーサンデーに五回進出するという快挙を果たしただけでなく、上述のとおり日本に団体戦世界一のタイトルをもたらした立役者である。

さらに、彼は北米のグランプリ戦線へと遠征し、実際にタイトルを強奪して見せる(GPボストン)という離れ業を見せて世界中をあっと言わせた男だ。かつて、プロポイントをもとめる海外トッププロたちの草刈場として荒らされていた弱小国・日本。それが、いまやマジックの母国に殴り込みをかけるほどにまでなったのだから……Alex Shvartsman(アメリカ)の活躍していた時代などを思うと、にわかに信じがたい逆転現象である。

そんな「強い日本」を代表する名手に対するのはオランダのRuud Warmenhoven(オランダ)。今季のプロツアー・ホノルルで7位入賞を果たしている実力派だ。

Game 1

強豪であれば誰もがテンポアドバンテージの重要性を強調する「時のらせん」環境化にあって、将来のファッティを予約する「待機」をすばやく仕込んでおくというのはとても多大きな意味を持つアクションだ。

そして、ここでWarmenhovenが作り上げている青白「待機」&「飛行」というのはそれを踏まえたうえでとても強力なアーキタイプのひとつとして(プロプレイヤーの間では)周知されている。

第1ターンにで《象牙の巨人/Ivory Giant》を待機、2ターン目にから《羽軸スリヴァー/Quilled Sliver》召喚、3ターン目にで《オパールの守護者/Opal Guardian》設置、4ターン目にマナで「変異」もちクリーチャーを裏向きに召喚、という滑り出しを見せたのがWarmenhovenだ。

一方の大礒がカードを引いては土地を置いてターン終了を宣言するだけという「ドロー・ゴー」状態を繰り返すうちに「待機」状態だったWarmenhovenの3/4《巨人》が場に登場し、裏向きで潜んでいた「変異」クリーチャーも《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》へと姿を変え、《象牙の巨人/Ivory Giant》をコピーして襲い掛かった。

打たれながらもひたすらに沈黙を守ってきた大礒 が動いたのは8マナ域に到達してのこと。はたして、テンポ攻勢を覆すだけのカードアドバンテージを獲得できるような強力な一手、盤面制圧手段(ボード・コントロール)は存在するのか?

Sulfurous Blast

ここで大礒 正嗣は現環境を代表する「逆転呪文」、テンポの喪失を一気に補ってくれるカードとして注目されている《硫黄破/Sulfurous Blast》を使用した。さらに、《地の底のシャンブラー/Subterranean Shambler》の召喚によるCIP能力誘発をあわせて「4点の《地震/Earthquake》」効果を発生させ、敵陣地上戦線を文字通り壊滅させた。

※CIP能力…Comes Into Play能力。場に出たとき~する、という能力全般を指す。

3/4《巨人》、3/4《多相の戦士》、1/1《スリヴァー》という敵陣の三体を退けた上で2/3の赤いクリーチャーが大礒の場に残ったわけだから、これもたしかにビッグプレイである。

しかし、先ほどRuud Warmenhovenが第3ターンに仕掛けておいたエンチャントメント、《オパールの守護者/Opal Guardian》がここで眠りを覚ましてしまうことになった。

《オパールの守護者》は色拘束こそ厳しいものの強力無比な一枚として知られているレアで、「プロテクション:赤」、「飛行」、3/4というスペックは赤いスペルに除去を頼っている大礒 正嗣 のデッキには特に厳しい。

結局、《オーグ/Orgg》をはじめとしたカードによって手札が真っ赤な大礒 正嗣には、この3/4ガーゴイルが致命傷となってしまったのだった。

Ruud Warmenhoven 1-0 大礒 正嗣

Ruud Warmenhoven

Game 2

詳細は巻末のリストをご参照いただきたいが、《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon》、《オーグ/Orgg》、《分解/Disintegrate》といった赤いパワーカードと青い飛行軍団とによって構成されている大礒 正嗣のデッキはかなり強い部類のものといえる。

しかし、協調ドラフトに完全に成功し、卓内で不人気の気配を見せていた白いカードをひたすらにかき集めたという白青「待機」のWarmenhovenのデッキはその上を行くものだった。

後手第2ターンに3/3飛行の《ダスクライダーの大隼/Duskrider Peregrine》を、第3ターン目にはバウンス能力つきの2/2飛行の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を、と強力な航空部隊をテンポよく連続で「待機」させるWarmenhoven。

対する大礒 正嗣はひっそりと裏向きに出した2/2飛行のピンガーである《巣立つ大口獣/Fledgling Mawcor》を表返してから2/1《厚皮のゴブリン/Thick-Skinned Goblin》を地上に配置する、という立ち上がりを見せた。

※ピンガー:任意の対象に1点のダメージを与えるという、《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》を源流とする起動型能力もことで、その手の能力を持ったクリーチャーのことも指す。

すると、ここでWarmenhoven は「もっちろん、これは最初のパックの初手でとったカードだよ!」と笑顔で4ターン目に《セラの報復者/Serra Avenger》を展開する。

大礒はこの天使を《オークの連続砲撃/Orcish Cannonade》と《巣立つ大口獣/Fledgling Mawcor》のあわせ技によって除去してみせるが、Warmenhovenサイドに「待機」から登場した《ダスクライダーの大隼/Duskrider Peregrine》が《知恵の蛇の眼/Ophidian Eye》をまとって航空戦を開始する。3点ダメージ、1枚ドロー。

皮肉にも土地が4枚でとまってしまった大礒 正嗣は手札の《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon》や《オーグ/Orgg》を凝視しながらゲームプランを練り直す。結局、1/3飛行の《トレイリアの歩哨/Tolarian Sentinel》を出したのみでターンを返すこととなり、そこにWarmenhovenが予告先発していた《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》がやってくる。

テンポアドバンテージが重要と言われている中、CIP能力でのバウンス機能を兼ね備えているカードが弱いわけがない。ここでWarmenhovenは大礒の空飛ぶピンガーである《巣立つ大口獣/Fledgling Mawcor》を追い返し、ドローエンジンと化した先ほどの《ダスクライダーの大隼/Duskrider Peregrine》で攻撃を宣言。戦闘後にさらなる飛行クリーチャーとして《城の猛禽/Castle Raptors》を追加した。

単純に考えて、《城の猛禽/Castle Raptors》は5マナ、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》も5マナの飛行クリーチャーである。3ターンにわたる文字通りの「待機」時間があったとはいえ、本来は10マナに相当するアクションを5~6マナ域の段階で実行できたのだから、やはりそれは大きなインパクトだったといわざるを得ないだろう。

ちなみに、強力なクリーチャーを「待機」させておいて《取り消し/Cancel》などのカウンター呪文を構えておくというスタイルのプレイを実行することも人気であるようだ。第1ドラフトでWarmenhovenが完成させたような白青系「待機」デッキというのはこのプロツアー神戸の取材記事で何度となく登場するアーキタイプとして覚えておいていただきたい。

さて、試合に話を戻そう。

劣勢の大礒は2/2飛行ピンガー《巣立つ大口獣/Fledgling Mawcor》を再召喚することになり、1/3飛行《トレイリアの歩哨/Tolarian Sentinel》とのダブルブロックによって次なるWarmenhovenのドロー能力つきの《大隼》を撃墜しようと試みた。

試みたのだが、

キーワード化された奇襲能力「瞬速」を備えた《天界の十字軍/Celestial Crusader》が光臨するというコンバットトリックによって目論見は失敗。

さすがの大礒 正嗣も、苦笑するしかなかった。

大礒 「そっち、相当強いですね!」

Ruud Warmenhoven 2-0 大礒 正嗣

Ruud Warmenhoven

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Masashi Oiso

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