
「Who,is Kashima?」
このフレーズを覚えているだろうか?
2001年PT東京の藤田 剛史(大阪)以来となる2人目のプロツアーサンデーを経験し、2003PTベニスでTOP 8入賞を果たしたプレイヤーこそが、鹿島 彰浩その人である。ベニスで勝ち進む姿を見た海外勢が、彼に向けた賛辞と驚嘆の言葉が、冒頭の「Who,is Kashima?」につながる。全く無名のプレイヤーが、一躍プロツアーの中心人物となった瞬間でもあった。
それからしばらくは、プロツアー、日本選手権と参戦をしていたが、いつしかその名を表舞台で聞かなくなっていた。筆者は同じ埼玉出身という事で彼と親交があり、昔話などブラッシュトークをする時もしばしば、その際にベニスの話をすると、
鹿島 「そんな事も、大昔にありましたねぇ」
と、はにかんで見せるが、プレイヤーを引退していたわけではない。ずっと現役プレイヤーとして活動していたのだ。
鹿島 「単純に、あれから勝ってないだけですよ」
と、楽しげに語ってくれた。そんな鹿島は、今年は無事に予選を勝ち抜いて権利を獲得し、参戦を果たした。去年の諸藤 拓馬(福岡)もそうだったが、日本選手権という舞台はオールドネーム(と、言うには諸藤も鹿島も年齢的に失礼だが)の復活の舞台としても知られる場であり、その意味でもこの鹿島、そして日本のレジェンドである石田 格の両者の対戦は、日本選手権の開幕戦として相応しいのではないかと思っている。
鹿島は、予選時と同じオリジナルの青緑白のパーミッションデッキ。石田はボロスビートダウン。対照的なデッキを手に、歴史と歴史がぶつかり合う。
夏の終わりに、11年目の夏が始まる。
Game 1
後手の石田が《炎の印章/Seal of Fire》を置き、さらに《レオニンの空狩人/Leonin Skyhunter》をプレイした所で、鹿島が《呪文嵌め/Spell Snare》。続く《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》は《虚空粘/Voidslime》できっちりとカウンターし、鹿島の場に充分な土地が並んでパーミッションの体勢が整った頃には、石田に場には2枚の《炎の印章/Seal of Fire》と《名誉の手/Hand of Honor》だけという状態に。
《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を出して装備し、攻撃を仕掛ける石田だが、これは《糾弾/Condemn》。石田が手詰まりになったところで、《風を裂くもの/Windreaver》と《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー/Vitu-Ghazi, the City-Tree》でのトークンとで、攻撃開始。
石田は、《黒焦げ/Char》の連発でカウンターの尽きた鹿島に反撃を試みるが、アタッカーをことごとく《糾弾/Condemn》で失っては、手元の火力だけでは届かないと判断。カードを畳み始めた。
石田 0-1 鹿島
Game 2

今度は先手の石田。《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》プレイで軽快に立ち上がるが、またしても《糾弾/Condemn》で出足をくじかれる。ならばと、《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》を通してプロテクションを前面に押し出して殴る計画に出た。
手札に火力を温存しつつ、2点ずつしっかりとダメージを積み重ねていく石田。鹿島は一瞬土地が3枚で止まってしまうが無事に立ち直り、《神の怒り/Wrath of God》で《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》に「単体除去」を放つが、返しに《稲妻のらせん/Lightning Helix》2連発。これで、鹿島の残りライフは一気に4まで急降下する。
うかつにトークンも生み出せない状態になった鹿島は、手札のカウンター呪文と相談しつつ、マナが伸びるまで耐える事にした。石田も土地の並べあいに付き合い、数ターンが経過。こういうケースでは先に動いた方が負けるというのが定説だが、今回もその例に漏れず。鹿島が「もう大丈夫かな?」とトークンを生み出したスキを石田が見逃すはずも無く、《黒焦げ/Char》2連発で決着をつけた。
石田 1-1 鹿島
Game 3
後攻の鹿島が、ビートダウンに対して最高のハンドをキープ。石田の《名誉の手/Hand of Honor》を《呪文嵌め/Spell Snare》、《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》を《糾弾/Condemn》し、2枚目の《名誉の手/Hand of Honor》には《不忠の糸/Threads of Disloyalty》と、完璧な対処を見せる。
しかし、石田も後続に《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》と《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》を呼び出し、鹿島の《清麻呂の末裔/Descendant of Kiyomaro》には《酷寒の枷/Gelid Shackles》と今度は石田が盛り返す。
とにかく《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》をどうにかしない事には始まらない鹿島だが、対処できるカード。具体的には《神の怒り/Wrath of God》が全く見えない。仕方なく《清麻呂の末裔/Descendant of Kiyomaro》を追加するが、手札が多いのは石田の方になっており、盤面と手札枚数とを考えた上で、鹿島のエンドに《血の手の炎/Flames of the Blood Hand》を叩き込む。
これは《邪魔/Hinder》でカウンターとなるが、鹿島をフルタップさせた石田。致命傷には至らないが、石田もフルタップで《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》へプロテクションをつけて殴りかかりつつ、《稲妻のらせん/Lightning Helix》を打ち込んで鹿島のライフを3まで落とし込む。
だが、今度は先に動いてしまったのが石田だった。
返しの鹿島のドローで手札枚数が同じになるように調整した石田だったが、鹿島のトップデッキは《強迫的な研究/Compulsive Research》。《清麻呂の末裔/Descendant of Kiyomaro》がその真価を取り戻し、逆にライフを9まで戻しつつ石田に攻めかかる。しかし、逆に言うとデッキ的な問題もあるが、ここでも鹿島は勝負を決め切れなかったとも取れる。
これで息を吹き返した石田。《稲妻のらせん/Lightning Helix》でダメージを加え、再びライフを危険水域まで持って行き、同じ愚は繰り返さないとばかりに、《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》で構える。鹿島は考え込んだ末にフルアタックを敢行し、自らの《清麻呂の末裔/Descendant of Kiyomaro》のうちの1体に《糾弾/Condemn》を打ち込んでライフを取り戻し、《神の怒り/Wrath of God》で一掃。
返しの石田が繰り出した《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》は《呪文嵌め/Spell Snare》でカウンターし、《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》はトークンで耐えて土地を並べ、石田のハンドをうかがう。
鹿島の手札には《徴用/Commandeer》と《邪魔/Hinder》。10マナあるので両方構える事も出来たが、勝ちに行くプレイングを目指して果敢にトークンを生み出し、《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》を止めずにアタックを繰り返して、あと一撃という所まで追い詰めた。
……その結果、待っていたのは《血の手の炎/Flames of the Blood Hand》2連発。勝負を決めに動いた鹿島だったが、第2ゲームに続いて上手さを見せた石田のゲームメイクを前に、あと1点のライフが遠かった。
石田 「あの《強迫的な研究/Compulsive Research》で負けたと思ったけどね。お互いマナを使いづらい状態だったから、何とかなると思った」
どう見ても絶望的な場でも、諦めずに盤面を良く見直してみるのが重要だということだ。そして、我慢すべきところと押すべきところの読み合い。初戦から、濃厚なマッチだった。これこそ、日本選手権の醍醐味だろう。
※アナウンス
スタンダードのデッキリストは、ジグザグフォーマットの関係上、イベント2日目の公開となります。
石田 2-1 鹿島
Final Result:石田 Wins!