
さて、このパシフィコ横浜といえば、2年前の世界選手権で日本勢が大躍進を遂げた地である。
森 勝洋(東京)の優勝を筆頭とした、トップ8に日本勢が4人という個人戦。
そして、プレーオフで当時の「USAオールスター」を打ち破った団体戦。
どちらも、偉業といっても持ち上げすぎではない出来事だっただろう。そう、それを成し遂げたプレイヤーたちも、綺羅星のようなタレントぞろいだった。
しかし、森が、夏冬を制覇したり、中村 修平(大阪)が二年連続でレベル6になったりと個人戦で活躍したプレイヤー達が、今なお最前線で戦っているのに対して、王者諸藤 拓馬(福岡)率いる日本代表チームのメンバーの姿をプレミアイベントで久しく見ていないような気がしてならない。
たった、2年前、されども、2年前の出来事なのだ。2年という月日は短くない。その間に生活環境の変化から、プロマジックから距離を置かざるを得なくなるプレイヤーが出てきてもおかしくないのだ。
「やる気のイデア」志村 一郎(東京)と、「世界のISO」大礒 正嗣(広島)。
二人とも、日本のマジックの歴史に名を残すスーパースターではあったが、就職・進学の差はあれど、生活環境の変化から、現在では一線から退いている。
そんな大礒が、今回、3敗というまだまだ可能性の残るラインで奮闘しているというので、ここで取り上げたいと思う。
対戦相手は、Benjamin Page(ベンジャミン・ペイジ/カナダ)。
Game 1
図らずも「青黒へのアンチデック」である赤緑の重量系デックのミラーマッチとなったこの対戦。

簡単にストラテジーを説明すると、《根の壁/Wall of Roots》《明日への探索/Search for Tomorrow》などのマナ加速から、《幽体の魔力/Spectral Force》《憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury》などの重量クリーチャーを高速キャストするという単純明快なシステムと、《嵐の束縛/Stormbind》の存在が環境にあまた存在する青黒へのアンチテーゼとなっている。
そんな感じに序盤のマナ加速がアイデンティティなデックなのだが…先手Pageのファーストアクションは、4ターン目の《調和/Harmonize》という、アーキタイプ的にはかなり悠長なスタート。
このデックであれば、たとえば、1ターン目に《明日への探索》待機、2ターン目に《虹色のレンズ/Prismatic Lens》と順調にマナ加速をして、3ターン目に《幽体の魔力》を高速召喚。《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》で相手のマナの伸びを阻害しつつ2回アタックして、全力の《分解/Disintegrate》でゲームエンド…といったゲームプランを期待したいものだ。
そして、大礒はそんな期待にこたえたのだった。
大礒 -1 Page -0
Game 2
続くゲームもダブルマリガンからの1ランドキープと厳しい戦いを強いられるPage。
しかし、なんとか順調に土地をドロー。またも高速召喚される大礒の《幽体の魔力》ではあったが、《獣群の呼び声/Call of the Herd》の連打による3/3の群れで食い止める。
そして、《調和/Harmonize》を連打する、Page。一度は《幽体の魔力》にアタックされ、続いて8点の《分解》で一気にライフを削られたものの、次第にアドバンテージ分の優位を築き始める。
大礒の《なだれ乗り/Avalanche Riders》2連打で土地を破壊されたものの、《ケルドの後継者、ラーダ/Radha, Heir to Keld》によるマナ加速で、タップアウトしながら《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》をキャスト、大礒の《根の壁》をなぎ払い、次のターンには《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》で大礒のライフを一気に削りきれるところまで場の状況を逆転した。
しかし、Pageがタップアウトしたところで、大礒が手札から見せたカードは、2枚目の《分解》だった。
大礒 -2 Page -0
大礒に近況を聞いてみる。
――大学の寮に入ったとの事ですが、最近はマジックの方は?
大礒 「実は、昔マジックやっていたという人がいて、たまにやるんですよね」
――限定構築もですか?
大礒 「…僕は、ですね。相手にはよく《対抗呪文/Counterspell》とかうたれます」
なるほど、普段《対抗呪文》で鍛えられていれば、《取り消し/Cancel》もなんのその、ということか。