Round 14 : 森 勝洋(東京) vs. 青木 良輔(東京)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 26日

By Daisuke Kawasaki

世界王者、森 勝洋が最終戦に勝負駆ける

長かった日本選手権も遂に最終ラウンド。

どんなプレミアイベントでも、最終ラウンドのカバレッジの書き出しが同じなようで本当に申し訳ないのだが、やはり、14ラウンドというのは、本当に長い時間だ。

そして、この長い時間の中で、様々な、悲喜こもごも、個人的であったりコミュニティの期待を背負っていたり、多種多様で語り尽くせないほどの物語が紡がれてきた。本来なら、この様な文章は全てが終わった最終日、決勝戦の終了後に書かれるべきなのかもしれない。

だが、惜しくも決勝トーナメントへの進出を逃したプレイヤー達にも、それこそ、この最終ラウンドが始まる時点ですでに決勝トーナメント進出の可能性がなくなったプレイヤー達にも、語るべき物語がなかったわけではないということは忘れてはならないことである。

すべてのテーブルでは、それぞれの物語が紡がれている。

そのひとつひとつをここで挙げるようなことはしないし、この日本選手権の特集記事で取り上げられたものだけが物語なわけでもない。それぞれのプレイヤーが、自分自身の「日本選手権」という物語の主人公だったのであったということが重要なのである。

勝敗や結果は、そこの本質ではない。必要なのは本人たちの自身の誇りである。

最終ラウンドでもまた、多くの物語が紡がれる。

フィーチャリングエリアに座っているふたりのプレイヤー。

森 勝洋は勝つ事でトップ8入りを確定させる。また、青木 良輔も、勝利すると、決勝トーナメント入りを争う他のテーブルの結果次第でトップ8の可能性を残すという位置につけている。

やはり、マジックの本質は真剣勝負である。ここで、ふたりのプレイヤーはトップ8進出をかけた真剣勝負を行なうことを選択する。

ここで、デックチェックが入る。しばしの休憩。

そして、この時間に、同じくデックチェック中であり、また、決勝トーナメント進出をかけた対戦カードが新しく追加でフィーチャリングエリアへとよばれてくる。

その対戦カードは、浅原 晃vs. 清水 直樹。

浅原は、ここで勝利する事でTop 8入りを確定させる事になる。一方の清水は、決勝トーナメント入りをすでに計算上確定させているのではあるが、ここでの浅原の勝敗が他のテーブルの結果に大きく影響することを踏まえてか対戦することを選択した。

森と浅原が、ともに勝利条件でフィーチャリングエリアに並ぶ光景が、ある記憶を呼び起こす。それは昨年の世界選手権の最終ラウンド。

やはりここでも、浅原と森は勝てばTop 8入りとしてフィーチャリングエリアへと呼ばれたのだった。
世界の強豪たちが争う世界選手権のTop 8入りと、誤解を恐れずにあえて言えば、たかが日本という一国の選手権である日本選手権のTop 8入りを同列に扱うことはできないのかもしれない。

そう、世界選手権のTop 8と日本選手権のTop 8は決して同列に扱えるものではないのだ。

 「世界チャンピオンでも、やっぱり日本王者にはなりたいよね」
浅原 「やはり、日本代表という言葉には特別な響きがありますよね」

勝利が、結果が、意味を持つときだって当然ある。

日本代表という名誉は特別な意味を持つ。

Game 1

青木 良輔

青木のデックは、今大会でも注目のデックのひとつである蛇デック。
森のデックは鍛冶 友浩提供の青黒白コントロール。「ソーラーフレア」ではない。

青木は、《桜族の斥候/Sakura-Tribe Scout》《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》と展開し、マナをのばしつつ、《そう介の召喚術/Sosuke's Summons》によってクロックを大きくしていく。

森は、着実に土地をセットしつつ、《闇の腹心/Dark Confidant》キャストとマナ・手札ともに充足させていくが、しかし、青木のクロックの展開されるスピードの方が圧倒的に早い。

更なるクロックの加速を阻止するべく、青木の残りマナが2マナである事を確認してから《そう介の召喚術/Sosuke's Summons》に《差し戻し/Remand》をうつ森だったが、これに対して青木は、お帰りランドと《桜族の斥候》をうまく使ったギミックによって3マナを確保して再度キャストする事に成功する。

なんとか生き延びようとフルタップで《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》をキャストする森。

しかし、環境最強級の制圧力をもつ「青い悪魔」も、膨れ上がる緑の軍勢の前には無力であった。

青木 1-0 森

Game 2

ここで勢いにのって一気に勝利してしまいたい青木ではあるが、しかし配られた初手には土地がない。仕方なくマリガンした青木の次の初手は、《桜族の斥候/Sakura-Tribe Scout》《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》と揃ってはいるが肝心の緑マナがない。

手札にあるのは、1枚の《島/Island

青木は仕方なく、この手札をキープする。

そして、青木はこのまま5ターンに渡って土地を引かない。やっと《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》を置いてキャストした《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》にも《呪文嵌め/Spell Snare》。その間、森の《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》が青木をビートする。

だが、青木も2枚目の《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》からマナを回復させ、森の決定打となると思われた《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》も対消滅させることに成功。《翼膜のバイパー/Patagia Viper》をキャストし、次第と場の不利を挽回していく。

 「やばい、意外とがんばられてる」

しかし、森のこの言葉の後にキャストされた《曇り鏡のメロク》が、今度は青い悪魔の名に恥じない制圧力を見せたのだった。

青木 1-1 森

青木 「ダブルマリガンしたら絶対勝てないから無理してはじめたんだけどなぁ…」

Game 3

またしても、青木はマリガン。
そして、更なるマリガン。

先手は青木。

1ターン目《桜族の斥候/Sakura-Tribe Scout》、2ターン目《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》と一応形にはなっているスタート。

 「いいまわりじゃん」
青木 「手札は2枚でーす」

そして、今度は青木の《梅澤の十手》が驚異的な制圧力を発揮する。

森は《宮廷の軽騎兵》を場にだすが、《梅澤の十手》が邪魔で思うようにブロックができない。なんとか、対消滅用に《交錯の混乱/Muddle the Mixture》を変成し《梅澤の十手》を森は持ってくるのだが、先に5マナカードとしてキャストした《曇り鏡のメロク》は《差し戻し》されてしまう。まさしくクロック=パーミッション。

だが、形勢が一気に逆転したのは、その次のターン。

土地を置いた森がキャストしたのは、《相殺/Counterbalance》。これはスルーした青木。続く《梅澤の十手》には、《差し戻し/Remand》。ここで、《相殺/Counterbalance》で森がめくったライブラリーのトップは《交錯の混乱》。
続くターンに森が《曇り鏡のメロク》を満を持してキャストすると場の状況が一変する。

しかし、《梅澤の十手》のカウンターによってライフを回復している青木には、ライフ面のアドバンテージが残っている。森のビートを受けながらも、虎視眈々と森のライフを削る機会を狙っている。森もそれがわかっているから、大きな動きを展開できない。青木の場の《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》の上のカウンターがどうにも邪魔だ。

しかし、ここで一気に勝負を決めるカードが登場する。
森のデックのシークレットテック。

Orzhov Pontiff

《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff

登場時に、-1/-1の効果で青木の軍勢(といっても《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》のみだが)をなぎ払い、青木のターンエンドに《嘆きの井戸、未練/Miren, the Moaning Well》によって《曇り鏡のメロク》に憑依する。森の場には、4体のイリュージョントークン。

青木のライフは8。青木の《梅澤の十手》の上にのるカウンターは2個。

青木のターンエンドのうちに、さらに2体のトークンを追加した森は、アタック宣言後にブロックがないことを確認すると、《曇り鏡のメロク》を墓地に置いた。

青木 1-2 森

森は、勝利によって、「日本王者」という名誉への最初の関門を突破する。

Congratulations to Katsuhiro Mori !!
Advanced to Playoff

Akira Asahara

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Shimizu Naoki

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こうして、森が悲願の日本選手権Top8を決定した横のテーブル。
青木と浅原の対戦はGame 3の中盤に差しかかるところだった。

■The Last Game of the Day -Round 14 : 浅原 晃(神奈川) vs. 清水 直樹(東京)

浅原 晃

これまで、何度もこの席に呼ばれ続けた、清水 直樹。「ソーラーフレア」デヴェロッパーのひとりであり、間違いなく今大会注目のプレイヤーのひとりである。

対するは、浅原 晃。多くの珠玉のデックレシピを世に送り出した、関東を、いや日本を代表するデックビルダーのひとりである。

たくさんの観客が、「覇王仲間」である黒田 正城と藤田 憲一が見守る中、行なわれている

Game 3

場の状況を簡単に説明しよう。

まず、プレイマットの横には4枚の《不朽の理想/Enduring Ideal》が並んでいる。そして、清水の墓地には《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》が。そして、清水の場には《道化の王笏/Jester's Scepter》がでている。

しかし、浅原は2体の《宮廷の軽騎兵》で果敢なビートダウンを行なっている真っ最中であり、清水のライフは11まで減らされている。何度も《差し戻し》された3枚目の《宮廷の軽騎兵》が場にだされた返しに、清水が《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》を場にだしたところである。

エンドに《師範の占い独楽》の能力で積み込んだ浅原のドローは《押収/Confiscate》。《師範の占い独楽》を起動し、4枚目となる《宮廷の軽騎兵》を手札に入れると、キャスト。この能力で、手札に《師範の占い独楽》を取り戻し、キャスト…するが、ここには清水の《道化の王笏》が突き刺さる。

3体の《宮廷の軽騎兵》でアタックし、当然1体はブロックされて清水のライフは9。

この時の浅原の手札は、先ほどドローした《押収》と《鳩散らし/Dovescape》。浅原は熟考の末に、《鳩散らし/Dovescape》を場に。

続く、清水のターン。《夜の星、黒瘴》のアタックで、ショックランドを一度アンタップで場にだしている浅原のライフは13となる。そして「ソーラーフレア」の名の由来ともなっている《絶望の天使/Angel of Despair》が浅原の《鳩散らし/Dovescape》を破壊する。

ここで、時間切れ。エクストラターンに突入する。

■エクストラ第1ターン

浅原のドローは《徴用/Commandeer》。手札が2枚の状況でその真価を発揮するスペルではない。

浅原は、1体をブロックされつつも、2体のアタックを通し、清水のライフは7。
長考の末、フルタップ状態の清水の《夜の星、黒瘴》へと《押収/Confiscate》。

■エクストラ第2ターン

《絶望の天使》がアタックして、浅原のライフは8。

《強迫的な研究/Compulsive Research》で手札を充足させつつ、《押収》へと《屈辱/Mortify》。《夜の星、黒瘴》のコントロールを奪い返す。

ターンエンドに、浅原は《占術の岩床/Scrying Sheets》を起動。《冠雪の平地/Snow-Covered Plains》を手札に入れる。

■エクストラ第3ターン

浅原のドローは《押収》。《冠雪の平地》をセットして浅原の使用できるマナは13。一方の清水の使用できるマナは3マナ。

《夜の星、黒瘴》はタップ状態のままコントロールが移動しているので、清水の場にはブロッカーがなく、2体の《宮廷の軽騎兵》が清水にダメージを与える。清水のライフは5。
そして、浅原は2枚残る手札のうちの1枚を使い《夜の星、黒瘴》を再び《押収》しようと試みる。しかし、清水がフルタップしてキャストしたスペルは、自身の《夜の星、黒瘴》を対象とした《屈辱/Mortify》。

このプレイが成立すると、《夜の星、黒瘴》が墓地に置かれる効果で浅原のライフが、次の《絶望の天使》のアタックでの致死圏内である3となり、一方の清水のライフは、安全圏である10へと大幅に回復してしまう。

清水 「…勝ったかな」

ここで浅原が、残りの7マナをタップしてキャストしたスペルは、エクストラ第1ターンにドローしていたスペルは、すでに書き記していると思う。

ラマチックなスタック

《徴用/Commandeer

清水 「まさかそんなカードが…」
浅原 「これでもスタンのデッキなんだよ」

これにより、浅原は無事《夜の星、黒瘴》を《押収》することに成功し、コントロールを奪われた《屈辱/Mortify》は、清水自身の《絶望の天使》を破壊する。

■エクストラ第4ターン

清水は、《地底街の手中/Clutch of the Undercity》を、《夜の星、黒瘴》に対してキャスト。手痛い3ライフルーズによってライフを2とする清水だが、フルタップで《夜の星、黒瘴》をキャスト。またも自身へとコントロールを戻すことに成功する。アンタップ状態で。

浅原の場のクロックは、《宮廷の軽騎兵》2体。1点足りない。

■エクストラ第5ターン

浅原のドローは《師範の占い独楽》

キャストからの能力起動でめくった3枚のライブラリーは

《冠雪の島/Snow-Covered Island
《冠雪の島/Snow-Covered Island
《冠雪の島/Snow-Covered Island

浅原は、場に2枚ある《占術の岩床/Scrying Sheets》を起動し、手札に2枚《冠雪の島》を加えるとともに、ライブラリーのトップを2枚リフレッシュする。

そして、起動される《師範の占い独楽》

浅原が新しく見た2枚のカードは《冠雪の平地》と《ボリアルの氷棚/Boreal Shelf》。

繰り返すようだが、清水はすでにTop8進出を確定させており、一方の浅原は、このマッチの勝利がTop 8入りと同義である。

浅原は、ターンのエンドを宣言すると、土地を片付けた。

浅原 1-1-1 清水
Draw Game

Congratulations to Naoki Shimizu !!
Advanced to Playoff

マジックとは真剣勝負によって行なわれるべきである。
そして、だからこそそこには多くの物語が紡がれていく。

浅原にとって重要だったのは、勝利でも名誉でもなかった。

重要だったのは自身の誇り。

Aoki Ryosuke

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Mori Katsuhiro

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