
Legend対決だ。
昨年度の殿堂入りであるRaphael Levy(ラファエル・レヴィー/スウェーデン)と、日本のLegendにして、今年の殿堂入りが有力視されている藤田 剛史(大阪)の対戦だ。2人に共通しているのは、他の殿堂入りプレイヤーと違い、10年以上前から第一線で「戦い続けている」ところにある。
その、マジックを知り抜いた2人がたどり着いた先にあったのは、「単色」だった。このプロツアー横浜において、「単色 vs. 単色」の最たるものと言えるだろう。戦前に「2色は事故る」というテーマに基づいてインタビューに答えてくれた藤田は、その理論をもって青単色に突き進み、さながら「フィッシュ」のように綺麗なマナカーブを展開する、クロックパーミッション然としたデッキを仕上げた。
一方で、Levyは赤単色のビートダウンへと向かった。今年のエクステンデッド構築戦では、Domain Zoo(ドメイン・ズー)と呼ばれる準5色のビートダウンを完成させ、《ガイアの力/Gaea's Might》《ボロスの速太刀/Boros Swiftblade》を一躍エクステンデッドのトップカードに押し上げた張本人である。そのLevyが行き着いたビートダウンこそが、この赤単なのである。
フィッシュとスライ(赤単ビートダウン)の対戦といえば、有利なのはスライだ。しかし、火力をはね返す《意志を曲げる者/Willbender》が、その有利を覆す使者となるのが藤田のデッキ。その攻防から、一瞬たりとも目が離せない。
Game 1
Levyが、《巻物の大魔術師/Magus of the Scroll》《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》と軽快に展開し、藤田が《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》と《祖先の幻視/Ancestral Vision》待機をしつつ、《砂漠/Desert》を構える。
《ケルドの匪賊》がダメージを吐き出しつつ息絶えると、カウンターされない《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》が後続として現れる。藤田にとって、我慢の時間帯が続く。
やっと《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》の待機が明け、《巻物の大魔術師》をバウンス。その《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を狙った《裂け目の稲妻/Rift Bolt》は《応じ返し/Snapback》でかわし、必死の応戦を見せる藤田。
Levyは、再び《巻物の大魔術師》を呼び出し、さらに《血騎士/Blood Knight》も追加。再度プレイした《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》も《癇しゃく/Fiery Temper》であっという間に除去され、《祖先の幻視/Ancestral Vision》の待機が明けた頃には大勢は決していた。
ドローがほとんど《島/Island》では、さすがの藤田もどうにも出来なかった。
藤田 -0 Levy -1
Game 2

《ケルドの匪賊》連打からゲームを組み立てるLevy。1体は通すが、もう1体には《取り消し/Cancel》で登場を許さず。その後のLevyはと言うと、2枚の《鋸刃の矢/Serrated Arrows》を出すばかりでダメージソースの調達は無し。こうなると、《脅しつけ/Threaten》の脅迫にも冷静に応じられるというもの。5点のライフを支払ってボーナスドローを許さず、《血騎士/Blood Knight》は《砂漠/Desert》で捌く。
ところが、この《鋸刃の矢》こそが、藤田にとって最大のガンとなる。
藤田の手札には《意志を曲げる者》が2枚と《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》がいるが、出せずにいる間に《癇しゃく/Fiery Temper》が藤田を襲う。続けて《ケルドの匪賊》を呼び出されようとすると、たまらず《陰鬱な失敗/Dismal Failure》を唱えるも、マッドネスの《癇しゃく》、そして《突然のショック/Sudden Shock》が藤田の残ライフ5をきっちり削り取った。
直接のダメージ源ではないがゆえ、無害に見えた《鋸刃の矢》。だが、これこそが残った手札をフリーパスとするための布石だった。ビートダウンを操っての2大会連続のGP優勝は伊達ではない。ダメージ効率を最大限発揮する一連のプレイングは、20点のライフを奪うのに完璧な仕事だったのだ。
藤田、痛恨の4敗目。日本勢は完全に後が無くなった。
藤田 -0 Levy -2