
タレントぞろいの、8番卓、どこをとってもフィーチャリングマッチになるんじゃないかと思われるこの卓から、ラウンド4はこの対戦をフィーチャリング。
まずは、「やる気のイデア」志村 一郎。
初戦でフィーチャーした大礒と共に、昨年の日本代表のひとりである志村は、時には自身が勝ち頭として、時にはチームドラフトの調整役として、裏に表にと八面六臂の大活躍を見せた。日本代表チームの一番の立役者は志村だったという意見も少なくはない。
そんな志村にデックの出来をたずねてみた。
志村 「そこそこ強いと思いますよ。」
そういう、志村の並べるカードを見ると、青赤白の主要なパーツが揃っている。少々クリーチャーの数が足りないようには見えるが…
志村 「そうですね。でも、マナカーブが前のめりによってるんで、序盤一気に展開して、これ(《正義の再興/Rally the Righteous》)で一気に勝負を決めるプランもたてられますし。」
と、なんとも志村らしい、やる気あふれるコメントを貰った。
小室 「デッキは、上中下でいえば、下。ぎりぎり中に届かない下。」
一方の「華麗なる天才」小室 修。コメントは力強いが、内容は心もとない。
どうやら、カードの流れに翻弄されて、なんとかデックになるカードをかき集めるのに精一杯だったようだ。小室の予想では、自分の下にいる「不遇の王者」大澤、「雪使い」中村といった、二大リミテッダーもこの流れに翻弄されているのではないかという。
しかし、この卓のドラフトをおっていたライターの吉川によれば、卓でも1・2を争う強力デックではないかという事であるし、筆者の目にもそれなり以上には強いデックに見える。GP広島の時もそうだったが、小室には、自分を高く、デックを低く評価する傾向があるのかもしれない。
小室 「イデアをたおしますよ(キッパリ)」
そう、こんなあたりが。
Game 1
ダイスロールで小室が華麗に1をだし、先攻は志村。
しかし、ここで志村が痛恨のダブルマリガン。2回目など、土地がまったくなく、選択の余地もなかったほどだ。
小室 「そういえば、この前のラウンドでルー君(有留)に、トリプルマリガンさせるって宣言させて有言実行しましたよ。」
して、華麗に勝利?
小室 「いや、負けました。」
小室の底は深すぎる。
さて、ゲームに話題を戻そう。
ダブルマリガンという痛恨のスタートだったものの、2・3ターン目と続けて《アゾリウスの一番翼/Azorius First-Wing》を展開するという快調な立ち上がり。マナも3色全て揃っている。
しかし、《シミックの印鑑/Simic Signet》を展開したりと、地味にマナベースをのばしていた小室が華麗なる《腹わた抜き/Disembowel》から、一気に形勢を逆転させるべく展開する。
《ゴルガリのギルド魔道士/Golgari Guildmage》を展開しつつ、志村の《空乗りの見習い/Skyrider Trainee》を《棄却/Overrule》し、後続の展開を許さない。そして、《ギルドパクトの守護者/Guardian of the Guildpact》をキャストし、盤面上のクロックで華麗に逆転する。
一方の志村は、小室の場に飛行が出てこない為、《アゾリウスの一番翼》による2点クロックは維持できているものの、続いて《サディストの穴開け魔道士/Sadistic Augermage》が小室の軍勢に加わり、一気にクロックが膨れ上がったことで、さすがに我慢ができなくなってきた。《正義の再興/Rally the Righteous》で《アゾリウスの一番翼》をアンタップし《ギルドパクトの守護者》への致死ダメージを与えつつ《現実からの剥離/Peel from Reality》によって手札に戻し、自身のクリーチャーを守りつつ、《サディストの穴開け魔道士》を手札に戻し、小室の攻勢を少しでも緩めようとする。
しかし、焼け石に水、天才に時間稼ぎ。小室の華麗なる軍勢は留まるところを知らない。
《空の軽騎兵/Sky Hussar》のサイズも、小室の場に登場した《妨害の公使/Minister of Impediments》の前には多勢に無勢であった。
小室 1-0 志村
Game 2

先攻の志村の初手は、3枚と十分な土地があるものの、その全てが《島/Island》であり、青いスペルはゼロと、後の展開に不安が残る構成。しかし、Game 1を、マリガン分の枚数差で落とした事が頭をかすめたのか、この初手をキープ。序盤の爆発力がキーとなるデックだけに、この選択が吉とでるか凶と出るか。
小室は華麗にマリガン。
そして、不安は的中する。
志村は《島》を3ターン連続でセットするものの、続く土地を引けず。それを尻目に小室は、《ゴルガリのギルド魔道士》《ディミーアの浸透者/Dimir Infiltrator》《ギルドパクトの守護者》と華麗に展開、華麗にビートダウン。
しかし、志村も1ターンセットランドがとまった後に、待望の《平地/Plains》を引き当て、《自由風の乗馬兵/Freewind Equenaut》《アゾリウスの一番翼》を連続キャスト、そしてビートダウンと、意地とやる気をみせる。
そして、《空の軽騎兵》をキャスト、なんとか場を五分近くまで持ち直した…かに見えたが、ここでまたも小室の華麗な《腹わた抜き》が突き刺さる。
志村の手札には《正義の再興》《稲妻のらせん/Lightning Helix》とあり、赤マナさえ引ければいつでも形勢を逆転できる用意はあるのだが、しかし、《山/Mountain》へと志村の、イチローのやる気が届かない。
小室の二度にわたるフルアタックにより、志村のライフは4。だが、志村の手札にはまだ、《稲妻のらせん/Lightning Helix》がある。ここで《山》さえ引ければ、非常に薄い目ではあるが、まだ逆転の目もある。
実はこのターン、志村には本来回ってこなかったかもしれないターンなのだ。
小室の手札には《盲目の狩人/Blind Hunter》と《照らす光/Bathe in Light》があり、小室の場のクリーチャーは全て白と黒、志村のクリーチャーは白のクリーチャーだけであった。つまり、《盲目の狩人》をキャストし、そこへ《照らす光》をプロテクション:白指定でキャストすれば、そのドレイン効果も含めて、志村のライフを削りきっていたのだ。
もちろん、リアクションやカウンターによって、すでに磐石であった自分の場を崩壊される事をおそれて、安定したアタックと、ブロック割り振り後に自分に有利になる形で《照らす光》を使用した小室のプレイングが間違いであったとは一概には言いきれない。
しかし、華麗にライフを削りきられていた可能性があったことは事実であり、ここで志村は1ターンの猶予という神から気まぐれの贈り物を受け取ったのだ。
そして、志村は、力と祈りを込めてドローする。
しかし、文字通り、天に選ばれる才をもったのは、小室であった。
小室 2-0 志村