
Round 2に続いてのフィーチャーマッチとなった清水。先ほどは「ソーラーフレア」絡みのでのフィーチャーだったのだが、このラウンドでは堂々の全勝対決としてお届けする。
夏の甲子園、高校野球選手権で見事に優勝を遂げた、早稲田実業。そのエース齋藤にあやかって持ち込んだ「青の汗拭き」が、ここまで見事なお守りとして機能しているのだそうだ。
Round 4の三津家の話でも出てきたが、清水の主な調整の場も、もっぱらこのMOだと言う。横浜で開催されているPWCや、学校のある時に立ち寄る池袋のショップでの調整が、"リアルマジック"に触れる事の出来る貴重な場という話だ。その中で、スタンダード・リミテッド、双方で結果を残してこのテーブルにいる。"Rising Star"の素質充分だ。
一方、その池袋のコミュニティでは知らない者はいない、というプレイヤーが、同じテーブルに座っている。
久保田 健太という名前に聞き覚えは無くとも、「組長」ないし「トントロ」という名に聞き覚えのあるプレイヤーはいる事だろう。"Legend"藤田 憲一以外に、「組長」の二つ名を冠する事を許されたキャラクターであり、2005年GP大阪でもプレイヤーとして活躍をしていた。
言わば、2人ともが「世界基準になりつつある草の根トーナメントプレイヤー」のコミュニティの中心にいる人物であり、それは、ここまでの成績が説得力を持っているのではないだろうか。
昨年、筆者は「関東の第3世代代表」というテーマで、準優勝した彌永 淳也(東京)を準々決勝でフィーチャーしたが、今年はコミュニティ全体にスポットライトが当たっている印象がある。それほどまでに、彼らのパフォーマンスは今、注目を集めているという事だ。
Game 1
久保田が《ディミーアのギルド魔道士/Dimir Guildmage》プレイから、アタックを通して《血鱗のうろつく者/Bloodscale Prowler》を「狂喜」と最高の立ち上がり。これに対して、清水は《不眠の晒し台/Pillory of the Sleepless》を《血鱗のうろつく者》にエンチャントし、《ディミーアのギルド魔道士》には《破壊の宴/Wrecking Ball》。さすがに全勝卓。共にカードパワーが高いデッキをドラフト出来ているようだ。
久保田は続けて《妨害の公使/Minister of Impediments》を送り込むが、清水がプレイしたのは《ギルドパクトの敵/Enemy of the Guildpact》。久保田は考え込んだ末に、《浄化の光線/Cleansing Beam》を打ち込み、《妨害の公使》で攻撃開始。清水は、《幻の漂い/Drift of Phantasms》変成から《ラクドスの痰吐き/Rakdos Ickspitter》を取り出し、即プレイ。
タダで除去されるわけにはいかない久保田は、《屍術師の魔法印/Necromancer's Magemark》をエンチャントして対抗し、清水は《死の円舞曲/Macabre Waltz》で《幻の漂い》《ギルドパクトの敵》を回収してアドバンテージを掴む。
しかし、それもつかの間。久保田が《屍賢者の助言/Consult the Necrosages》をディスカードモードで撃つと、清水のハンドが空に。これで久保田が優位に立つかと思ったが、土地しか引き込めていないのか、渋い表情のまま久保田に動きは無し。逆に清水がトップデッキした《思考訓練/Train of Thought》をX=3でキャストする事で、《悪魔の道化師/Demon's Jester》《青銅の爆弾人形/Bronze Bombshell》とクリーチャーを連打。
先程から感じているのだが、この2人の間には、ほとんど空白のターンというモノが存在しない。
手札がタフネス1で溢れていた久保田は、まず《最後の喘ぎ/Last Gasp》で《ラクドスの痰吐き》を除去し、2枚目の《妨害の公使》、そして《屋根伝いのワイト/Roofstalker Wight》をプレイして清水に抗する。じわりじわりと《不眠の晒し台》が、この激しいやり取りの間にも久保田のライフを奪っていく。久保田に残された時間は少ない。
《青銅の爆弾人形》に《感電の弧炎/Galvanic Arc》をエンチャントし、《屋根伝いのワイト》を除去。これで清水が場を制圧したかに見えたが、今度は久保田が《病に倒れたルサルカ/Plagued Rusalka》を召喚。《不眠の晒し台》ごと《血鱗のうろつく者》を《青銅の爆弾人形》に投げつけ、しかも《屍術師の魔法印》の効果で回収。またしても場が反対に傾いた。
だが、今度は清水が久保田の残ライフ4を削り取るであろう、《槌拳の巨人/Hammerfist Giant》プレイ。さすがにこれでシーソーゲームの勝負が決まったかと思ったが、久保田は場を凝視した上で、諦めずに場の4体のクリーチャー全てを《病に倒れたルサルカ》の能力で《槌拳の巨人》に放り投げて除去。再び《屍術師の魔法印》の効果で回収した《妨害の公使》を再召喚し、清水のアタックで残りライフは1。
何も無ければ清水の勝利だが……まだドラマは待っていた! 久保田が豪快に《隆盛+下落/Rise+Fall》を叩き付けると、鋭い視線で清水へ問いかける。《悪魔の道化師》を清水のハンドへ返しつつ、自らの《ディミーアのギルド魔道士》を墓地から回収。ズラリと並ぶ土地からディスカードを強要し、最後まで、戦う男の姿勢を全面に押し出す。
だが、《オーガの学者/Ogre Savant》を前に、ついに久保田はその膝をついたのだった。
清水 1-0 久保田
Game 2

《屋根伝いのワイト》《羽虫小路の忍び寄る者/Gnat Alley Creeper》でビートダウンする久保田。清水は青マナが無くて一瞬手が止まるが、4ターン目には無事に《島/Island》を引き当てて事なきを得て、《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》《小柄な竜装者/Wee Dragonauts》と召喚して、アタッカーのことごとくがタフネス1の久保田に、パワー1の《宮廷の軽騎兵》が斬りかかる。
続けて清水が《ラクドスの痰吐き》をプレイすると、久保田は軽く清水の様子をうかがいながら《羽虫小路の忍び寄る者》で攻撃。《宮廷の軽騎兵》でブロックされると、スタック後に自らの《羽虫小路の忍び寄る者》を対象に《浄化の光線》。無理矢理だが、除去しないと仕方ない《ラクドスの痰吐き》をこれで排除する。
軒並みタフネスの高い清水の攻撃陣だが、パワーが高いのは久保田。戦闘に持ち込むと、一気に場がキレイになった。
ところが、青マナが引けていない久保田は、ついさっき清水に引導を渡された《オーガの学者》を「普通の」5マナ3/2クリーチャーとして呼ばざるを得ず、手札は真っ青という状態。どうにもならない状況に、笑みすら浮かべる久保田。そこに降臨するのは《槌拳の巨人》。ニューカマー同士の対決第1ラウンドは、清水が制して見せた。
…もちろん、今日の戦績次第では、明日以降もマッチアップの機会は残されている。彼らを再びフィーチャーエリアで見ることがあれば、彼らの初日がフロックではなく、実力である事の何よりの証明となるだろう。
そして、ゲームが終わればノーサイド。彼らの仲間が次々とフィーチャーエリアを取り囲み、その中には先日のGP広島でTOP8入賞を果たした鈴木 貴大(東京)や野中 健太郎(大阪)の姿もあった。結果を残しながら成長し続ける若手プレイヤーの代表格として、彼らは確かな地位を築きつつある。この後も、彼らの動きを目で追って行く事だろう。
彼らだけではない。
Round 6終了時のスタンディングではあるが、上位には、地元で腕を磨いてきたと思しき、隠れた強豪達が多数見受けられた。可能性のある全員が、虎視眈々と日本代表の椅子を狙っているのだ。
清水 2-0 久保田
Final Result:清水 Wins!