
このラウンドは、オランダ勢同士の対戦に注目した。今回はプロツアーだけあって海外勢同士のマッチアップを取る機会が多いのだが、日本にまつわるエピソードには事欠かない。
Frank Karsten(フランク・カースティン)は、2005年世界選手権、会場は同じパシフィコ横浜で、森 勝洋と世界王者をかけて死闘を繰り広げた相手。と、言えばお茶の間の皆様にも一発でご理解頂けるのではないかと思う。また、プロツアーサンデーのキャリアとしては同年のプロツアー名古屋がそれにあたり、日本では抜群の成績を残している。先ほどの有田 隆一とは真逆を行っているのだ。
また、Web上でも、magicthegathering.com内においてマジックオンラインに関するコラムを執筆しており、その分析力とデジタルなデータに裏打ちされた、メタゲームというメタゲームを網羅した記事を毎週提供しているということで、世界的に高い評価を受けている。その彼が選択したデッキが、環境に対して回答にならないはずも無く、こうしてフィーチャーエリアでスポットライトを浴びているわけだ。
デッキは青黒のコントロール。赤をスプラッシュして《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》につなげる構成になっている。デッキそのものはオーソドックスだが、《疫病スリヴァー/Plague Sliver》という《カルシダーム/Calciderm》にも対抗出来る強力なクロックが常備されており、絶対数の違いはあるがスリヴァーを機軸とするデッキにも高い効果を発揮する、いい事ずくめの、まさにソリューション候補とも言えるべきカードを見事にフィーチャーしている。
Rogier Maaten(ロジャー・マーティン)もまた、2005-2006シーズンのGPで3度のトップ8に輝くなど、PTの常連として活躍している。日本・ポルトガル・フランスなどと並んで「強国」といわれるオランダのマジックをこのラウンドでは体感して頂ければと思う。Maatenのデッキも同じ青黒+赤だ。
余談になるが、白ウィニーが駆逐され始めた初日終盤、上位陣のマッチアップはこのテーブルと同じように「アンチ白」であるコントロールデッキが占め始めている。どれだけ同系デッキを意識した作り込みをしているかが、勝負の分かれ目となる。
Game 1
Maatenがテイクマリガンからスタート。《虹色のレンズ/Prismatic Lens》を置いたKarstenに対して、Maatenが《虚空/Void》。しかし、宣言は《レンズ》を対象とした「2」では無く「5」。これを空振りするも、Karstenの手札に脅威が無いことを確認すると、失ったアドバンテージを取り戻すべく《呆然/Stupor》をプレイ。
《沼/Swamp》と《突然の死/Sudden Death》が捨てられることになり、ここで息切れを起こしたMaatenも待機モードに。互いにマナベースの確保に努める時間帯になる。
しかしKarstenがコントロールしている土地に《ウルザの工廠/Urza's Factory》が含まれていたことで、Maatenに与えられた時間に大きな制限が出来た。《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》をコントロールしているMaatenだが、なかなかアタックに行けない状態になる。
痺れを切らしたMaatenは、引き当てた《ボガーダンのヘルカイト》でトークンを排除するが、《突然の死》2連発であっという間に墓地送りとなり、再び生み出されるトークンに《堕落の触手/Tendrils of Corruption》を撃ち込まざるを得ない状況。
これを打破すべく、Maatenは《永劫の年代史家/Aeon Chronicler》を待機(X=5)させるが、返しにKarstenが繰り出したのは《ボガーダンのヘルカイト》!
《永劫の年代史家》がMaatenへドローを与える。再び《虚空》をプレイし、今度の宣言は「4」。Karstenの手札から《堕落の触手》を叩き落し、みんなまとめて《滅び/Damnation》。それでも《ウルザの工廠》2枚をコントロールするKarstenは、次々とトークンを生み出し、残り少ないMaatenのライフを削り取りにかかる。
Maatenは果敢に《ファイレクシアのトーテム像》で攻め、先ほどの《虚空》でKarstenのハンドに見えた《虚空》を「3」で使わせて、《永劫の年代史家》のドローでどんどん手札を回復させていく。
《虚空》は使わせた。待機の明けた《永劫の年代史家》が、充分なカードをMaatenに与えた上で、満を持して登場。無人の荒野を走り始めた。引き当てた《滅び》で対応するKarstenだったが、もう防御の策は《ウルザの工廠》のみとなってしまった。この機を逃さず、Maatenはトークンと《ファイレクシアのトーテム像》で攻めに攻める。
序盤の《堕落の触手》のおかげで、幸いにもライフには余裕のあるKarsten。ここでも、引き当てた《永劫の年代史家》がKarstenに再び活力を与える。しかし、Maatenも《堕落の触手》《虚空》でトークンや《滅び》を退けると、トークンを量産して少しずつライフを削り始める。
二転三転するゲーム。《疫病スリヴァー》で地上を固め、2枚目の《永劫の年代史家》を待機させたKarsten。盤上の味方の数が違いすぎるMaatenは、結局「浅い眠りの」《永劫の年代史家》を待機させるしか手が無くなり、逆に「深い眠りから覚めた」Karstenの《永劫の年代史家》が猛反撃を開始。長い第1ゲームの最終盤に、ついにKarstenが圧倒的優位に立った。
……「地上戦」においては。
Maatenが、《ボガーダンのヘルカイト》を引き当てるまでは。
Karsten -0 Maaten -1
Game 2
Karstenが手札破壊攻勢に打って出た。
まずは《精神攪乱/Mindstab》を待機。3ターン目に《呆然/Stupor》。《疫病スリヴァー》をプレイしてクロックを作ろうと必死のMaatenに、これまたすぐに《虚空》(X=4)。しかも、手札に残った1枚も《疫病スリヴァー》で、まるごと墓場行きになり、Maatenのリソースは5ターン目にして《ファイレクシアのトーテム像》を残して全滅してしまった。
しかも、Karstenの次の手は《ボガーダンのヘルカイト》。完璧。
Karsten -1 Maaten -1
Game 3

マナを並べあう展開から、Kartenが《精神攪乱》を、Maatenが《永劫の年代史家》をそれぞれ待機。Karstenの《虚空》が空振りに終わると、待機の明けた《永劫の年代史家》と共に、《疫病スリヴァー》をプレイ。これは2発目の《虚空》で手札のもう1枚と共に失うが、《永劫の年代史家》は残った。
これにKarstenは《堕落の触手》を浴びせ、Maatenは《呆然》を叩き込み、Karstenの《精神攪乱》の待機が明けるという、書いてる手も追いつかないほどの大激戦。その結果、互いのリソースは底を付き、「第1ゲーム同様」《ウルザの工廠》がにらみ合う展開になった。
そして、終わりも第1ゲーム同様……つまり、勝負を決めたのは、またしてもMaatenがトップデッキした《ボガーダンのヘルカイト》!
Karsten -1 Maaten -2