Round 8: Oliver Oks(東京) vs. 中村 修平(大阪)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 25日

By Daisuke Kawasaki

Oliver Oks

熱戦繰り広げられる日本選手権の2日目が始まった。

上位陣の熱い戦いもいいが、ここでは4勝3敗のトップ8の可能性をギリギリ残すラインで繰り広げられる、1敗をめぐるサドンデスな熱い戦いをお送りしよう。

Oliver Oksは日本在住の英会話教師、国内のプレミアイベントではよく姿を見かける顔で、彼を見たことがあるプレイヤーも少なくないと思う。日本選手権は、日本国籍をもったプレイヤーの大会というわけでなく、日本に在住しているプレイヤーを対象にした選手権であるため、Oliverにも出場資格が与えられているというわけだ。

さて、そんなOliver、基本的に日本語は話せないため、日本語版のカードで行なわれるドラフトに四苦八苦していた様子。聞くと、コールドスナップの練習はMO(Magic Online)中心で本物のカードでドラフトをするのは初めてとのこと。確かに、言語が読めず、絵も覚えていない状況でのドラフトは相当苦戦した事だろう。そんななかでOliverは青黒のかなりまとまったデックを作り上げており、しっかりとした実力の持ち主であることが伺える。なお、Oliverのデックには、ある特殊なギミックが仕込まれているのだが、それはまた後ほど。

そんなOliverに対するのは、ご存知GP広島チャンピオン、「スノーマスター」中村 修平である。「途中、余裕無くしたのが失敗でしたね」と語るものの、タッパー中心の青白デックをまとめ上げているのはさすがの一言。中村とOliverの6番卓はかなり波乱に満ちたテーブルだったようで、もっともデックをまとめ上げてきたふたりのたたかいとも言えるだろう。

このラインは、前述したように、トップ8入賞には1敗すら許されないライン。そして、このラインに中村がいるということにある種の既視感を覚えてしまうのも仕方がないだろう。そう、中村といえばGP広島で2日目への足切りラインギリギリの64位から、コールドスナップドラフトで全勝し、GPセントルイス含めてプレミアイベントでのコールドスナップドラフト不敗神話を築きつつの優勝、まさに「スノーマスター」としての伝説を築きあげたばかりなのだ。

中村 「日本選手権にはスタンダードもあるんですよ!」

とはいうものの、中村はコールドスナップ全勝記録を更新、そのまま逆転伝説再びとなるのだろうか。それとも、日本人には阻止できなかった中村の伝説にOliverが終止符をうつのだろうか。

Game 1

スノーマスター中村 修平

先攻は中村。ノってる男のダイスロールは6ゾロの12。

2ターン目に、2/2クリーチャーとして《キイェルドーの先導/Kjeldoran Outrider》をキャストする順当な立ち上がり。返しのターンでOliverがキャストしたクリーチャーは《クロヴの霧/Krovikan Mist》。

この《クロヴの霧/Krovikan Mist》というクリーチャー、もしかしたら馴染みが無い方もいるかもしれないので簡単に補足説明をしておくと、場にいる「イリュージョン」の数だけのパワーとタフネスを持つという2マナの飛行クリーチャーである。当然自身も「イリュージョン」であり、誤解を恐れずにいってしまえば、場に出ている《クロヴの霧》の数だけ大きくなるクリーチャーなわけだ。

ということは?

そう、3ターン目にOliverがキャストしたクリーチャーも、《クロヴの霧》。《うねる歩哨/Surging Sentinels》に代表される固め取り戦術が有名であり、代名詞であるコールドスナップ環境であるが、そんな中で、「パックからでさえすれば最強デックの一角」と言われているのが、この《クロヴの霧》固め取りデックである。3/3飛行ですら圧倒的な制圧力をもつリミテッド環境において、それが3体並ぶ状況など、対戦相手からすれば悪夢であろう。もちろん、「パックからでれば」なのではあるが。

そして、そんな悪夢が、今、中村の前で現実となった。

続いて4ターン目に3体目の《クロヴの霧》。3/3飛行クリーチャーが3体。一方の中村の場には《キイェルドーの先導》2体と、《見えざる者の生き残り》。比べ物にならないどころか、飛行クリーチャーには手も出せない、太刀打ちできない。

さいわい、Oliverは、2マナを残しつつ終了したので、恐らく地獄の4体目は持っていないと思われる(当然《ルーンのほつれ/Rune Snag》を抱えている場合もある)が、仮に、次のターンのOliverのドローが《クロヴの霧》であった場合、12点しかない中村のライフは一瞬で削られてしまう。

手札の《ヨツンの梟匠/Jotun Owl Keeper》を展開したい中村ではあったが、その最悪のシナリオに対処する為に、そしてそうでなくてもできるだけライフを守るためにマナを残してターンを終了する。中村の手札には《うねる霊気/Surging Ather》があるのだ。

Oliverのターン。Oliverは《ゾンビの犬ぞり乗り/Zombie Musher》をキャストしたのち3体の《クロヴの霧》でのアタックを宣言する。最悪の事態は回避されたようで、予定調和的に中村はそのうちの1体を《うねる霊気》で手札に戻すことにする。Oliverがこのターンにマナを使いきってくれているので、このターンに再召喚される心配は無い。

中村は《うねる霊気》のキャストを宣言する。

そして、長考。

考え抜いた結果、中村は「波及」を宣言する。Oliverは不安げに中村のライブラリーのトップに注目する。仮にここで2枚の《うねる霊気》がでてくると、場の状況は一気に中村優位に変わってしまうのだ。そして、そんな事が頻繁に起こりうるのがコールドスナップドラフトという環境である。中村がライブラリーのトップをめくる。1・2・3・4枚…その中に《うねる霊気/Surging Ather》は無い。

安心したOliverは深く息を吐き、中村にターンを返す。

次のターンに、飛行クリーチャーにライフを削りきられてしまう中村。長考に長考を重ねた結果…なにもせずにターンを返す。あまりにも不審な動き。

ただ、アタックを宣言すれば勝利するはずのOliver。だが、ここでOliverも長考。勝ちが目前の状態で勝ちを急いだ結果、逆転されるのはマジックではよくある話。中村の手札にはまだ《うねる霊気》はあるのか…そして、あるのなら、デックには何枚入っているのか?

しかし、考えても仕方ないものは仕方ない。

意を決したOliverがアタックを宣言。

そこで中村が取った行動は。

Oliver 1-0 中村

ここで、デックチェックが入る。

Oliverが席をはずした隙に中村に聞いてみた。《うねる霊気》はデックに何枚入ってるのかと。

中村 「1枚に決まってるじゃないですか」

この時、筆者は、中村がトーナメントシーンに登場してきた頃に呼ばれていたあだ名を思い出す。

「しゃみしゅー」

三味線のなかしゅー、そう、中村といえばブラフキャラ。Oliverが悪夢を現実にしたのであれば、中村は現実ではない虚構を現実に見せかけようとしたのである。

Game 2

中村 「正直、あれに対処できるカードは(デックには)無いですよ」

とサイドボーディング中に語った中村のオープニングハンドには《太陽の一掃/Sunscour》。中村のブラフは筆者にまでむけられる。

2ターン目には《クロヴの霧》をキャストすることはできなかったOliverだったが、3ターン目に《霜の猛禽/Frost Raptor》同士を相打たせたターンを挟んで、《恐怖症の幻/Phobian Phantasm》をキャスト。ちなみにこのクリーチャーもイリュージョンである。

中村も、2体の《白き盾の十字軍/White Shield Crusader》でビートダウンをはじめるなど、順当な滑り出しではあったが、土地が3枚でストップしてしまい、《白き盾の十字軍》のうちの1体は《凍結/Frozen Solid》されてしまう。仕方なく、ドローを進めるために《見えざる者の生き残り》を。

そして、遂に悪夢のスタート。《クロヴの霧》が1体・2体と場に現れる。

ここで、さらに長考の中村。待望の4枚目の土地は《見えざる者の生き残り》で引き当てたものの、場の状況は圧倒的に不利。もちろん、不利を帳消しにできる《太陽の一掃》が手札にあるが、まだ、もう1回はアタックを耐えられるだけのライフもある。そして不審な1枚のカードがOliverの手札には。

最終的に、中村は、この有利な状況でさらに展開はしてこないだろうと判断し、《太陽の一掃》をダブルピッチし、場をまっさらにした上で、《霧氷風の特務魔道士/Rimewind Taskmage》をキャスト。

だが、Oliverの最後の手札は、中村のデックの天敵と言える《テヴェシュ・ザットの信奉者/Disciple of Tevesh Szat》。そして、次のOliverのドローが、パワーアタッカー《虚空の大口/Void Maw》。万事休す。誰もが中村の負けを確信した。

だが、中村は続いて、5枚目の土地として3枚目の冠雪地形である《冠雪の平地/Snow-Covered Plains》をドロー。こちらもアタッカーとして《アダーカーの風精/Adarkar Windform》をキャスト。《霧氷風の特務魔道士》のタップ能力の発動条件を充たす。

中村 「せめて、見せ場だけでもつくりますよ」

嘘を現実にみせる男、中村はその言葉も現実にするべき、驚異的なねばりをみせる。まだ、戦える。

Oliverは《テヴェシュ・ザットの信奉者》の能力で、邪魔なアタッカーであり、中村の防御の要である《霧氷風の特務魔道士》の発動条件となっている《アダーカーの風精》を除去する。だが、中村も《熊の守護霊体/Ursine Fylgja》で《虚空の大口》のアタックを凌ぎつつ、《バルデュヴィアの霜覚師/Balduvian Frostwaker》で追加のアタッカーの用意を。そこに《骨に染む凍え/Chill to the Bone》が飛んできたなら、今度は4枚目の冠雪地形、《冠雪の森/Snow-Covered Forest》をドローして再び《霧氷風の特務魔道士》の能力条件を満たし《虚空の大口/Void Maw》のアタックを押さえる。

そう、中村は言葉どおり「見せ場」をつくっている。

しかし、Oliverが《霧氷風の特務魔道士》へとエンチャントした《クロヴの囁き/Krovikan Whispers》が、中村の不敗伝説に登場する最後のスペルとなった。

Oliver 2-0 中村

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