初日不敗だった2人の頂上対決をお届けしよう。
プレイヤーネームの後ろの国籍欄に「チリ」という国名を書き表したのは、筆者はこれが初めてである。Jose Luis Echevarria Paredes(ホセ・ルイス・エチェバリア・パレデス/チリ)は、プレイヤーとしてのキャリアも、過去に1度GPでトップ8に進出したという以外記録は無く、今大会はPTQを突破しての参戦である。
しかし、「まだ見ぬ南米の強豪」がその後スターへの階段を駆け上がっていく図式は、過去何度もあった。繰り返しになるが、マジック・オンラインの普及により、グローバル・スタンダードとも言うべき、ボーダーレスな世界になっているのだから、もはや驚くことではないのかも知れない。
三田村 和弥は、有田 隆一と75枚全く同じデッキを使用しており、初日7勝1分けで2位につけている。2人合わせて13勝2敗1分けと抜群の安定感を誇っており、初日終了後に、2日目に向けての自信を語ってくれたものだった。
彼らの所属する千葉のコミュニティでは、3月に入ってからというものFNMや草の根大会でブロック構築戦を毎週のように開催しており、その中で練り上げられ、鍛え上げられたデッキは、確かな結果をもって、コミュニティに対して見事にフィードバックを果たしている。
チーム戦である2006年のPTチャールストンでのトップ4というのが、三田村自身がクレジットしているキャリアの全てであり、理論派にして実力派と玄人好みするキャラクターであるものの、戦績の個人戦で際立った戦績は今のところはない。だが、このPT横浜が1つのターニング・ポイントになるのではないかと、期待されているプレイヤーの1人なのは間違いない。
両者のデッキは、もう何度目かになる青黒のミラーマッチだ。
Game 1
Echevarriaの《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》を三田村が、三田村の変異をEchevarriaが除去し合う立ち上がり。Echevarriaの場に先に《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》が通るが、これはフェイスアップした《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》がしっかりキャッチ。
今度は三田村が《ザルファーの魔道士、テフェリー》を通し、Echevarriaは《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》《ウルザの工廠/Urza's Factory》と、ソーサリータイミングでは如何ともし難いダメージソースを有し、事実、《滅び/Damnation》で吹き飛んだのは三田村の《ザルファーの魔道士、テフェリー》のみ。
再び《ザルファーの魔道士、テフェリー》にアクセスする三田村だったが、これには《陰鬱な失敗/Dismal Failure》が突き刺さり、1枚きりだった手札に残されていた切り札、《塩水の精霊/Brine Elemental》が落とされ、三田村は小さく舌打ち。
こうなると、俄然《ウルザの工廠》の破壊力は際立ってくる。2/2トークンの群れが三田村を襲い、《影魔道士の浸透者》で守りを固めるも、Echevarriaがプレイした《影魔道士の浸透者》の登場を妨げようとした《吸収するウェルク/Draining Whelk》が再び《陰鬱な失敗》されると、残り時間と相談した上で三田村は投了を宣言した。
Echevarria -1 三田村 -0
Game 2
三田村が、早々と《影魔道士の浸透者》でイニシアチブを握る。同系対決では、先手でこのカードをプレイしたほうが圧倒的に優位に立つ。除去するにしても合わせ打つにしても、リアクションしか取れないからである。2マナのカウンターがないというのは、つまりそういう事なのだ。
そして、回答を用意できていないEchevarriaが《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》を起動し、リソースを失ってまで食い止めたのには、それほどの理由があるからだ。そこで生まれた差が、結果として三田村の「ピクルス」完成につながったわけだが、限定構築環境におけるこの1/3クリーチャーの破壊力がいかなるものか、改めてお分かり頂けたかと思う。
Echevarria -1 三田村 -1
Game 3
今度は逆に、Echevarriaが最速で《影魔道士の浸透者》をプレイする。このパターンはつまり、三田村の大ピンチを予言している。
さらに土地が2枚で止まってしまい、3マナ以上無いと展開が出来ない青黒にとって致命的なロス。続くターンに3枚目の土地を引き当てはしたが、既にEchevarriaの場には《疫病スリヴァー/Plague Sliver》が、《虹色のレンズ/Prismatic Lens》を置けた時には2枚目の《影魔道士の浸透者》がEchevarriaの陣営に加わっていた。
黒マナが足りない三田村は《滅び》を打ち込む事は出来ず、何とか出した変異をフェイスアップするもピッチで《応じ返し/Snapback》。ようやく2枚目の黒マナにたどり着いた三田村が遅ればせながら《滅び》を解き放つも、《陰鬱な失敗》が見事に打ち返した。
マナトラブルで敗れた三田村。一方で、「単色による安定感」を打ち出して好発進していた藤田 剛史もフィーチャーエリアに招かれていたのだが、こちらは青単ではどうにもならない《憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury》を前に敗北を喫した。
多色か、単色か。メリットを表現した初日とはうって変わって、2日目にはそれぞれが抱えるデメリットを早くも明確に表していた。日本勢トップを走っていた2人の敗北。2日目に与えられた試練を乗り越えられるのは、果たして。
Echevarria -2 三田村 -1