
斎藤 友晴の、この日本選手権にかける意気込みは相当なものがある。
彼は、先のプロツアー・チャールストンにて、チーム「Kajiharu80」の一員としてプロツアー王者の仲間入りを果たした一人である。
もちろんこれは素晴らしいことだ。しかし、何かを成し遂げたからこそ、今度は自分として名を挙げたい、と思う気持ちが出てくるのもまた、自然なことである。チームメイトの鍛冶 友浩は昨年の世界選手権Top4に入っているし、八十岡 翔太は今や世界のPlayer of the Year戦線をリードする1人なのである。友だからこそ、負けたくないという気持ちは内心あるに違いない。
「日本代表を狙う」と言い切る彼は、初日を6勝1敗の好成績で折り返した。迎えた今日、1番ポッドにてコールドスナップに挑むことになる。
すでに、先のグランプリ広島で戦術は紹介されてきた感があるので、簡単なカードの解説を交えながら、今回はドラフトの流れを追ってみたいと思う。
■第1パック:コールドスナップ
初手 《オーランのバイパー/Ohran Viper》
他の候補 《ロノムの大男/Ronom Hulk》《うねる炎/Surging Flame》
強力レア vs. 環境を支配するコモン。
初手のご注文はどっち? という二択だったが、斎藤は《オーランのバイパー》を選択。
これについては、「強さとしてはどっちも同じくらい。ただ、《ロノムの大男》はコモンだし、(コストが)重いから後から流れてくる可能性もあるので、《オーランのバイパー》を取りました」という説明をしてくれた。
2手目 《ボリアルのケンタウルス/Boreal Centaur》
他の候補 《レシュラックの伝令/Herald of Leshrac》《ロノムの口/Mouth of Ronom》
《ロノムの大男》より上との評価をする人もいる、緑の優良コモンのひとつである。
3手目 《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》
他の候補 《冠雪の島/Snow-Covered Island》《キイェルドーのときの声/Kjeldoran War Cry》
氷雪マナが出るカードは重要である。マナベースの安定が至上命題の環境で、どんな色でも出せるカードは重要である。つまり、このカードは重要であるということだ。
4手目 《死の印/Deathmark》
他の候補 《ゾンビの犬ぞり乗り/Zombie Musher》《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》《凍結/Frozen Solid》
色限定の除去ではあるが、その軽さと環境における除去の貴重さから、この順目で十分のカード。
5手目 《骨に染む凍え/Chill to the Bone》
他の候補 《無残な収穫/Grim Harvest》《呼び声の鳴動/Sound the Call》《北方行/Into the North》
この環境の基本除去のひとつ。肝心なときに役に立たないこともあるが、特に前述の《ロノムの大男》に対処できるのは大きい。
6手目 《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》
他の候補 《臆病なグール/Gutless Ghoul》《灰の殉教者/Martyr of Ashes》《霜網の蜘蛛/Frostweb Spider》
7手目 《猿人の喧嘩屋/Simian Brawler》
他の候補 《霧氷殻の死者/Rimebound Dead》《ボリアルのグリフィン/Boreal Griffin》
この環境の基本サイズである4マナ3/3にプラスの能力までついた、緑ならではの優良クリーチャー。
8手目 《臆病なグール/Gutless Ghoul》
他の候補 《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》
9手目 《臆病なグール/Gutless Ghoul》
他の候補 《北方行/Into the North》
3マナ2/2と最低限のサイズを持ちながら、ライフ・レースを格段に有利にしてくれる中堅クリーチャー。
10手目 《肉体の饗宴/Feast of Flesh》
他の候補 《凍える影/Chilling Shade》
地味ながら評価の高い1枚。効果はやや小さいが、デメリットもなく使いやすい。
11手目 《うねる狂気/Surging Dementia》
他の候補 《蒸気吐き/Steam Spitter》
12手目 《胞子の殉教者/Martyr of Spores》
他の候補 《ミシュラのガラクタ/Mishra's Bauble》
下の清水の初手が《寸法変更/Resize》で、色が完全にかぶっているのが気がかりではある。それでも安定したピックといえよう。
■第2パック:コールドスナップ
初手 《ロノムの大男/Ronom Hulk》
他の候補 《オーロクスの獣群/Aurochs Herd》《うねる炎/Surging Flame》
2手目 《うねる力/Surging Might》
他の候補 《無残な収穫/Grim Harvest》《恐怖症の幻/Phobian Phantasm》《北方行/Into the North》《冠雪の森/Snow-Covered Forest》
「『雪ドラフト』よりも、『うねる』系を集める方が好きなんです」と斎藤。
今回は第2パック2手目での1枚目となったが、機会があれば早めに何種類か取っておき、渡りをつけた上で「どれかが揃えば…」という状況をつくるのが良いという。
3手目 《肉体の饗宴/Feast of Flesh》
他の候補 《呼び声の鳴動/Sound the Call》《猿人の喧嘩屋/Simian Brawler》《冠雪の森/Snow-Covered Forest》
当然のことながら、2枚目からどんどん強さが増すので少し早めに取っていく。
4手目 《呼び声の鳴動/Sound the Call》
他の候補 《冠雪の森/Snow-Covered Forest》《難問のスフィンクス/Vexing Sphinx》
5手目 《臆病なグール/Gutless Ghoul》
他の候補 《うねる炎/Surging Flame》《レシュラックの伝令/Herald of Leshrac》
6手目 《呼び声の鳴動/Sound the Call》
他の候補 《うねる歩哨/Surging Sentinels》
3マナ圏の基本クリーチャーを確保。《呼び声の鳴動/Sound the Call》は斎藤の言う「集める系」カードのひとつでもある。
7手目 《北方行/Into the North》
他の候補 《霧氷風の特務魔道士/Rimewind Taskmage》《突風の漂い/Squall Drifter》《オークの血塗り/Orcish Bloodpainter》
8手目 《クロヴの悪漢/Krovikan Scoundrel》
他の候補 《霧氷殻の死者/Rimebound Dead》
9手目 《冠雪の島/Snow-Covered Island》
他の候補 《暗黒の深部/Dark Depths》
10手目 《霜の猛禽/Frost Raptor》
他の候補 《熱足ナメクジ/Thermopod》
11手目 《クロヴの霧/Krovikan Mist》
12手目 《霜の猛禽/Frost Raptor》
13手目 《危険な研究/Perilous Research》
青いカードがかなり遅い順目まで残っており、不穏な空気を感じさせる。
ドラフト終了後、「7手目にあった《霧氷風の特務魔道士/Rimewind Taskmage》を取ってそこから『雪ドラフト』に向かってもよかったかも」と斎藤。
■第3パック:コールドスナップ

初手 《ロノムの大男/Ronom Hulk》
他の候補 《ボリアルのケンタウルス/Boreal Centaur》
2手目 《うねる力/Surging Might》
他の候補 《ゾンビの犬ぞり乗り/Zombie Musher》《冠雪の森/Snow-Covered Forest》《霜の猛禽/Frost Raptor》
3手目 《ゾンビの犬ぞり乗り/Zombie Musher》
他の候補 《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》《北方行/Into the North》
4手目 《カープルーザンの徘徊者/Karplusan Strider》
他の候補 《冠雪の沼/Snow-Covered Swamp》《臆病なグール/Gutless Ghoul》
5手目 《うねる力/Surging Might》
他の候補 《猿人の喧嘩屋/Simian Brawler》《霧氷角のオーロクス/Rimehorn Aurochs》6手目 《呼び声の鳴動/Sound the Call》
他の候補 《霧氷殻の死者/Rimebound Dead》《胞子の殉教者/Martyr of Spores》
7手目 《アロサウルス乗り/Allosaurus Rider》
他の候補 《凍える影/Chilling Shade》《北方行/Into the North》《クロヴの悪漢/Krovikan Scoundrel》
8手目 《呼び声の鳴動/Sound the Call》
他の候補 《霜の猛禽/Frost Raptor》
9手目 《凍える影/Chilling Shade》
他の候補 《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》《霧氷風の特務魔道士/Rimewind Taskmage》
10手目 《霜の猛禽/Frost Raptor》
他の候補 《凍える影/Chilling Shade》《霜網の蜘蛛/Frostweb Spider》《蒸気吐き/Steam Spitter》
11手目 《凍結/Frozen Solid》
12手目 《ロノムの一角獣/Ronom Unicorn》
《霜の猛禽/Frost Raptor》などがかなり遅い順目で多く流れてきたことで、青になることも考えられたが、結局初志を貫徹して緑黒のデッキとなった。
しかし、いくつかの流したカードから斎藤が危惧したとおり、下家の清水も緑黒になっており、ここでカードを分け合ったことがどう出るか。
「それなりにまとまってはいるけど、3-0は難しいかも」と斎藤。また同時に、「(ソート的に)他の『うねる』がいっぱい出ていそうだし、強いデッキはとことん強く仕上がっていそう」との予想を示してくれた。
実際の成績は、紆余曲折ありながらの2勝1敗。このデッキでの「最低限の成績」を残した、といえる。カードの選択や方向性を含めて、この環境のドラフトの基本形がここにあると考えていいだろう。