
死力 vs. 死力。
グランプリ浜松の決勝戦は、日本初のチーム・スタンダード戦に相応しい大熱戦となった。あまりの相性の悪さとマナトラブルによって八十岡こそ谷井にあっさり敗れたが、中央では北山が激戦の末に三本目をもぎ取りチーム成績をイーブンに。全ては、浅原対斎藤の三本目に委ねられた。
斎藤が攻め、浅原がかわす。ビートダウン vs. コンボの神髄とも言える展開に、観客一同はただただ息を飲むばかり。《酷評/Castigate》によって《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を落とされ、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》によって時間を制限され、《古の法の神/Kami of Ancient Law》によってエンチャントを対策された浅原。だが、浅原はそんな場面においてもあるブラフを仕掛けていた。
もし、それが機能していたら。だが、谷井物語(Tanii Monogatari)の鋭い洞察力によって、その if は起こることなく未然に防がれる。最後は、《脂火玉/Tallowisp》からの《不眠の晒し台/Pillory of the Sleepless》によって、ついに元祖構築王者浅原の首級をあげ、初代チーム・スタンダード王者となった。
おめでとう、チーム谷井物語!
top 8 bracket
観戦記事
- Blog - 7:44 p.m.: 決勝A席:浅原 晃(Stardust Crusaders) vs. 斉藤 宏達(谷井物語)
by Daisuke Kawasaki
- Blog - 7:23 p.m.: 決勝B席:北山 雅也(Stardust Crusaders) vs. 片山 貴裕(谷井物語)
by Koichiro Maki
- Blog - 7:02 p.m.: 決勝C席:八十岡 翔太(Stardust Crusaders) vs. 谷井 祐介(谷井物語)
by Keita Mori
- Blog - 6:35 p.m.: 準決勝 : Kiosk vs. Tanii Monogatari
by Koichiro Maki
- Blog - 5:52 p.m.: 準決勝 : Limit Break vs. Stardust Crusaders
by Daisuke Kawasaki
- Blog - 5:07 p.m.: Top 4 Team Profile
by Keita Mori
- Decklists: The Top 4 Team Decks
by Event Coverage Staff
- Day 2 Blog Archive: 走れメロス, Top Pro Play, and Much More!
by Event Coverage Staff
- Feature: 変形サイドボードの美学
by Daisuke Kawasaki
- Feature: 二日目進出デックからはじめるチームスタンダード戦術の再構築
by Daisuke Kawasaki
- Info: Day 2 Player List / Team Roster
by Event Coverage Staff
- Day 1 Blog Archive: 伝説のチームの復活, Top Pro Play, and Much More!
by Event Coverage Staff
- Feature: チーム・スタンダードの基礎知識
by Daisuke Kawasaki
- Info: Day 1 Player List / Team Roster
by Event Coverage Staff
- Info: Fact Sheet
by Event Coverage Staff
ベスト4最終順位
1. Tanii Monogatari | $4,500 |
2. Stardust Crusaders | $3,000 |
3. Limit Break | $2,100 |
4. Kiosk | $2,000 |
組合, 結果, 順位
BLOG
■Limit Break

Player A: 大澤 拓也(Zoo)
Player B: 小倉 陵(Orzhov Knights)
Player C: 石田 格(Owling Fire)
いわゆるコミュニティ「マジック虎の穴」、すなわちプロプレイヤー中島 主税(神奈川)邸を巣窟とする東名圏最大のプロコミュニティより参戦した「Limit Break」がスイス式11回戦終了後の順位表で最上段にたった。
A席の大澤はアジア圏のグランプリでたびたびベスト8入賞を繰り返すという実績をもった若手プロプレイヤーで、21歳。使用デッキは「ズー」。
世界選手権第三位入賞という輝かしい経歴をもっている22歳の若者がB席の小倉。デッキはプロテクション騎士団を大量に投入するという"アンチ・アグロ"というシフトの白黒ビートダウンだ。
そして、C席の石田はプロプレイヤーカードの登場人物にもなった国際的強豪の26歳だ。職業は本人いわく「なんでも屋」。今回のデッキは青赤のハイブリッドデッキ「Owling Fire」だ。
石田はチーム・リミテッド戦では世界最高峰の司令塔として知られている存在で、今回のベスト4入賞によってグランプリのベストエイト入賞回数レースで森田 雅彦(大阪)を抜きさり、日本人最高位となった。Alex Shvartsman(アメリカ)の保有する大記録を追って、Olivier Ruel(フランス)と凌ぎを削ることになる。
■Kiosk

Player A: 石原 隆志(Greater Gift)
Player B: 伊東 周平(UB Control)
Player C: 斉藤 大輔(Boros Deck Wins)
東京都江東区よりやってきたチームで、イッシンドウというショップを根城にしているチームだ。石原(A席)と伊東(B席)がおさななじみ(22才)で、そこに16才の高校二年生の斉藤(C席)が加わって結成されたチームだ。
石原は昨年度の東京選手権チャンピオンとなった注目株で、石原&伊東コンビがファイナルズ予選で健闘していた(予選連続突破)斉藤をスカウトしたという。
グレーター・ギフト、青黒コントロール、赤白ボロスという大胆な配置を決定したのは、最近のチーム・フォーマットがいわゆる「WBX」ストラテジーにかたまっているというのを見越した上での判断だ。このフォーマットはかなり研究してきている。
ちなみに、伊東の青黒デッキの初日戦績が1-6という有様だったとのことで……一時期は心配の種となってしまったそうだ。しかし、見事に二日目は4連勝でベスト入賞に貢献したという。
ともあれ、斉藤は16歳の高校二年生。今大会だけでなく、同じフォーマットの高校選手権における有力候補とも言えるのではないだろうか?
■Tanii Monogatari

Player A: 斉藤 宏達(Orzhov Spirit Weenie)
Player B: 片山 貴裕(Tron)
Player C: 谷井 祐介(Selesnya Control)
ローマ字で谷井物語。これはプロツアーシーンにも登場する20歳の片山が(実績的に)リードする岡山勢である。ネーミングは神河物語の発売時に「勢いでつけた」とか。
谷井 「っていうか、ぼくイジられ役なので…」
そんな23歳谷井のデッキはいわゆるセレズニアのコントロールで、もでる構成である。おそらくタッチ黒からの《屈辱/Mortify》あたりを想像なさる方が多いと思うが、実際はサイドに3本刺さっている《大牙の衆の忍び/Okiba-Gang Shinobi》のみ。また、斉藤(26歳)と2枚ずつわけあうかたちでの《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》投入も印象的だ。
斉藤 「心理的にすごくきいたんじゃないかと思いますよ。二箇所から十手が出てくるというわけですからね」
はたして、決勝ラウンドでは二箇所から《梅澤の十手》が火を噴くだろうか?
■Stardust Crusaders

Player A: 浅原 晃(Heartbeat)
Player B: 北山 雅也(Orzhov)
Player C: 八十岡 翔太(Boros Splice-Burn)
昨年度の浅原はすごかった。国内での個人戦グランプリのすべてで決勝ラウンドに進出し、The Finalsもベスト8入賞、きわめつけに世界選手権ベスト4入賞という具合で大活躍を果たしているのだ。そんな浅原が率いるチームが「Stardust Crusaders」である。ちなみに、浅原のデッキリストには「ハイエロファントグリーン」と名前がついているが、いわゆる《春の鼓動/Heartbeat of Spring》システムのコンボデッキである。
浅原 「でも、本当のリーダーは」
八十岡 「間違いなく北山さんですよ」
北山 「……」
中央に位置する「真のリーダー」北山は、かつては高校選手権で大活躍を果たした神奈川勢。彼も「マジック虎の穴」で腕を磨く一人であり、準決勝では「Limit Break」とのチームメイト同士での対決というマッチアップになる。そんな21歳の北山がセレクトしたデッキは白黒のオルゾフだ
そして、鬼才デッキビルダーとして強豪各位の間で名前を轟かせているのが八十岡。今回もお得意の「やそコン」での参戦が噂されていたが、「連携バーン」をビルドアップしてチームをベスト4へと導いている。浅原と北山のデッキはいわゆる既知のアーキタイプであるだけに、八十岡の独自性が輝いていると言えるだろう。
なにせ、
八十岡 「《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》も《差し戻し/Remand》もとられちゃったんで、仕方なく自分で適当に組みましたよ!」
というのだから。
Sunday, April 9: 5:52 p.m. - 準決勝 : Limit Break vs. Stardust Crusaders

Limit Break
Player A: 大澤 拓也
Player B: 小倉 凌
Player C: 石田 格
Stardust Crusaders
Player A : 浅原 晃
Player B : 北山 雅也
Player C : 八十岡 翔太
石田 格と浅原 晃という関東のビッグネーム同士が、自分が信頼する仲間とともに組んだチームによるドリームマッチという見方もできるし、もしくは神奈川のどこかでいつ行なわれていてもおかしくないマッチと言う見方もできるこの対戦。
だが、2日目残ったチームの中で大本命であったこの2チームがそろって見事トップ4に入ったのはさすがの一言である。
さて、そんなドリームマッチ風の闘いだが、スイスラウンドの4回戦ですでに1度実現している。スイスラウンドではLimit Breakの3勝という圧倒的な惨殺劇が行われただけだった。
さすが、稀代の名ビルダーである石田が確かな理論を背景に練り上げてきたデック達だけあって、実力は折り紙つきである。このGPの勝ち組のデックタイプたちである事だけは間違いない。
もちろんデックだけでなく、プレイヤーの腕は言わずもがな、だ。
だが、そんなLimit Breakを相手に、Stardust Crusadersは、いや浅原と八十岡は比較的余裕の表情だ。八十岡は「昨日はどうかしていた」と、まるで今日は大丈夫であるかのような事をいいだすし、浅原に至っては「昨日負けた恐怖はすでに克服した。後はエメラルドスプラッシュを打ち込むだけ」といつもどおりのコメントを。
そんな二人にはさまれた、北山1人が浮かない顔。それは当然で、オルゾフアグロ同士の対決である対戦相手の小倉のデックは、同型対策を重視したタイプであり、メインからの《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》まで投入されているのだ。
石田 「まぁ、基本的にオルゾフ系のコントロールを喰えるか、っていう勝負にもなりますよね。じゃんけんでできるだけ強い手を捜すようなものだけど」
と、GP前に語っていた石田だが、調整を繰り返した結果、メインから《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》の投入に踏み切ったそうだ。「マナさえあれば」という但し書きつきではあるが、様々なデックとの相性差を覆す可能性をもったこのカード、石田の言葉を借りれば「かなりやばい。そうとうやりおる」との事だ。
そんなカードがメインからつきささる対戦を北山が浮かない顔をするのも当然だろう。北山は本当に心労が尽きない。
それでは、タレントぞろいのこのマッチ。まずは、デックテックの点で大いに楽しませてくれた二人の対戦となったSeat Cを見てみたい。
■Seat C 八十岡 翔太 VS 石田 格
二人のデックはもう改めて紹介するまでも無いだろうが、八十岡が赤白のフルバーン、石田がイゼット夢のハイブリッドデック、オウリングアネファイアボアである。
もはや、展開など予想のできないマッチ。完全に未知のデック同士が対戦する。
石田 「っていうか、バーンなんてメタに無いデックだからねー」
ごもっとも。だが、それで勝ち上がるのが、また八十岡という男なのだ。
先手は石田。
デックタイプ的に先手を取ることが重要なアーキタイプである石田にとって、これは嬉しいアドバンテージ。
最初の2ターンは何もできなかった石田だが、3ターン目に最初のアクション。《石の雨/Stone Rain》。続いて《未達の目/Eye of Nowhere》で八十岡のマナベースを攻め続ける。
一方の八十岡は、本体に2マナ火力である《稲妻のらせん/Lightning Helix》と《氷河の光線/Glacial Ray》をうつので限界だ。どうやら土地が事故っているらしい。石田のデックに対してお客さんであるブーメランドをセットしなければならない。
大好物を目の前に出されて、《ブーメラン/Boomerang》をキャストした石田は、続いて《吠えたける鉱山/Howling Mine》をキャスト。着々と勝ちパターンに八十岡を嵌めていく。
しかし、八十岡のデックはパーマネントを全く展開しないフルバーンなのである。
1マナの《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》《ショック/Shock》からフルに投入されている八十岡のデック、少々のマナ拘束でも、速度は落ちるとはいえ、ダメージを与え続ける。いつの間にか石田のライフは8。
ここで、石田は《猛烈に食うもの/Magnivore》をキャスト。八十岡との友情コンボで6/6となった《猛烈に食うもの/Magnivore》が八十岡にダメージを与える。
だが、その返しのターンで八十岡は、《猛烈に食うもの/Magnivore》の餌になるのも構わずに、《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》《火山の鎚/Volcanic Hammer》と打ち込む。ダメージランドを使用していた石田のライフは1に。
いつの間にか追い詰められていたのは石田の方だった。回答を探して《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》を起動し、8/8になった《猛烈に食うもの/Magnivore》でアタックする。八十岡のライフも7になる。
ここが最後の勝負どころである。
デュアルランドをアンタップでセットすると、《マナ漏出/Mana Leak》を警戒して3マナ残しての《ショック/Shock》。
ここに石田は《差し戻し/Remand》を打ち込むが、デックの半分以上が火力である八十岡のデックが《吠えたける鉱山/Howling Mine》の力を借りて火力が無いわけが無い。
《差し戻し/Remand》のドロー前に《稲妻のらせん/Lightning Helix》をキャストされると、石田は並んだ土地を片付け、《併合/Annex》した土地を八十岡に返した。
八十岡1 –0 石田
さて、この時点で、簡単にA・Bそれぞれのシートの状況を見てみよう。
■Seat B 北山 雅也 vs. 小倉 凌

まず、オルゾフ対決のSeat B。
北山の場には、《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》《残虐の手/Hand of Cruelty》《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》がならぶ。ライフは11だ。
一方の小倉、《名誉の手/Hand of Honor》《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》《清麻呂の末裔/Descendant of Kiyomaro》、そしてメインからの対同型の秘密兵器である《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》が降臨している。
そして、小倉には豊潤な白マナが。はっきりいって、北山にはどうしようもできない状況である。
ほどなくして、北山は気持ちを切り替え、次のデュエルに備える事にした。
北山 0-1 小倉
■Seat A 浅原 晃 vs. 大澤 拓也
Seat AのGame1が終了するのと前後する形で、浅原がコンボパーツを全部そろえたのを見て大澤が投了した。
浅原 1-0 大澤
ここで、ちょうどSeat CのGame2が始まるところなので、このマッチを観戦する事にしたいと思う。
橋本の名を世に知らしめた浅原と、浅原連合の若手の代表格である大澤による、神奈川を代表するプレイヤー同士の対決だ。そういうとちょっとローカルに聞こえるが。
Game 2
先攻は大澤
ギルドランドから《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》の順当な滑り出し。ここに《番狼/Watchwolf》を追加する。
一方の浅原も、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》から《不屈の自然/Rampant Growth》と、これまた順当なすべりだしだ。
時間を与えれば与えるほど辛くなるのは、大澤である。遠慮なく《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》も呼び出し、ダメージクロックを拡大する。
しかし、ここで、テーブルの反対側からはざわめきが。
八十岡が、《燎原の火/Wildfire》を撃たれランドが全てなくなったあとに、《信仰の足枷/Faith's Fetters》2枚と《輝く群れ/Shining Shoal》を引き、もともとあった《輝く群れ/Shining Shoal》とあわせ、ピッチスペルだけで石田のライフを削りきってしまったのだ。
まずは、Stardust Crusadersが王手。
八十岡 2-0 石田
Stardust Crusaders 1 - 0 Limit Break
ここで、負けられなくなった大澤。隣のSeat Bを見ると…
北山の場には《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》と《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》。小倉の場には《闇の腹心/Dark Confidant》だけと、今度こそ北山有利の場かと思われたが…
小倉が《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》《屈辱/Mortify》とキャストすると、一気に場は小倉有利に。そして、追い討ちとばかりに北山の土地である《永岩城/Eiganjo Castle》を対消滅させた上での《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》。北山と八十岡はそろって声をあげるばかりである。
小倉はきっと北山に勝利する。してくれる。
大澤がそう考えたかどうかは筆者には想像もつかないが、だが、しかし、このマッチが大澤にとって負けられないものになった事だけは確かだ。
だが、それは浅原も同じである。北山は恐らく小倉に勝てないだろう。浅原は、《木霊の手の内/Kodama's Reach》と《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》でライブラリを掘り進み、マナベースを充実させる。
だが、大澤が動物たちをレッドゾーンに送り出しつつ唱えた赤いスペル…《黒焦げ/Char》は、浅原がデックを片付けるには十分すぎるくらいの理由であった。
浅原 1-1大澤

Game 3
ここで、浅原が先攻というもともと厳しい状態から、大澤が痛恨のマリガン。
そして、新しく配られた6枚の手札も、大澤に勝利を呼び込むものではなかった。
ちなみに、Seat Bでは、お互いの陣営に《名誉の手/Hand of Honor》が増えただけ。
北山の不利は解消されていない。むしろこの先は拡大するだけではないか。
念入りにシャッフルした後に5枚でなんとかスタートする大澤。
憤りを隠しきれない。
2ターン目に《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》ではなく《不屈の自然/Rampant Growth》の浅原に対して、《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》からの《密林の猿人/Kird Ape》と絶好のスタートに見えた大澤だが…次のターンにはアタックだけしてエンド。どうにも土地が引けないようだ。
浅原はここがチャンスとばかりに《木霊の手の内/Kodama's Reach》までうって、一気にマナベースの格差を広げようとする。
だが、大澤だって、伊達や酔狂でこの席に座っているようなプレイヤーではない。《カープルーザンの森/Karplusan Forest》を引き当てると、《セレズニアのギルド魔道士/Selesnya Guildmage》をキャスト。とにかくプレッシャーをかけなくてはいけない。勝利のために、チームのために。
だが、まだ浅原のペース。浅原が《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をキャストし、即起動しようと手札を3枚とると北山の声が
北山 「浅原さんあとはまかせたー」
結局場の不利を立て直せなかった北山は、小倉に成すすべなく投了する事となったのだ。
北山 0-2 小倉
Stardust Crusaders 1 - 1 Limit Break
浅原は、北山の声を聞くと、小さく頷いて、《幻の漂い/Drift of Phantasms》を、《春の鼓動/Heartbeat of Spring》へと変成させる。このマッチの、いやこのデュエルの結果がチームの結果となるのである。慎重に浅原はターンを終了する。
そして、大澤のターン。ドローはまたも土地ではない。大澤はライブラリを強く一発叩く。こんな重要な場面で土地が事故る不条理への憤りをぶつけるかの様に。
そして、次のターンに浅原の緑色のマナが爆発した。
浅原 2-1 大澤
Results: Stardust Crusaders 2 - 1 Limit Break
Sunday, April 9: 6:35 p.m. - 準決勝 : Kiosk vs. Tanii Monogatari

Kiosk
Player A: 石原隆志
Player B: 伊東周平
Player C: 斎藤大輔
Tanii Monogatari
Player A : 斎藤宏達
Player B : 片山貴裕
Player C : 谷井祐介
まずは、両チームの名前の由来を紹介しよう。Kiosk は、チーム名に困ったメンバーがたまたま見た方向にKiosk があったから。一方、Tanii Monogatari はなんとなく谷井が主人公っぽかったから、らしい。
■斎藤 vs 谷井
Game 1
チーム名が谷井物語である以上、やはりこのマッチに注目せねばなるまい。先手を取った斎藤が使用するのは、《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》や《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》に火力を組み合わせたボロス産のウイニーバーン。一方、谷井が使用するのは、《よりよい品物/Greater Good》デッキ。
《今田家の猟犬、勇丸》《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》と召喚しあったところで、斎藤はエルフに《ショック/Shock》を。相手のキーカードが4マナ以上に集中している以上、序盤のマナブーストを許すわけにはいかない。犬の攻撃により谷井18。
だが、谷井は落ち着いて《番狼/Watchwolf》を追加し、犬に睨みを効かせる。なにしろ狼対犬。そのままでは犬が勝てる道理がない。が、斎藤は落ち着いて《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》を追加。谷井も《ウッド・エルフ/Wood Elves》で土地を増やす。
ここで斎藤は《番狼/Watchwolf》を《黒焦げ/Char》で排除。ギルドランド分と併せてライフは16に減るが、2体の攻撃で谷井を14に。エルフで目の前の攻撃を止められない以上、谷井は何かを追加しなければならないが、出てきたのは《ウッド・エルフ/Wood Elves》から《ウッド・エルフ》。土地は増えるものの、攻撃を止める力はない。はたして、そこに何の狙いがあるのか。残された手札は1枚だ。また、このときギルドランドに2ライフを消費し、ライフが12に。
2体のエルフが、犬と騎士の攻撃を一時的に食い止めて退場。だが、アンタップしたところで、谷井が動いた。《夜明けの集会/Congregation at Dawn》だ。指定したカードは、《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》×2+《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star》。合計8点分のライフと攻撃手段が予約される。
最初の教主は《黒焦げ/Char》によってあえなく退場するが、ライフが16に。もっともこのままでは次々と強襲する重戦車軍団の前に圧殺されるところだが、1枚のカードが全てを変えた。
《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》だ。
なにしろ、目の前の敵は全てが白い。しかも単体除去がない。いくらこの後に《ロクソドンの教主》と《明けの星、陽星》が出るといえど、さすがにきつい。
が、奇跡は《明けの星、陽星》を出した次のドローにあった。《よりよい品物/Greater Good》だ。全く何の仕込みもなく、谷井は必要なカードをあっさりと完璧に引き当てたのだ。さすがは谷井物語。主人公はかくあるべきだ。
空からの攻撃で斎藤のライフを8に減らしてから、《明けの星、陽星》を《よりよい品物》に捧げる。これでまずは次のターンの斎藤の動きが封じられた。だが、まだ終わってはいない。引いてきたカードの中に答えがなければ、《八ツ尾半》が谷井を噛みきる。
だが、そこは谷井物語。引いてきたカードの中には、2体目の《明けの星、陽星》が…
斎藤 0 – 1 谷井
ほぼ同時に、他の席でも一本目の決着がついた。中央のB席では、アネックス・ワイルドファイアを使用する片山が《呪師の弟子/Jushi Apprentice》コントロールを使用する伊東に勝利。その向こうのA席では、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を使用する石原がオルゾフ・ビートの斎藤に勝利。総合したゲームカウントは、Kiosk 1 – 2 Tanii Monogatari 。

■斎藤 vs 谷井
Game 2
《今田家の猟犬、勇丸》《八ツ尾半》《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》。パーツだけ見れば完璧だが、カメラを引くと別の回答が出てくる。何しろ、初手全体が、
《梅澤の十手》×3、《八ツ尾半》、《今田家の猟犬、勇丸》《ショック/Shock》《平地》
凄まじくまとまりを欠いてしまっているのだ。仕方なく斎藤はマリガ。続くハンドは…
《梅澤の十手》x2、《稲妻のらせん/Lightning Helix》、《血に染まりし城砦、真火/Shinka, the Bloodsoaked Keep》《今田家の猟犬、勇丸》《ショック》
今度は、白マナが無い。あれれと二度目のマリガンをスタート。これで谷井の表情にもかなり余裕が出てくる。さすがに2枚分のカード差は大きい。さて、三度目の初手は…
《山》《血に染まりし城砦、真火》《ボロスの速太刀/Boros Swiftblade》《古の法の神/Kami of Ancient Law》《八ツ尾半》
《平地/Plains》を重ねて引けば大正解。はたして吉と出るか凶と出るか。
しかし、ここで谷井も物語を盛り上げにかかる。顔をしかめると、まず一度マリガン。続くハンドは…
土地2枚、《ラノワールのエルフ》《桜族の長老》《ロクソドンの教主》《セレズニアのギルド魔道士》
完璧。逆に、斎藤はゆっくりと次のドローを見たが、《血の手の炎》。その隙に谷井は《ラノワールのエルフ》から《セレズニアのギルド魔道士》へと。
ここで斎藤が遅まきながら平地をドロー。《ボロスの速太刀》を召喚。これはすぐに《セレズニアのギルド魔道士》と相打ちをする。
谷井はここから《ロクソドンの教主》を連続召喚。斎藤も《ヴェクの聖騎士》を召喚するが、さすがに分が悪い。なんとか更に《八ツ尾半》を追加し、手札に《梅澤の十手》という状況まで持ちこむが…
谷井は《夜明けの集会》。再び殺人ジェットストリームドローがライブラリに積み込まれる。が、好事魔多し。谷井はここで2体の《ロクソドンの教主》をうっかり攻撃に送りこんでしまう。
目の前に立っているのは《八ツ尾半》と《ヴェクの聖騎士》。その後ろにあるのが《山》と《血に染まりし城砦、真火》。2体の先制攻撃によって、教主は1体死亡。
だが、集会パワーがあれば何のその。たちまち谷井の前には《北の樹の木霊/Kodama of the North Tree》《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star》と並び、《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》も手の出しようがない上空から攻撃をしかける。斎藤のライフが6に。
斎藤もなんとか《黒焦げ/Char》で《ロクソドンの教主》を仕留め、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》の力によって戦線を支えようとするのだが、なにしろ空に手が届かない。あらゆる手段を考えてはみたが、答えなく…
斎藤 0 – 2 谷井
さて、横を見るとわざわざ揃えたかのように残りのゲームも三本目が始まったところ。では、カメラをA席に移動しよう。
■石原 vs 斎藤
Game 3
既に谷井が勝利しているので、Tanii Monogatari は斎藤か片山どちらかが勝利すればいい。逆に Kiosk は石原と伊東の両方が勝たなければいけない。
石原が使用するのは、白黒緑の《よりよい品物/Greater Good》。一方の斎藤はゴースト・ダディ。
斎藤も《脂火玉/Tallowisp》に《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装着したのだが、目の前に並ぶのが《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》と《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star》。さすがにパワーが違いすぎだ。
石原が《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を唱えたところで、斎藤は投了。石原は、となりの伊東に向かって、「頼む」と一言。
石原 2 – 1 斎藤
■伊東 vs 片山
Game 3
全てはこの一本に。状況を説明すると
伊東:土地3枚
片山:《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》込み土地14枚、印鑑2枚、《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》《呪師の弟子/Jushi Apprentice》。
…判定勝ちで。
伊東 1- 2 片山
Results : Team Monogatari 2-1 Kiosk
Sunday, April 9: 7:02 p.m. - 決勝C席:八十岡 翔太(Stardust Crusaders) vs. 谷井 祐介(谷井物語)

八十岡 「《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》も《差し戻し/Remand》もとられちゃったんで、しょうがないからいつもの感じのは見送ったんだよね…」
という経緯でデザインしたという秘儀連携バーン。
八十岡はいわゆる「やそコン」で知られるデッキデザイナーで、神河物語の代表的なカードである《けちな贈り物/Gifts Ungiven》や《呪師の弟子/Jushi Apprentice》をいち早くトーナメントレベルへと連れてきた人物である。
対する谷井のデッキはいわゆるセレズニアのコントロールで、サイドに《大牙の衆の忍び/Okiba-Gang Shinobi》が投入されているデザイン。純正バーンを使う八十岡にとっては潜在的脅威と言わざるをえない凶悪なクリーチャーたちがひしめくデザインである。
Game 1
先行をとった谷井は《低木林地/Brushland》から《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》。さらにバウンスランド《セレズニアの聖域/Selesnya Sanctuary》という順調な立ち上がり。
対する後手八十岡は2枚の《神の怒り/Wrath of God》と相応のバーンスペルを握り締めてのスタート。エルフを《ゲリラ戦術/Guerrilla Tactics》で焼き殺すというスタートから連携で5点。すなわち、《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》連携《氷河の光線/Glacial Ray》というこのデッキを象徴したアクションである。
ここで谷井から《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》が光臨し、ライフは余裕の安全圏へ。しかしながら八十岡は《黒焦げ/Char》をプレイして即応。一進一退の展開だ。
しかしながら、次なる谷井の脅威は文字通りのフィニッシャーとなってしまった。なぜなら、それは火力の対象に取れない大型クリーチャーであり、八十岡は《神の怒り/Wrath of God》のプレイに必要なに恵まれなかったからだ。
《北の樹の木霊/Kodama of the North Tree》が単体ですべてを制圧してしまった第1ゲーム。
谷井 1-0 八十岡
Game 2
「本体」
八十岡の発声によってゲームは幕を開けた。《火山の鎚/Volcanic Hammer》だ。
今回は後手となった谷井は第2ターン目の《番狼/Watchwolf》からスタートし、3ターン目には《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》プレイからの《セレズニアの聖域/Selesnya Sanctuary》セット。八十岡は《黒焦げ/Char》本体へ。
続くターン、八十岡が「サイド後に出てくるこいつは厄介」と戦前に語っていたクリーチャーが登場する。《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》だ。
強烈なパンチをもらうことになった八十岡はめずらしいほどの長考を見せる。
マナベースは3枚の《山/Mountain》と《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》。手札には《神の怒り/Wrath of God》、2枚の《黒焦げ/Char》、そして《稲妻のらせん/Lightning Helix》といったカード。さあ、どうしたものか。

逡巡したものの、八十岡は意を決して《黒焦げ/Char》をプレイヤー本体へと詠唱して自ターンを迎えることとし、「えい!」と気合のドロー。
……が、それは《山/Mountain》。またもや《神の怒り/Wrath of God》がうてない。
だが、それでもまだ死んではいない。《稲妻のらせん/Lightning Helix》で《番狼/Watchwolf》を焼き払いながら、ライフ2対9で踏みとどまる八十岡。
もう一枚。もう一枚ドローできるではないか。
そして、というマナコストをもつ魔法は最後までプレイされることなく閉幕となり、チーム谷井物語は谷井自身の手によって王手をかけることとなった。
Sunday, April 9: 7:23 p.m. - 決勝B席:北山 雅也(Stardust Crusaders) vs. 片山 貴裕(谷井物語)

「勝率は、メインで2割。サイド後で3割」
戦いの前に、まず相手のデッキリストを確認する時間があるが、勝率について尋ねると北山はこう答えてくれた。ちなみに、相手の片山もほぼ同じ意見。つまり、中央の席では、圧倒的に片山が有利という認識だ。
だが、何が起こるか分からないのがマジック。ましてや、これから始まるのはグランプリの決勝という舞台。これまでにも数々の奇跡やミスが起こってきた場面だ。だからこそ、我々も真摯な態度で観戦したい。優勝チームが決まるまでは、あと僅かだ。
Game 1
震える手で初手を確認する北山。
《残虐の手/Hand of Cruelty》《闇の腹心/Dark Confidant》《屈辱/Mortify》《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》《平地/Plains》《永岩城/Eiganjo Castle》
これで黒マナがあればキープしたのだろうが、北山はマリガンを選択。一方、片山はキープ。
まずは北山が《酷評/Castigate》から。そこで確認した手札が
《差し戻し/Remand》《撤廃/Repeal》、残りは土地。
だが、この土地が問題だ。片山の前には既に《ウルザの鉱山/Urza's Mine》が置かれているが、手札にあるのが《ウルザの塔/Urza's Tower》に《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》。そう、片山は何の苦もなくナチュラルに3枚を揃えていたのだ。だが、それを使うカードはまだない。
北山は考えながらも、《名誉の手/Hand of Honor》《残虐の手/Hand of Cruelty》《名誉の手/Hand of Honor》と並べていった。
2点、6点、マナバーン1点。
《連絡/Tidings》する間に、北山は片山のライフを11まで減らす。更には《マナ漏出/Mana Leak》のマナ支払いに成功しながら《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》までセット。これで相手に何もなければほぼ勝利が決まるが…
片山はまず《強迫的な研究/Compulsive Research》を。続けて片山のバウンスランドに《併合/Annex》を。
だが、土地を戻している暇はあるのだろうか? これが《燎原の火/Wildfire》に続くのであれば、それも分かるが…
当然北山もそれを分かっているので、丁寧にその可能性を摘んでいく。《酷評/Castigate》をプレイ。片山はこれを《差し戻し/Remand》するが、北山は土地を置いてもう一度プレイ。公開された北山の手札にあった対抗手段は、《押収/Confiscate》 が1枚のみ。なので、それがゲーム外の領域へ。
片山は、次のドローを確認し、投了。一本目は戦前の予想を裏切る形に終わった。
北山 1- 0 片山
Game 2
《電解/Electrolyze》2枚、《マナ漏出/Mana Leak》《撤廃/Repeal》に土地3枚。
十分な手札を片山はキープ。一方、北山も《酷評/Castigate》2枚を始め印象はいい。
まずは北山が丁寧に手札を攻める。最初の《酷評/Castigate》は《マナ漏出/Mana Leak》されるが、二度目のそれでまずは《猛火/Blaze》を取り除く。そして、カウンターが無いことを確認した上で、必殺の《迫害/Persecute》!
《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》と《撤廃/Repeal》が片山の手札からこぼれ落ちる。片山の手札に残ったキーカードは《燎原の火/Wildfire》ただ一枚だ。
だが、片山もやりよる。直ぐさまライブラリトップから、無かったはずの《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》をプレイ。ゲームを緊迫させていく。タフネスが4しかないので《燎原の火/Wildfire》には繋げられないが、それでもただ一体で十分な脅威。
ここで北山が取った選択肢が、結論から言うとゲームの行方を決めた。相手にマナの無い状況で手札に2枚の《屈辱/Mortify》を抱えていたものの、まずはダメージソースの設置が優先と《名誉の手/Hand of Honor》《残虐の手/Hand of Cruelty》の召喚を実行したのだ。
が、これにより九死に一生を得た《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》がそこからしぶとく残る。《差し戻し/Remand》や《撤廃/Repeal》でマナの伸びない北山の《屈辱/Mortify》や《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を交わし、淡々と上空から攻撃を続ける。
あの時殺していれば…
北山 1 – 1 片山
Game 3
《闇の腹心/Dark Confidant》《名誉の手/Hand of Honor》と並んだところで、片山は当然のように《紅蓮地獄/Pyroclasm》。だが、北山もそれは予想の内と、ソーサリーを使いマナの無くなった隙に《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》を。
なにしろ、この幽霊議員は死なない。片山も、再度の《紅蓮地獄/Pyroclasm》によって、もう一度《闇の腹心/Dark Confidant》と《残虐の手/Hand of Cruelty》を除去するのだが、北山のクリーチャーは尽きず、3体目の《闇の腹心/Dark Confidant》が場に出てくる。

こうなると、片山は《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》を止められるクリーチャーを場に出さねばならない。
《差し戻し/Remand》を単なる1ドロー呪文として使いながら、必死にカードを引く北山。更には《押収/Confiscate》を、《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》に使用し、回避の代償として《闇の腹心/Dark Confidant》の生け贄をせまる。クリーチャーさえいなければ、《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》の回避能力も使えないからだ。
だが、種が尽きない。北山は《名誉の手/Hand of Honor》を召喚。6体目の2マナクリーチャーだ。
必死に方策を探す片山だが… 幽霊議員ただ一人に圧敗。
戦前の予想はなんのその。震える手で、北山が貴重な勝ち星を Stardust Crusaders に。
北山 2 – 1 片山
ここまでで、チーム戦績は1-1のタイ。
Sunday, April 9: 7:44 p.m. - 決勝A席:浅原 晃(Stardust Crusaders) vs. 斉藤 宏達(谷井物語)

二日間にわたる、12ラウンドの激戦の末、全165チームの頂点にたつ。
などという言葉はここではまだ使用するべきでもないだろう。もしも、このマッチが決勝の結果を決定するようなマッチになるような事があれば、その時のためにとっておきたい。
さて、最初に聞いた時は、おそらく誰もが驚いた、浅原と北山・八十岡という神奈川に特化したローカルチームであるStardust Crusadersが、決勝戦にコマを進めた。当然、北山も八十岡も関東では知られた強豪ではあるのだが、この躍進の一番の要員は、やはり長い時間を共に過ごしたという信頼関係のアドバンテージも大きいのだろう。
一方の、谷井物語もまた、古い仲間が集ったチームである。こちらはStardust Crusadersと違って、チームリミテッドから結成されていたチームである。確かにチームとしての知名度ではStardust Crusadersには劣るかもしれないが、チームとしての結束力では負けていない。
チーム戦といっても、また、新たなフロアルールで助言が認められているとしても、結局はデュエルするのは1人じゃないかと思われる方もいるだろう。
だけど、使い古された言葉で有名な言葉があるではないか。
「1+1は3にも4にもなる」という言葉が。
ならば、2で割ったとしても…少なく見積もって1.5にはなる。
チームででるとはそういう事だ。
Game 1
浅原のデックはマガシュー(ハートビート)で、斎藤のデックはゴーストダディ。
クロックが小さい為、マガシューに十分な時間を与えてしまう可能性は大きいが、一方で《古の法の神/Kami of Ancient Law》をはじめ、天敵となるカードも少なくない。
相性はほぼ五分に近いといってもいいだろう。
先攻は斎藤。浅原が長考した末にお互いマリガンはなし。
斎藤は、デュアルランドをアンタップでセットしつつ《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》をキャストする順当な立ち上がり。続くターンにはメインエンジンである《脂火玉/Tallowisp》のキャストにも成功した。
一方の浅原、《森/Forest》《島/Island》と2マナ並べたところで、なぜか長考。マナ加速が無いのかとも思ったが、結局《不屈の自然/Rampant Growth》で《島/Island》を持ってくる。
返しのターンで、斎藤は《古の法の神/Kami of Ancient Law》をキャストし、《脂火玉/Tallowisp》のスピリットクラフトがトリガーする。こうして持ってきた《邪悪なる力/Unholy Strength》を自らの身にまとった《脂火玉》は《今田家の猟犬、勇丸》と共にアタック。一気に膨れ上がったクロックにより、浅原にも余裕が無くなる。
《森/Forest》をセットし、4マナ確保した状態から浅原は長考に入る。結果、クロックを外すべく、《幻の漂い/Drift of Phantasms》を壁としてキャストする。浅原にはまだ、時間が足りない。
3体でアタックしてきた中で、当然最大のクリーチャーである《邪悪なる力》のついた《脂火玉》をブロックした浅原だったが、ここで斎藤は2体目の《脂火玉》をキャストする。手札にもってくるのは《不眠の晒し台/Pillory of the Sleepless》。
浅原のライフは9。斎藤の場に並んだクロックはすでに9点を超えている。
《島/Island》をセットして5マナ域にようやくたどり着いた浅原は、《木霊の手の内/Kodama's Reach》で《沼/Swamp》を場に出し、2マナ残して終了する。
そう、斎藤の場には9点以上のマナソース、手札には《幻の漂い》を無効化する《不眠の晒し台》があるのにもかかわらず、だ。
長考の末に、斎藤は《不眠の晒し台》をキャストする。そして、そこで起こった事をありのままに話すと、斎藤は確かに《不眠の晒し台》をキャストしようとしたのだが、そこで浅原が2マナをタップすると、キャストしたはずのスペルは手札に戻っていたのだ。
何のことは無い、《差し戻し/Remand》だ。
しかし、こうやって《差し戻し》によって稼ぎ出した1ターンの間に浅原はコンボをスタートさせる事ができなかった。
斎藤 1-0 浅原
ここで早くも八十岡が2連敗。谷井物語がまずは王手。
Game 2
浅原の先攻でゲームがスタート
まずは浅原がマリガン。
どちらも1ターン目に何も無い立ち上がり。浅原の場には2枚の《島/Island》が並ぶ。
先にアクションを起こしたのは、斎藤。2ターン目に《闇の腹心/Dark Confidant》をキャストする。浅原も一方的にアドバンテージをとられる訳にも行かない。《木霊の手の内/Kodama's Reach》で応戦する。
斎藤のアップキープにめくれたカードは《沼/Swamp》。《闇の腹心》がアタックし、後続に《古の法の神》がキャストされる。浅原は、ただ、2枚目の《木霊の手の内》をキャストしてマナベースを整え続けるだけだ。
《酷評/Castigate》は《交錯の混乱/Muddle the Mixture》でなんとかカウンターしたものの、結局根本的な脅威は全く解消されていない。斎藤は、駄目押しに、Game1の勝利の原動力となった《脂火玉》をキャストする。
長考
そして、思わずうなり声を上げる浅原。
とにかく目の前の脅威をどうにかしなければならない為、X=3の《大竜巻/Savage Twister》で場の脅威を排除しようとする。だが、《脂火玉》に対して《オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova》をコストに《輝く群れ》がキャストされる。スピリットクラフトで《邪悪なる力》が手札に戻されつつ、結局《脂火玉》と《古の法の神》を両方護られてしまった。
ここで北山が、片山を下し、星をイーブンに戻す。
つまり、このマッチを制したチームが、GP浜松を制するという事になった。
準決勝の時と同じように、北山は浅原に視線を投げかける。
だが、どうにも、浅原の大勢が悪い。斎藤は追加の《古の法の神》をキャストし、2枚目の《邪悪なる力》を。この2枚の《邪悪なる力》がエンチャントされてアタック。浅原のライフは3に。
しかし、浅原にも最後の奥義が待っていた。
その名も《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》。《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》もキャストし、十分にブロッカーを用意した浅原。形勢逆転とまでは言わないが、五分弱くらいまでは持ち直しそうだ。いや、浅原連合では、「持ち直しそう」等という言葉を使ってはいけない。使っていい言葉はただ一つ、「持ち直した」だけだ。
浅原は積極的に攻める姿勢を忘れずに《曇り鏡のメロク》とトークンでアタック。トークンを出しつつセットしつつ《幻の漂い/Drift of Phantasms》を出して一気に守りを強固なものへと変化させる。ここまでくればいってもいいだろう、「持ち直した」と。
斎藤が、そのターンに何もできないのを見ると、一気に5体のトークンを生み出す。
7体のトークンと《曇り鏡のメロク》にアタックされ、ライフが6になった斎藤は、続くターンのドローでは根本的な解決を引き当てる事はできなかった。
浅原 1-1 斎藤
Game 3
泣いても笑っても、このマッチで勝利したチームが、この浜松の地に集まった165チームの頂点にたつチームとなる。
対戦する2人の肩にのしかかったものは大きい。何しろ、今日は個人戦ではない。チーム戦なのだ。
浅原は八十岡と共に、サイドボードを検討しなおす。この会場に来て初めて2人の協力する姿をみた気持ちだ。まさか、決勝直前まで互いのデックを知らなかった2人とは思えない。
先攻は斎藤。
斎藤がマリガンをするが、だが、浅原もそれに付き合うかのようにマリガン。
斎藤は、まず、デュアルランドを縦置きから、《今田家の猟犬、勇丸》というロケットスタートからの《闇の腹心》というベストのスタート。だが、浅原も、《師範の占い独楽》からの《桜族の長老》と食い下がる。
ここで、斎藤が《梅澤の十手》を出したの対して、浅原は《桜族の長老》と2枚目のコマという、今一つな立ち上がり。
だが、斎藤が《闇の腹心》で《酷評》を手に入れ、それによって《曇り鏡のメロク》がリムーブされた直後。斎藤は《今田家の猟犬、勇丸》に《梅澤の十手》を装着しないでアタックしてきたのだ。いや、したくてもできない。何故なら、土地が無いのである。
順調に見えた斎藤の展開における唯一の落とし穴にみえた土地事故だったが、そこにつけこむことは、手札に《春の鼓動》しかない浅原にとっては非常に難しい。
結局、斎藤は《闇の腹心》の加護で土地を引き始め、《梅澤の十手》も《闇の腹心》に装着された。最後の締めに《脂火玉》まででてきて、浅原は絶体絶命だ。
斎藤のターンエンドに《師範の占い独楽》でめくった三枚をみながら八十岡と相談を繰り返す。
浅原 「まだ、唯一の勝ち目が」
八十岡 「ありますねぇ」
浅原 「いくべきか、いかないべきか…」
そして、浅原は最後のかけに出る。
まず、《春の鼓動》をキャストする。そして《師範の占い独楽》でのドローを宣言。
……ここが、浅原の勝負どころだ。
斎藤の場には《古の法の神》がいる。そして浅原はこのタイミングで《春の鼓動》を破壊して欲しいのだ。
そう、いかにも《師範の占い独楽》によって積まれているカードが《早摘み/Early Harvest》であるかのように。
そして、その能力の起動にスタックして、本当は手札にある《早摘み》をキャストし、ライブラリーのトップの《現し世の裏切り者、禍我/Maga, Traitor to Mortals》で対戦相手のライフを削りきる為に。
だが、斎藤はしばらく考えた後に、冷静に《師範の占い独楽》の能力の起動を促した。
浅原は賭けに負けたのだ。
一応浅原は《早摘み》をキャスト。対応で古の神が《春の鼓動》を破壊。《現し世の裏切り者、禍我》が9マナで登場。斎藤のライフは4に。
このままだと、《闇の腹心》によって、《オルゾヴァの幽霊議員》がめくれてしまう場合に死んでしまうため、《梅澤の十手》のカウンターを消費。そして、アタック。
浅原はドローのあと、《師範の占い独楽》の能力を起動すると、静かに土地を片付けた。

本当の決着はすでに前のターンに「ついていた」
浅原 1-2 斎藤
GP前に世界王者の森 勝洋が語っていた言葉が思い出される。
森 「チーム戦で会話ができるようになると、相当やりにくいんだよね。俺は相手の空気をのむプレイスタイルなんだけど、必ずチームメイトに諭されて冷静になってしまう。」
そして、決勝戦終了後に森は浅原に語りかけた。
森 「最後のブラフの時、相手冷静だったね。やっぱチームだと違うね」
そう、あなたの隣にはいつだって苦楽を共にしたチームメイトがいるのだ。
おめでとう、チーム谷井物語!