Bob Maher に 99 年のPT シカゴでの決勝戦で敗れてしまって以来、Brian Davis にとっては長く辛い忍耐の日々となった。彼はツアー常連としてシーンに定着していたものの、3 年前の快挙以来とんとご無沙汰だったのだ。
「正直なところ、今回のプロツアーに対して特別な戦術などは用意しませんでした。ともかく流れてきたカードをひたすらとっただけです。青黒か緑を Draft したがる人間がほとんどみたいで、赤や白をタッチしようという者もほとんどいないわけですよね。そんな中、僕はどんな色の組み合わせも厭わないというスタイルを貫きました。」
たしかに、Davis の試みてきたドラフティングは多数派とは一線を隔したものだった。何せ、4 回のドラフトを通じて毎回ごとに異なる色の組み合わせのデッキを構築したのだから。
「最初が青白、青緑タッチ赤が二回目、青黒が三回目、最後は緑黒タッチ赤でした。...たしかに色々やってますね。」
これだけの大成功をおさめた Brian Davis だったが、彼は練習時間をほとんどとらなかったらしい。
「プレイテストなんて言えたものは、まったくもってしていないですね。これっぽっちも、です。Magic Online も Torment 発売以来はまったく触っていないから、僕の経験値は Odyssey のみに限定されてしまっています。実は、ツアー直前まで現実世界でのドラフトを一度もしたことがなかった...というのが実情です。」
まったく何もしてないのに勝てた...わけですか?
「正直なところ、実にラッキー...というかツキすぎですね。本音では二日目に残れるかどうかを心配していたくらいで、何がどうなると Top 8 に残れたんでしょう?」
最初にスポットライトがあたったとき、彼は極度の緊張にとらわれてしまった経験がある。彼は Bob Maher との決勝戦をフルセットまで戦って落としてしまったわけだが、観客の多くは「 Davis のプレイミスさえなかったら Maher の勝利はなかった」と酷評したものだった。はたして、Brian Davis は過去の亡霊を振り払うことができるだろうか?
「多分...ですが。実際にそれを経験したことのない人間がプロツアー決勝ラウンドを二度も経験したプレイヤーのことをどうこう言うことは出来ないと思います。 入賞経験が一度だけならマグレといわれてしまうかもしれませんが、僕は世界選手権で 9 位入賞も果たしていますしね。ともあれ、雑音を黙らせる意味での今回の Top 8 進出はとても喜ばしいことです。ただ、僕のことをよく知っているほど過去を引きずっているように見えるかもしれないし、大したプレイヤーじゃないいくせに...って思っているかもしれませんね。難しい質問です。」
ともあれ、ふたたび Davis の前には大勢の観客とテレビカメラが並び、まぶしいスポットライトがあてられるのだ。歴史は...繰り返されてしまうのか?
「う~ん。過去から学びとって成長しているだろうと期待してくれている人たちもいるんでしょうけど、『あいつ、またやるぜ』って笑っている人たちも多いでしょうね。まあ、終わってみるまでどうなるかはわからない、というのは何事も同じでしょう。」
さて、Brian Davis はこのプロツアーニースで優勝できるのだろうか?
「難しいと思いますよ。準々決勝では Anton Jonsson とあたるわけですけど、彼に関してどうこういうつもりも無いですが、まあ、彼が優勝するということもないのではないでしょうか。少なくともいえることは、Svend Geertsen や Kai Budde に対して怖気づくことはあっても、僕に対してそんな風には思わないですよね? 個人的には Top 8 の面々の中では Kai と Svend に次ぐ実力を持っているのではないかと考えていますが、だからといって成績の保障にはなりません。ドラフトで何が起こるかはわかりませんし、プロツアーには魔物が潜んでいるかもしれないですしね(笑)」