“ブリンキー”の逆襲

更新日 Feature on 2005年 9月 8日

By Wizards of the Coast

Translated by Yoshiya Shindo

blinking spirit
 私が初めてPTQで戦った頃、テーブルの向こうにしょっちゅう出てくる厄介なクリーチャーが《またたくスピリット/Blinking Spirit》だった。《またたくスピリット/Blinking Spirit》はぱっとしない、効率の良くない――4マナ2/2――クリーチャーなんだが、最初のプロツアー後のスタンダード環境では、昨今よりもデッキにおける除去の重要度は高かった。前向きに自分の戦略を押し進める親和のようなデッキも、集団で殺到するような近代的なゴブリンのようなデッキも無く、当時のデッキにおける白や赤の役割は、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》や《稲妻/Lightning Bolt》で《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》の通る道を開け、ゲームの止めとなる《ハルマゲドン/Armageddon》まで繋ぐのが目的だった。同様に、ドローゴー系の出る前の青白デッキは、基本的にクリーチャーを打ち消すのが好きではなかった。彼らは全力で《神の怒り/Wrath of God》をデッキに投入しているから、昨今の《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》もうらやむような破壊されなさを誇る4マナ2/2クリーチャーを前向きに打ち消しに行くなんてのは噴飯物だった。《剣を鍬に/Swords to Plowshares》が役に立たないのは十分にわかっているから、当時の青白使いは数少ない打消し呪文を必死に手元に残しておくか、やけくそになって相手の脅威に対する他のコントロール手段、例えば《氷の干渉器/Icy Manipulator》や《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》を入れるのが常だった。

 何とも奇妙な世界だったね。

 その後、《またたくスピリット/Blinking Spirit》は青白コントロールデッキ自身にとっても理想のフィニッシャーとなった。ドローゴーデッキの発明者であり、(前magicthegathering.comの編集者であり、現在の調整コラム担当のアーロン・フォーサイス(Aaron Forsythe)もいた)人気チーム「Car Acrobatic Team」のメンバーでもあるアンドリュー・クネオ(Andrew Cuneo)が、1997年に初の青封筒をゲットした際に相手を叩きのめしたのは、たった1体の《またたくスピリット/Blinking Spirit》だった(少なくとも1ゲーム目は)。《またたくスピリット/Blinking Spirit》は地上をせきとめ、ダメージを通すために相手に2枚目以降のカード(さもなくば少なくとも《ストロームガルドの騎士/Knight of Stromgald》)を出すことを強制させ、それをまとめて《神の怒り/Wrath of God》で吹き飛ばすことで、少なくとも2体のクリーチャーをカードアドバンテージの無駄を生むことなく除去することができた。《またたくスピリット/Blinking Spirit》自身は《神の怒り/Wrath of God》をかわせるから、こいつは多くの長期戦型のコントロールデッキにとっては理想的なほとんど止めることのできない必殺カードだったんだ。

 とは言うものの、私は今日のスタンダードで《またたくスピリット/Blinking Spirit》が強いカードに値するかどうか走らない。1996年では《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》はオールスター級だった……が、ジャッジメントでこの4マナクリーチャーが再販されたときには誰も使う人はいなかった。しかし、それもすぐにわかることだろう。何せ“ブリンキー”は第9版で復活したんだから。自分の中には、その理由が神河ブロックにあると信じている部分がある。《またたくスピリット/Blinking Spirit》は手札にタダでっ戻ることができ、さらにそれは――名前に書かれていると同様にクリーチャー・タイプがスピリットであることから――《脂火玉/Tallowisp》や《蝋鬣の獏/Waxmane Baku》を簡単に誘発することのできるお手軽な弾となることができる。

 さて、《またたくスピリット/Blinking Spirit》が今日の構築マジックでそれほど強くないと仮定した場合、その原因はどこにあるんだろうか? 能力は間違いなく強いし、使っているのがblinking spiritだった場合、相手がついうっかり飛行持ちのブロッカーがいると錯覚してしまう可能性すらある。また、1996年当時とは異なり、第6版ルールではダメージをスタックに乗せてから《またたくスピリット/Blinking Spirit》を手札に戻すことが可能であるため、単に《神の怒り/Wrath of God》までのつなぎのブロッカーとして“ブリンキー”を使うだけではなく、熊クラスなら毎回1体倒すことも可能なんだ。このチビ助のプレイ上の問題があるとすれば、それは明らかにパワー対マナの効率に責任がある。「能力はいいよ」と君は考えるだろう。「でも4マナ2/2じゃなぁ……せめて《冬の宝珠/Winter Orb》とか何かがついてないと」

 さて、じゃあこの《またたくスピリット/Blinking Spirit》が、4マナ2/2でなく5マナ4/4だったらどうだろうか。君は使うかい?

 しかも、そこにちょっとしたひねりが付け加えられているとしたら? 一考に値するかい?

 君がこいつを見たときの反応は想像がつくね。そもそもこいつはデカい《またたくスピリット/Blinking Spirit》じゃないじゃないか……でも、このカードは機能的にはほとんど同じだ。相手が強力な《北の樹の木霊/Kodama of the North Tree》で突っ込んできたとしよう。このどこでも見かける5マナクリーチャーの正面に《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》を経たせてみよう。

 「痛そうだねえ……」と君はつぶやきながら、トランプルダメージを2点食らう。「……でも、そっちの被害に比べたら全然さ」

 ダメージがスタックに乗ったら、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》の“カードを引く”能力を起動する。《北の樹の木霊/Kodama of the North Tree》もいずれ死ぬ定めだけど、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》はその前にすでに墓地に行っている寸法だ……しかし、ここで新メカニズムの発掘が鎌首をもたげてくる。

 単に追加のカードを引くんじゃなく、君はこんなことを自分に問いかけてみる。「僕のデッキの一番上のランダムなカードは、5マナ4/4で墓地を肥やしてくれるカードより強いんだろうか、それとも弱いんだろうか?」 “カードを引く”能力がスタックにある状態で、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》はすでに墓地にあるから、君には選択肢として――まあこいつを選ぶことになるんだろうけど――君のデッキの一番上のカードを墓地に置いて、デカい黒(で緑!)の《またたくスピリット/Blinking Spirit》を次のトラブルのために拾ってくることができる……ただし、《鼠の墓荒らし/Nezumi Graverobber》みたいなカードには気をつけるんだね。

 まあ、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》はちょっと重い。《またたくスピリット/Blinking Spirit》より点数で見て1マナ重いんだけど、全体で見ればより強いカードだろう。《束の間の映像/Fleeting Image》みたいな嘘臭い連中は別として、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》は5マナで4/4だ。確かに5マナ4/4は、パワー対マナの効率で競えば《はぐれ象/Rogue Elephant》印賞をゲットするってわけには行かないだろうけど、こいつは伝統的な《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》や《セラの天使/Serra Angel》、あるいは使える系の緑だと《カヴーのカメレオン/Kavu Chameleon》やひと手間かかる《尊大なワーム/Arrogant Wurm》や《起源/Genesis》と同じクラスの脅威だ。もっと言えば、クリス・ピキュラ(Chris Picula)はかつてこんなカードを構築で使いたいって言っていた。

kavu climber

 《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》は2色目のマナこそついているけど、《木登りカヴー/Kavu Climber》よりもゲームに影響を与えるし、カードについているドロー能力に付随するオプションは、条件付だけれど少なくとも有意義だ。同様に、マイク・チュリアン(Mike Turian)かつて構築グランプリのトップ8にこんなカードで入っている。

Arctic Wolves

 《北極狼/Arctic Wolves》は《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》よりもタフネスが1高いけれど、その追加のドローの分だけコストが増えているとは言え、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》は《北極狼/Arctic Wolves》の累加アップキープによる長期的な損失分だけ上になっている。

 さて、クリーチャー自身の効率というものを別にすると、発掘メカニズムには、まあ見ようによっては、不利益になる点もある。発掘――少なくとも《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》に書かれているやつ――は、プレイヤーにライブラリーから指定枚数のカードを墓地に置くことを求めている。理論上は、これは大した話じゃない。危険とか不利益とかの観点から見れば、発掘は自分に対する《石臼/Millstone》みたいなものだ……《石臼/Millstone》が脅威となりえるのは、大抵は君の59枚目とか60枚目が落ちる瞬間だけだろう。それ以外では、君が勝つ瞬間に何枚のカードがデッキに残っているかを変えるだけの事実しか存在しない。

 一方で、世の中には自分のカードを墓地に置くことを目的としてここ数セットでデザインされたカードが人気を博すという、長きに渡る伝統がある。ここで《留意/Mental Note》をちょっと見てみよう。

Mental Note

 《留意/Mental Note》は完璧に無作為なカードだ。そりゃ自分自身は確定としても、それ以外にどのカードが墓地に落ちるかについては何の根拠も無い……しかし、《留意/Mental Note》は非常に強いカードだ。君が《起源/Genesis》とか《栄光/Glory》とか《不可思議/Wonder》を呪文としてプレイしているような状況なら、デッキの中の多くのカードは場よりも墓地のほうがずっといいだろう。他のカード、例えば《綿密な分析/Deep Analysis》や《ワームの咆哮/Roar of the Wurm》なんかは、手札にあるよりも墓地にある方がいい。これらのカードは《強迫/Duress》で落とされないし、マナも軽いし、実質的な手札の枚数を増やしてくれる……君の手札の枚数は7枚に限られているけど、君の墓地に《クローサ流再利用/Krosan Reclamation》があるなら、相手は――手元の《陰謀団式療法/Cabal Therapy》をげんなりと見つめながら――少なくとも8枚のカードがあることを前提にプレイしなくちゃいけないだろう。

Sensei's Divining Top
 最後に、カードを引いたりライブラリーの一番上を変えるようなカードは、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》とシナジーを持つ。《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》をプレイできるマナ・コストをどうにかすることのできるほとんどの標準的なデッキには、《木霊の手の内/Kodama's Reach》や《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》、そしてこのありがちな1マナアーティファクトが入っているだろう。ライブラリーの一番上を――カードを引くなり一番上を墓地に落とすなりして――変えることで、次の《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の選択肢がより良いものになるだろう。発掘側から見れば、こいつは《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の一番上がありがたくないものの時に特に役に立つ。例えば、デッキの一番上が《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》なのに、相手がアーティファクトを使っていないような状況だ。《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》の発掘能力は、デッキの更新を2通りの異なる方法で行ってくれる。

 では、発掘には問題はあるだろうか? おそらくは。少なくとも、状況によっては。だけど、ほとんどの場合、特に墓地をどうにかするメカニズムや《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を使っている場合は、発掘は君に痛手以上の恩恵を与えてくれるだろう。

 究極的には、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》がカードとしてどうなのかということが問題になる。シールドでは明らかに強力なカードだ。リミテッドにおける緑デッキは、《樹皮革のやっかいもの/Barkhide Mauler》から《ファングレンの狩人/Fangren Hunter》まで、デカブツに重きを負っている。追加能力、例えばドローのついているカードなら、さらにいいだろう。構築においては、ここまでにこの新しいカードに対するアイデアを既にたくさん書いてきている。《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》の有用性は、フォーマットがどの程度速いかにかかってくるだろう。このカードは、《暴走する氈鹿/Stampeding Serow》や《山伏の長、熊野/Kumano, Master Yamabushi》なんかを有する中速デッキに対して盤面をコントロールするのには十分だが、過去のスタンダードの超高速デッキ、例えば青緑マッドネスや電決親和に対しては遅すぎるだろう。とは言え、特にその《またたくスピリット/Blinking Spirit》風な性能ゆえ、《墓堀り甲のスカラベ/ Grave-Shell Scarab》はクリーチャー除去を基本とするスタンダード環境においては一級品の――そして対応の難しい――フィニッシャーになるだろう。ラヴニカのスタンダードが効率を気にしすぎるのとぶち壊れているののどちらに傾くのか、それは《ダークウッドの猪/Durkwood Boars》を大規模に改良したこのカードの決着がつく前には判明するはずだ。

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