情熱と目的の融合

更新日 Feature on 2013年 4月 18日

By Alexis Janson

Alexis Janson is the winner of the original Great Designer Search. After a six-month internship, she moved on to the technology team at Wizards of the Coast but continued to moonlight as a contributing member of Magic R&D. She currently works as a developer on the Magic Online client team.

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 私は、(第1回)グレート・デザイナー・サーチ(リンク先は英語)で優勝したときから、マジックのセットのデザインでリーダーを務めたいと思っていました。いつでも出せる夢とアイデアを詰め込んだスーツケースを持ってレントンにやってきたのです。すぐに、私は落ち込みました。マジックのデザインは大変なことです。インターンとしての6ヶ月が飛び去っていきました。その間にも多くのことを学びましたが、中でも最も重要だったのは、セットのリーダーを務めるためにはまだまだ学ばなければならないことがあるということでした。

 無知の知というのは、初心者からエキスパートまでの道のりの中で最大の一歩です。6ヶ月のインターンを終えても、私はまだまだ初心者のままでした――が、私が初心者だということだけは理解できるようになっていました。

アート:Karl Kopinski

 私は、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストでの職を得ることができましたが、それはプログラマーとしてのものでした。私はカードでなくコードを書く日々を送っていたのです。幸い、私は「カード・デザイン」全体についてはそれなりの能力を持っていたので、コーダーとしての生活の間にも何度もデザイン・チームやデベロップ・チームに加わることができました。その間、私はマジック・オンライン・チームにおける存在感を強めていきました。セットで働くたびに、セットのデザイン・リーダーを務められる日が近づいていきました。年が経つたびに、待ち焦がれていた世界への距離が近づいていったのです。

 幸い、私は時間外労働の術を知っています。

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterが私にドラゴンの迷路のリーダーを務める気があるかどうか尋ねてきたとき、私はすぐに「イエス」とは答えられませんでした。これはまたとない好機だということはわかっていましたし、6年前に見た夢を諦めたくはありませんでした。開発部員でもないのに、デザイン・リーダーを務められる特別なチャンスをもらったのです。そんな例はマジックの黎明期、セットが外部で開発されていたころ以来なかったことです。私の、セットのリーダーを務める能力に賭けてくれた人たちがいて、彼らを失望させる気はありませんでした。

 私は自分の仕事を非常に重く受け止めました。ラヴニカへの回帰のデザインが始まるよりさらに前に、私はドラゴンの迷路のデザインを始めたのです。

開始前に

 ある意味で、私の初めてのリーダー職において一番恐れたのがこれでした。リーダーを務めるにあたって、私は、よく理解できている小型セットから始めるのだろうと思っていました。そのブロック内のセットから前提条件をもらい、推されている面白いカードやメカニズムなども場合によっては参照できる。つまり、最初にリーダーを務めるセットは、普通の手順で、そしてわかっている手順を埋めていくような形で務めるのだと思っていたのです。

 しかし、実際には誰もやったことがないようなことから初めてのリーダーを始めることになりました。私が知る限り、ラヴニカへの回帰・ブロックでは史上初めて、まだカードのデザインを始めていない状態で開発部が一室に集まり、ブロック全体のモックアップを使ってドラフトを行うということが行われました。大型・大型・小型のブロック構造でギルドを5・5・10に分けるということに、多くの人々は懐疑的でした。私たちは彼らを説得するか、あるいは他の案を提示しなければなりませんでした。

 ドラゴンの迷路の初期プレイテストは、基本的に、私が1人でざっくりデザインしたカード群を使って行われました。机に向かい、2日でセットを丸々デザインしたことがありますか? それらのカードがグレート・デザイナー・レベルだとは言いません。重要なのはこのセットの有効な構造を掴むことであり、カード1枚1枚ではないのです。とはいえ、この最初のプレイテストを見返してみると、そのままデザインやデベロップを通過して印刷に至ったカードがあることは興味深いことです。150枚も作れば、中には使い物になるものもあるということでしょう。

 チームは、ギルド5つずつに配分された旧ラヴニカ・ブロックのカードを中心に、ラヴニカへの回帰とギルド門侵犯のモックアップも作りました。その組み合わせでドラフトを行い、修正する、ということを、全体としてのブロックの構造に納得できるまで繰り返しました。この初期のドラフト構造から何を正しく掴んだのか、何が間違っているのか、そして小型セットに必要な者は何なのか、10個のギルドを構成に扱うにはどうしたらいいのか、セットを新しい感じの、「ラヴニカへの回帰再び」でも「ギルド門侵犯再び」でもない何かするにはどうしたらいいのか。ドラゴンの迷路は、「普通」でない何かになっていきました。

 初期のドラゴンの迷路のデザインにおいて一番難しかったのは、必要なものを145枚(予定)のセットにどうやって詰め込むかでした。10個すべてのギルドとそのメカニズムを表すカード、リミテッドで使うマナ安定源や単色カード、イカした多色カードたくさん、何か面白いレア、これまでの2つのセットに存在しない新しくて独特な何か――が必要でした。

 見返してみると、あらゆるものを詰め込んだことに驚きます。そのためには様々なワザが必要でした。

〈返済代理人〉 アート:James Ryman

ギルドを公正に

 大型・大型・小型のブロック構造の一部として、チームはドラゴンの迷路には各ギルドの要素をより多く入れるべきだと考えました。旧ラヴニカ・ブロックのデザインにおける最大の問題点の1つに、各ギルドのカードがセット1つにしか入っていないことがあります。つまり、セレズニアのファンが必要とするカードはラヴニカにしか入っておらず、ギルドパクトやディセンションには欲しいカードが何もないのです。ドラゴンの迷路ではこの問題に取り組みました。

 これで、セットのデザインは単純になるように思えました。必要なメカニズムは10個で、セットの大部分は各ギルドの構造によって定義づけられることになります。「よく定義された予想」と「単純」は別のものだということがわかったのはそれからでした。

 問題は、予想ではなく、空間にありました。小型セットに許された空間はそう多くないのです。145枚を10個のギルドに分けてみると、ギルドごとのカードはわずか14枚。ギルドと無関係の単色カードを考慮すると、各ギルド10枚のカードが配分できればいい方です。カードには役割があります。各ギルドのすべてを10枚のカードに詰め込む必要がありました。このセットのリーダーを務める上で一番苦労したことは、ギルドの素晴らしいカードを入れるために、他のギルドの素晴らしいカードを削らなければならないということでした。リード・デザイナーとしてすぐに学んだことは、何でも詰め込むことなんてできない、ということでした。カード1枚、サイクル1つにしがみついてはいられません。涙を振るって切り捨てなければならないときもあるのです。

他のセットと同様に独特に

 セットのリーダーを務める中では、自分のセットを独特のものにする方法を探さなければなりません。私は自分の初めてのリーダーとして、10個のギルドと10個のキーワードを含み、その他確定した条件を満たす構造を扱うことになりました。私のセットには個性の危機が訪れていたのです。どうやって独特のものだと感じさせれば良いのでしょうか? 親に当たる2つのセットとの違いはどこで示せばいいのでしょうか?

 考えてみると、この部分はドラゴンの迷路のデザインの中で最も精神的な力による部分かもしれません。私は「個性」を少しでもねじ込む方法を常に探していました。そして、その全ての試みがプレイテストによって否定されたり、セットのデザインの中で溶けてしまって個性が見えなくなったりするという状況に苛立っていました。それらの変更の多くはより面白いドラフト環境を作るのに役立ちましたが、必要なのは声高に、プレイヤーに「このセットを買え!」と訴えるものだったのです。

 私は最初のドラフトで、単色カードとしての役にも立つ多色カードとして分割カードを使いました。ラヴニカへの回帰やギルド門侵犯は同じ目的に混成カードを使っていましたが、デザインの初期には、「未踏の地」と言えるものを探すのが仕事でした。巧くいかなければ、いつでも混成カードに戻れば良いのです。

 分割カードを追加することは「ドラゴンの迷路の新しいこと」の解決策になる可能性が出てきました。私たちはキーワードだと「感じ」させない何かを必要としていました。既にギルド・メカニズムだけで10個のキーワードを使っているのです。「新しいこと」は自然にセットの一部となり、かつ注目を集めるものでなければなりません。ただの11個目のメカニズムであってはならないのです。

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 融合は全ての答えに見えました。構造デザインの間に加えられたまま、デザイン、デベロップの間を通して生き残りました。融合はアンコモンでいくつもの良い仕事をして、多色としても単色としても働くカードを作る助けとなり、新メカニズムを正当化する威力がありました。融合で、便利なアンコモンよりも大きく強い何かが必要となりました。そこで、一段あがることにしたのです。

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 レアの融合カードは、アンコモンのそれとは全く違うものになりました。レアでは、もっと魅力的でエキサイティングなものにすることができます。両方として唱えた場合には、大量のマナを使い、エキサイティングな物語を作るのです。〈唯々+諾々〉を半分で唱えて有利になるとは限りませんが、両方で唱えたらどうでしょう? 8マナは軽くはありませんが、カード4枚を引き、トークン4体を出すのはゲームに多大なインパクトを与えます。自信があったわけではありませんが、私たちは11個目のメカニズムを手に入れたのです。

壊れたマナと安定化

 普通のセットでは、マナの安定化にはそれほど注意を払う必要はありません。もちろん、アーティファクトや土地のサイクル1つぐらいはありますが、それがセットの構造を左右するわけではありません。ですが、多色に焦点を当てたセットを作っているとなれば、マナの安定化を無視することはできません。

 一番最初から、ブロック全体のドラフトで浮かび上がる多色のドラフトでは、少なくともコモンに10種類のマナ安定化手段が必要だとわかっていました。セットのデザインを通して、私たちはマナを安定化させるコモンを4種類か5種類試しました。どのデザインも面白くてエキサイティングで独特で――そして、コモンじゃない、あるいはバランスが悪い、デッキに入れられないほど弱い、ということがわかり、次第にいらついてきました。プレイヤーが使いたいと思わない限り、マナ安定化は何の役にも立たないのです。

 これは、デザインの間に私が解決できなかった問題の1つです。私は仮のマナ安定化カードを入れた状態で、セットをデベロップに渡しました。それはデベロップの問題だというデベロップの判断に従ったのです。私は、デベロップが最終的に採用したのが初期稿にあったサイクルの1つだと知って驚きました。しばしば、明白で単純なアイデアが最高のものだということでしょう。

 実際のカードは流動的ですが、チームはコモンのそのサイクルが必要だということはわかっていました。しかし一方で、それでは十分でないということもわかっていました。私たちは様々な他のマナ安定化方法をセットに入れてみましたが、デザインの後期には、ドラフトやシールドデッキで充分な選択肢が足りないということに苛立っていました。誰もマナ安定化にあと10枚割きたいとは思っていませんでしたし、もしそうしたとしてもマナ安定化カードのサイクルを1つ決めるのにも問題が続出していたのです。サイクルを2つデザインするなんて、不可能です。


 両方の制限を組み合わせ、驚くほどにエレガントな解法を示してくれたのはエリック・ラウアー/Erik Lauerだったと思います。私たちには既にほぼ完璧と言える単純なマナ安定化カード、ギルド門があったのです。それなら、それを再録すればいい。再録なので、それをコモンの枚数にいれなくてもいい。これを「追加の」カードだとはっきりわかるように、基本土地の代わりに入れればいい。そうすれば、プレイヤーに渡るコモンの枚数を減らす必要もありません。まさに完璧です。

 デザインのほとんどにおいて、私は、問題はそれだけで解決するものではなく、その周りを見るべきものだということを学びました。そしてもう一つ驚くべき教訓として、もっとも基本的な前提も見直す必要があることがある、と。

アート:Michael C. Hayes

基本に帰れ

 一方で、私はこの第3セットの構造のいくつもの重点を、先の2つのセットを仕上げる前に仕上げたことを誇りに思っています。この構造が巧くいった後で、残り何ヶ月かのデザイン期間は何をしましょう? カードのデザインもしなければなりませんが、私はセット全体を1週間以内で作ることができるのは証明済みです。ヤッホウ! じゃあ、この有り余る時間は何に使いましょう?

 ドラゴンの迷路のデザインの初期に、マーク・ローズウォーターは私にセットのデザインについての重大な秘密を打ち明けてくれました。

 プレイテストしろ、と。

 マークによると、全ての新人リード・デザイナーは同じ過ちを犯すのだそうです。それは、プレイテスト不足です。私は既にプレイテストをしていましたが、情報を得る方法を知りました。さあ、プレイテストをしましょう! デザインの初期に、充分な枚数のコモンを作ったらすぐ、チームは毎週1回はプレイテストをしていました。コモンとアンコモンができてからは週2回以上、メールを通してセットの調整をしながらプレイテストするのが通例でした。

 「プレイテスト、カード変更、繰り返し」という手順そのものはそう驚くべきものではありません。そこには種も仕掛けもなく、ただチームはカードを使ってプレイするのに多大な時間を費やし、文章の一行を変更し、カードを置き換えるということを、全てのカードが可能な限りで最高のものになるまで繰り返すのです。セットがデベロップに渡ったあとも、この手順は繰り返されます。

 ここで「カード変更」についてもう少し触れます。カードの半分を投げ捨て、そして新しいデザインで完全に置き換えることもありました。セットの焦点をはっきりさせるため、細かな調整を大量に加えるだけということもありました。鍵となるコモンをアンコモンにしたり、あるいはその逆のことをするだけでプレイテスト全体の感覚が変わることもあります。ドラゴンの迷路のデザインの間、何回もこれが繰り返されたのです。

 初心者リーダーとして、会議室でデザインについて一日中語り合っていたいという強い誘惑はありましたが、マジックはゲームだということを忘れてはいけません。ゲームをしていなければ、マジックをデザインしているとは言えません。それではただ雑音を奏でているだけなのです。

迷路の終わり

 初めてのリード・デザイナー職を思い返してみて、私はその出来に満足しています。私の得たもの――つまり、このすべての経験から得たさまざまな知見――にもです。その中にはゲーム・デザイン固有のものもありますし、より広い分野のこともあります。私が作るのを楽しんだこのセットを、皆さんも楽しんでもらえれば幸いです。

 それじゃ、もう少しドラゴンの迷路のプレイテストをしてきますね。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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