月が蒼く染まるまで 〈前編〉

更新日 Feature on 2014年 3月 17日

By 行弘 賢

はじめに

 皆さん、ブルー・ムーンはご存じですか?

 僕は現実世界では見たことは流石にありませんし、おそらく皆さんも無いでしょう。しかしプロツアー『神々の軍勢』を終えて、その存在はデッキタイプとして確かに認識されています。

 とあるアジアのプレイヤーたちが選択したというそのデッキタイプ、「ブルー・ムーン」。どうやってそのブルー・ムーンが完成に至り、僕たちが何故それをプロツアーで選択したのかを詳しく解説させていただこうと思います。

何故今回僕はチームアジアの一員となったか

 ことの始まりは、グランプリ(以下GP)静岡にてツーチン・クオ/ Tzu Ching Kuo (備考1)から「プロツアー(以下PT)翌週のチームリミテッドGPのバルセロナ、もしまだ誰とも組んでなかったら一緒に出ないか?」というお誘いから。その場ではOKしたものの、すっかりそのことも忘れて一月程経ち、気がつけばGPバルセロナの旅券を取るか取らないかの選択の日が近づいて来ました。流石に危機感を覚えクオに連絡を取ってみると、どうやら三人目のチームメイトはリー・シー・タン/ Lee Shi Tian (備考2)になりそうだ、と連絡が。三人目のチームメイトも決まり、胸を撫で下ろした所で更にクオから一つの提案が。

GPバルセロナチーム。左からツーチン・クオ/ Tzu Ching Kuo、行弘、リー・シー・タン/ Lee Shi Tian。

「僕らアジアグループはPT開催の週の月曜日から現地でアパートメントを借りてプレイテストやるんだけど、良かったらそれに参加しないか?」

 モダンへの具体的な調整方法も決まっておらず、使いたいデッキも特に無い僕には渡りに船の提案でした。しかし問題もあります。僕は中国語はもちろんできませんし、英語もほとんどしゃべれません。そんな中、アジアの面々とプレイテストして果たして上手くいくのか……? そんな不安を抱えながら、「ま、いっか! 面白そうだし、なんとかなるっしょ!」という軽いノリでOKしちゃったのでした。

 こうして僕は、「アジア調整グループ」の一員としてPT『神々の軍勢』に参加することになりました。

チームアジアの面々。左からジェフリー・チャン/Jeffrey Chan、リー、シム・チャップマン/Sim Chapman、クオ、ケルヴィン・チュウ/Kelvin Chew。

日本でのモダン

 僕が住む和歌山という地はドラフトの手練れが多く、さらに言えばその人たちは皆ドラフトが好きで好きでしょうがない言うなればドラフトジャンキーな方々。そんな方々と『神々の軍勢』入りドラフトをこちらが音を上げるほどできたのは良いのですが、モダンの方はなかなか練習が進みません。

 さらに拍車をかけるように禁止改定があり、《野生のナカティル》、《苦花》が解禁、《死儀礼のシャーマン》が禁止に。環境に大きな変化が起こるであろうことが容易に予想がつきます。

野生のナカティル
苦花
おかえりなさい。

死儀礼のシャーマン
そして、さようなら。

 そんな中、僕はいくつか試作品とも言えるデッキを作ってみました。

 最初に作ってみたのは《都市国家の神、エファラ》入りの青白緑の《霊気の薬瓶》デッキです。

 《都市国家の神、エファラ》の「直前のターンにクリーチャーが戦場に出ていたなら1枚引く」という能力に注目して《霊気の薬瓶》と組合わせると相性が良いことに気が付き、どうせなら新しいカードも、と《オレスコスの王、ブリマーズ》なんかも使用してみました。

 このデッキも環境にいそうなデッキと調整してみましたが、結局そこまでの手ごたえを感じることができませんでした。他にも世界選手権2011で好成績を残した彌永君(備考3)のエスパーコントロールなんかのマイナーなデッキにも手を出しましたが、結局モダンに対して何の自信も無いまま日本を発つのでした……。

チームアジアとのプレイテスト 序

 2月17日20時過ぎにバレンシア空港に到着。タクシーで20分ほどのアパートメントに着くと、中から7人のアジア勢がお出迎えしてくれました。夕食の後、早速プレイテスト開始……と思いきや、ドラフトが始まりました。というのも、夕食の際に「アジアの面々は皆ドラフトの練習をほとんどしていない」という話になり、君はどれぐらいドラフトした?と聞かれ「40回以上かな」という話をしたのが原因です。ドラフト中もとにかく皆ドラフトの技術を学ぼうと、根掘り葉掘り様々なことを聞いてきます。「これがアジア勢の貪欲さか…!」と早速面食らいましたが、ドラフトが終わった後にモダンも少しプレイテストすることができました。

 さすがに皆プロツアー直前ということもあり、真剣に調整しています。僕はというとぼんやりとなんとなく「トロン強そうだなぁ」とトロンデッキのテストプレイを始めます。日本の友人が「トロンが強い!」と洗脳してきたせいかもしれません。

 少し調整を始めると、緑単色のトロンから赤緑トロンへと変貌を遂げます。ZOOのせいです。高速なクロックに対して対処手段が《全ては塵》や《忘却石》しかなく、これらではZOOに対して十分な対応ではないと判断したからです。そのため声がかかったのが、《紅蓮地獄》と《炎渦竜巻》でした。

 このように、とにもかくにも使用したいと思えるデッキタイプはZOOと調整し、ZOOと五分に近いか、有利なマッチアップのデッキを見つけるのがとりあえずの目的となりました。

 今回アジアの面々が持ち寄り、プレイテストしたのが以下のデッキです。(デッキリストはサンプルのものです。実際調整に使用したのは多少違うリストのものです。)

ドメインZOO

サンプルデッキ Shatun_ (3-1)

Download Arena Decklist
野生のナカティル
部族の炎

 《野生のナカティル》の解禁により一気に勢力を伸ばすであろうアーキタイプとして、今回のPTの台風の目であることは明らかでした。今回プレイテストするにあたり、このデッキを仮想敵にしなかった調整グループは無いのではないかと思います。

 《野生のナカティル》に始まるグッドスタッフによる華麗なビートダウンに始まる凄まじい序盤の後、ドメインの象徴でもある《部族の炎》で止めを刺す、典型的なビートダンデッキです。

ナヤZOO

サンプルデッキ sutata (3-1)

Download Arena Decklist
聖遺の騎士

 このデッキは「ドメインZOOに強いZOO」という立ち位置です。少し重めの構成にして、相手より一回り大きなクリーチャーを出すことができます。さらに、基本土地を多く採用し、フェッチランドやショックランドなどの土地からのダメージを減らすことでダメージレースを優位に進められます。

・青黒フェアリー

サンプルデッキ tennisStar99 (3-1)

Download Arena Decklist
苦花
思考囲い

 《苦花》を中心としたフェアリーのシナジーを絡めた、青黒のクロックパーミッションデッキです。《苦花》の解禁を受けて、PTでの使用者がいるのではないかと予想されたデッキです。ただし、使用者が多いと予想されるZOO系の《野生のナカティル》デッキに優位性が無く、そこまで使用者は伸びないと予想しました。エクステンデッド、スタンダードで猛威を振るった経緯があるため、軽視はできないダークホース的存在です。

ジャンド

サンプルデッキ dicekey (4-0)

Download Arena Decklist
タルモゴイフ
闇の腹心

 赤緑黒のグッドスタッフデッキです。《血編み髪のエルフ》が禁止になり、《死儀礼のシャーマン》が禁止になってもデッキタイプとして存在してしまうあたり、根強い強さが伺えますね。《コジレックの審問》等のハンデスを絡めながら2ターン目の《タルモゴイフ》や《闇の腹心》でプレッシャーをかける動きは、いつの時代も強いものです。

出産の殻

サンプルデッキ twop (3-1)

Download Arena Decklist
出産の殻

 今回のサンプルデッキはいわゆる「メリーラポッド」と呼ばれる無限頑強のコンボが導入されたものですが、他にも《鏡割りのキキジキ》を用いた無限コンボを導入した「キキジキポッド」も存在します。

 《出産の殻》デッキは《根の壁》や《台所の嫌がらせ屋》などのビートダウンに一定の耐性があるクリーチャーを存分に使用できるコンボデッキなので、ZOO系のデッキに有利を付けやすいデッキタイプです。

赤緑トロン

サンプルデッキ Frey_ (3-1)

Download Arena Decklist
紅蓮地獄
引き裂かれし永劫、エムラクール

 《ウルザの塔》等のウルザ土地を揃え、大量のマナを一気に獲得してビッグスペルを連打するデッキです。土地サーチのカードや色マナ変換のカードが多いため、色のタッチが用意なので、様々なバリエーションのトロンデッキが存在します。

 今回は赤緑のトロンを仮想敵としました。《紅蓮地獄》《炎渦竜巻》を使用することで、ZOO系のデッキに一定の耐性を保つのを目的としたトロンの形がメジャーになるのではないかとの予想です。

青赤欠片の双子

サンプルデッキ NonoH (5th Place)

Download Arena Decklist
詐欺師の総督
欠片の双子

 《詐欺師の総督》や《やっかい児》に、《欠片の双子》か《鏡割りのキキジキ》を組み合わせてで無限トークンを生成するコンボデッキです。最近では《瞬唱の魔道士》を3~4枚採用し、対戦相手のターン終了時から積極的に仕掛け、普通にライフを削るアグロプランを採用している双子デッキが増えました。

青白赤コントロール

サンプルデッキ marioivo (2nd Place)

Download Arena Decklist
稲妻
謎めいた命令

 モダンならではの《稲妻》《流刑への道》などの強力な呪文、インスタントタイミングでのクリーチャーからなる、非常に柔軟性の高いデッキです。主にビートダウンに有利なデッキですが、モダンは環境が広いこともあり、コンボ等の尖ったデッキは受けきるのは難しいです。

親和

サンプルデッキリスト avgjoe40 (3-1)Modern Daily #6767412 (2014/2/26)

Download Arena Decklist
オパールのモックス
頭蓋囲い

 親和というキーワード能力のカードはもう《物読み》しか採用されていませんが、《オパールのモックス》のマナ加速が爆発的展開を可能にするため、アーティファクト対策のされていないメインデッキでは最強と言われるビートダウンデッキです。

初日、終了

 初日のプレイテストの結論から言いますと、僕の心は大分トロンデッキへと動きました。環境への理解度がそこまで高いわけではないので、単純に自分との勝負をするような、コンボに近いデッキを選択するのが望ましいのでは? という感想を抱いたからです。

 明日は朝からトロンのZOO以外とのマッチアップのデータ取り、青白系のコントロールとZOOのマッチアップのデータ取りをする、と約束して寝室に向かいます。

 寝室につくと、飛行機の中で寝ていたのもあり、なかなか眠りにつくことができません。そんな中、ふとトロン繋がりで、去年行われたモダンのPT『ラヴニカへの回帰』のことを思い出しました。その時僕が使用したのは、青赤の《血染めの月》と《ヴィダルケンの枷》を採用したコントロールデッキです。

行弘 賢プロツアー『ラヴニカへの回帰』 / モダン

Download Arena Decklist
ソーサリー (3)
3 手練
アーティファクト (5)
3 ヴィダルケンの枷 2 殴打頭蓋
エンチャント (4)
4 血染めの月
60 カード