積み重ねブロック構築論:赤緑ステロイド

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Benafel and Fuller play each other in the quarterfinals最後の最後で敗れ去りはしたものの、かの東京で最も輝いていたのは、明らかに赤緑でした。特に AlphaBetaUnlimited.com (訳注:チーム名)が使用していたバージョンは、 4 名ものチームメイトをベスト 8 に送り込んだのみならず、加えて 15 位、17 位フィニッシュを飾っています。これは大変な偉業であることに間違いはありませんが、実はデッキそのものは何ら目新しいものではなく、また驚くような仕掛けが施されているわけでもありませんでした。
誰もが予想していたデッキだったにもかかわらず、なぜこんなにいい成績を収めることができたのでしょうか? このデッキの核となる部分を、順に見ていくことにしましょう。

thornscape familiar
インベイジョンブロックの赤緑デッキには、最も信頼のおける 2 マナ圏のスペルであるところのThornscape Familiar と kavu titan が各 4 枚ずつ必要だというところまでは、誰もが到達するでしょう。それに加えて、序盤に安定してプレッシャーをかけるために、あともう 1 種類、 2 マナ圏のスペルが必要になってきます。現実的な選択肢としては、blurred mongoose か Yavimaya Barbarian しかありませんが、これは、明らかに前者に軍配が上がります。
Blurred Mongoose の方が同系対決で有利なのは言うまでもありませんが、大抵の青いデッキに対しても、カウンターされず、ターゲットにならない分だけ強いと考えられます。「ザ・ソリューション」(訳注:PT 東京で Zvi が使用したデッキ。曰く、「フォーマットを破壊することはできなかったが、解決し得た」とのこと。)に対してさえ、赤ではない分だけ、 yavimaya barbarian よりもましです。唯一の欠点はといえば、 ravenous rats と相打ちになったり、 Nightscape Familiar に一方的にやられたりすることぐらいでしょう か。いずれにせよ、他に Raging Kavu などもデッキには入っているわけですし(後ほど、なぜデッキに入っているかについてはご説明しましょう。)いつでも Ravenous Rats と相打ちに取られてみたり nightscape familiar でぴったり止まったりしてしまう、タフネス 1 のクリーチャーなら、残念なことに山ほどいるわけで、いまさら1 種類ぐらい増えたところで大幅に不利になるということはありません。

raging kavu
次なる問題点は、どのようにして速攻を付けるかということにあります。
fires of yavimaya もないわけではないのですが、スタンダードとは異なり、消散クリーチャーも saproling burst も使えないため、「もともとのカードデザインどおりの使い方」をするしかありません。そこで、もとから速攻が付いているクリーチャーをプレイするのとどちらが有利か、天秤にかけてからデッキに入れるかどうか決めることになります。
Raging Kavu と skizzik は、それ以外の選択肢よりも優れており、kavu runner と Thornscape Familiar の相性の良さは、まさに特筆に価しますが、総合的に判断すると、やはりこれらのクリーチャーをプレイした方が、Fires of Yavimaya をプレイすることよりも重要だという結論になります。結果論から言っても、東京での状況からして明らかです。 Fires of Yavimaya がデッキに入りうるのであれば、当然誰もがデッキに入れていたでしょうし、実際には誰も入れていなかったということは、やはりなにかしらダメなのです。
結局、Raging Kavu は、ほとんど自動的にデッキに 4 枚入る強さですし、最低 3 枚の Skizzik も必須です。

さて次は、バーンスペルや CIP 効果(訳注:「場に出たとき」の効果)で他のクリーチャーを殺す能力を内蔵したクリーチャーについても見ていきましょう。urzas rageghitu fire は、誰しもが納得の選択ではありますが、 Assault / Battery を全く無視するわけにもいきません。ただこれは、どのメジャーなデッキタイプでも最低 2 マナから動き始めるこの環境において、第 1 ターンに Assault すべきクリーチャーが全く存在しないということを勘案すると、Assault / Battery には逆風でしょう。
やはり、タイムアドバンテージを得られるわけでもなく、また
Skizzikを除去できるわけでもないとなれば、役不足とせざるを得ないでしょう。
一方、Urza's Rage と Ghitu Fire はまた、デッキのサイドボードに入ることが多い overabundance との相性も抜群です。 Lucas Hager は Ghitu Fire を 3 枚しか使用していませんが、言ってみればこれはちょっとしたミスであって、私は、やはり 4 枚入れておくべきだったのではないかと思います。


さらに、 flametongue kavu と Thornscape Battlemage についても分析してみましょう。Flametonge Kavu は、相手の場に殺せるクリーチャーがいない時など、自分自身や味方のクリーチャーを吹き飛ばしてしまうリスクを背負っているので、なにも考えずに 4 枚入れるようなカードではありません。一方、 Thornscape Battlemage は、間違いなくいつでも 4 枚必要なカードです。ふつうの場合、 Flametonge Kavu はメインに 2 枚、サイドに 2 枚というあたりで折り合うようですが、私もこれで問題ないと思います。

さて、これまでのところを合計して、土地以外のカードが33 枚決まりましたが、直感的には、このデッキは 24 枚の土地を必要とすることから(実際に、ベスト 8 の 4 人のうち、土地 25 枚バージョンの Hager 一人を除き、 3 人が 24 枚バージョンを使用しています。)、残り 3 枚の枠が未定ということになります。 Freneau はここに Kavu Runner を 3 枚入れていますし、 Ryan Fuller は Barbarianを使っていました。
Fuller 自身、これはメタゲームの読み間違いだと言っていますので、これは割り引いて考えるとしても、私にとっては、 Benefal の選択であるところの、 4 枚目の Skizzik と2 枚の Kavu Runner で最後の 3 枚を埋めるという方針が、最も論理的にしっくり来ます。

ここまで来れば、あとメインデッキで残っているのは土地の選択だけです。これは突き詰めれば、 2 枚目の keldon necropolis を入れるかどうかということだけに集約されるのですが、これは両方とも「あり」なのではないでしょうか。

jade leech
さて、サイドボードの選択に移りますが、キーになるカードとしては、同系対決用の Jade Leech 、クリーチャーデッキ用の Flametonge Kavu 、 コントロールデッキ用の Overabundance といったところでしょうか。そのほかのアンチ・コントロール用のカードとしては 、 kavu chameleon などもあるのですが、「ザ・ソリューション」に対してはかなり効果的ではあるものの、一般的には少し遅すぎるきらいがあります。
残りのサードボードは、チューニング用の枠にするか、いるやもしれないドメインデッキ(訳注: 5 色 Harrow コントロール)対策としての tranquility や Thunderscape Battlemage あたりに落ち着くことでしょう。 Ryan だけは、他と少し変わったサイドボードの選択をしていますが、あまりたいした意味はなかったようです。
サイドに入っていないカードの中で、今、特に名前を挙げておくべきは、shivan wurm ぐらいでしょうか。

結局のところ、このデッキの特色を一言で総括すると「研究されつくした、何の変哲もない強いカードの集合体」ともいえるでしょうが、その一方で、AlphaBetaUnlimited.com とその他大勢ではどこが違ったのだろうか、という疑問も生じます。
Freneau に直接聞いてみたところ、彼は「 2 ターン目の Familiar 、 3 ターン目の Kavu Runner 、 4 ターン目の Skizzik が強い」というようなことを言っていましたが、私は、それだけだとは思いません。なぜなら Fuller は Runner を使ってさえいませんし、使っている他の連中も、枚数はまちまちだからです。 私は、他の赤緑デッキを含め、すべてのデッキリストを詳細にチェックしましたが、その結果、ある単純な結論に達しました。
実は、ほとんどの赤緑のデッキには致命的な欠陥があり、その欠陥が 14 ラウンドの間に蓄積して、この差を生じているということがわかったのです。すなわち、その他大勢の最大の間違いは、メインデッキで Overabundance をプレイしてしまうというメタゲーム選択のミスにありました。
もし違った環境であったなら、それも一つのチューニングですが、赤黒と赤緑にあふれたこの環境においては、それが致命傷となったわけです。

darigaazs caldera
さらに、次なる 2 つめの間違いもメタゲームの選択に関係しているのですが、それは、いわゆる「対策のやり過ぎ」のケースです。多くのプレイヤーが、いるかいないかわからない「ドメインデッキ」を警戒して、メインから Thunderscape Battlemage を使うばかりか、サイドからさらにエンチャント対策を追加していましたが、現実には、ドメインデッキがあまりたいしたことがなかったということを差し引くと、この保険は高くつきました。さらに、Battlemage の黒のキッカー能力を使うために Darigaaz's Caldera を導入したデッキまで見受けられましたが、これもマナベースの安定性にはマイナスに作用しています。

最後の、かつ最大の間違いは、ほとんどのデッキのサイドに Jade Leech が搭載されていないというところにあります。
Shivan Wurm の方を採用すべきか、 Leech と Wurm の両方を採用すべきか、さらには Jade Leech をメインに入れるかどうか、というような議論はあり得ても、同系対決を勝ち抜く上で、 5 / 5 や 7 / 7 が全くなしというのは考えられません。
その他、 Blurred Mongoose のかわりにミスチョイスで Yavimaya Barbarian を入れてしまっているデッキも少数ながら見受けられましたが、その他のコンポーネントは本流のデッキと非常に似かよっているため、これが、独立して開発されたデッキなのか、チーム内での単なるバリエーションなのかは、私にはよくわかりませんでした。

結局のところ、 AlphaBetaUnlimited.com の成功から、「ブロック構築とは何か」ということが垣間見えてくるのではないでしょうか。
彼らは、正しい(か、おおむね正しい)デッキを構築しましたが、その他大勢の人たちは、 60 枚中、平均約 4 枚のカードの選択を誤ってしまっていました。これが有利不利の差を分け、トーナメント自体を支配したのです。
実際、正しいバージョンのデッキをプレイしていた連中のほとんどは、 17 位よりも上に入っています。 Mongooseなしのバージョンも、同じチームが開発したバリエーションの一つであると仮定をして話をしますが、正しいデッキを選択した連中の中でも、さらに、「 Mongooseなしのバージョンをプレイしない」という、もう一歩進んだ正しい選択をしている連中だけが、ベスト 8 への階段を駆け上がっているのです。
もし、Mongooseなしのバージョンが、同じチームが開発したものではなかったとしても、些細な違いがどれだけ大事かということを、より明白に示していることに他なりません。彼らは、Benefal 、 Fuller と Cornelissen の 3 人を除いて、プロのプレーヤーですらないわけですから。


実際問題として、東京の経験は、今後のインベイジョンブロック構築トーナメントシーンに、どのように適用していくことができるのでしょうか。もれ伝え聞くところによると、アポカリプス(訳注:インベイジョンブロック第 3 のエキスパンション)は、東京のデッキがすべて消し飛ぶぐらいの強さだそうですが、いずれにせよそれまでは、このデッキは要対策デッキの筆頭として君臨しつづけることでしょう。特に最初のうちは、トーナメント参加者の 3 分の 1 が事実上全く同一のデッキを使っていたとしても、別に驚くにはあたりません。\ このデッキは、組みやすくて比較的使いやすい一方で、非常に強力であるため、どこへいっても遭遇するに違いありません。このコラムでは、デッキの回しかたの解説をするつもりはありませんが、その必要もないでしょう。

thornscape battlemage
対戦相手の立場から見たこの赤緑デッキは、爆発的に展開する攻撃的なデッキであるというのが第一印象です。このデッキの攻撃パターンは、 3 段階に展開します。まずはクリーチャーですが、このデッキは引きさえまともなら、第 2 ターンからはじまって毎ターン、クリーチャーを戦線に投入することができます。
それからバーンが襲ってきます。実際には、バーンに Flametonge Kavu や Thornscape Battlemage が組み合わさりますので、かなりのクリーチャー除去能力を有するとともに、ライフが一桁に落ち込んだ対戦相手を焼ききるのも、このデッキにとってはたやすいことです。

では、この赤緑デッキに勝つためには、どのようなデッキを構築すれば良いのでしょうか。何はさておき、そのデッキは、早くなければなりません。第 2 ターンから動きはじめることができないデッキは、すでにかなり不利ですし、ましてや第 3 ターンまで動けなければ、よっぽどのことがない限り逆転不能です。
スピードで対抗するには赤緑デッキは早すぎますので、これに勝とうとするデッキは基本的には、クリーチャー同士の相打ちからカードアドバンテージを稼ぐ方向性で行くか、赤緑のビートダウン戦略そのものを無効化する方向性で行くか、この両者のいいとこ取りで行くか、いずれかの戦略を取るしかありません。
相打ち戦略を採用する場合には、この赤緑デッキには 8 枚もの「クリーチャー兼除去」が入っているということに注意しておく必要があります。それを数で上回ってはじめて、カードアドバンテージが発生するからです。例えば黒赤デッキでは、Flametonge Kavuや、 1 / 1 と相打ちを取るための Ravenous Rats を基本として、 blazing specterbog downcrypt angel などの、より大きなカードアドバンテージを発生させるカードにつなげていくか、または、大型のクリーチャーを出しつつ、赤緑の大型クリーチャーを Terminate で除去する、という流れになります。
pyre zombie が回りはじめるまで生き残っていれば、最終的には勝つこともできるでしょう。


黒青の戦略も、これとおおむね同様です。 Fujita (訳注:藤田剛史)のデッキは、トーナメントでは赤緑デッキを食い物にしていましたが、これは addleprohibit や Ravenous Rats を採用することにより、引きがよっぽど悪くない限り、赤緑デッキにも遅れをとらないような構造になっています。また、 yawgmoths agendafact or fiction の存在により、いったん場を安定させて長期戦に持ち込めば、自動的に場を掌握することができます。繰り返しになりますが、アンチデッキの基本は、カードアドバンテージに裏打ちされた、すばやい相打ち戦略なのです。黒赤青デッキには、適当な低マナコストのスペルが黒青ほどの数は入りませんが、序盤を生き残ることさえできれば、より効果的なクリーチャー除去を使用することができます。

「ザ・ソリューション」(トーナメントで私が使用して優勝した白青デッキ)は、序盤の相打ち用の軽いクリーチャー、 exclude と Fact or Fiction からなるカードアドバンテージ、及び、相手の戦略を無効化する crimson acolytemeddling mage の組み合わせで構成されています。すなわち、「ザ・ソリューション」も赤緑も同じ枚数の土地を使用している状況で、こちらのカードは悪くても相手との 1 対 1 交換にはなるものばかりであることから、相手の大型クリーチャーを Apprentice とカウンターで処理しつつ、時間さえ稼ぐことができれば、 Exclude 、 Meddling Mage 、Crimson Acolyte 及び Fact or Fiction の合わせ技からのアドバンテージで相手を圧倒することができる構造になっています。危険があるとすれば、 Keldon Necropolis がどうにもならないことぐらいでしょうか。

最後になりましたが、ドメインデッキといって、 Collective Restraint を使用して赤緑のビートダウン戦略そのものを無効化するか、赤緑デッキに大量のクリーチャー除去があるということを念頭におきつつ、赤緑よりも強力なカードプールを使用して 1 対多交換を狙いに行くデッキタイプもあります。これらのデッキは、東京では成功を収めることができませんでしたが、いずれはうまくいく可能性もあると考えられます。

さて、以上の内容を簡単にまとめてみましょう。
赤緑デッキに勝つ方法は確かにいくつもあるにせよ、このデッキは、今しばらくの間、一大潮流でありつづけるでしょう。デッキそのものに改善の余地があるとすれば、白青デッキに勝てるようにすることと、同系対決の勝率を上げることがポイントになります。

Translation by Moro

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