津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 龍の隆盛と各デッキの変遷

更新日 Feature on 2015年 5月 7日

By 津村 健志

 こんにちは! 晴れる屋の津村 健志です。

 先週末に「グランプリ・サンパウロ2015」、「グランプリ・トロント2015」とふたつの大型イベントが開催されたので、今週はその結果を振り返ってみたいと思います。(リンク先は両大会の英語カバレージです。)

 まずは、両大会でトップ8に進出したデッキをご覧ください。

グランプリ・サンパウロ2015 トップ8

  • 優勝:「エスパー(青白黒)・ドラゴン」
  • 準優勝:「赤緑ドラゴン」
  • 3位:「緑信心タッチ赤」
  • 4位:「エスパー(青白黒)・ドラゴン」
  • 5位:「アブザン・アグロ」
  • 6位:「アタルカ・レッド(赤単タッチ緑)」
  • 7位:「アブザン・アグロ」
  • 8位:「エスパー(青白黒)・ドラゴン」

グランプリ・トロント2015 トップ8

  • 優勝:「アブザン・ミッドレンジ」
  • 準優勝:「マルドゥ・ドラゴン」
  • 3位:「バント(青白緑)・大変異」
  • 4位:「アブザン・アグロ」
  • 5位:「アブザン・大変異」
  • 6位:「バント(青白緑)・大変異」
  • 7位:「アブザン・ミッドレンジ」
  • 8位:「白緑《集合した中隊》」

 「エスパー・ドラゴン」が大暴れしたサンパウロに対し、「エスパー・ドラゴン」が1人もトップ8に残れなかったトロント。実に対照的な結果となった両大会ですが、上位陣のデッキを見てみると、トロントの方がより明確に「エスパー・ドラゴン」が意識されていたように思います。

 今週は王者「エスパー・ドラゴン」と、それに抗うその他のデッキの工夫をお伝えしていきたいと思います。まずは「エスパー・ドラゴン」からご覧いただきましょう。

「エスパー(青白黒)・ドラゴン」

Paulo Vitor Damo Da Rosa

グランプリ・サンパウロ2015 優勝
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 現環境で最高のデッキと評される「エスパー・ドラゴン」。プロツアー『タルキール龍紀伝』で鮮烈なデビューを果たしてからというもの、その勢いは留まることを知らず、各国のグランプリで結果を残し続けています。

 この連載でも幾度となくお伝えしているように、このデッキを支えているのは、比類なき強さを誇る《龍王オジュタイ》の存在です。

 すでにご存知の通り、この「龍王」の制圧力は生半可なものではありません。これまでは3枚のリストが多かったのですが、Pauloはこれを4枚フル投入することで、5ターン目から仕掛けられる可能性を高めつつ、《シルムガルの嘲笑》と《忌呪の発動》が安定したパフォーマンスを発揮できるようにしています。ここ数週間で、「エスパー・ドラゴン」対策として注目度の上がっている《死霧の猛禽》や《見えざるものの熟達》に対しても、《龍王オジュタイ》で殴り合いをするのが最適なので、そういった意味でも《龍王オジュタイ》の増量は素晴らしい選択だと思います。

 現在最も勢いのあるデッキということで、もちろんミラーマッチ対策にも余念がなく、それはメインデッキの《悪夢の織り手、アショク》といった形で具現化されています。

 《悪夢の織り手、アショク》の利点は、生き残ってしまえばそのまま勝利に直結するカードパワーの高さと、マナ・コストが軽いために仕掛ける際のリスクが低いことです。これまでのミラーマッチでは、サイドボード後に《英雄の破滅》を減らすのが一般的でしたが、今後はそれも再考する必要があるでしょう。

 「エスパー・ドラゴン」は今のスタンダードを語る上で欠かすことのできないデッキと言えますが、それゆえに多くのデッキがこのデッキを意識しています。そしてその代表格が、《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》を使用した「大変異」デッキたちです。

各種「大変異」デッキ

 《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》。このタッグは中長期戦で圧倒的な力を発揮し、従来のビートダウンデッキにはない、粘り強い攻撃を可能としてくれます。これは《信者の沈黙》や《危険な櫃》といった「追放系の除去」を持たない「エスパー・ドラゴン」に対して特に効果的な戦略で、さらには「大変異」軍団と相性の良い《見えざるものの熟達》もまた、「エスパー・ドラゴン」キラーとして知られる1枚です。

 一般的な「エスパー・ドラゴン」のリストは、「エンチャント」に触る手段がほとんどありません。《見えざるものの熟達》はそこを上手く突いた1枚で、一度設置にさえ成功してしまえば、それだけで相当に有利に試合を進めることができます。

 《見えざるものの熟達》の採用率はデッキによってまちまちですが、《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》の隆盛は先週末の一大トピックとなりました。ここからは、そんな各種「大変異」デッキをご覧いただきましょう。まずは最も代表的な「バント」バージョンから。

「バント(青白緑)・大変異」

Mark Jacobson

グランプリ・トロント2015 3位
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 プロツアー『タルキール龍紀伝』で8勝2敗を記録し、続く「グランプリ・クラクフ2015」でもトップ8に入賞した「バント・大変異」デッキ。環境初期に誕生したこともあり、「大変異」デッキの中でも、最もポピュラーなデッキとして知られています。

 基本的に「大変異」デッキは白と緑の優良カードの集合体ですが、「バント」バージョンは《龍王オジュタイ》とカウンター呪文のために青が足されています。

 「白緑」系のデッキは《龍王オジュタイ》、《命運の核心》、《太陽の勇者、エルズペス》といったカードを苦手としていますが、上記カウンター呪文はそれらのカードを封殺してくれます。

 前述の通り、「エスパー・ドラゴン」が《見えざるものの熟達》を乗り越えるためには、《龍王オジュタイ》でダメージレースをするのが最適とされていますが、サイドボード後に増量される《軽蔑的な一撃》がそれすらも許さないというわけです。

 このデッキにおける《軽蔑的な一撃》は、《棲み家の防御者》による再利用もあって本当に頼りになるカードので、《軽蔑的な一撃》のためだけにでも、色を足す価値は十二分にあると思います。

「アブザン・大変異」

Ben Feingersh

グランプリ・トロント2015 5位
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 続いては、黒を足した「アブザン」バージョンを。

 これらのカードも「バント」バージョンのカウンター呪文と同じく、「大変異」デッキが苦手とするカードを対処してくれる優れもの。3色目をどちらにするにせよ、苦手なカードを克服するために色を足す、という思想は同じですね。

 「バント」と比べると、このデッキは守ることに重きを置いており、こういった構成は「大変異」デッキ対決で真価を発揮します。

 これら2種類のカードは、《死霧の猛禽》に対して非常に効果的です。特に《太陽の勇者、エルズペス》は1枚でゲームに勝てるほどのインパクトがあり、仮に対処されようとも《棲み家の防御者》で回収できるので、ミラーマッチを意識するのなら「アブザン」バージョンでも「バント」バージョンでも採用を検討すべきカードだと思います。

 サイドボードに潜む《自傷疵》も黒だけの特権で、《龍王オジュタイ》の蔓延に伴い、採用率の上がってきた注目株です。今のところ「バント」バージョンが一歩抜きん出ている印象を受けていますが、今後「大変異」デッキが増えるのであれば、「アブザン」バージョンにも要注目です。

 また、プロツアー『タルキール龍紀伝』で「バント・大変異」デッキを使用していたCraig Wescoeは、一風変わったアプローチで結果を残しています。

「白緑《集合した中隊》」

Craig Wescoe

グランプリ・トロント2015 8位
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 《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》を軸にしているところまでは同じですが、このデッキが画期的なのは、《集合した中隊》を採用している点です。

 《集合した中隊》はまだ露出が少ないものの、環境でも屈指のパワーカードです。「インスタント」なので《命運の核心》直後のリカバリーにも最適ですし、《死霧の猛禽》を引きやすくなるので、安定性の向上にも貢献します。

 今後は《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》に加え、《集合した中隊》もよく見るパッケージとなるかもしれません。また、「大変異」を多用したデッキのお供として、《隠れたる龍殺し》もお勧めです。

 これもまた露出の少ないカードではありますが、「大変異」戦略に合致した優良カードです。「絆魂」のおかげで「赤単」系のデッキにも強く、その他のデッキに対しては《復仇》能力で盤面の掌握に役立ちます。《死霧の猛禽》が墓地にある状態ならば、「大変異」で唱えれば対戦相手のカウンター呪文を誘うこともできますし、このカラーリングで《死霧の猛禽》を使ったデッキならば、ぜひとも採用を検討したい1枚です。

 サイドボードにも《見えざるものの熟達》2枚、そして驚きの《暴風》が4枚と、「エスパー・ドラゴン」許すまじといった構成が目を引きます。ただし、トップ8インタビューで「《暴風》はやりすぎだったかも」とご本人が仰っていたので(リンク先は原文)、この枠は追加の《加護のサテュロス》や《見えざるものの熟達》でもいいかもしれません。

 このデッキは《集合した中隊》から爆発的な展開ができるため、「アブザン・アグロ」や同じような速度のデッキに対して強くできています。「タップインランド」も少ないので、「赤単」系のデッキにも強いデッキですが、その反面で《太陽の勇者、エルズペス》の入った「アブザン・ミッドレンジ」系のデッキには苦戦を強いられます。

 《太陽の勇者、エルズペス》に弱いというのはこのデッキに限った話ではなく、《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》を採用したほとんどのデッキにあてはまる問題ですが、3色目を足せば手札破壊やカウンター呪文で対処できるので、「アブザン」の流行り具合次第では色を足すことを検討してみてもいいでしょう。

 いずれにせよ、「エスパー・ドラゴン」への対抗勢力として、確かな足跡を残した「大変異」デッキたち。「大変異」クリーチャーたちは予想以上にプレイするのも対処するのも難しいので、まだ使ったことがないという方はぜひ一度手にとって、その奥深さを実感してみてください。

 ここまでは色とりどりの「大変異」デッキをご覧いただきましたが、《龍王オジュタイ》に対してより直線的なアプローチを試みたデッキも結果を残していたので、そちらもご覧いただきましょう。

「マルドゥ・ドラゴン」

Edgar Magalhaes

グランプリ・トロント2015 準優勝
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 《はじける破滅》は《龍王オジュタイ》を最も効率よく対処できるカードとして知られています。しかしながら、なかなかそれを上手く使ったデッキができないというのが実情でした。以前であればこの手のデッキは、《岩への繋ぎ止め》や《前哨地の包囲》による手数差で押し切る戦略が一般的だったものの、《ドロモカの命令》の登場がこの手のデッキにとって非常に大きな問題となってしまい、『タルキール龍紀伝』発売以降すっかり数を減らしてしまいました。

 そこでEdgarさんが目を付けたのは、「エンチャント」に頼った構築ではなく、「ドラゴン・クリーチャー」に焦点を当てたものでした。

 《ドロモカの命令》に屈することのない、優秀な攻撃手段であるこれらのカード。それに伴い、《龍詞の咆哮》と《忌呪の発動》の採用も可能となっており、以前よりも呪文の質が大幅に向上しています。

 《シルムガルの嘲笑》ほどの万能性はありませんが、攻める際にはそれを上回る効果を見せる《龍詞の咆哮》。そして《はじける破滅》の追加としての役割が期待できる《忌呪の発動》と、このデッキも「ドラゴン・クリーチャー」による恩恵を存分に受けています。

 サイドボードには《死霧の猛禽》デッキに劇的に突き刺さる《神々の憤怒》もしっかり4枚採用されていますし、メタゲームを読み切った見事な準優勝だと思います。

「アブザン・ミッドレンジ」

Lucas Siow

グランプリ・トロント2015 優勝
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 多くのプレイヤーが強烈に「エスパー・ドラゴン」を意識する中、優勝を勝ち取ったのは《棲み家の防御者》を採用した「アブザン・ミッドレンジ」でした。《棲み家の防御者》も後半戦に強いカードですし、メインデッキに採用された《命運の核心》や《世界を目覚めさせる者、ニッサ》というカード選択からも、このデッキがいかに「エスパー・ドラゴン」を強く意識していたかを垣間見ることができます。

 メインデッキの2マナの除去カードもギリギリまで削ってありますし、「エスパー・ドラゴン」過多のメタゲームの産物と言えるリストに仕上がっています。その分サイドボードには《アラシンの僧侶》、《悲哀まみれ》と多めに「赤単」対策が施してあり、2ゲーム目以降は余裕を持って対応できるようになっています。

 《アラシンの僧侶》はここ数週間でグッと評価を上げた1枚で、(1)2マナと軽いこと、(2)タフネス1クリーチャーの攻撃を牽制できる点が重宝されています。《悲哀まみれ》も相変わらず強力なカードですが、「赤単」プレイヤーも「疾駆」クリーチャーを駆使したりと《悲哀まみれ》対策を練っているので、《アラシンの僧侶》は今後更によく見るカードになるのではないかと思います。

 本編は以上となります。「エスパー・ドラゴン」一色のフィールドになるかと思いきや、その他のデッキもしっかりと工夫を施して結果を残しています。「大変異」デッキの活躍にも驚きましたが、個人的には「マルドゥ・ドラゴン」が最も印象に残っています。

 環境の停滞を決して許さない昨今のスタンダード。今週末には「グランプリ・パリ2015」が、来週末には「グランプリ・上海2015」が控えておりますので、スタンダード好きな方はお見逃しなく!

 それでは、最後に「今週の一押し」をご覧ください。

今週の一押し〜「青単ドラゴンコントロール」

Mike Flores

プロツアー『マジック・オリジン』地域予選(RPTQ) ウェストバレーシティ 1位
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 「Daily Deck」でも紹介されていた「青単ドラゴンコントロール」。古豪、Mike Floresがプロツアー地域予選(RPTQ)を突破したデッキは、強さと面白さを兼ね備えた夢のようなデッキでした。

 4枚ずつ採用された《精霊龍のるつぼ》と《精霊龍の安息地》が印象的なデッキリストですが、《精霊龍のるつぼ》はマナの面で、《精霊龍の安息地》はアドバンテージ面でコントロール対決で大きな役割を担ってくれます。

 重くて強力なカードが山のように詰め込まれたデッキなので、長期戦にさえ持ち込んでしまえばこちらの優位は揺るぎません。序盤を凌ぐことさえできれば、あとは煌びやかな「龍王」たちがゲームを決めてくれるという算段です。

 なお、このリストをご覧になって「《龍王コラガン》だけいない……」とお嘆きの方もいらっしゃるかと思いますが、Floresの最新リスト(リンク先は英語記事)にはばっちり《龍王コラガン》の姿がありました!

 これほどまでに面白いデッキリストはなかなかお目にかかれるものではないので、ぜひ一度お試しください!

 それでは、また次回の連載でお会いしましょう。

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