世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:北米編3

更新日 Feature on 2015年 8月 24日

By Mike Rosenberg

Mike Rosenberg is a writer and gamer and has been part of the Magic text coverage team since 2011. He joined Wizards as organized play’s content specialist in June 2014.

編集より

 マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015が、8月27日・28日・30日の日程で、アメリカ合衆国・ワシントン州シアトルにて「PAX Prime」と併催されます。

 本大会に先立ち、参加選手全24名それぞれのはじまりの物語、「オリジン・ストーリー」を選手への取材をもとに英語記事として制作、数回に分けて翻訳を掲載いたします。

 第5回は北アメリカ編その3として、オンラインから来た強豪、マジックより若いカナダの新星、そして独特の戦いを続ける一匹狼を見ていきます。彼らのはじまりと視線の先には何が…?


ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:北アメリカ地域プロ・ポイント上位

 キャリア前半はMagic Onlineの巨人として活躍し、そして今はプロ・マジックの世界でも巨人となっている、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得経験者ブラッド・ネルソン。彼はマジックにおいて凄まじいまでの戦績を積み上げてきた。

 もとはMagic Onlineで「FFFreak」というユーザーネームで有名だったネルソンだが、今では彼の参加したあらゆるトーナメントで本名が見受けられるようになった。「StarCityGames.com」の連載ライターとなる以前は世界中を見て回り、スタンダードのイベントに参加してはあらゆる相手を撃破していったものだ。

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ブラッド・ネルソン/Brad Nelson

 だがそんなネルソンのマジックとの出会いは、Magic Onlineで最も有名なプレイヤーのひとりに登り詰めるよりずっと前のことだった。

「学校の食堂で、親友のビル・ライズ/Bill Liesと彼の友だちに誘われて、マジックを始めたよ」と、ネルソンは当時を懐かしんだ。「1ゲームやっただけでもう夢中になったけれど、手元にカードがない。そこでカードを買いに、地元のゲーム店に駆け込んだ。俺たちはマジックのことを全然知らなかったが、ライズたちは『World Championship Decks』を持っていた。俺はカルロス・ロマン/Carlos Romaoが世界選手権で優勝したときの『サイカトグ』デッキを買った。『World Championship Decks』のカードが大会で使えないことはもちろん、サイドボードとは何なのかも知らなかったが、そんなこと問題じゃなかった。当時はマジックを学ぶ手段はたくさんあって、この新しい遊びを俺たちは時間を忘れて楽しんだ」

 それから間もなくして、ネルソンはマジックのより深い世界へと飛び込んでいった。とりわけマジックの遊び方を学び終えて、のちに彼が時間をかけて名声を高めていくMagic Onlineの世界に入ってからはどっぷりだった。そしてあまりに多くの失敗を重ねてプロツアー予選から離れながらも、彼は競技マジックを続け、プロツアーへと続く長い道のりを歩んでいった。

「プロツアー・ホノルルに招待されたのは、2009年のことだった」と、ネルソンは振り返る。「人生が変わったよ。実はそのプロツアー予選で優勝するちょっと前に、もうプロ・レベルのマジックに挑むのは辞めようと決めていたんだ。でもビル・ライズが――そう、俺にこのゲームを紹介してくれたあいつが、無理やり俺を車に乗せた。カナダの国境を越えて、ウィニペグで行われたプロツアー予選に俺を連れて行ったんだ。そうしたら、あっさり勝ってしまった」

 彼のウィニペグでの勝利は、何か特別なことがあるんじゃないか、という期待とは無縁のところで起きたことだったのだ。

「そして、初めてのプロツアーが始まった。実は親友のジェイコブ・ヴァン・ルーネン/Jacob Van Lunenが、ブライアン・デヴィッド・マーシャル/Brian David Marshallに俺のことを『Magic Online界の冷酷無比な殺し屋』とか紹介していたらしいが、俺は知らなかった」と、ネルソンは思い出を語る。「俺は1回戦から、舞台の中央に立たされた。反対側の席にはルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasが座り、カバレージ・チームの面々が俺たちを囲んで劇的なことが起こるのを待っていた。俺は一か八か賭けに出たものの、その試合に負けた。それでも落ち着いて、失礼のないように終えることはできた。このプロツアー中、インタビューは受けるわデッキテクを取られるわ、来る前は考えもしなかったことが一気に起こった。ウィザーズが俺のプレインズウォーカーの灯を無理やり点らせたとしか考えられないよ」

 「無理やり」とは言い過ぎかもしれないが、いずれにせよネルソンは、今後脈々と続く「Magic Online出身の有名プロ」のはじまりとなった。ネルソンは自身初のプロツアーで9位に入賞し、その後2度にわたりプロツアー・トップ8入賞を果たすと、ついに2010年度のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得に至ったのだった。

 ネルソンの旅路は浮き沈みも激しく、その後最前線から脱落した彼は再び一から道を登ることになった。だが、彼のスタンダード構築の実力を侮ることはできない。今年の世界選手権でも間違いなく注目が集まるであろうスタンダード・ラウンドを見れば、きっとネルソンが上位に躍り出て私たちを楽しませてくれるはずだ。

 ひとつだけ、はっきりしていることがある。ネルソンはすでに目覚ましい実績を残しており、その活躍はまだ終わらない、ということだ。


ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilsonの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:プロ・ポイント上位

 20歳のジェイコブ・ウィルソンは、今年の世界選手権に出場する選手たちの中でマジックというゲームそのものより若いプレイヤーのひとりだ。だがその短いキャリアで、彼はこのゲームの最高レベルのプレイヤーであることを確固たるものにしている。彼はすでに、マジック界で最も勇猛果敢なプレイヤーのひとりとして華やかな戦績と高い評価を得ているのだ。

 ベイエリアに生まれ現在はバンクーバーに住むウィルソンは、マジックで生計を立てている。彼は2シーズン連続でプロ・プレイヤーズ・クラブの「プラチナ」レベルを達成し、「ChannelFireball」に連載記事を持っている。今回の世界選手権2015で、ウィルソンがマジック最高の舞台に立つのは2度目だ。

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ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson

 プロツアーを経験した時間はまだ短いものの、ウィルソンにとってマジックは、幼少の頃より生活の一部となっていた。

「マジック自体は、昔から家族とキッチン・テーブルでカジュアルに遊んでいました」と、ウィルソンは当時を思い出す。「そして14歳のとき、フライデー・ナイト・マジック(FNM)の宣伝をネットで見たんです。そのときはあまりマジックをやっていなかったのですが、ネット上でマジックの宣伝が見つかるなんて嬉しかったですね。FNMは一週間で一番楽しい時間になりました。そして少しずつ、このゲームに通じていったんです」

 それからウィルソンがプロツアーで戦う権利を追い求めるようになるまでは、時間がかからなかった。そしてわずか16歳にして、彼は世界の最高レベルに仲間入りを果たしたのだ。

「プロツアー・フィラデルフィア2011に、レーティングで招待されました」と、ウィルソンは振り返った。「水曜日にウェブサイトに張り付いて自分のレーティングを確認すると、2093でした。たしか当時の世界ランキングで62位です。レーティングでの招待は航空券が贈られないため、旅費を稼ぐために初めて働きました」

 ウィルソンは自腹を切ってプロツアー・フィラデルフィア2011に参戦した。初めてのプロツアーはまったく別のレベルの戦いを彼に見せつけ、探求する必要があることを彼に教えてくれた。

「初めてのプロツアーは散々でした」と、ウィルソンは振り返った。「有利な構築デッキを作り上げ、新しいリミテッド環境に対応し、そして試合中は一切気を抜けない、過酷な戦いでした。そこで大失敗した僕は、マジックのことをもっと必死に学ばないとプロツアーの舞台で戦える真のプレイヤーにはなれない、ということを知ったんです」

 それからわずか3年足らず。プロツアー『神々の軍勢』にて、ウィルソンはスペイン、バルセロナの地でプロツアー王者の座をかけて戦った。惜しくもタイトルは逃したものの、これがすでに2度のプロツアー・トップ8入賞を誇るこの若きプレイヤーの、この先も長く続く道の第一歩となった。

 ウィルソンはマジックに集中するため、休学という道を選んだ。彼の中に燃える勝利への灯は、かつてないほど輝きを増している。世界選手権は、これからも多く訪れるであろうウィルソンがビッグ・タイトルを獲得するチャンスのひとつなのだ。


ショーン・マクラーレン/Shaun McLarenの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:プロ・ポイント上位

 プロツアーに向けた準備といえば、チームでの意見交換や練習がよく挙げられる。前回のプロツアーはまさにその好例で、シャハール・シェンハー/Shahar Shenharがチーム「ChannelFireball's Pantheon」へ移り、パトリック・チャピン/Patrick Chapinがチーム「Ultra PRO」へ移籍するというビッグ・ニュースが駆け巡ったのだった。

 だからこそ、プロツアー『神々の軍勢』での優勝を含むプロツアー・トップ8入賞2回を経験するショーン・マクラーレンを、ここで取り挙げよう。マクラーレンはチームに所属することなく、主にMagic Onlineでの練習と自らの知恵のみでトーナメントへの準備を進め、現在の地位を手に入れているのだ。この「一匹狼」的な練習方法はここ2シーズンのマクラーレンにぴったりと噛み合った。彼はプロツアー『タルキール覇王譚』ではシーズン内2度目の優勝まであと一歩に迫る決勝戦まで進出し、そして2年連続となる世界選手権の舞台に立つことになったのだ。

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ショーン・マクラーレン/Shaun McLaren

 そんなマクラーレンにとって、マジックは幼少の頃より彼の興味と楽しみの中心であり続けた。

「今でも、最初にパックを開けたときのことを覚えているよ」と、マクラーレンは懐かしむように語り出した。「両親との買い物が終わって、駐車場に止めた車の中だったな。両親が買ってくれた『アイスエイジ』を開けたんだ。パックの中身を通して見て、僕は《Phantasmal Mount》に心を奪われた。絵、テキスト、開けたてのカードの匂い、それらすべてに一気に魅了された。もう何が何だかわからなかった――当然、《Phantasmal Mount》がどういうカードなのかもわからなかった――けれど、僕はそれを追い求めた」

「それからというもの、僕はカーペットの上でカード広げたり学校に持って行ったりして、友だちや父、兄弟とマジックで遊んだ。それから母にも教えようとしたけれど、それはうまくいかなかったね。やがてマジックから少し離れたものの、10代の後半に昔のドラゴン・デッキを見つけて、また同じようにハマった。友だちの家のカーペットの敷かれた床でマジックを楽しんだんだ。そこからは知っての通り、床でマジックをする機会は減ったかな」

 10代の後半にマジックを再開したマクラーレンは、そこから競技マジックの世界を探検するようになった。そして初めてのプロツアー予選が、その面白さを彼に教えてくれた。

「最初のプロツアーは、プロツアー・プラハ2006だったね」と、マクラーレンは振り返る。「幸運にも、初めの数回でプロツアー予選優勝を果たせたんだ。自分でも驚いたけれど、その後も予選へ参加する大きな自信に繋がったよ」

「プロツアーの舞台は、まったくの別物だった。そのスケールも特別感も、信じられないほどだった。このプロツアーは、巨大なスタジアムで行われたんだ。明らかに緊張しまくっている中で、僕は特筆すべきことが《嵐の獣群》を2枚採用したくらいの平凡なデッキをドラフトした。うん、《嵐の獣群》を唱えたさ。そしてそいつは、とんでもないカードだった。僕の予想を超えて、そのドラフトでは3戦全勝できた。そして続く2回目のドラフトでは、《稲妻のらせん》2枚と《骸骨の吸血鬼》が入ったデッキが作れて、これは強いと思った。結果はお察しの通りさ。3戦全敗だ。とはいえ、プロツアーは最高の学びの場だったし、兄弟と一緒に海を越えてヨーロッパに来られたのは最高の旅だった。とりわけこの旅は、『あれこれ考え過ぎるな』ということを僕に教えてくれた。ただ流れに身を任せ、楽しめばいいのさ」

 その言の通り、最近のマクラーレンは流れにその身を預け、ひとりでの練習を続けて結果を積み上げている。世界選手権2015に選ばれたプレイヤーたちの中でも、自身のみで練習をするプレイヤーはほとんどいない。果たしてマクラーレンは、今大会で「一匹狼」でのさらなる成功を収めることになるだろうか?

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