世界選手権2015への「オリジン・ストーリー」:欧州編2

更新日 Feature on 2015年 8月 25日

By Mike Rosenberg

Mike Rosenberg is a writer and gamer and has been part of the Magic text coverage team since 2011. He joined Wizards as organized play’s content specialist in June 2014.

編集より

 マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015が、8月27日・28日・30日の日程で、アメリカ合衆国・ワシントン州シアトルにて「PAX Prime」と併催されます。

 本大会に先立ち、参加選手全24名それぞれのはじまりの物語、「オリジン・ストーリー」を選手への取材をもとに英語記事として制作、数回に分けて翻訳を掲載いたします。

 第6回で注目するのは、昨年のワールド・マジック・カップを制したデンマークから、17歳にして世界一のチームを率いたキャプテンと、プロツアーチャンピオン。そしてスペインからもプロツアーチャンピオン。いま目が離せないヨーロッパの選手紹介、後編をお届けします。


マーティン・ミュラー/Martin Müllerの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:ワールド・マジック・カップ2014優勝チームキャプテン

 世界選手権に出場するプレイヤーといえど、そのすべてが黎明期からマジックをプレイしているわけではない。今年の世界選手権では、20歳以下のプレイヤーが合わせて3人、様々なフォーマットにわたる技術と知識を証明してこの舞台にいる。ひとりは、弱冠20歳にしてプロツアー・トップ8入賞2回のジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson。それから、昨シーズン内に2度のトップ8入賞を果たしたチェコ共和国の新星、アンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráský。

 そして、マーティン・ミュラー。昨年のワールド・マジック・カップ2014にて一躍その名を上げたばかりの彼は、今大会最年少となる17歳での出場だ。それについては後述することとして、そのはじまりを見ていこう。

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マーティン・ミュラー/Martin Müller

「僕のマジックとの出会いはよくある話でした」と、ミュラーは振り返る。「12歳のとき、『ミラディンの傷跡』が登場したばかりの頃でしたね。学校で友だちに、デンマークのロスキレにある『ファナティック/Fanatic』という店に行こうと誘われました。この店と出会えたのは幸運でした。店内は明るく楽しい雰囲気で、毎週金曜日にはFNMの前に18歳以下のプレイヤーが参加できるイベントがあって最高でした。初めて行ったその日から、僕はマジックに夢中になったんです」

 ミュラーのマジックとの付き合いは比較的短いものだが、その中で彼は瞬く間にこのゲームの核心まで潜っていった。マジックとの出会いから間もなくして、彼はプロツアーを目指すようになったのだ。

「2013年、プロツアーの権利を獲得する最初のチャンスが訪れました。グランプリ・ワルシャワ2013で12勝2敗、最後の15回戦。でも僕はそこで負けてしまいました」と、ミュラーは振り返った。「それがきっかけで、プロツアーの権利を狙うようになりました。翌年にはMagic Onlineのプロツアー予選で決勝まで進出しましたが、そこでも負け。ですがそのとき、チャンスはあると確信しました。そしてすぐ次の週、デンマークで行われたプロツアー予選で僕は再び決勝まで進みました。そこでついに優勝を果たし、プロツアー『神々の軍勢』の権利を獲得したんです」

 こうしてプロツアー『神々の軍勢』がミュラー初のプロツアー参戦となったが、彼はそれ1回で終わるプレイヤーでは到底なかった。ミュラーは初めてのプロツアーで17位に入賞し、2,500ドルと次回プロツアーへの招待を得る。そしてそこでも45位という成績を収めて1,500ドルを獲得した。その勢いは留まらずプロツアー『マジック2015』にも参加すると、66位で1,000ドルを獲得。プロ・ポイントでデンマーク代表のキャプテンとなるに至った……

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……そしてキャプテンとして挑んだワールド・マジック・カップ。どれだけ控えめに言っても、ミュラーと彼のチームにとって大満足の週末だった。

 今、ミュラーはチーム「Thommo」を代表する4人のプレイヤーのひとりとして今回の世界選手権に臨んでいる。そこには、彼の家の棚に世界最高のトロフィーをもうひとつ飾るためのチャンスが、待ち受けているのだ。


マーティン・ダン/Martin Dangの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:プロツアー『タルキール龍紀伝』優勝

 ワールド・マジック・カップ2014でのデンマーク代表の爆発的な活躍に始まり、2014-2015年プレミア・プレイ・シーズンを最後まで席巻したチームがある。マーティン・ダンはそのチームを代表する中心的なプレイヤーのひとりであり、やがて「デンマークの侵攻」は「警戒すべき新チーム」へと変わっていった――そのチーム名を「Thommo」という。

 突如として現れたように見えるダンだが、そのプレイ歴は長い。それでも、彼のプレミア・プレイでの成功はグランプリ・リバプール2015が初めてだった。そこで彼は自身初のグランプリ・トップ8入賞と優勝をひとつの週末で一度に成し遂げたのだ。とはいえ、それ以前にも彼は「Magic Online Championship Series」のひとつで優勝しプロツアー『タルキール龍紀伝』の権利を獲得している。そしてそのプロツアーにて、彼はチーム「Thommo」、ワールド・マジック・カップ2014優勝国代表のマーティン・ミュラーなどヨーロッパのトップ・プレイヤーたちが所属するチームに誘われたのだ。

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マーティン・ダン/Martin Dang

 そのプロツアーが終わってみれば、彼は自身初のプロツアー・トップ8入賞と優勝を一度に成し遂げ、プロ・マジック・プレイヤーの上位層へその名を轟かせた。この年はダンにとって思い出深い1年となったが、マジック最初期のカードを「オリジン」に持つ彼がここに至るまでには、多くの歳月を要したのだった。

「私がマジックを始めたのは『リバイズド』の頃だった」と、ダンは当時を思い返した。「いとこに誘われたんだけど、最初はカード・ゲームに小遣いを費やすのが嫌だった。でも彼はそんなことお構いなしに説得してきたんだ。それからというもの、私たちは毎週末マジックのことを語り合い、延々とゲームを楽しんだ。彼の切り札は《大喰らいのワーム》で、私は《大海蛇》だった。その頃から私たちはマジックに夢中だったんだ」

「毎週、近所の店で『トレーディング・デー』があって、火曜日は必ず店に行ってトレードとゲームを楽しんだ。同じ店に遊びに来ている人たちとも少しずつ仲良くなり、新しい友だちもできた。中には今でも話をする人がたくさんいるよ。私が大会に出るようになったのはずいぶん後になってからだった。最初の認定イベントで『《泥衣のワーム》ゲドン』を使ったのが懐かしいな。結果は散々だったけれど、勝てた試合もあったし、これが競技マジックへの灯が点ったきっかけになった」

 それから数年後、ついにダンはプロツアーへの道を見出す。万事期待通りとまではいかなかったものの、そこで起きた多くの出来事は思い出として長く残っている。

「初めてのプロツアーは2002年にニースで行われたものだった」と、ダンは振り返る。「仲の良い友だちのピーター・ゴットリーブ/Peter Gottliebが、自分は権利を持っていないのに『プロツアーを肌で感じたい』と一緒について来た。ニースでは、スヴェン・ギールセン/Svend Geertsen、ラース・ダム/Lars Dam、ピーター・マヤヴィク/Peter Myrvig、ウルリク・タルプ/ Ulrik Tarpというデンマークのプレイヤー4人と出会い、ともに滞在した。初日のフォーマットはブースタードラフト2回で、4勝2敗以上が2日目に進出できた。やる気に満ちていた私だが、1回目のドラフトでひどいデッキを作ってしまいあえなく全敗。2回目のドラフトで全勝できたから、少しは気分が晴れたけどね」

「2日目は次回のプロツアーに向けたチーム戦のプロツアー予選に出場した。ピーター・マヤヴィクとウルリク・タルプと私の3人でチームを組み、なんと私たちはその予選で優勝できた。優勝を決める試合で、初手3枚までマリガンをして勝ったことが思い出深いね。《ナントゥーコの影》と《》2枚でキープして、勝利をもぎ取ったんだ。プロツアーの方ではスヴェン・ギールセンが準決勝まで勝ち上がり、私たちは彼のおごりで全員の祝勝会をした。終わってみれば、初めてのプロツアーにしては最高だった。この上なく楽しい時間を過ごしたし、何より他のデンマーク人プレイヤーたちと知り合いになれたのが嬉しかったよ。私をその後大きな成功に導いてくれるチーム『Thommo』に誘ってくれたのが、ラース・ダムだったんだ」

 驚くべきことに、このプロツアーから10年以上経って、ラース・ダムとマーティン・ダンは新旧のマジック・プレイヤーが集まるチームにて再びプロツアーへの練習をともにすることになった。ダンの経験を加えた練習の成果は、彼自身のプロツアー優勝による世界選手権への出場という形で表れた。ダンをはじめとするチーム「Thommo」所属の出場者たちは、ともに今大会への準備を進めている。今シーズンふたつのプロツアー優勝トロフィーを持つこのチームの面々は、今大会でも間違いなく注目の的となるだろう。

 ワールド・マジック・カップ2014、デンマーク代表の《砂塵破》トップデッキ、人呼んで「デーンブラスト/Daneblast」とそれに続くチーム「Thommo」の大活躍により、今シーズンはヨーロッパ勢がその地位を固めている。ダンと彼のチームメイトが今大会の上位で接戦を繰り広げても、驚くことはないだろう。


アントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio Del Moral Leonの「オリジン・ストーリー」

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招待事由:プロツアー『運命再編』優勝

 プロツアー『運命再編』最終日。8人のプレイヤーがフィーチャー・マッチ・エリアに再び登場し、戦いに臨んだ。オランダ出身の殿堂顕彰者や4度目のプロツアー・トップ8入賞となった今年の殿堂顕彰選出者、そして昨年モダンで行われたプロツアーで決勝まで進出した者。このプロツアーのトップ8入賞者には、優勝を期待される注目のプレイヤーが多くいた。

 だが準々決勝と準決勝を経て決勝の舞台に上がったふたりのプレイヤーは、比較的新しい顔ぶれとなった。ひとりはジャスティン・コーエン/Justin Cohen。マディソンにてあのサミュエル・ブラック/Samuel Blackをルームメイトに持つ彼は、マジックという名のパズルを解く才能を開花させ、華々しくプロツアー・デビューを飾った。そして、そのテーブルの反対側に座したのが、アントニオ・デル・モラル・レオンだ。スペイン出身のこのプレイヤーは、「Magic Online Championship Series」の優勝により4度目のプロツアーに出場したところだった。

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アントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio Del Moral Leon

 決勝の4ゲームを終えたのち、デル・モラル・レオンは会場で知り合った同国の仲間たちに囲まれ、スペイン人プレイヤー初のプロツアー王者として額面に40,000ドルと書かれた小切手を手にプロツアー優勝トロフィーを掲げた。この勝利により彼は一躍スポットライトを浴びることになり、続く数ヶ月間も2014-2015年プレミア・プレイ・シーズンにおけるヨーロッパ勢の大躍進を支えるマジック界期待の新星のひとりとして、極めて堅実なプレイでその存在感を見せ続けた。そんなデル・モラル・レオンのマジックとの出会いは、彼が14歳のときだった。

「近所の子どもたちとサッカーで遊んでいた、ある夏の夜のことだった。親友のラファエル/Rafaelと、それからアントニオ/Antonioとペドロ/Pedroの双子の兄弟が、『トラーリア/TOLARIA』というゲーム店に行こうと誘ってきて、そこでマジックの遊び方を教えてもらった」と、デル・モラル・レオンは振り返った。「最初にラクドスの構築済みデッキを買って、その後友だちがオルゾフの構築済みデッキを貸してくれたのを覚えているよ。オルゾフはすごく気に入ったんだけど、1勝もできなかった! それから最初に開けたパックからは、当時セット内で一番人気のカードだった《真髄の針》が出てきたよ」

「僕はすっかりこのゲームが好きになって、毎日のように友だちと店に通うようになった。飲み物や食べ物も持ち込んで毎日笑い合っていたけれど、でも何年か経ったあるとき、その遊び方を辞めた。そのままじゃまったく勝てるようにならない気がした。そこからマジックの競技面を楽しむことを決意して、Magic Onlineをインストールしたんだ……」

 スペイン人プレイヤー初のプロツアー王者にしてプラチナ・レベル・プロ、そして「Magic Online Championship」トップ4のデル・モラル・レオンの「オリジン」は、オンライン上での彼――「CharLy」を抜きにして語ることはできない。

 Magic Onlineをよくプレイする方なら、その名前に見覚えがあるかもしれない。「CharLy」はデイリー・イベントやプレミア・イベント、フライト式のイベントを問わず数え切れないほどの試合を行った。そして多くの人にとっては、今年の「Magic Online Championship」での彼の勇姿を覚えていることだろう。彼はその大会で準決勝まで進出し、再びモダンの腕前を披露したのだ。

 Magic Onlineに多くの時間を費やすにつれてデル・モラル・レオンのマジックの技術は伸び出し、やがて彼をプロツアー予選優勝まで導いた。この時デル・モラル・レオン18歳。プロツアー『ラヴニカへの回帰』が、プロ・レベルの舞台のデビューとなった。

「シアトルで行われるプロツアーの権利をなんとか勝ち取ったよ」と、デル・モラル・レオンは思い出を語る。「プロツアーに出られるなんて、信じられなかった。いつも家で生放送を通して見ていた強豪たちが僕の周りにいて、彼らと戦うこともあった。なんと1回戦目から、あのガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifと対戦できたんだ!」

「初日からうまくいかなかったけれど、そんなの何でもなかった。夢の中に入れた子どもみたいに楽しんだ僕は、これからもマジックを続けてプロのプレイヤーになってやると意気込みを新たにした。その後『Magic Online Championship Series』で優勝し、それからスペインのワールド・マジック・カップ予選でも勝った。最高のチームと一緒に国を代表して挑むことになったワールド・マジック・カップは、もう勝ちたくて仕方なかったね。こういう大会に出るたびに、もっと出たいって気持ちになるよ」

 そんなデル・モラル・レオンにとって、昨年は大興奮の1年だった。スペイン代表は昨年のワールド・マジック・カップで30位という成績を残し、彼は賞金1,000ドルとプロ・ポイントを獲得した。

 そして、「Magic Online Championship Series」での優勝により、デル・モラル・レオンはプロツアー『運命再編』――彼のマジック人生を一変させるイベントの招待を得た。その大会での活躍により、デル・モラル・レオンは今年のワールド・マジック・カップの出場も確定させた。今度はスペインの国内王者として、国を代表して戦うことだろう。

 今、デル・モラル・レオンは世界選手権2015という舞台まで登り詰めた。果たして彼は、マジック・コミュニティに新たに登場した若手プロの一員として、もうひとつビッグ・タイトルを獲得し会場を沸かせることになるだろうか? もう間もなく始まる戦いのゆくえを見守ろう。

インタビューに対するデル・モラル・レオンの回答は、殿堂顕彰者にしてカバレージライターのフランク・カーステン/Frank Karstenと翻訳者にしてジャッジのハビエル・マーティン/Javier Martinの両名によって作成できた。ここに謝意を表する。

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