Poor Shark 元日本チャンピオンの小宮、堂山、プロツアーベテラン桧垣と万全の布陣の Voice of Soul。そして、元日本代表の黒田、脅威の今大会負け無しの森田、決勝戦の紅一点大塚で構成された Poor Shark。決勝 4 チームの半数を占める西日本勢のぶつかりあいである。
ドラフトは最初のパックから波乱ぶくみであった。環境最強と表現しても過言ではない Rout が含まれていたのである。当然のように Rout が開封者小宮のパイルに納まった後も、次々と強力なカードが姿を見せる。あまりにカードストックが強すぎて、相手チームの邪魔をしている暇などまったくない。かけひきどころか、自分のデッキに入る強力カードを取るだけで手一杯なのである。その結果、いずれのプレイヤーも、十二分に勝ちへの可能性を秘めた有力なデッキを組み上げた。
それぞれのデッキを簡単に見てみよう。
まずは、桧垣 VS 黒田。優秀なクリーチャーと除去スペル。安定した赤黒ビートダウンを組み上げた桧垣。対する黒田は、その赤黒を徹底的にメタった白緑デッキを組み上げた。キーとなるのは黒・赤・赤の合計 3 体の Acolyte と、ゲームを決定づける Armadillo Cloak。赤黒相手に、この布陣はさすがに強力だ。
別々のテーブルに分かれてデッキ構築をしている、それぞれの陣営にインタビューしてみた。
黒田 「俺はなんとしても勝たんとあかん。」
桧垣 「勝てる気がしない。プロテク 5 体がさすがにきつい。」
このマッチアップはどうやら黒田有利か。
Voice of Soul 続いて、小宮 VS 大塚。Rout、Stormscape Master、Stalking Assassin、Tek、Phyrexian Infiltrator などなどなど、書き連ねるだけで笑い出しそうな強力レアカード満載の青白黒デッキを仕上げた小宮。2 マナ圏不在が若干の不安要素ながら、除去の充実した赤黒ビートダウンを組み上げた大塚。
それぞれの陣営の感想はこうだ。
黒田 「つかさんのデッキも、思ったよりすっきりできとったから。相手を事故らしたらなんとかなるかも。」
堂山 「桧垣も小宮も、相手の方がメタっとるからねぇ。」
デッキのポテンシャルは小宮有利。それを、ひっくり返す要素が、大塚が抱える 2 体の Slingshot Goblin といったところか。
最後に、堂山 VS 森田。序盤、緑白青中心のドラフトから、流れを読んで赤緑中心の 4 色デッキにシフト、脅威の Magma Burst × 4 搭載デッキを組み上げた堂山。Treva、Vodalian Serpent × 2 をフィニッシャーとした、青白タッチ黒緑デッキに着地した森田。相手チームの邪魔をすることも忘れてはいけない 3 番手でありながら、いずれのデッキもなかなかに凶悪だ。
コメントを聞いてみよう。
黒田 「森田が勝負。」
森田 「デッキが重いから。うまく回ってくれたらなんとか。」
堂山 「失敗ドラフトや。最初のパックに Rout が出たのがまずかった。おかげで、小宮が最初に決めてた分担よりも、白を多めにドラフトせなあかんようなった。(結果として) 白を取りあう形になって、おたがいにデッキが弱なってもうた。」
両者の謙遜したコメントはともかく、デッキのポテンシャルはともに高い。タッパー、飛行クリーチャーといったキーカードは、双方ともに確保している。あとはどちらが安定してマナを引くか。そして切り札となる強力カードをトップデッキできるか。
もし、予想通りことが進めば、黒田と小宮が 1 本づつ取り合った 3 本目。チームの勝敗を決めるのが、この堂山 VS 森田戦となるだろう。
堂山剛志 VS 森田雅彦
Game 1
先手を取ったのは堂山。運命の初手は…ノーランド。選択の余地なくマリガンをしたあとも、Mountain × 2、Island × 2、Quirion Sentinel、Magma Burst という手札。メイン地形の Forest が無い上に、スペルも少ない。これ以上手札を減らすわけにはいかないが、あまり歓迎したくないスタートである。
初手キープを選択した森田は、後手第 1 ターンに Sunscape Apprentice を召喚。その後も、青タッパー (Stormscape Apprentice)、緑タッパー (Thornscape Apprentice)、Razorfoot Griffin、と順調に展開。対する堂山も、先手第 3 ターンに待望の Forest を引き当て、マナバーンをしながら Sentinel を、続くターンに Faerie Squadron を召喚した。これで盤面に展開された戦力はほぼ拮抗。ライフはともに 16 と、序盤はなかなか見物しがいのあるデュエルとなった。
しかし、盤面に反映された情報と違い、堂山の手札は苦しい。土地カードを除く有効カードは Magma Burst 1 枚だけ。最初のマリガンが効いているのだ。ドローしたカード Primal Growth を見た時点で、堂山は短期決戦の覚悟を決めた。Sentinel を生贄に捧げ、欠けていた白マナを確保すると同時に、デッキを圧縮。次の有効ドローの確率を上げる。さらに、手札に残された最後の切り札、Magma Burst でタッパー 2 体をまとめて除去し、Faerie でビートダウンする体制に入ったのだ。
堂山のデッキはその覚悟に応えた。トップデッキ Armadillo Cloak。即座に Faerie に装着して攻撃。ライフ差を一気に 21 対 11 に突き放したのである。
しかし、堂山の抵抗もここまでだった。Cloak を Rushing River で失い、再度召喚した Faerie も、森田が再び青タッパーを引いたことで封じられてしまう。あとは、手札の枚数差がそのまま戦線に反映され、森田の航空戦力がゲームを決めたのである。
Game 2
この時点で、黒田が桧垣から 1 本目を先取。小宮 VS 大塚戦は、長引いているものの、小宮有利で進んでいる。やはり、キーとなるのがこの対戦なのは間違いない。
再び先手を選んだ堂山は、1 戦目の嫌な展開を思い出したかもしれない。土地 5 枚と、Quirion Explorer、そして Magma Burst。土地の色が揃っていること、そして 4 枚装備の主砲 Burst があることが救いではあるが、あまりに手駒が少ない。これでは、よほどドローが良くなければジリ貧の展開になるではないか。…その不安を抑えて、堂山はキープを選択した。
もはや、速攻しか勝機はない。そう判断したのだろうか、2 ターン目に Explorer、3 ターン目に Grifin を召喚した堂山は、土地を惜しまず、森田の最初のクリーチャーと森田自身を Magma Burst した。その甲斐あって、森田のライフは、あっという間に 8 にまで削られる。
しかし、堂山の捨て身の攻撃も、森田が叩きつけるように召喚した、たった 1 枚のカードで覆されてしまう。
Treva, the Renewer。
盤面を完全に支配する究極の飛行戦力。そして、この瞬間に、最も重要なリソースである、森田のライフを回復する特殊能力。速攻に全てを賭けていた堂山には、この決定的状況を覆す手立ては残されていなかった。
森田 Win
キーとなる対戦を森田が制し、その結果がそのままチームの勝敗を分けた。当初の予想通り、黒田 VS 桧垣戦を黒田が、大塚 VS 小宮戦を小宮が制したからである。
ともあれ、史上初の女性プレイヤーの決勝進出である。Poor Shark の決勝での健闘に期待したい。