Wise Words - 武装せよ!

更新日 Feature

 飛行機の中で費やす貴重な時間のおかげで、俺はかつてないほどに多くの本を読むことができている。映画化された原作本を色々と読んでいるうちに、物語の再構成に大枚を突っ込めばいいものができる、という理論に気がついた。
 最近、Steven Pressfield の最初の小説にして Robert Redford 監督の映画の原作でもある『The Legend of Bagger Vance』を読み終えた。その映画を観たことはないが、映画の撮影者たちが(俺の好きな) Will Smith にまったく相応しくない役を割り当てている(もしスター性が欲しかったなら、多少年老いているとはいえ、Sam Jackson か Morgan Freeman のほうがよほどよかっただろう)のは判った。それに、その本には、何らかの競技に興味のある人なら誰でも非常に面白く読めるようなことが書かれていた。
 この本の中では、美しく描き出されている考え、つまり生命の隠喩としてゲームをプレイするということがストーリーを破綻させることなく用いられている。どんなゲームでもよかったんだろうが、Pressfield は、彼がゴルフというゲームに対して持っている情熱と、1人のゴルファーがマッチのほとんどにおいて他のプレイヤーに実際に影響を及ぼさない、運動上の相互作用はないという特徴を重視してゴルフを選んだわけだ。
 マジックは、それがゲームであり、チームでなく個人が対戦するという意味で非常に似通っている。しかしながら、この本を読んでいくと、非常に特定された部分、つまり、プレイヤーがゲームそのものに対して持つ敬意という点で、マジックとゴルフの間には違いがあることが判る。ゴルファーは、審判団の目が届かないほどに広いエリアでプレイするため、一般に厳格な規則を遵守し、自らに対する罰則を自己申告する。この厳格な規則なしでは、俺たちが常々目にしているような腐敗によってマジックが正当に行われているかどうか不安になるのと同じように、ゴルファーの汚染によって、ゴルフというゲームのすばらしさが飲み込まれていただろう。
 US Nationals での Casey McCarrel の大失敗のおかげでイカサマは再び注目されたわけだが、ここではっきりさせておかないと、そう遠くない間に今回もまた忘れられてしまう。今までにも、問題を起こしたプロ・プレイヤーが捕まると、人々は誓い、悪口を言い、そしてこのすばらしいゲームに対して罪を犯した人に処分を約束し……て……それから……あー、それから? それから、俺たちプレイヤーは何もせず、また元の木阿弥だ。
 今週の Wise Words では、ちょっとした武装になる話をする。これから、イカサマ師がどんなことをしているのか、どうすればイカサマから身を守れるのか、そして、もっと広い視点で見たときに、どうしてお前がイカサマ師と同様に有罪なのか、という話をする。お前が自分自身とこのゲームを守ろうと思うなら、読んでくれ。Sol Malka が US Nationals のトーナメント・レポートで報告したようなイカサマ師は、俺のゲームから、そして俺のコラムから出ていきやがれ。お前らは来るな。

イカサマ師の手口

 この文章を書くにあたり、俺はイカサマの仕方を公の場所に公開するということについて葛藤を感じていた。一方では、プレイヤーが身を守るために、対戦相手がする可能性のあるイカサマを知ってもらいたいんだが、他方では、イカサマ師どもがその技術を向上させるための知識にもなりかねない。最終的に、俺は、この内容を知らないようなとんまなイカサマ師がこの内容をうまくやってのけるとは思えない、という結論に達した。以下に、奴らがするようなイカサマを列記してある。何を見ればいいのかを知り、実際の場でも見破る手助けになれれば幸いだ。

diabolic vision
不十分なシャッフル
- プレイヤーがリフル・シャッフルをできない可能性はある。しかし、そう主張していたCaseyが対戦相手にしでかしたことを考えてみろ。対戦相手がリフル・シャッフルをしなかった場合、ジャッジを呼んでシャッフルをしてもらえばいい。また、必ず、相手のデッキをカットするときにはリフル・シャッフルをするんだ。対戦相手のデッキを軽く叩いて、相手が卑怯なことをしていないと信じるほうがより紳士的かもしれないが、それよりもより公正に、安全にプレイすることを心がけろ。  対戦相手が彼自身のデッキを操作する方法にはいろいろある。基本的なマナのツミコミなんかは、容易に見分けて止めることができる。それより注意すべきなのは、もっと小ずるい手を使うプレイヤーだ。その類のプレイヤーの使う手として俺が知っているのは、例えばスライド・シャッフルの際、カードを一度に一枚ずつ動かしているように見えるプレイヤーなんかは怪しい。プレイヤーがシャッフル中にデッキのカードを見ているようだったら、まあ、カードの順番を有利になるように操作しようとしているってことだ。一見するとシャッフルしているように見えても、デッキの中の特定のカードをデッキの一番上に持ってくるように操作する方法だって色々ある。ゲーム中のシャッフルに関しては特に注意するんだな。

whispers of the muse
過剰のカードを引く
- あー、これは非常に気付きやすいが、起こりえないということではない。常に、対戦相手の手札、墓地のカード、場にあるカードの枚数に気を配り、合計枚数がお前のものとかけ離れていないかを確認しておくべきだ。また、イカサマのドロウはライブラリからだけとは限らない。墓地からかもしれないので、墓地がどうなっているかも確認しておく必要がある。Mike Long がやったと言われているイカサマを考えてみろ。マッチの前に、対戦相手のデッキを数えておくのは有効だ。61枚以上ある場合には、対戦相手は過剰のカードを引いた後、不要なカードをポケットや箱、膝の上などのどこかに捨ててしまうことだって出来るわけだ。

見たいものを見る
- イカサマの方法の一つに、見るべきでないカードを見るというものがある。対戦相手の手札を見ようと首を伸ばしているようなプレイヤーもいる。しかし、見るべきでないものを見るための方法はそれだけではない。お前の対戦相手がお前のデッキをカットするとき、そのデッキの中のカードを見るのは非常に簡単だ。目をそらさないようにしている奴は、何か見るべきでないものを見ようとしているに違いないし、おそらくは他のイカサマの手がかりにしようとしているに違いない。

カードの追加
- これはプロツアーでは起こりえないが、店のトーナメントではお前が思っている以上に起こっている。賭けてもいい!  これをプレイヤーの立場で見つけ、咎めるのは難しいが、やるんじゃないかと思うプレイヤーをトーナメント主催者やジャッジに伝え、奴らをしっかり見張っておいてもらうことで、この種のイカサマを未然に防ぐことができるだろう。

stasis
時間稼ぎ
- 最近のプロツアーでもっともよく見かけられるイカサマだ。これについては、効果は説明するまでもないだろう。時間稼ぎの方法としては、ややこしいルールの質問をすることや、ミスをしでかしてみせること、あるいはマッチに関係しない会話なんてのもある。

ああっ、すいません
- そうだな……これは、俺が知るかぎりで一番小ずるいイカサマのやり方だろう(もちろん、もっとずるい方法があるのかもしれないが)。何度も繰り返して、例えばカードの効果を間違えたり、ライフの合計を間違えたり、そういった類の失敗をした場合、それは『事故』だと思うかい? 残念ながら、そうじゃない。もしかしたら意図的に、あるいは少なくとも無意識に、そうしているんだ。確かに、人間は過ちを犯すものだけれども、知恵と秩序をわきまえた人が何度も何度もライフの合計を書き誤ったとしたら、何かいかがわしい意図があるということだ。

 他のミスやイカサマってのは、プレイヤーのデッキが正しく作られていないことに不幸にも気付き、それを誰にも知られずにもみ消そうとする時に起こる。バルセロナで、俺は、blue-white デッキ に当たったときに《殺戮/Slay》をサイドボードから戻し忘れ、結果として有利を得そうになったことがある。その時、俺はジャッジを呼び、その、黙っていれば勝ちになっていたであろうゲームを自ら【ゲームの敗北】にしてもらった。これをあたりまえのことにしなければならない。イカサマ師に文句を言ったことがあるなら、俺がやったのと同じようにするもんだ。

イカサマから身を守れ

 対戦相手のイカサマから身を守るための基本的なポイントがいくつかある。

diabolic intent
1)誰も信じるな
- どんなマッチであっても、俺がデッキをシャッフルしないプレイヤーは全世界で 2 人しかいない(練習するときは対戦相手がイカサマしたって構わないんだから、カットもしない。そうすれば奴らは調整が出来ないんだからな)。プロツアーの参加者の中でも、好きにさせたら何をしでかすか判らないプレイヤーもいるんだ。Steve O'Mahoney-Schwartzは、彼の兄弟の Dan と対戦するときにもお互いにデッキをシャッフルする。それは、故意でないにせよ、デッキがきちんとシャッフルされていない可能性があるからだ。つまるところ、いつでもシャッフルはしろ。そして、矛盾を見逃すな、ってことだ。それらの矛盾が重要でなかったり故意でなかったりしても、ゲームは正しいルールの下でやるもんだからな。

2)カードを数えろ
- 簡単だな。時々、手札や墓地や場のカードを数えて、cantrip のような追加のドロウの数を考慮して、カードの枚数が正しいか確認するんだ。

fiery justice
3)ジャッジを呼べ
- 何かルールと比べておかしなところがあったら、すぐにジャッジを呼べ。99 年の世界選手権で、よく知らないイタリア人の Luca Chiera という選手と対戦したんだ。第 3 ゲームに入って、彼のライブラリを数えてみたら 61 枚カードがあった。彼のサイドボードには 14 枚しかなかったので、彼は【ゲームの敗北】を受けることになった。Luca はその日非常に気分が悪そうだったし、ナイスガイだとは思ったんだが、それがイカサマに繋がる可能性があったから、俺は躊躇せずにジャッジを呼んで、安っぽい勝利を得たわけだ。  ジャッジを呼んだ理由は、Luca がこの類のことを以前にやっていないかを確認するためと、二度とそういうミスをしないように指導してもらうためだった。ジャッジや主催者は、プレイヤーがその類の『ミス』を報告しなければ、『ミス』を記録することはできない。報告すれば、ジャッジはパターンを確認することができ、それによってそのプレイヤーに罰を与えることになる。

4)双方のライフを記録しておけ
- 必ず、対戦相手のライフも確認しておくんだ。

5)お互いのデッキをゲームの前に数えておくこと。

6)疑わしいデッキの内容を見張れ
- 対戦相手のメイン・デッキに、例えば防御円のような、お前のデッキへの対抗カードが入っていた場合は、ジャッジにデッキ・チェックを求めることを躊躇するな。

黙ってる奴は同類だ

 自己裁決という点に関して、マジックのコミュニティーは感傷的だと分かった。俺たちは、イカサマをするプレイヤーがいることを知っているし、それが続くことを認めているんだ。奴らのことを友達と呼び、奴らと遊び、直接影響を受けない限りはそれを傍観している。
 McCarrel が US Nationals で捕まり、対戦相手のデッキを操作するために特殊なスライド・シャッフルを使っていたことが広く知れ渡った後で、何人ものプレイヤーがジャッジに彼の行状を伝えた。Mike Turian、Sol Malka、Tim McKenna らのベテラン・プレイヤーは、Casey が彼らを欺いていたことを見ていたわけで、そして、彼らは何か奇妙なことが起こっていると気付いていたわけだ。
 じゃあ、なぜジャッジを呼ばなかったんだ?
 報告することを妨害されているというわけじゃない。俺たちが寛容すぎるからこういう問題が起こるんだ。あるプレイヤーがライフの合計について「間違い」、それに気がついた対戦相手が指摘し、同意して訂正した場合にも、そのトーナメントの他のマッチの中で同じような「間違い」を犯そうとしている可能性があるということを理解していない。奴らはルールを破壊する屑野郎だ。そして、それを黙認しているのは俺たちなんだ。
 DCIは、誰がイカサマ師かをほぼ確信している。しかし、俺たちが証拠を提示しなければ、彼らは止めるために何をすることもできない。ジャッジを呼んで前述のライフの不一致のことを伝えなければ、再び、あるいは三回、四回起こったとしても、そのことが起こったという記録は残されていないわけだ。

 これを考えると、まずやるべきことはジャッジを呼ぶことだ。少なくとも、コミュニティを向上させる責任は俺たち皆にあるわけで、そんな行動を黙認していれば、コミュニティの向上を妨げていることになる。『先生に言いつける』のはもっとも一般的な選択ではないのかもしれないが、物事を変えるための唯一の方法だ。

recurring nightmare
 しばしば、この問題はジャッジやトーナメント主催者の問題になる。イカサマ師に追放という罰を与えることは、店にとって顧客を減らすことになるという理由で躊躇い、やめる店があることは判る。しかし、お前がジャッジに告げたなら、それについて対処してもらうのはお前の責任でもある。店のオーナーが『ビジネス的な』判断をしたならば、何が起こったかをWotCに連絡しろ。そうしない奴はイカサマ師と同類だ。DCIポリシー・マネージャーのChris Zantides(DCI@wizards.com)にメールでレポートするといい。(訳注:Ron Foster(rfoster@wizards.com)氏になら、日本語でもメールできます)

 プレイヤーは、他のプレイヤーのイカサマを見つけたとき、その報告に際して中途半端な態度をとるだけでなく、多くの場合、それを見逃すものだ。南米のあるプロ・プレイヤーが、ロサンゼルスでの非公認ドラフトでイカサマを発見された。非公認だとはいえ、奴の行動の卑劣さには変わりはない。しかし、その疎遠にされても当然の奴の行為を見てからさえも、その時ドラフトしていたプレイヤーたちは、奴のチームメイトたちと同じように、再びドラフトをしようと考えたのさ。俺が個人的に開いているプロツアーについてのチャット・ルームから奴のチームメイトの一人を蹴りだしたとき、そいつは奴がイカサマなんてしてなかった、無実だと弁護していた。単純な話、イカサマ師と一緒に競技に参加しようという意志が、これまでも、そしてこれからも、そいつをイカサマに荷担させているわけだ。結局、彼が俺のチャット・ルームに戻るのは許したけれど、俺は彼とはもう喋っていないし、もちろん戦略的な助言も与えてはいない。なぜなら、そいつの行動はイカサマ師を大目に見ていることにほかならないからだ。他人の行動を変えさせようと思ったら、そいつらにそれがどう悪いのか言わなきゃならない。そうしないなら、その非道に荷担しているのも同じようなもんだ。

apathy
 つまり、自分だけでなく、コミュニティ全体の治安を守る必要があるということだ。あるプレイヤーがイカサマ師だと知っているなら、それをみんなに知らせる義務がある。トーナメント主催者が、WotC にお前の不満を告げずにそのプレイヤーがプレイするのを黙認しているというのなら、そのトーナメント主催者について WotC に報告すればいい。プレイヤーが不正にカードを追加していたら、次の日からそいつとトレードなんてするんじゃない。はっきり知らせてやれ。それでも直らないんだったら、俺たちの愛するこのゲームの世界にそいつらの居場所はない。
 奴らに言ってやれ、出て行けってな。それがこの愛すべきゲームのための最高の方法だ。

 このコラムについての質問があったら、JgaryWise@yahoo.com まで(訳注:英語で)メールしてくれ。  イカサマ師じゃないなら、また会おう。

TRANSLATION BY : *ぱお*/米村 薫(YONEMURA-Pao-Kaoru)

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