悦楽を追い求め、お祭り騒ぎを楽しみ、悪戯を働く。テーロスにあるスコラ谷のサテュロスにとって、これらが最高の美徳として考えられています。そういった意味では、ゼナゴスこそがサテュロスの理想の体現者でした。その他者を魅了する奔放なカリスマ性と歓楽者たちを一気に熱狂状態に盛り上げることができる能力によって、彼は他の同族たちからも一目置かれる存在でした。彼はサテュロスたちを直接支配することはありませんでしたが、お祭り騒ぎにおいて事実上の主催者として期待されることとその役割には満足していました。
ゼナゴスがプレインズウォーカーとなったのはつい最近のことです。当初はその力を使って、彼の持ち味である騒々しく無邪気なお祭り騒ぎを別の次元にも紹介して、その中で多元宇宙のすべての悦楽を体験しようとゼナゴスは考えました。しかし、そこで彼を待っていたのは失望と幻滅でした。テーロスには神々が実在していました。しかし、他の場所ではそれらは何の影響も持たなかったのです。この事実はゼナゴスの意識を苛みました。そして最終的には故郷である次元に帰還しました。その後彼は再びお祭り騒ぎに興じるようになりました。しかし、それらは彼に以前ほどの喜びを与えなくなっていました。
テーロスにおける物事の自然と思われていた理は、ゼナゴスの目にはすべてが虚構であり、究極の冗談であるように映るようになったのです。そして彼はこれ以上自分が道化として振舞うことを拒絶するようになりました。かつてはその刹那の悦楽だけに生きがいを感じていたゼナゴスでしたが、多元宇宙の存在を知った今では、サテュロスのお祭り騒ぎの狂騒に自分の安寧を見出すことができなくなっていました。しかし、彼はその空しさに伴う倦怠感に身を任せることもまた拒絶しました。そして、かつてお祭り騒ぎをちょっとだけ盛り上げてきたその手腕を、今では自らを定命の者から神へと昇格させるための計画を練るために働かせています。