『テーロス』イン・フューチャー・フューチャー・リーグ

更新日 Latest Developments on 2013年 12月 23日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 もうご存知とは思いますが、フューチャー・フューチャー・リーグ(以下「FFL」)とは、我々がこれから発売されるカードをブロック構築やスタンダードでテストする社内のリーグです。我々の目標はメタゲームを壊すことではなく――そのセットがFFLにある間に少数のデベロッパーで答えが出せるようなメタゲームでは、現実世界の人々の前には数週間しかもたないでしょう――多くの戦略を同じぐらいのパワー・レベルで供給し、そしていくつかのデッキが人気を得たり失ったりすることでメタゲームが変化する余地を持たせるようにすることです。これはつまり、我々の主な仕事は全てのバランスを正確に取ることではなく、できるだけ多くのカードとその組み合わせを試し、全ての戦略に十分な面白さを与えることだ、ということです。我々はデッキを作ってお互いに対戦し、(あるならば)変更したいものを見つけ、そしてまたプレイすることで、これを行っています。

 私が前に歴代のFFLのデッキをご紹介したとき、多くのご好評をいただきました。そこでこれをこのコラムのレギュラー企画にしたいと思いますが、しかしながら我々はカードを変更する能力を持っており、現実世界で実際にプレイされているカードとデベロップ中のそれらはかなり違うので、デッキリストを見ながら文中に注釈をつけていこうと思います。我々の目標はそのフォーマット全体をより楽しくすることで、それはしばしばカードを個別で見た場合の楽しさや、当然のことながらその強さを、最大限と比べて減らすかもしれないことを意味しています。

 ひとつ覚えておいていただきたいのは、『テーロス』のような大型セットはFFLの第一目標として5ヶ月を費やし、そして次のセットのプレイテストが始まったときに第二目標として1ヶ月を費やしていることです。というわけで、多くのデッキリストがあり、その中の多くの最終バージョンのラインナップには無いカードが含まれています。いくつかのカードが最適ではないとしてデッキリストを弱いと一蹴するのは簡単ですが、時には含まれているカードが違うものかもしれません。その例として、私が初期のバージョンの《モーギスの狂信者》と《軍団の戦略》の相互作用をテストするために作ったデッキをご紹介します。

サム・ストッダート/Sam Stoddardのベアリー・ボロス

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 これはテスト段階のかなり初期のものです。このセットはこの時点まで実際にリミテッドのテストしかしていなかったので、我々はいくつかのカードが間違っていることは分かっていました。しかし、これはあなたが考えているかもしれないバージョンから始めるのに最適なので後で変更について議論する必要はありません。

  • 火飲みのサテュロス》は当時〈狂ったサテュロス〉という名前で、起動型能力はからに変更されました。
  • 鍛冶の神、パーフォロス》のマナ・コストはからに変わりましたが、当時はクリーチャーにもダメージを飛ばせました。
  • モーギスの狂信者》は〈モーギスの侍祭〉という名前で、現在は4/2ですが当時は3/1でした。
火飲みのサテュロス
モーギスの狂信者

 このリストを見返すと、確かに《ボロスの反攻者》をもっと増やすべきでしたが、このようなFFLのデッキの多くは、我々が強すぎると思ったカードをとりあえず実験してみたものです。〈モーギスの侍祭〉が3マナだと危険度が高すぎるのは簡単に分かったので我々はこれを4マナにし、さらにテストした結果他のカードの変更も行われました。ここからのデッキリストについては、皆さんにわかりやすくするために現在のカード名にしておこうと思います。

 デベロップの時には、カードがセットに加えられることもあります。我々はメタゲームを改善するだろうというものを考えつき、それをセットに入れる場所を探します。たとえば、下記のエスパー・コントロールのデッキリストは《英雄の破滅》が作られる前のものです。結果的にこのデッキの除去スロットは全く異なるものになりました。これは当時我々がこのコントロール・デッキをどう思っているかを表すのによい仕事をしましたが、異なる方向に向かいました。その事柄とは――《英雄の破滅》が無ければ、《太陽の勇者、エルズペス》に対処する方法がわずかしかなかったのです。さらに、当時はいくつかのアグレッシブなデッキに彼女への対処方法を与える《嵐の息吹のドラゴン》も、現在のバージョンではありませんでした。基本的にこのリストは、スタンダードに速攻クリーチャーが無ければ、プレインズウォーカーを守ることに専念する信じられないぐらい強力なデッキを作ることは簡単である、ということを示しました。

英雄の破滅
太陽の勇者、エルズペス

イアン・デューク/Ian Dukeのエスパー(青白黒)コントロール

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 FFLの中では多くプレイされたけども、現実世界では実際に使われなかったカードも多く存在します。緑の信心デッキはプロツアー『テーロス』のトップ8にもいましたが、我々のデッキは少し違ってよりビートダウン寄りのものでした。我々は実際に現実世界よりもはるかに高い割合で《恭しき狩人》をプレイしていました。

恭しき狩人

サム・ストッダートの赤緑ビートダウン

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 特にその戦略が多分トップメタにはならなくてもある種のリスクを引き起こす場合に、我々は一見かなりおかしなデッキを試すことがあります。我々が全てをよく見て、それが強すぎるかどうか分かれば良いのですが、それは明らかに不可能です。それができるようなら多分我々は失業してしまうでしょう。その代わりに、我々は色物のようなデッキが成功するよう、適切な量の時間を費やします。一時期、《死の国からの救出》は唱えたあと追放されていませんでした。我々は正しく、これは楽しく興味深いデッキだったかもしれないし、もしくは間違っていて、これは強すぎるかもしれません。私はこれがリスクを背負うべきカードではないと考えています。

死の国からの救出

ビリー・モレノ/Billy Morenoのエスパー「死の国からの救出」

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 色物のデッキと言えば、下記のデッキは長い間テストをしていた気がします。これはいかにも色物に見えますが、非常に良い結果を残しました。しかし我々の目標は全てを弱体化することではなく、壊れているものをなくして楽しく興味深いデッキをメタゲームの中に入れられるようにすることです。

イアン・デュークの「波使い」

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 プロツアー『テーロス』のトップ8に残ったこのデッキの最終バージョンはいくつかの点で違ったデザインの決定があります(そして《ニクスの祭殿、ニクソス》が伝説でないことの恩恵も受けてはいません)が、全体的に見れば我々はテストの初期にはかなり近いところまでたどり着いていました。そしてプロツアーのトップ8に残った単色の信心デッキと言えば、我々の黒単信心デッキはプロツアーでプレイされたものとほぼ同じでした。バージョンによってメインに《思考囲い》が入っているデッキも入っていないものもありました。また《群れネズミ》を採用しているデッキもそうでないものもあり、1つのリストに絞り込むことはできませんでした。私は《冒涜の悪魔》が最も過小評価されたカードだと考えています。下記のデッキリストは《英雄の破滅》導入前のかなり一般的なものなので、導入後とは除去のスロットが少し違っています。

群れネズミ
冒涜の悪魔

イアン・デュークの黒単コントロール

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Planeswalker (3)
3 闇の領域のリリアナ
ソーサリー (2)
2 堕落
インスタント (5)
3 破滅の刃 2 究極の価格
アーティファクト (5)
3 漸増爆弾 2 エレボスの鞭
エンチャント (3)
3 地下世界の人脈
60 カード

 また我々は現実世界からインスピレーションを得て、最近のスタンダードで勝っているデッキが新しいスタンダードでどうなるかを確かめます。当時のスタンダードはジャンドのグッドスタッフが勝っていたので、私はそれを『テーロス』でやってみました。

 当時《霧裂きのハイドラ》は速攻とトランプルを持っていて、打ち消し呪文を使うデッキ対策として墓地から唱えることができるようになっていました。その意味では良い仕事をしましたが、一クリーチャーとしては打ち消し呪文を使わないデッキに対しても効果的に働き過ぎました。

霧裂きのハイドラ

サム・ストッダードのジャンド

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 私だけが《霧裂きのハイドラ》を試したわけではありませんが、イアンは別の手法を試していました。彼のプランは自分のライブラリーを削り、それを唱えるものでした。モンスは似たようなデッキを作りましたが、彼は赤を加えて《鍛冶の神、パーフォロス》を入れ、Xを0にできないように即座に変更を加えなければいけないことを浮き彫りにしました。

鍛冶の神、パーフォロス

イアン・デュークの黒緑墓地デッキ

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 このテストの最終結果で《霧裂きのハイドラ》のデザインをやり直す必要があることが分かり、3つか4つの試行錯誤を経て現在の形に落ち着きました。もちろん、我々がそうしたのは理由があり、その最大の理由はFFLのデッキのなかで最有力のものは現実世界に現れることがなかったからです。我々が主に使っていたコントロール・デッキは実際のところ青白黒ではなく赤青白でした。

ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyの赤青白コントロール

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クリーチャー (1)
1 霊異種
ソーサリー (7)
3 ミジウムの迫撃砲 4 至高の評決
アーティファクト (1)
1 真髄の針
エンチャント (6)
2 岩への繋ぎ止め 4 拘留の宝球
60 カード

 我々は現実世界でビートダウンが多いなら赤青白を使いたいと思うだろう、コントロールが多いなら青白黒を使いたいと思うだろうと想定しました。

 しかしながら、コントロールは青が入ったものに限りませんでした。我々はいくつか青以外の組み合わせのコントロールを試し、そのうちいくつかは(多少の違いはあれど)現実世界でも見かけられました。例えばこれです。

エリック・ラウアー/Erik Lauerのナヤ・コントロール

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 『テーロス』に2種類の占術土地のあるナヤ(赤白緑)は奈落の住人の間で人気のある組み合わせでした。

奔放の神殿
凱旋の神殿

 これはその違った方向からのデッキの例です。

マックス・マッコール/Max McCallのナヤ・ビートダウン

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 まだまだ語りたいところですが、そろそろお別れの時間です。あなたがFFLの様子を楽しみ、そして『神々の軍勢』や『ニクスへの旅』へのビジョンをより多く共有して頂けたなら幸いです。

 本年のこの記事は今回で終わりで、新年まで冬休みをいただきます。来月上旬からは『神々の軍勢』のプレビューが始まるので、その準備をしていてください。プレビューに向けての面白い材料を用意していますので、どうぞお楽しみに。

 ではまた次回お会いしましょう。

 サムより


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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