おたくゲーマーのクリスマス

更新日 Latest Developments on 2012年 5月 11日

By Zac Hill

Zac is a former game designer/developer for Wizards of the Coast and was the lead developer for Dragon's Maze. His articles have appeared in The Huffington Post, The Believer, and on StarCityGames.com. Currently he serves as the chief operating officer of The Future Project, a nonprofit education initiative, and holds a position as a research affiliate in the MIT Game Lab.

 プロツアーの直前の1週間は私が毎年楽しみにしている時間だ。それはおたくゲーマーたちのクリスマスみたいなものだが、何十万ドルもが懸かっている!

 ツリーの下で、何があなたを待っているのかはわからない。ひょっとするとそれは、プロツアー・ホノルル2009で我々が閃いた、同じ呪文を毎ターン続唱で唱える5色コントロールのような――すばらしいサイドボード戦略のようなものかもしれない。あるいは、プロツアー・ベルリン2008を席巻するべく"Elves!"デッキに入っていた《鏡の精体》のような、よく知られたエンジンをさらに完璧なものに近づける、非常に効果的に相手を殺せるカードかもしれない。もしかしたら、プロツアー・バレンシア2007でマリーン・リバート/Marijn Lybaert、ビル・スターク/Bill Stark、それに私が使用していた、すべての新しいデッキをまとめたかのような、左側の欄をはみ出す《歯と爪》ロックリストのようなものかもしれない。確かなことが1つだけある:あなたが練習、練習、練習、調整、調整、調整とすべての時間を費やし、プレイしたいと思うデッキに必要なカードを限界まで磨き上げても、プロツアーの週を迎えれば全てが変わるのだ。

カバレージを見逃すな!

 さて、プロツアー『アヴァシンの帰還』だ。あなたがこれを読んでいる頃、私はバルセロナで最近増員したカバレッジチームの一員として荷解きをしているところだ(訳注:この記事は5月11日に公開されたものです)。私が到着した時点で、世界のトップチームの多くが1週間以上前からスペインに入り、好きなデッキやドラフト戦略の最終調整をしている。もちろんあなたは競技者として勝ちたいだろう。あなたはフォーマットを制するようなすごいデッキを持った人物になりたいだろう。あなたはリッチー・ハーゴン/Rich Hagonとブライアン・デヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshallに、環境のベストデッキのひとつを一掃するために必要な、けれども曖昧で忘れられている、サイドボードの最後の2枚となるコモンをいかにして見つけ出したかについて話したいだろう。だがその一方で、あなたよりもずっと厳しく準備をし、あなたよりずっといいデッキを組み上げ、あなたの想像をはるかに超えるレベルでドラフトを理解し、今日のところは勝てないな、と思わせるような仲間たちと相対するのもまたすばらしいことだ。

 我々が話すように、そういったチームのほとんどが通過していることがある:土壇場の変更は、のるかそるかの大博打だ。

 私が聞くところによると、私がカーテンの裏から状況を見るためにプロツアーを離れ「その男」とチームを組んでから、いろいろなことが変わったらしい。それでも私は多くのことは変わっていないということに賭けたい。すべてのマジックの中でプロツアーまでの1週間は最も緊張する期間の1つなので、私は、プレイヤーがどのようにアヴァシンの帰還を解剖して考えているかを、一歩離れたところから探求しようと思う。

何が新しいの?

 マジックを理解することは非常に難しい。私はMultiverseの記録が公開されていないことを心の底からよかったと思っている。なぜなら実際にプレイする前に、私はかなりの量の完全に間違ったことを書き込んでいるからだ。我々のほとんどは同程度の似たような経験があると私は思っている。プレリリースで、こちらがよかれと思って作ったカードが気に入られなかったことがある。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》や《サイカトグ/Psychatog》(くわしくはこの記事(リンク先は英語)を読んでくれ)、それに《頭蓋骨絞め》などは最初はまったく評価されなかったのだということをよく思い返している。

《獣群の呼び声/Call of the Herd》 アート: Carl Critchlow

 このように、新環境における傾向の多くは既に機能しているものに縛られがちだ。その傾向を示す理由には首肯できるものもある。あなたがプレイテストに多くの時間を費やしたとしても、使い物にならないアイデアに割いた時間はただの浪費となるからだ。しかし一方で、惰性、あるいは対戦相手の革新性の過小評価によるものもある。私の初めてのプロツアー――プロツアー・ニューオリーンズ2001――は、オデッセイのリリース直後に開催されたイベントだった。ほとんどのプレイヤーは(私自身もそうだったが)オデッセイのことを信じられないほど弱いと非難した――トミー・ワラミー/Tomi Walamiesとその《獣群の呼び声/Call of the Herd》が、我々の間違いを見事に見せつけてくれるまでは。同様に、リミテッドに関しても、1つのセットがどれだけの変化をもたらすかを見誤るのはよくあることだった。ディセンション直後のプロツアー・プラハ2006を思い返すと、我々の多くが我々の戦略が有効でなかったことに唖然とさせられたものだ。《セレズニアの福音者》とその同類は、ラヴニカ−ラヴニカ−ギルドパクトにおいて有数の強力なカードだったが、1セットあとのラヴニカ−ギルドパクト−ディセンションではそれが罠となっていたのだ。

Call of the Herd
 

 それはなぜかというと、新しいカードや相互作用によってアドバンテージを得ることが簡単にできるようになり、既存の戦略に風穴が開き、新環境が急速に変化したからだ。新しいカードは、そのフォーマットの人気のデッキの1つに存在する弱点を突くのか? 新しいカードは、人気のデッキに対して既に強い別のデッキがさらに頂点に立てるようなツールになるのか? もしあなたの対戦相手の多くがこれまでにドラフトしたデッキやこれまで使ったデッキの最適化のためにその時間を費やすことが期待できるのであれば、あなたは新しい技術でそれらに立ち向かうことで、それらに対策できることになる。

 逆に、まだ十分仕上がっていない既存のデッキを同様に考察し、新しいセットがどのようにブーストさせるかを確認もしたいだろう。新しいカードはそれらのデッキの弱点を防ぎ、そのデッキがそれまでに答えられなかった問題に対応できるようにするのか? 新しいセットはデッキに別の"角度"を与え、攻撃するための全く異なるプランを与えられるのか? 2、3カ月ほど前の、プロツアー『闇の隆盛』での《高原の狩りの達人》の支配が頭をよぎる。チーム・ChannelFireballが決勝へ駒を進めた《ケッシグの狼の地》ランプ・デッキは、その内容が知られていないわけではなかったが、4枚の《高原の狩りの達人》たちを加えることにより、一躍、以前のものではなかなか届かなかった運転席に飛び乗れることとなった。大型の呪文1つか2つに頼って《ケッシグの狼の地》に対策していたデッキは、まったく想定していなかったクリーチャーの群れに押しつぶされることになったのだ。または、中量級3色が支配していたアラーラの断片−アラーラの断片−コンフラックス環境は、強力な2マナの呪文が存在したことにより、アラーラの断片−コンフラックス−アラーラ再誕環境は電撃的な高速アグロ環境になった。

墨蛾の生息地

 最後に――そしてこれはおそらく全ての中で最も難しい挑戦だが――最新のセットによって何か完全に新しいものが可能になるかどうかを知りたいだろう。「ローグ」デッキ――レーダーの外から突如として現われる戦術――を成立させるのは極めて困難だが、全く気が付いていないあなたの対戦相手に対してとてつもなく大きいアドバンテージが得られる。もし、あなたが何百回もそのマッチアップの練習をして、あなたの対戦相手はあなたのデッキを見たことがなければ、対戦相手よりも正しいプレイができるだろう。この流れで思い出されるのは、プロツアー・フィラデルフィア2011サム・ブラック/Sam Blackが使った《猛火の群れ》感染デッキだ。《墨蛾の生息地》以外にクリーチャーらしいクリーチャーは出さないが、第2ターンに対戦相手を瞬殺することがよくあるデッキだった。カードは完全に新しいものになっているわけではないが、相互関係は完全に新しいものに仕上がっていた。

何が古いの?

 環境の新しいカードに十分に目を向けなければあなたは自身を罠にかけることになるとして、新しいカードにばかり目を向けていれば、これもまた非常に罠にかかりやすい。

《種蒔き時/Seedtime》 アート: Rebecca Guay

 確かに、新しいカードが環境に影響を及ぼしたとき、そのカードはフォーマットを決定づけ大地を揺るがすものとして歓迎されるのもだ。これまで、一体何枚のカードが「(デッキ名)はこれで終わりだ」と喧伝され、そして実際にはそのデッキに少しの嫌がらせをできただけで終わったか、枚挙にいとまがないほどだ。思い返してみれば笑えることだが、《種蒔き時/Seedtime》の登場で終了ステップに呪文を唱えられなくなり、《嘘か真か》デッキは壊滅すると言われたのだ。実際、このカードは話題にはなったものの、インスタントで大量のカードを引くことの有利を失わせるようなことはなかった。

 もう一つ幾度となくあったことを挙げるなら、どんな「ベストデッキ」が存在しても、特にそれをプレイしても楽しくないとき、人々はそれを過小評価するということだ。私の経験上、これにはいくつかの理由がある。その一つが、そのデッキは大きな目標を持っていて、人々はとりわけそれを打ち倒すカードを満載しているからだ。これをどうすればいいかがわかったところで、他のマッチアップのテストへと移る。だが、他のマッチアップに向けてデッキを調整し始めると、「ベストデッキ」を打ち倒す方法を見失っていくことになる。

 さらにより頻繁に起こること――今の私はそれを理解しているにもかかわらず、私自身がいつもしてしまうこと――は、あなたのチームで効果的に働く新しい戦略と恋に落ちてしまうことだ。あなたはそのデッキでベストデッキを倒し、この環境の他のデッキにも有利に戦えると確信するまで微調整する。イェイ! あなたはそれをやりとげた! 4万ドルの小切手を換金する時が来た! 問題は、あなたが自分のデッキを調整しているあいだ、あなたはベストデッキの調整をしていないということである。そのため、それらのデッキの旧版には打ち勝つことができるだろうが、同じだけの時間を費やしてベストデッキを調整してきたプレイヤーには負けることになるだろう。

 このことから導かれる教訓は明らかだ:狙われていると分かっていても、既知のものを使う方がいいこともある。

 かつて優秀だったデッキで、現在は何らかの理由で注目されていないデッキを掘り起こすのがさらに有効な戦略である場合もある。注目を失ったのは、6ヶ月前にそのデッキの対策となる新しいカードが入ったからかもしれないし、あるとわかれば対策されるような脆弱なものだったからかもしれない。何にせよ、あなたはそれを知っている。そして、人々は忘れているものだ。条件が変わり、そのデッキが再び力を取り戻す。古典的な例を挙げると、チームChannelFireballはミラディンの傷跡ブロック構築の《鍛えられた鋼》デッキを掘り起こし、世界選手権2011で旋風を巻き起こした。そのデッキはその後はパッとしなかったが、いくつかの週末ではとてもよい位置につけた。

 そういった宝石を見つけ出せば、イベントの先頭に立つこともできる。もちろん、何をするかにかかわらず手に入るカードが異なってくるリミテッド環境においては、この教訓はよりよく当てはまる。さらに、ローウィン3つの時のデッキのほとんどがその後でだめになったのは、不思議なことではない。あなたがすべきことは、物事の少し違う評価の仕方を学ぶことだけだ。

何がいいの?

 私は私が書いたすべてを今再読し、自分の分析が気の利いたものであるにもかかわらず、誰でも常にするのと同じ間違いを私自身も犯していることを理解した:最後には、「ひどいものでない何か」をプレイしなければならないのだ。

アヴァシン教の僧侶》 アート: Greg Staples

 私は、フォーマット、良いデッキ、悪いデッキ、マッチアップ、環境、その他あらゆることについてたくさんのことを話してきた。だがそれはすべて、とてもとてもとても簡単に追いつくことができる。必要なことについて考えることはできるが、よいデッキを使うことが必要なのであって、悪いデッキを公平にプレイする必要はない。

 プロツアー・ハリウッド2008に向けてのプレイテストを思い出すに、紙上にこれらの《魂魄流》デッキを全て書き尽くした。私は《巨人釣り》/《茨森の模範》を働かせるために終わりなく調整を繰り返したし、《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》と《ウークタビー・ドレイク/Uktabi Drake》のような真の勝者を含む一億の異なるリストに取り組んだことを覚えている。

 これらはすべて気の利いたものだが、結局のところ私のチームは私の感覚に合わせて、メインに4枚の《思考囲い》を搭載しただけのごく普通のフェアリー・デッキを使うことにした。

アヴァシン教の僧侶

 同様に、サインや予測、色配分、「パス・カット」(意図的に隣に同じ色のより良いカードを渡しその色へ誘導すること)、その他諸々のことについて考えるのは非常に簡単だけれども、良いデッキをドラフトしきることに比べたら小さなことだ。例としてイニストラード−闇の隆盛ドラフトを用いると:《骨までの齧りつき》+《燃え立つ復讐》+《血まみれの書の呪い》をピックする方法を知りたいだろうけれども、同時に、相手に《忠実な聖戦士》と《アヴァシン教の僧侶》を渡してしまうと毎ターン相手を倒すまで2点ずつ食らい続けるのだということも理解しなければならない。

陽気なソウルブラザー

 とにかく、これらの疑問については今回のプロツアーですべてけりがつくと考えている。人々が何を過小評価しているのか? 人々が何を過大評価しているのか? 人々の当初予想を振り切るほどに実力があるのは何なのか?

 私は、この週末、たくさんの昔のチームメイトを含むみんながこの環境のプレイにどう取り組んでいるのか話せることを楽しみにしている。この週末に起こる激震を待ちきれない気分だ。DailyMTG.comやTwitchTVでこの週末のプロツアーの動向をいち早く垣間見られるチャンスをチェックしてほしい!

 最後まで読んでくれてありがとう。

(Tr. Shin'ichiro Tachibana / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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