スタンダード向けに神々のデベロップをするということ

更新日 Latest Developments on 2014年 4月 7日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは 今週の彼の記事で、神々にデザインの段階で多くの繰り返しを行ったのは、我々がそれらを適正なものにする必要があることを理解していたからだと指摘しました。『テーロス』ブロックの前に最後に我々がエンチャントを扱った『ウルザズ・サーガ』ブロックは多くのエンチャントを含んでいましたが、カード・パワーは全てアーティファクトに集中していました。これは、人々がブロックを通常はそのブロックにある強力で象徴的なカードに基づいて見ており、我々の意図するものはあまり意識してもらえない、という分かりやすい教訓です。マークはしばしば「もしテーマがコモンで見られないなら、それはテーマではない」と言っています。さて、デベロップの観点では、我々はスタンダードを同じようなものとして見ています――スタンダードでそのテーマが見られないなら、我々は何か間違ったことをしているのです。

 我々は授与、信心、怪物化、そして英雄的をある程度はスタンダードに現れるようにしたいのですが、各メカニズムの現れるカードの正確な枚数は、そのブロック全体の雰囲気がスタンダードに与える影響に比べれば重要ではありません。我々はあるメカニズムを指して「このメカニズムを軸にしたデッキがスタンダードで作られるだろう」と言い、また他のものを指して「このメカニズムを持った個別の素晴らしいカードがスタンダードで活躍するだろう」と言います。信心はそれを軸にしたデッキが作られるメカニズムの例で、一方で怪物化はそれを軸にしてデッキを組むのはかなり難しいので、代わりに我々は《世界を喰らう者、ポルクラノス》や、《嵐の息吹のドラゴン》、そして《羊毛鬣のライオン》のような既存のデッキに入る個別のカードを作り出しました。

嵐の息吹のドラゴン
羊毛鬣のライオン

 もちろん、テーマはしばしばそのセットのメカニズム的な結びつきと正確に同じものにはならないことがありますが、我々は毎年のスタンダードをそれぞれのブロックによって劇的に異なるものにしようとし、各ブロックの動きによって年月を重ねても雰囲気が異なるようにしています。『テーロス』の背景にあるテーマは、エンチャントが神々の働きによるものであるということで、それはエンチャントの源を正面に立たせること――このセットの働き全体を神々の働きにすることを意味します。また我々は最初から『テーロス』の15の神話レアのスロットのうち5つと、『神々の軍勢』と『ニクスへの旅』のそれぞれで10のスロットのうち半分を神々が占めることになると分かっていました。我々は神話レアのスロットをそのセットの中で最も興味深く独特なカードを表すために用いるので、神々を神話レアにした以上、このカードを失敗させるという選択はありえません――我々は神々を素晴らしい存在にしなければなりませんでした。ありがたいことに、エリック・ラウアー/Erik Lauerと彼の率いるチームは何とか我々がまだ使ったことのないテキストで、我々がこのカードを使って良いものを作れると感じさせる、十分に調整できる余地のある(比較的)シンプルなデザインを考え出してくれました。

リスクを背負う

  フューチャー・フューチャー・リーグの目標は、スタンダードでの禁止カードが絶対に出ないセットを作り出すことではありません。我々はその確率を――この10年の間毎年――低くし続けたいと思いっていますが、それがエキサイティングなことであれば十分なリスクを背負う必要があります。『テーロス』での大きなリスクは、神々が強すぎるかもしれないことです。神々は単に破壊不能のエンチャントとして大部分の時間を過ごします。それらは極めて対処が難しいものですが、対処の難しさは色によってとても不平等だからです。これらを破壊可能にすることもできましたが、我々は神々を倒すことが困難であることが重要だと感じました。この事柄はデベロップ的に我々に課題を生み出しましたが、(デザインと同じように)制限は創造の母となりました。

 神々に関する我々の目標は、そのカード・パワーがエンチャントのみの状態でクリーチャーではない場合、構築フォーマットでプレイするに値しないようにすることでした。我々はそれらのカードを、安定して顕現できるデッキにおいて主に見かけられる存在にしたいことは分かっていました。しかしながら、それはこれらのカードがひとたび顕現したならば驚異的な強さを発揮するということです。神々は決して小さなクリーチャーではなく、実際にそれらが攻撃できるようになれば速やかにゲームの決着をつけてしまうでしょう。楽しく強力なカードがゲームに決着をもたらすことは全体としてその環境にとって良いことで、我々はこのようなことを好んでいます。たまに我々が強力で、それほど楽しいわけでもなく、そしてゲームを決着へと導かないカードを印刷してしまった場合、それは問題になります。

太陽の神、ヘリオッド
海の神、タッサ

リスクの軽減

 神々を機能させることの一部は信心を機能させることです――私はこれが今年になって少し現れたといって間違いないと思います。完全なパワーアップという観点から見れば、我々は去年の混成マナ・サイクル、特に『ギルド門侵犯』の《ボロスの反攻者》や《夜帷の死霊》のような混成3マナ・サイクルだけでなく、混成2マナの《炎樹族の使者》などよりも多くのものを望むことができなかったでしょう。それらが(エンチャントではない)クリーチャーであるという事実は、神々への信心を早く揃えるための能力を求めるすべてのデッキはクリーチャー除去に対して脆弱となるということで、もし神々が少し強すぎたとしても、それがメタゲーム中の良い位置に存在するということを意味しています。

 しかしながらメカニズム以上に、我々が間違っていた場合にプレイされるようになるカードをいくつか仕込んでおく必要があることは理解していました。その後、時間とともに我々はこのフォーマットを拡大することができたので、神々を殺せないことにうんざりしていたプレイヤーは回答を得ることができるでしょう。極めて初期の段階で、エリック・ラウアーは《思考囲い》がこのセットに必要であることを分かっていました。我々はこれがほとんどの場合楽しいカードではないことは知っていましたが、神々やエンチャントのパワー・レベルを低く見積もっていた場合に、それに対処する方法を黒に与えることになることも知っていました。我々はちょうど『ミラディンの傷跡』ブロックのアーティファクト(もっと具体的に言うならば、剣)に対処できない黒の不遇な2年間を切り抜けたところで、そこからさらに黒がエンチャントに手出しできない2年間を見たくはありませんでした。また我々は《古代への衰退》をリミテッド用、かつ少なくとも数ヶ月の間はスタンダードでの「最後の手段」として使えるカードとして緑に与えました。

ボロスの反攻者
思考囲い

正しいデザインを見つける

 神々のようなカードでは、実際にデベロップで多くのデザイン作業が起こるものです。通常、デザインは我々の求めるものに極めて近い全体像を掴み、そしてデベロップはそのカードを、スタンダードのプレイで見かける適正なレベルに削り出す必要があります。従って、我々はヘリオッド、ナイレア、モーギス、そしてゼナゴスがどんなものであるかを知っていましたが、神々をスタンダードで見かけられるレベルに変換する方法を考え出さなければなりませんでした。

 我々は『テーロス』の神々について、エンチャントらしいいつでも有効な能力と起動型能力を持つクリーチャーにすると決めました。これらの神々は武器を持っており、従って我々はそれら全てを組み合わせて、何かそれらしい働きをする方法を考え出そうとしました――例えば《エレボスの鞭》は《死者の神、エレボス》でカードを引くためのライフをあなたに与え、また《パーフォロスの槌》はトークンを生み出し、そのトークンは槌自身の能力で速攻を得て、《鍛冶の神、パーフォロス》の「クリーチャーが戦場に出たとき」の誘発型能力で対戦相手に2点のダメージを与える、などなどです。さらに、このクリーチャーに与えられる能力は、我々がスタンダードで実際にプレイしたデッキを支援するように作られています。《狩猟の神、ナイレア》がトランプルを与えるのは、緑が抱えていた問題である《太陽の勇者、エルズペス》対策のためで、そして彼女はそれらを倒す素晴らしい回答をもたらしてくれます。我々はこれらの神々を、基本的にそれらの色のクリーチャー・デッキが求めていることを行なうように、上手くいけば多くのデッキに1枚か2枚入る可能性が高いように作りました――4枚入れると、なかなか死なない伝説のクリーチャーの処分に困るように狙っています。

死者の神、エレボス
エレボスの鞭

 『神々の軍勢』の神々では、ちょっと違ったアプローチをしています。2色の神々について、我々は各神々をプレイしたいデッキについてはるかに具体的なアイデアを持っており、そしてそれらの神々をそれらのデッキに適応するよう調整を試みました。例えば、《歓楽の神、ゼナゴス》は明らかに現在のスタンダードにある赤緑モンスター・デッキに適応するよう作られています。《都市国家の神、エファラ》はトークンを生み出せるウィニー・デッキで、《殺戮の神、モーギス》は赤黒のアグロ・デッキで、《欺瞞の神、フィナックス》はライブラリー破壊コントロールで(《霜の壁》と一緒に使ってみてください。相当クールです)、そして《収穫の神、ケイラメトラ》はランプ・デッキで機能するように意図されています。これらの神々の性質によって、我々は2色の小神が『テーロス』の大神よりも使われるデッキが少なくなることは分かっていましたが、それらがデッキで使われるような戦略の中ではより大きな影響を持つでしょう。現時点では、これらの神々の活躍は我々の予想より少し下回りますが、これからの一年半に変化し続けるスタンダードで、その居場所を見つける余地はまだあると考えています。

歓楽の神、ゼナゴス
欺瞞の神、フィナックス

 あとわずかで、『ニクスへの旅』の神々が皆さんの前に姿を現すでしょう。これらの神々はどのように『テーロス』や『神々の軍勢』の神々に姿を並べるでしょうか? それは時が経てば分かると思います。

 それではまた来週お会いしましょう。

 サム(@samstod) より


(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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